キャプテンという重責と選手交代
ラグビーにおけるキャプテンという重責は非常に重要な意味を持つ。
ラグビーに関する記事を書く記者の中で、その比喩表現のうまさと情景描写の秀逸さで右にでるものはいないと個人的に考えている藤島大さん曰くこう書いている。
なぜならラグビーの監督やヘッドコーチはグランドサイドにはおらず、スタンドにいるからだ。
つまりグランド上の判断は選手に委ねられ、その責任はキャプテンに委ねられる。
IT機器の発達により、適宜伝達することは可能にはなっているものの
他のスポーツのようにグランドサイドで指示をするということはない。
ラグビー日本代表が南アフリカ代表を破った際のリーチマイケル選手の選択は今でも話題にあがる。
ヘッドコーチは「PGを狙え」と。しかりグランド上のリーダーであるリーチ・マイケルは「スクラム」を選択した。つまり「同点」ではなく「逆転」を狙うという判断だ。
実は、この記事を書いている私もほぼ同じ境遇になったことがある。
それは、中学校ラグビー最後の大会での出来事だ。
関東大会2回戦。この試合に勝てば東日本大会進出が決まる試合。
中学ラグビーは当時全国大会が無かったので実質東日本大会が一番大きな大会。
試合の残り時間はほぼ残されていない。
相手にペナルティが宣告された。
PGを狙って入れば同点で抽選。
トライを狙い、トライできれば逆転勝利。
グランドの外から監督の「狙え」という声が聞こえた。
何度も聞こえた。
しかし、グランド上の私たちは勝ちたかった。
なぜなら春の大会も同じチームに負けていたからだ。
だからトライを狙った。
結果。
相手のディフェンスのプレッシャーに負け、自分達のミスでそのチャンスはついえた。
中学校生活最後の大会はその瞬間に終わった。
今でもその選択が「正解」だったのかは分からない。
恐らく、その時、私が監督だったら同じように「狙え」と指示するのだと思う。または判断に迷っている間に選手が決めているのかもしれない。
中学生ですら、それぐらい難しい判断がグランド上のキャプテンに委ねられているのだ。
だから、大事な試合であればあるほどよっぽどのことが無い限りキャプテンを選手交代することは非常に難しい。
話をラグビーW杯フランス大会に戻す。
決勝に進んだ2チームは準々決勝、準決勝ともにキャプテンは試合終了の瞬間、グランドにはおらずベンチにいた。
つまりキャプテンが戦略的に途中交代してベンチに退いていたのだ。
その決断をあの緊迫した試合の中で、監督やヘッドコーチとして決断できるだろうか。
凄まじい試合を観戦しながら私はその選手交代に驚いていた。
選手選考及び選手交代は本当に難しい。
そこに正解などはない。
しかし。
選手選考や選手交代に携わるのであれば、どのような信念で、どのようなポリシーで選手選考及び選手交代をするのかを明確に決めておくことが重要であると思う。
それは、どんなに小さな大会でも、トップレベルではなくても、中学校の部活顧問だとしても同様だ。
それが選手の成長やチームの成長に大きな影響を及ぼすからだ。
そんな難しさをラグビーW杯と並行して行われていた部活動の大会で感じた次第である。
あとは3位決定戦と決勝を残すのみとなったラグビーW杯フランス大会。
グランド上のキャプテンがどのような判断をするのか。
監督、ヘッドコーチがどのような選手起用、選手交代をするのか。
そんな視点で試合を観戦してみても面白いかもしれない。
▼この記事を書いた人
SCIではダブル・ゴール・コーチングセッションやラボの開催を担当。
公立中学校の国語科教員。ラグビーをこよなく愛しつつ、サッカー部顧問として活動中。