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NPO法人箱崎自由学舎えすぺらんさ上村一隆×SPOON吉村美穂 対談(前編)――オトナは子どものリアルが見えていない
NPO法人箱崎自由学舎えすぺらんさの副代表として不登校の子どもや保護者の支援を長年活動しながら、個別訪問支援やふくおかフリースクールフレンドシップ協議会の事務局長としても活躍している上村さんとSPOON代表吉村が対談!
子どもたちの確かな声やリアルな思いを聴くこと、子どもアウトリーチで大切な視点や環境について、語り合いました。
対談の様子を2回にわたってお届けします。
― そもそも何でオレですか?・・・
吉村:子どもってオトナ社会の歪みを真っ向から受ける立場と思っていて、上村さんはその問題をストレートに捉えて課題に向き合っている人だと思ったからね。子どもが弱い立場って世の中で言われるけど、その根底にあるのはオトナ社会のあり方だと考えてて。共通の課題認識って活動する上で大事でそこが私のエネルギー源になる。
上村:活動を通して違和感を覚えることってどうしてもあって・・・。「正しい支援とは?」って場があったとして「正しいって何なん」みたいな。きっと似たような違和感が吉村さんにもあるんじゃないかなぁって感覚が自分にもあったんで対談相手に選んで頂いて光栄ではあるかな・・・。
吉村:あとは同郷だから?(笑)地元福岡で一緒にやった活動は数知れず!
上村:それは重要!
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― 最近よく聞く「子どもの声」どうなん?
吉村:時代なのかなぁ?最近よく聞く「子どもの声」とか「意見表明(アドボケイト)」ってどう感じる?一部でスローガン化してしまっていたりオトナ主体の活動になってると、わたしは感じてて。
上村:「子どもの声を聴こう」の考えが広がるのはいいことだし、子どもと関わる上で基本だと思ってる。これは大前提。わざわざ言わなきゃいけないとこが寂しくもあるけど・・・
とは言え、「子どもの声を聴く」に留まらず「子どもの声を引き出そう」になるとそれは違うと考えていて、大人から声を掛けられてもすぐに言葉にならない子もいる訳で・・・そこを「待つ」のも「声を聴く」一つの方法だと考えてもらいたいな。
上村:時間軸が違うというか大人や社会が子どもを待てない環境が少しでも変わるといいなぁと思ってる。親が子どもに言うセリフの不動の第一位は「早くしなさい!」、急いでるのは大人だよねって話かな、待つことを覚えないと声は聴けないし、子どもも本音は語ってくれないし・・・。
吉村:子どもでもあるけど1人の人として存在する。逆に自分が声を伝えるとしたら、どんな人がいいかって視点が大事だと思うんだよ。私なら一気に距離詰めてくる人や「いつでも何でも話してね」って言ってくる人には絶対に話さない。信頼関係って相互理解だから、相手のことも解った上でこの人だったら素の自分を見せてもいいと思えた時に、声にして伝えられるかな。
上村:子どもはしっかり大人を見てるので「この場ではこう言えばいいんでしょ?」って大人が喜ぶ言葉を重ねる子や、そうした言葉を探す子もきっといるかなぁって・・・そこに信頼は生まれないよね。
吉村:しっかり大人を見てるって子どもの生きにくさだね。
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― で、今なぜSPOON?
上村:アドボケイトって言葉をよく聞く中で、あえて今SPOONを立ち上げた想いとか目的ってある?
吉村:いや~今でしょ!今!
上村:いやそうじゃなくて目的!(笑)
吉村:いや、ほんとに!今でしょ!これまでもKIRA・燦ネットで子どもと一緒に成長した自分がいて、その子どもたちの確かな声やリアルな思いを届けたいって思ったの。子どもには子どもなりに心動く機会があって、でもオトナはその機会に気付かない。ネガティブなことも誰にも言えなかったこともみほねぇには話せるって言って、そこから一緒に悩んで前に進んでみたり立ち止まってみたり…。答えるのではなく応えるが必要なんだってめちゃくちゃ思った!これこそがアウトリーチ活動に必要で、子どもに関わりたいって思いで活動している人に子どもの本音やリアルな思いを届けて本当の意味での子ども主体の活動が広がって欲しいって仲間集めたのが始まりかな。
上村:吉村さんはそういう機会をくれる子どもたちへの感謝ってのがある人だよね。「子どものために」っていうより「子どもと共に」を大事にしてるって伝わってくるよ。
吉村:色々一緒に活動したよね!ハッピーサンタプロジェクトとか熊本地震での子どもの居場所づくりとか、あと年末に子ども会のレクリエーションとか…。その全ての活動に普段は支援している子がメインスタッフとして企画から当日運営まで一緒に活動して、時に失敗もありながら一緒に経験を積み重ねたって感じで。よく子どもから「もっとこうした方がいい」とか「やっぱりわかってないな~」と意見を出してくれてたな。
上村:子どもと大人の明確な線引きがない関係性とか対等性を大事にしたいって想いが伝わってきた。アウトリーチって表情とかその場の空気感で感じ取る部分とか、読みとる部分とかすごく五感の全部使うじゃん?正直、活動者のセンスに問われるとこってあると思ってたんだけど、そこのセンスの部分を紐解いて言語化していきつつ、「子どもの声」をど真ん中に置くっていう、アウトリーチの原点っていうか基本の基を改めて今ちゃんと広げたいってところがSPOONの存在意義とか必要性になるのかなって感じた。
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―「オトナの都合で決めつけないで」オトナを見てる子ども、子どもが見えてないオトナ
吉村:そうなんだよ、支援の現場でスキルとかセンスとかずっと聞いてきた言葉だけど、それじゃいつまで経っても支援の底上げは起こらない。考えや手法はシェアして広まればいいし、やっぱり子どものリアルな声は届け続けてオトナの意識改革は起こしたい!
上村:大人側に子どものリアルな声を聴く覚悟があるか?って問われてる気がしてて、大人が考える「子どもにはこうあって欲しい像」の強要ってまだあると思ってて・・・。
吉村:オトナの都合で読み取るんじゃなくて子どもの伝えたいことを表現するタイミングを待つ。それが数年先だったとしても、その子どもが心動く機会を待つ覚悟。それくらい長くかかる子どもも実際いたし、その抱える思いは相当なものだったけど心の奥底に沈めた言葉は親や先生のためって言った言葉にオトナの責任を感じたよ。
上村:そこだよね、冒頭にも「待てない大人や社会」って言ったけど。だから子どもはついつい先回りして大人に忖度して言葉を紡ぐけど、本心を覆い隠すストレスって相当のものだし、子ども自身にそのストレスを抱え込ませるのは大人都合でしかないよね。
吉村:ほんと、それ!傷ついた子どもの心に塩塗るオトナ、傷つき体験を無かったかのように話題に蓋するオトナ、ルールだからって子どもの納得につながる話をしないオトナ…自分が子どもの時に感じてきた大人像は今も全く変わっていない、そこが本質的に問題だと思う。
上村:それでいて常に子ども側を変えようとする。そんな大人社会に一石投じたいよね!
吉村:子どもにはそれでも声を届けることを諦めないでほしい。『自分の行動で何かが変わる』その姿を私自身が子どもたちに見せて示すことも、子どもの心動く機会の一つになれば。これまでに出会った子どもたちから学び得たことを多くの人たちに伝え、本当の意味での子どもの権利が守られる社会を目指したい!(めちゃくちゃ大きく出た!!)
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