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サッカーとフットサルの融合。元Fリーグの監督が小学生に伝えたい事。【C.A.VALIOSO厚木 ヘッドコーチ 奥村敬人さん】-YouTube文字起こし-
-お名前と所属チーム名を教えて下さい
「C.A.ヴァリオッソ厚木でヘッドコーチをしている奥村敬人と申します」
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-競技歴は
「中里小学校一年の時に担任の先生に誘われてサッカーを始めて、そのあと御所見中学校、藤沢西高校でサッカーをやりました。
そのあとアルゼンチンにサッカー留学して帰ってきてJリーグのチームに受かることができず、そこでサッカーを辞めてしまって。
父が遊びでラグビーをやっていて、その後3年ぐらいそこでラグビーを遊び感覚でやっていたんですけど、その後にサッカーを一緒にやっていた仲間の先輩の方がフットサルやろうということで始めたのがエスポルチ藤沢というチームでした。
その後フットサルのスーパーリーグというのが出来たんですけど、そこに入るために自分たちでP.S.T.C.ロンドリーナというチームを作りました。
P.S.T.C.ロンドリーナで数年活動した後にFリーグができるということで、ロンドリーナがベルマーレというチームに名前を変えて一年間Fリーグでプレーして引退しました」
-指導歴は
「ベルマーレで引退した後にロンドリーナの監督を半年務めまして、その後ベルマーレの方からコーチで帰ってきてくれという話を頂いて14年間ベルマーレのコーチ・監督を務めさせて頂きました」
-ベルマーレ監督時代に思い入れのあるシーン
「2020年12月19日に絶対王者である名古屋オーシャンズとホームの小田原アリーナで試合をしたんですけど2点差のビハインドで負けてる中、最終的に4対3で逆転した試合があるんですね。
その時にがんで7年間闘病していて一緒に戦っていた久光選手がその試合中に亡くなってしまって。
試合後ロッカールームで久光選手が亡くなったという話を聞いて、全員号泣して悲しんだというところが自分の中では1番忘れられない出来事でした」
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-フットサルリボンについて
「小児がんの啓蒙活動として子供たちの病院に訪問してフットサルを一緒にプレーしたり、Fリーグ会場に行ってフットサルリボンの活動を宣伝したりといった活動を引き継いで、久光選手の弟が活動しています」
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-C.A.ヴァリオッソ厚木で指導するきっかけは
「ベルマーレを辞めた後1年半ぐらい指導してなかったんですよ。
そんな中、厚木インドアフットサルクラブで働いている平井さんからここを拠点に活動しているチームがコーチの都合で消滅してしまうという連絡がありまして、そこに所属している子たちの受け皿になるようなチームを作りたいということで、自分に相談がありました。
自分ももうベルマーレ辞めた後に指導はもうやめようかなということで一年半ぐらい何も活動してなかったんですけど。
この厚木インドアフットサルクラブがロンドリーナというクラブで日本一になった時に活動していた場所でもあり、大人の方々にフットサルを教えるフットサルクリニックというのも、この厚木インドアフットサルクラブで初めて始めたので。
そういった思い入れもあり自分の心が動くものがありまして、是非その話を受けたいということで、それから色々話を進めていってC.A.バリオッソ厚木というチームを作るという経緯になりました」
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-C.A.ヴァリオッソ厚木の活動概要は
「五、六年生は普段は他の少年団やチームに入っている選手たちが集まってフットサルチームということで活動しています。
四年生以下がサッカー・フットサルチームということで、サッカーもフットサルも両方活動する。
本来自分たちがやりたいのはそこだったんですけど、チーム立ち上げの時にあまりにも時間がなくて、高学年の子たちがなかなか集まらないということで、まず高学年のチームの子たちはフットサルチームで行こうという話になりました。
それ以外にフットサルスクールとして高学年、低学年、幼児のカテゴリーで行っています」
-C.A.ヴァリオッソ厚木の指導コンセプトは
「サッカーとフットサルの融合ですね。
自分がフットサルを始めた時に、どうせミニゲームでしょっていう遊び感覚で行ったんですよ。
そうしたら、たまたま1番初めに戦ったチームが日本トップクラスのチームで、もうこてんぱんにやられて。しかも人が消えるっていう感覚。
サッカーでは1回も味わったことない感覚を試合中受けまして、なんだこのスポーツはとすごい衝撃を受けたんですよね。
ブラジルやスペインの育成年代はフットサルを当たり前のようにやってる。
サッカーの中でもこの消えるっていう動きをすでにやっているということを考えた時に、ぜひ日本でも育成年代からフットサルをを取り入れて、色々な引き出しが出せるとか、賢い選手っていうのを育てたいと思って、サッカーとフットサルの融合というのを掲げてやってます。
逆にフットサルをやるときも、サッカーの力強さ。
フットサルをやってるとどうしてもミドルレンジからシュートが打てなかったり、なんて部分があるんですけど、サッカーをやってるとそのダイナミックさも出るので、うまくフットサルの方ではサッカーのいいところ、サッカーではフットサルのいいところっていうのを融合できたらいいかなと思って、その挑戦をしてます」
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-今後の予定や目標は
「五、六年生のフットサルチームは、県リーグの湘南地区上位4チーム以内に入りまして 来年行われる横浜地区の上位と湘南地区の上位で行うプレミアトーナメントというものに進出することが決まりました。
昨年も出たんですけど予選で残念ながら負けてしまい、今年はそのリベンジというか1つでも上に行けるよう練習頑張ってます。
四年生は日産カップが来年あります。
実は当時自分が四年生の時、日産カップを優勝してるんです。
自分が指導者としてその四年生を率いて日産カップに出るっていうのは感慨深いですし、やはり1つでも勝って選手たちにいい景色を見せてあげたいという思いがありますので、そのために一生懸命みんなと戦えたらなと思ってます」
-フットサルの魅力は
「観る方としては、狭いコートの中で人数も少なくすごいスピーディーな展開、スペクタクルな展開っていうのは多いと思うんですね。
サッカーで言ったら、常にゴール前の攻防が行われてる。
ちょっとでも目を離した時にゴールが生まれたりとか。
観ていてドキドキワクワクするような展開。それがフットサルの魅力かなと。
あとは、体育館で公式戦はプレーしますので、こう、ボールを足の裏で扱ってる時とか、ターンする時にキュッキュッて音がするんですよね。その音が見ててすごい心地いいなと思って見てます。
プレーする方は、とにかく再現性の高いスポーツで自分たちが練習で行われてることが試合ですごく決まることが多いんですよね。
例えばボール回しのローテーションの中でも、相手の穴をついてここを攻めようって言ってたことが、試合中に実際起こる。
セットプレーでもしっかりとデザインされたセットプレーが決まる。
コーナーキック、キックイン、クリアランスとかでそうなんですけど、練習でやってることができた時の快感というか。
全員でゴールまでの絵を、同じ絵を描きながらプレーするっていうところがフットサルの魅力なのかなと思います」
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-フットサル特有の技術や戦術は
「足の裏を使うトラップというのは、最近は、川崎フロンターレの家長選手とか足の裏使ったキープとかしてますけど、サッカーだとどうしてもインサイドトラップしてしまうと思うんですよね。
そうするとボールが体から少し離れてしまって目線がどうしてもボールに行ってしまう。
足の裏でトラップすると、ボールを持ったまま顔を上げて色々な視野でプレーすることができる、かつ前後左右、斜め前斜め後ろ、全ての方向に次にコントロールができる。
そういった部分ではすごく有効的でサッカーでも南米のボカジュニアーズにいたリルケメ選手とかもそうですけど、足の裏を使う選手がすごく多い。
そういうプレーというのは、フットサル特有ですけど、サッカーの方にも使えるのかなという風に思います。
戦術で言うとキックインとか止まった状況の中で、全員全員が同じ共通理解を持って、同じ絵を描いたままゴールに向かうことができる。
その中で相手がどういう動きをするかによってパスの出しどころが変わってきたり、どういうタイミングでパスを出さなきゃいけない、というところ。
それを4秒以内でプレーしなきゃいけないんですよね。その時点でかなり難易度が高いというか。
再現性もありますし決断力というのがすごい求められる。
そういった部分で、サッカーの方にもその瞬間的に判断して、今どこに出したらいいのか、どういうタイミングでパスを出したらいいのか、どういう強さなのか。
そういうところをすごく磨くことができるんじゃないかなと思います」
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-育成年代におけるフットサルの今は
「フットサルをやってるチームというのはすごい増えたかなと思います。
ただフットサルを経経験してきた指導者が子供たちに落とし込んでるかというと、まだそうではないのかなと思います。
狭いコートの中でうまい選手たちがミニゲーム感覚でやってる。
それは強いんですけどそういうチームがまだまだ多いかなと思うので、そういった部分でもっとフットサルをしっかり学んできた指導者が選手たちに伝えられるようになったら、日本のレベルというのは上がってくるのかなと思ってます」
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-Fリーグの今は
「自分がもう3年も離れてて、偉そうなことは言えないんですけど。
2007年の開幕戦の時、代々木体育館で7、8000人の前でプレーすることができたんですよね。
その時、この為に自分はやってきたんだっていうすごい感動を覚えました。
今観客数で言ったらそこまではいってないと思うんですけど、各クラブすごい努力していて、地域や自治会と提携したりとか、ケータリング呼んでとか色々なイベント組んだりとか、すごい努力してると思うんですよね。
その中で、まだまだ全チームがプロ化とかそういった部分には至ってないと思うんですけど、自分の仲間で人生かけてフットサルに取り組んでる指導者や選手たちがまだまだ本当たくさんいるので。
自分の願いとしてはもっともっと盛り上がってもらいたいと思ってます。
そのためにも、やはりJFAとかがもっとフットサルに対してお金をかけていただいたり、メディアに出してもらったり、そういうことをもっともっとできたらいいのかな。
最近は松井大輔さんがフットサルについて語ってくれてるので、そういった部分ではすごくいい効果はあると思いますけど、まだまだ足りないと思うので。
自分にとってすごく人生を変えてもらったスポーツでもありますし、やっていても見ていても面白いスポーツですので、1人でも多くの方に知ってもらいたいなと思います」
-日本人選手が海外や高いレベルで活躍するには
「やっぱり幼少の頃からフットサルを真剣に取り組むっていうことがすごく大事なのかなと思います。
スペインなどのトップリーグの試合を見ると、判断に間違いがほとんど無いんですよね。トップリーグの選手って例えばトラップをどこに置けばいいのかとか、今はドリブルなのか、今パスなのかっていう判断が、その認知・決断・実行能力がとにかく高い。
そう考えた時に、日本人選手はうまい選手はいっぱいいると思うんですよ。
ただ、そこの1つ1つの判断がまだその海外の選手よりは劣ってるのかなと思いますので、そういった部分で小さい頃から色々な戦術だったりシステムを学ぶことによって、そういった適応能力が高まって、自然と大人になった時に海外で戦える選手になっていくのかなと僕は感じました」
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-フットサルのトレーニングがどうサッカーに生かされるか
「よく言われるのはフットサルやることによってサッカーの6倍ボールに触れるとか、認知・決断能力が格段に上がるとか、ボールなしの動きでスペースを自分たちで作り出す動きっていうのができるっていう風に言われてるんですけど。
1年半自分が関わってすごく思うのが、 攻から守への切り替えがとにかく早くなる、というのをすごく実感していて。
実際、自分たちのフットサルチームとか、フットサルを取り入れているサッカーチームはそこの部分がすごく早い。
スクールに体験に来たサッカーの子とかは、ボールを取られたら顔を上げてしまって、悔しがってそのまま戻らなかったりとか。
取られた後の切り替え。奪った後、攻撃というのはみんな攻撃好きだから早いと思うんですよね。
奪われたあとっていうところがとにかくもう格段に変わる。
例えばそれができることによって、同じレベルのチームと戦ったら間違いなく自分たちがその部分で優位性を持てると思いますし、自分たちより少し上のレベルの相手でも、それができることによっていい勝負をしたりとか、勝てるようになるのかな。そこが本当に1番変わる所。
技術的な部分としても当然うまくなる部分あると思いますけど、そこの部分が自分は1番感じました」
-育成年代で身に付けておくべき事は
「本当に止める、蹴るというのがやっぱりすごく大事なのかなと思います。
そこをおろそかにしてる選手も多いと思いますし、それができないと色々な戦術もそうですし、そこで向上していくのが難しいのかなと思うので。
本当地味な部分でありますけど、やはり家を建てるにも基礎というのが必ず必要だと思いますし、そこがぐらついてると家も崩れてしまう。
そう考えた時に、しっかりと止める・蹴るというのができることによってプレーの選択肢が広がって、自信も深まってさらに良い判断だったりプレーができるのかなと思います」
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-指導する上で気を付けている事や意図的に行っている事は
「僕が1番気を付けてるのは、例えば四年生以下だったら、自分が4年生以下だった時にどういう気持ちでプレーしてたのかっていうのを念頭に置きながら。
今このタイミングでこれ言われたらすごい嫌だなとか。
こう言われた事を今も覚えてるなとか、自分がその年代に起こったことを思いながら。
そういう気持ちで接することによって、今は何を喋ったらいいのか、言葉の大切さっていうのはすごくあると思いますので、このタイミングでこれを言った方がいい、言わない方がいいとか、そういうところはこうすごく気を使っていて。
ただ、失敗は多々あって練習終わった後にこれは言わなかった方が良かったなとか、そういうのはいっぱいあるんですけど、そこでそういう思いを持って接すること。
あとは、とにかくチャレンジに対しては褒める。失敗しようが何しようが褒める。
そこはすごく大切にしていて、やっぱりミスをするとコーチの顔を見る選手、親御さんの顔を見る選手ってのはいっぱいいると思うんですよね。
そういう選手にはなってほしくない。
常にやっぱりプレー中は没頭してボールを追っかける選手になってほしいという思いがありますので。
そう考えた時にいいものはいいとしっかり褒めてあげる。チャレンジしたことは褒めてあげる。
そうすると選手たちは、チャレンジしていいんだ、ミスしても全然問題ないんだっていうマインドになるので、これから先ずっとそういうマインドでいてほしいので、そういった部分はすごく気を使ってます」
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-選手自身が取り組むべき事
「やっぱり人に言われてやるっていうことと、自分で考えてやるってことは全然違うと思うんですよ。
人に言われてやることはなかなか身につかない。
ただ、自分で考えて取り組むことっていうのはすごく興味もあると思いますし、集中してチャレンジできると思うので、とにかく自分でチャレンジするっていう事が重要なのかなと思います。
なので自分としてはヒントは色々子供たちに与えますけど、とにかく自分で考えて行動できるっていう選手になってもらいたいですね」
-トップレベルでの指導経験はどう生かされているか
「ベルマーレ時代にやっていた、 例えばコーナーキック、キックイン、クリアランスとか、ボール回しのローテーションの戦術はもう育成年代から今やってもらってます。
初めはどのぐらいできるのかなという事で試しにやってみたんですけど、思ったより飲み込みが早くてプレー出来てるって考えた時に、年齢関係なくどんどんできるんだなと。
僕はそういうトップレベルの戦術などの知識はありますので、そういったものを選手たちに落とし込むことによってプレーの幅が広がるんだとかそういうのはすごく感じました。
小さければ小さいほど、そういう幅広いプレーというのを選手たちに伝えていって、選手たちの将来のプレーの幅に繋がっていけるような指導を心がけてるというか、指導してもいいんだなということはすごくこの1年半で感じました」
-指導した選手が将来どうなって欲しいか
「当然、プロを目指してる子にはプロになって欲しいというのはあります。
ただ、現実的にプロになれる選手というのは一握りで、自分みたいに途中で挫折してしまった、挫折してしまう選手もいると思うんですよね。
そんな中で、生涯フットボールを続けられるような選手でいてほしいですし、嫌いになってほしくない。
あと先ほど話した久光という選手は、がんで闘病中に抗がん剤で自分が苦しい状況の中でも若い選手に声かけたりとか、監督今チームどうですかとか、自分が苦しいのに人の事を気にかけられるような選手だったんですよね。
そこをすごく自分は感銘を受けたというか、素晴らしい人間だなと思いまして。
やっぱり自分が苦しい時に人のために何かをできるような選手、そういう人間に1番なって欲しいかなとに思います」
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-プロを目指す選手にメッセージをお願いします
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「今の結果に周りと比べて、焦ってしまうことがあると思うんですけどやっぱり日々コツコツと努力することによって、夢に近づくことができると思いますので、諦めず先を見て日々頑張ってもらいたいと思います」