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体罰・ハラスメントをする大人は決して子どもたちへ悪影響を与えたいわけではない

こんにちは。スポーツコーチング・イニシアチブ事務局の後藤晃一です。

今回は、活動報告というよりも現場の方々を見ていて体罰・ハラスメントに対して感じたことを備忘録的に書きたいなと思っています。

2013年の桜ノ宮高校のバスケットボール部で起きた選手が自殺したニュースは今でも鮮明に覚えています。原因はスポーツ指導者の体罰・ハラスメントがきっかけだったとされています。

この事件を皮切りにして、一気にスポーツ界における体罰・ハラスメントの報道が芋づる式に報道されました。

私自身、当時大学でスポーツ心理学の勉強をしていましたが、そのきっかけになったのは、中学・高校の時の大人の接し方でした。やる気を高めてくれる大人がいる一方で、そうではない大人も多かったと思っています。

そんなとき、高校時代に出会ったある1冊の本。それが『サッカーのメンタルトレーニング』というイギリスのビル・ベスウィックというスポーツ心理学者が書いた本でした。

この本の内容は、当時高校生だった私にはとても難しかったものの、直感的に自分の人生に役立ちそうな気がしました。そして大学でスポーツ心理学のスポーツ現場での実践を中心とした勉強をしていく中で、子どものやる気をたかめるやり方があることを知りました。

大学院を修了したある日、スポーツコーチング・イニシアチブと出会い、スポーツ指導者の方々と共に未来のスポーツについて議論を交わすことが多くなりました。

この活動の中で感じたことは、子どもの将来を悪くしたいと思っているスポーツコーチや保護者はいないということ。体罰・ハラスメントをしてしまう指導者も、やり方が違うだけのことが多いと感じるようになりました。

このやり方とは、子どもの成長に対する考え方・子どもとの関係づくり・子どもとのコミュニケーションの方法などがあります。

結果しかみない考え方より結果も過程も見てあげる

結果というのは、子どもにとっても大切です。なぜなら、社会にでてから結果が求められることには変わりないからです。しかし、結果だけではなく過程まで見ることができると、結果的に子どもが結果を残しやすくなります。

これは、子どもの不安・子どものモチベーション・子どもの成長などの観点から色々と説明できます。この結果だけが評価の対象になってしまう考え方を勝利至上主義といいます。

勝利至上主義な考え方になってしまうと、結果がでないことが悪になってしまうのです。しかし、子どもにとって結果はコントロールできることではありません。相手が強ければ負けることもありますし、自分の実力が発揮できなければ、弱いチーム負けることもあるのです。

プロであれば、勝つことは”仕事”でもあります。しかしユーススポーツは、そうではありません。子どもの心身の成長を促すために、”勝つことを目指す”ことが大切なのではないかと考えています。

両方通行のコミュニケーションができる関係づくり

スポーツコーチと選手の関係で大切なこととしては、両方通行のコミュニケ―ションができる関係づくりがあげられます。コーチはティーチャー(先生)とは違い、導くことが求められます。

もともと、コーチの語源は馬車からきています。馬車には、お客さんの行きたいところに連れていくという役割があります。お客さんがどこに行きたいのかという聞く姿勢があって、初めて選手を目的地まで導けるのがコーチです。

しかし、一方的なコミュニケーションだと、行き先を選ぶこともできず、ただただ馬車に乗らなければいけない状態に陥ってしまいます。

選手とコーチが両方通行でコミュニケーションできるからこそ、選手のモチベーションが高まり成長を促すコーチングができるのではないでしょうか。

悪いのは人ではなく社会の仕組みそのもの

コーチの体罰・ハラスメント問題や虐待問題などでは、子どもに接した大人にフォーカスが当たりがちです。もちろん、やってしまったことそのものは悪いことに変わりはありません。

しかし、子どもの育て方やコーチングの方法について学ぶことなく子育て・スポーツ指導ができてしまう社会の仕組みそのものが悪いのではないでしょうか。

経験則だけに基づいた教育は次世代へ脈々と受け継がれてきました。しかし、今のままで本当によいのでしょうか。今こそ、この負の連鎖を断ち切って、将来日本を背負う子どもの環境をよりよくすることが、大人として果たすことなのではないでしょうか。


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