NPO法人箱崎自由学舎えすぺらんさ上村一隆×SPOON吉村美穂対談（後編）――子どものリアルボイスに向き合うこと

2024年12月4日 23:19

NPO法人箱崎自由学舎えすぺらんさの副代表として不登校の子どもや保護者の支援を長年活動しながら、個別訪問支援やふくおかフリースクールフレンドシップ協議会の事務局長としても活躍している上村さんとSPOON代表吉村が対談！
子どもたちの確かな声やリアルな思いを聴くこと、子どもアウトリーチで大切な視点や環境について、語り合いました。
対談の様子を２回にわたってお届けします。（今回は後編です）

―「言いたいことを言える」関係と環境って大事！

上村：『子どもボイス』観たけど、あれってどういう経緯で始めたの？
「大人や社会にモノ申す！」ってスタンスがめっちゃいい！
インタビューの中には自分もハッピーサンタで一緒に活動した子もいて懐かしかったなぁ。でも懐かしさって「時間」があったからこそ語れることもあっただろうしね

吉村：『子どもボイス』、めっちゃいいでしょう！懐かしい子も中にはいたんじゃない？
『子どもボイス』上に出てくれている子どもはSPOONで個別支援をしている子やユーススタッフとして活動している子で、関係ができてるのが前提だから。SPOONで関わる子どもたちは、それぞれ課題を抱えていて、普段は言いたいことを諦めたり、言葉を飲み込んで生活してて。「言いたいことを言っていい」を子どもが経験できる場があったら、大人や社会に言いたいことを言う機会になったら、って思いで始めたんだよね。

上村：関係性ってあるよね？　それがないと変にいい子ちゃんになっちゃったり、言いたいことに蓋をしたり・・・「言いたいこと言っていい」って言う大人は増えてきてる印象だけど、そこに至る関係性がないと「なんでアンタなんかに話さないといけないの？」って思われちゃう。

吉村：そうなんだよね。でも、これって子どもだけじゃなくて保護者や家族も時に同じで。支援する人の中には困っていること前提で子どもや家族に関わってて、「なんであなたに家庭の事情を話さなきゃいけないんですか？」って思いになってる大人もいて。だから、大人側のストレートな思いをインタビューする『大人ボイス』もこれから始める！

―「社会的に孤立させない！」そのためには？

上村：『大人ボイス』必要。自分も普段、不登校支援をやってて、個人的には不登校支援の7割は保護者支援だと思ってる。訪問活動とかもやってると困り感って子どもだけのものじゃなくて、保護者の困り感にも目が向く。SPOONの活動の中にも保護者・家族支援ってあるじゃん？

吉村：子ども支援って子どもを取り巻く環境を含めた支援だと思ってて。家族とつながって話を聞いたり支援につなげたりすることもある。子どもの父・母もだけど、おばあちゃんやお姉さんってこともあったかな。子どもとの関わりと同じで、普段から他愛もない話をしてて、何か困ったり悩んだときに話せる関係を大事にしてる。

上村：子どもに寄り添うってことが大前提だけど、そこに至る環境への支援って大切だし、絶対抜け落ちちゃいけない視点だと思う。

吉村：子どもも親も言葉にならない程の悩みや不安をたくさん抱えてる。私困ってますってものすごく言いづらいし支援を受けているって周りにバレたくないって家庭がまだまだ多い。アウトリーチって、この思いや気持ちを理解しながらも、心のヘルプサインに感度高くなって必要なタイミングで情報や支援を届けることなんだと思ってる。

上村：困りごとを言語化して整理する手伝いをすることと、困りごとを見つけ出して突きつけることの違いって大きいと思ってて、言いづらいとかバレたくないとかってもしかすると後者なのかなぁって感じる。言い過ぎかもしんないけどそれっておせっかいとかの範囲を超えたレッテル張りと感じさせるってことなのかな・・・あくまで日常の中の会話にこそ、支援者としては気付きポイントがあって、そこをキャッチする力が求められる。

吉村：まずは、心のヘルプサインを出してもらえる関係性が子どもでも親でもほんとに大事！子どもも家庭も孤立しない、つながりがあるんだよって伝えることがアウトリーチの重要な視点。

上村：「社会的に孤立させない」って昔から言ってるね

―子どものリアルボイスに向き合う

上村：ヘルプサインをキャッチする力って問われるよね？言葉だけじゃなくて仕草や表情から読み取る部分もあるけど、この部分って自分は個人の資質によるとこが大きいと思ってるところに「子どもアウトリーチ研究会SPOONって始めるから」って話を聞いて、研究って部分に「さすが吉村！」って思った。個人の資質だけだと支援の輪って広がりづらいから、そこを深めて広げようとしてるのが研究なのかなと思って、そこはすごく期待してる。

吉村：いやいや、期待してるって他人事な感じですが。上村さんはSPOONのアドバイザーですよ（笑）。SPOONは居場所事業やアウトリーチ活動で子どもに直接関わる活動をやってるけど、それだけじゃなくて子どもや家庭が社会的に孤立しないように、支援者や地域の人たちを巻き込んでいきたいって思ってる。子どもの声なき声にアクセスする支援を具現化して支援者に届けること。支援者の思い込みや善意を前提な支援で子どもは傷つくし、正しさの押し付けでしかない。子どものその瞬間のホンネに向き合う支援をSPOONで研究して発信したい。

上村：「何でも言ってね」って言うだけで終わらせずに声なき声があることを知って欲しいし、支援者はリアルボイスを聴けているか自身のことを常に疑って欲しい。その疑いを晴らしていく過程でSPOONが発信する内容がきっと役に立つはずだから。こども家庭庁ができたからって、子どもを取り巻く環境が劇的に良くなるわけじゃないし、そうした社会に一石を投じる存在であって欲しい。自分も一緒に取り組んでいきたいと思ってます。

吉村：一緒に…言ったね！こうやって仲間を誘っていく私（笑）。
これまでに出会った子どもの中には、支援者や親の顔色窺って言葉を飲み込んだり、誰にも聞いてもらえず思いを言葉にすることを諦めている子がいて。支援を受けているはずの子どもから大人が生きる力を奪ってる現場をたくさん見てきた。
小さな小さな一歩かもしれないけど、声を上げられない子どもを減らしたい。こんな混沌としたこの時代にしんどさやつらさを言葉にするなんて大人でも難しい。子どもにはどんな声を上げていいんだよー、全部受け止めるからだいじょうぶだよーって伝え続けたい。