購買心理から考える
購買心理、「A・I・D・E・A(×3)」東大心理学博士が3年間の通販レスポンスデータを分析した考え
現代人は、「まず自分のニーズに気づき」「その商品がニーズを満たすモノであると認識し」「その商品が、本当に自分にとって価値を持 つものであるかを検証し」「感覚・感情の面でも商品をポジティブにとらえ」、さらに「商品の価値が対価を上回ると判断する」ことでモ ノの購入を決めているのです。
しかも、この心の動きを3回繰り返さないと、最終的に購買行動を起こさない。 そして、何より重要なのは、このモデルにたどり着いたのが、各種の“法則”を検証した結果だということ。
つまり、私たちが発見した各種 の“法則”こそが、お客さまの心を「A・I・D・E・A(×3)」に沿っていざなうことのできる、「モノを売るための確かな答え」なのです。
アテンションの内容次第で、ガラリと反応が変わるという事実
購買心理モデルといえば、「AIDMA」
「Attention(気づき)」から始まり、「Interest(興味)」「Desire(欲求)」「Memory(記憶)」を経て「Action(行 動)」するという、言わずと知れた購買心理モデルです。 そして、私たち21世紀に考案したのが、「AISAS」。
こちらも同じく「Attention(気づき)」「Interest(興味)」から始まりますが、その後「Search (検索)」を経て「Action(行動)」し、さらにその後に「Share(共有)」をするという、インターネット時代の行動を反映したモデルとなっています。
この他にも、世の中にはさまざまな購買心理モデルが存在しているわけですが、前述の二つの例に代表されるように、その多くは、「A」から始まります。そし て、その「A」が示すのは、ほとんどの場合「アテンション(Attention/気づき)」。
そりゃそうですよね、情報への「気づき」がない限り購買行動なんて起きよ うがない。だから、こうしたモデルの最初が「アテンション」の「A」になるのは、疑いようのない事実のように思えます。
Googleの提唱するパルス消費と心理学博士が提唱するAIDEAは商品、サービスの種類、価格 により消費者の判断が変化するというのを理解し、戦略を考えましょう。
当たり前と信じ込んでいたこの事実に疑問を持つきっかけとなったのが、売れたテレビショッピング番組と、売れなかったテレビショッ ピング番組の冒頭部のデータを解析した時の結果でした。
二つの映像をインターネットでモニターに見てもらい、「いいね(ポジティブ評価)」と「悪いね(ネガティブ評価)」と「買いたいね (購入意向)」という三つの要素で時系列的に評価してもらったところ、驚きの事実が発覚したのです。
二つのグラフにご注目ください。
それぞれ、「売れた」テレビショッピング番組と「売れなかった」番組の冒頭部の反応データなのです が、売れた番組の方はグラフの折れ線が乱高下しているのが分かります。
これは、見た人の心がポジティブにもネガティブにも振り回さ れたことを意味しています。それに対し、売れなかった番組の方は折れ線が平坦。
これは、この番組を見た人はたいして心を動かされな かった、ということを意味します。
この例に限らず、売れた番組とそうでない番組の反応を計測すると、たいていの場合、冒頭部分で同 じような明らかな差が観測されます。
当然のことながら、売れなかった番組だって無策だったわけではありません。注目してもらうために、アテンションを意識したさまざま な演出が盛り込まれていました。
にもかかわらず、心の動きに大きな差が出てしまうという事実。これは、「単にアテンションさえあれ ば人の『買いたいスイッチ』が押される」、という従来の考え方が、実は正しくない可能性があることを示唆しています。 大事なのはアテンションそのものではなく、どんなアテンションをするかの「中身」にあるようなのです。
答えのカギは、「呼びかけ」て「問いかけ」る通販広告にあった。
通販の世界で、広告の導入部における鉄板とされるのが「呼びかけ&問いかけ」型です。「お肌に合う化粧品が見つからないあな た!」「何を意識して化粧品を選んでいますか?」のような、対象者を名指して、その方への質問から始める広告の手法です。
実 は、先ほど提示した「売れたテレビショッピング番組」も、まさにその手法を用いたものでした。
こちらが、先ほどの折れ線グラフに、用いた手法を対比させたものです。簡単にいうと、冒頭の呼びかけ に合わせて「悪いね」、すなわちネガティブな反応が高まり、次の問いかけでポジティブな反応が引き出 され、さらに再度の呼びかけで再びネガティブな反応が高まっているのが分かります。
その結果、商品紹介の際には「いいね」が高まり、結果的に商品に対してポジティブな感情を持ってもらえたことが読み取 れます。
先ほど触れた通り、売れた番組は、「いいね」はもちろん、「悪いね」も高い反応を示すのが特徴です。
直感的に考えると、「悪いね」が高まる、つまり広告に対してネガティブな反応が高まるのは良くないこ とのように思えますが、実際にはそんなことはありません。 例えば、「太っている人が、太っている自分にネガティブな気持ちを抱くことで、ダイエットを決意す る」といった例のように、ネガティブな感情を抱くことは、人に行動を促すきっかけとなり得るのです。
そして、そんな反応を引き出す上で、「呼びかけ」や「問いかけ」は非常に重要な役割を果たしているの です。
まさにそれを証明するのが、「売れなかった広告」の導入部の反応です。同様に、グラフに番組の演出内 容を対比させたのが次の図となります。
「呼びかけ」や「問いかけ」をせず、あえて悩みの声や喜びの 声をストレートに紹介したのですが、冒頭から「いいね」も「悪いね」も鈍い反応となっています。結 果、商品紹介部分でも「いいね」は高まらず、このやり方では商品に対して前向きな感情を持ってもらえなかったことが、一目見るだけで分かります。
購買行動の出発点は、自分のニーズに目を向ける「Awake」
「呼びかけ」て「問いかけ」たら反応するのに、そうでない場合は反応してくれない、なぜこのような 差が生まれるのでしょうか。
答えは、現代人が持つ「ニーズ」にあります。
現代人はニーズが多過ぎて、その一つ一つを常に意識し ていない、だからこそ「呼びかけ」たり「問いかけ」たりして、自身のニーズに目を向けてもらわない 限り、商品の価値はなかなか伝わらないのです。
ニーズに目を向けてもらう工夫をせずに、いきなり商 品の特徴を語るのは、聴衆の足を止める工夫をせずに、皆が素通りする状況で街頭演説をしているのと 同じ状態なわけです。
注目すべき、その最初のステップは、単に気づいてもらうだけ「Attention」ではなく、自身のニーズを呼 び起こし、自覚させる「Awake(目覚める、自覚させる)」です。
膨大なニーズに囲まれて生きている現代 の消費者に商品の価値を伝えるためには、「呼びかけ」、そして「問いかけ」ることで自身のニーズに「Awake」してもらう、そういった話の入り方が非常に大切なのです。
もしもあなたの商品の価値が思うよ うに伝わっていないのであれば、この「Awake」が欠けている可能性が大。
自身のニーズに気づいてもらえ ていない、つまり、情報の受け皿を用意できていないお客さまに、情報を配っている状態になっているのか もしれません。 通販広告のデータ解析から導かれたこの推論、実は、心理学の面からもその有効性が裏付けられています。
一例を挙げると、2002年にノーベル経済学賞を受賞した心理学者のダニエル・カーネマンが名著『ファスト &スロー』で打ち出した、システム1とシステム2という脳の判断プロセス、そしてペティとカシオッポと いう二人の心理学者が1983年に発表した「関与(Involvement)」に関する研究。
呼びかけ、問いかけることで自身のニーズに目を向けてもらい、そのうえで商品の価値を提示する。この ような伝え方をするには、一覧性のある平面媒体より、時系列で話が展開する動画媒体の方が向いています。
近年、インターネット広告において動画広告が大きな伸びを示していること、あるいは、媒体力が下 がったといわれつつも、いまだにテレビ広告が大きな力を持っていること、その裏にも、このような人間 の購買心理が関係しているのだといえます。
果たして、「面白いCM」と「ベタなCM」、どちらが販促において効果的なのでしょうか?
そんなのケースバイケースだろ!という大方の意見にあえて抗い、私たちがこの“論争”の答えを求めて行ったのが、その名も「面白いCM vs ベタなCM 直接対決テスト」です。
名前の通り、注目度を増すことで商品の圧倒的刷り込みを狙った「面白いCM」と、商品の具体的 役割を伝えることを意図した「ベタなCM」の二つを用意。それらをほぼ同条件で放送し、結果どれだけの人がどのように動いたのかを、 インターネット上の検索数やホームページの訪問数、商品の販売数をもって計測したのです。
いったいどんな差が出るのか、ワクワクしながらやってみた結果が、次の表。ご覧の通り、「面白いCM」と「ベタなCM」は、共に◎と〇 と△が一つずつという、何とも判断に困る結果となりました。
「面白くなければ誰も見ないし、効果がない」というクリエイターの主張も、「ベタな方が結果がいいはず」というアナリストの主張も、 どちらも正しいといえそうなこの結果。
やはりこの問いに答えはないのか...。 いいえ、そんなことはありません。
大事なのは「どちらが販促において効果的か」という観点。「面白いCM」の方は、検索数は増えたも のの販売数はそれほど増えず、逆に「ベタなCM」は、検索数は増えなかったものの、最終的な販売数では上回っています。つまり、販促 への貢献度という意味では、軍配が上がったのは「ベタなCM」だったといえるのではないでしょうか。
実は、モノを売ることに特化した通販広告の場合だと、この傾向はさらに顕著です。というよりもむしろ通販広告においては、商品の具体 的特徴を、例えばビフォーアフター型のような、いわばベタを通り越した「ベタベタ」な表現にしない限り、なかなかお客さまに買ってい ただくことはできません。モノを売ろうとするのであれば、キレイな表現やウィットに富んだ表現よりも、直接的に商品価値を描いた表現 の方が圧倒的に有効だというのが、通販におけるまぎれもない事実なのです。
ベタな表現の方が、なぜモノが売れるのか。そのカギを握るのは、「Identify」すなわち「認識」という心理だと私たちは考えます。
「Identify(認識)」とは、どのような心理で、どのように購買行動に影響しているのか。それを知るために見ていただきたいの が、私たちが通販の反応データから導き出した購買心理モデル、「A・I・D・E・A(×3)」モデルです。
人は、五つのステップを順次クリアして購買に至るわけですが、その2番目に位置するのが、「Identify(認識)」です。 あれ、2番目の「I」って、「Interest(興味・関心)」じゃないの?と思う方も多いと思います。ですが、現代の購買行動において大 事なのは、「Interest(興味・関心)」ではなく、「Identify(認識)」だと私たちは考えます。
例えば、ビフォーアフターのようなベタベタな表現で商品の必要性を見せつけなければ、人はモノを買ってくれない。
この事実が意味 するのは、モノを買ってもらう上では、単に「興味」や「関心」という薄い感情ではなく「この商品は自分のニーズを満たす、自分が 求めているものなんだ」という明確で強い「認識」を持ってもらうことが欠かせないのだ、ということです。 そして、この「Identify(認識)」をしっかりできるか否かで、「Discussion」以降のステップに進む数も変わります。
「Identify(認 識)」が上手くいけば、その先のステップに進む人が増えるし、上手くいかなければそこで購買心理は途切れてしまう。
「面白い CM」と「ベタなCM」の間で販売数に差が生まれたのは、まさに「Identify(認識)」の差だったといえるでしょう。
モノを買ってもらう上では、単に「興味」や「関心」という薄い感情ではなく「この商品は自分の ニーズを満たす、自分が求めているものなんだ」という明確で強い「認識」を持ってもらうことが 欠かせない
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