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子どものリアルボイスを大事にしたい ーSPOON代表メッセージー

「ほんとはさ、ママの彼氏から体触られてて・・・」

将来、一人暮らししたいと新しく始めるバイトの話をしているとき、
とうとつにこの言葉が18歳になったばかりの彼女の口から出た

6年毎月彼女に会ってきて、ようやくこの子の本当に言いたかったことを聞いた瞬間だった
「ママのことを思うと誰にも言えなかった」
「自分さえ我慢すれば誰も傷つかない」
「こんな話恥ずかしくて誰にもできない」
彼女はこれまでの苦しかったこと、つらかったことを堰を切ったように話し、最後にいつかみほねぇに話したいと思っていたと言った

話したいと思っていても話せないことがある、話せないけれど話したい思いがある、その葛藤を超えたのは彼女と私の関係で、6年の月日がきっと彼女には必要だった
毎月会って最近のオススメのコンビニデザートの話、好きな人が出来てコクった話、仕事場にいる嫌な上司の話、などなど他愛のない話をしながら過ごした月日は、彼女の心のハードルを少しずつ下げていたのかもしれない

「大人の都合で決めつけないで」

子どもは私たちが思っている以上に大人に気を遣い、忖度し、言いたい事を言わずに過ごしています
大人の「相談してね」「話を聞くよ」の言葉は、子どもにとって「なぜ?」「何であなたに?」と思う疑惑の言葉に聞こえがちです
私自身も子どもの頃に親や学校の先生にこの言葉を言われて、「なんであんたなんかに話さなきゃいけないの?」と強い拒否感を覚えていました

出会った多くの子どもたちは、少しずつほんの少しずつ歩み寄ったり時に離れてみたりを繰り返しながら、長い年月をかけてお互いを知り合っていき、この大人だったら本音で付き合っていける存在と認知して、今の感情や言いたいことを出してくれるようになります
「話したいときに、話したい場所で、話したい人に」これを決めるのは子ども自身であって、大人の知りたい気持ちや事情で決めるものではありません

必要以上に子どもの言葉を引き出そうとする大人の姿を子どもたちはちゃんと見ています
大人への気遣いや忖度が、子どもの生きづらさに繋がっているのではないでしょうか

「いまこの瞬間に生まれた子どもの声」

<私に出来ることをする>こんな思いで始めた子どもアウトリーチ活動は15年経って、<社会的に孤立する子どもがいなくなる>ことを目指して活動したい思いに変わりました

前述の彼女は、その後、本人が望む「家を出たい」に必要な、転職する、お金を貯める、物件を探す、など具体的な話をし、半年経って彼女は一人暮らしを始めました
その過程で、思い描く形が見えてくると彼女の自立へのスピードは一気に進み、その環境を自らの力で整えていきました

最初は1人で始めた活動は、私だけでは解決できない課題を一緒に考えて取り組む仲間との出会いを生み、子どもアウトリーチ研究会SPOONの立ち上げに至りました
子どもを取り巻く環境は、支援が充実して制度が整備されつつありますが、子どもが安心して日々を過ごせるにはまだまだ遠い道のりと感じています
子ども側に変化を求めるのではなく大人側が変化すること、子どもが言いたいことや感じていることを大事にしたい、その思いをカタチにしていけたらとSPOONで活動しています

                  代表 吉村 美穂(よしむら みほ)

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