【初心者】レコードはじめました。
1.レコードが聴きたくて
ある日、友人の家でレコードを聴いた。
レコードなんて、中学生以来、意識して聞いたことがない。
子供のころは、まだCDなんて存在していなくて、音楽を聞くといえば、レコードかカセットテープかであった。近くには、貸しレコード屋さんなんてものも存在していた。
それがいつの間にかCDになり、いまはネットを通してどこにいてもスマホなんかで気軽に聞くことができる。
そんな現代、あの日のレコードは少し新鮮な気持ちがした。
聴いたアルバムは、確か、ダイアナ・クラールだったと思う。
レコードで聞く彼女の歌声は初めてだったけど、すぐそばで歌ってくれているみたいな、包み込むような音がして、とても丸みのある柔らかい音だった。
レコードって、案外いいかも。
なんて感じたのは数年前のはなし。
以来、ずっとレコードのことが気になっていて、何度か買おうとした。けれども、そもそもレコードもなければプレイヤーもない。すべてが一からの出発で、そろえる費用を考えると、CDを買う方が、CDプレイヤーを買わなくていい分、よほど低コストだ。
そんなわけで、買おうと思ってはやめて、という日々が続いていた。
そんなある日、数年来使っていたBOZEのCDプレイヤーが故障した。といっても、CDが使えないだけで、ラジオとスピーカーは健在だ。もったいないから、ポータブルCDを買って、スピーカーとつないで、BOZEの音を楽しもうと考えたりした。けれど、使い勝手や今後の使用回数なんかを考えて、結局、新しいコンポに買い替えることになった。
買うことになって初めて知ったのだが、最近は、CDコンポ自体が相当に少ない。十数年前までならあったメーカーが、いまはCDコンポの販売を辞めていたり、あっても、私が望むものとは少しちがっていた。
さんざん探して迷った末に、結局、私が望む音と機能がついたものを、ということで、マランツのMCR612というCDレシーバーとB&W607S2AEというスピーカーを別々に買うことに。
このときも、レコードプレイヤーのことは頭にあったけれど、まずは手持ちのCDの再生が優先事項だったので、レコードは見送った。
それから半年ほど経った先月。
またレコードのことが頭にちらつき始めた。
でも、今度のちらつきは、いつもと違って「強い風」だった。物価上昇なんてこともリアルになりだして、それならこれ以上高くなる前に、と、ついに購入を決意したのだけれど……。
問題は、どのプレイヤーを買えばいいかということだ。
2.どのレコードプレイヤーがいいの?
真剣に購入を考える前は、手軽に使えるものでいいと思っていた。
我が家にあるCDレシーバーとスピーカーを使うという前提で探し始めるのだが、どうやら、レコードプレイヤー自体にフォノイコライザーという機能がついていれば、我が家では使用できるらしいということがわかってくる。
2022年現在のレコードプレイヤーは、だいたい、以下のメーカーのものが主流であるらしい。
・アイオン
・ティアック
・ソニー
・オーディオテクニカ
・デノン
・ヤマハ
もちろん、上記以外にもメーカーはある。
けれど、私が選ぶ際の条件の1つとして、手軽だけれど、それなりの品質に対する安心感というのがあった。
次の条件として、手持ちのスピーカーで音楽が聴けるかということ。
我が家には、B&Wのブックシェルフ型のものと、BOZEのSoundLinkMiniがある。
できれば、B&Wのブックシェルフで聞きたい。こちらの方が音は断然いいからだ。
とはいえ、狭い我が家でレコードプレイヤーを置く場所は限られている。
スピーカー優先で、スピーカーとCDレシーバーを置く場所を移動するにも、その場所がない。
幸い、B&WをつないでいるCDレシーバーは、bluetoothの機能があるので、もし、レコードプレイヤーにbluetooth機能があれば、それで聞くことはできる。
でも、ちょっと待って。
せっかく、アナログの音を楽しみたいがためにレコードプレイヤーを買おうとしているのに、デジタルの音源に変換した音は、本来のレコードの音質が味わえるのだろうか?
レコードプレイヤー自体にスピーカーが内蔵されている安価なものもいくつか種類があるし、手軽にレコードの雰囲気を味わうには十分なのだけれど、どうしても最初に聞いた友人宅でのあの音が忘れられず、音質には少しだけこだわりたい。
そんな気持ちがあるので、デジタル変換可能なプレーヤーについて少し調べたのだが、簡単に言うと、音を圧縮した音源に直してからスピーカーに送られるので、本来の音より多少は劣ってしまうらしい。
この時点で、正直ほしいものはデノンのDP-400だったのだが、これは価格にしてだいたい5万円強くらい。これから先、この趣味が続くかどうかわかならないし、レコードのことも良くわかっていない初心者が、最初から5万円も投資して大丈夫か、という不安がある。自分への投資といえばそれまでなのかもしれないが、どちらかといえば私は「石橋を叩いて渡る」派だ。
しかも、これにはbluetooth機能がついていない。狭いスペースとワイヤレスになるというすっきり感、何より、置き場所に苦労せずとも、bluetoothで気軽にレコードが聴けるという点は、制限のある環境でレコードを聴く者にとっては何より魅力的だ。
そんなわけで、bluetooth搭載のプレイヤーを買おうかとほぼほぼ決めたとき、ふと、bluetooth対応のプレイヤーを販売している会社が少ないことに気づく。
気に入っていたデノンはそもそも低価格のものからして対応していないし、オーディオテクニカは何種類かレコードプレイヤーを作っているにも関わらず、bluetooth対応は低価格の一機種のみだった。
もしかして、本来のレコードの音にこだわるにはbluetoothは不要なのでは?
なんて疑問が頭をよぎり始めた。
3.bluetoothか、有線接続か?
そもそもの話、bluetooth機能を使ってレコードを聴くのと、プレイヤーに直接、有線でスピーカーをつないで聞くのとでは音質にどれくらいのちがいがあるのだろう?
この手のことには全く素人の私である。ネットを調べると、かなり専門的に説明してくださっている記事もあるし、初心者でもわかりやすい書き方で教えてくれるものもあった。それらを読んで、私なりにざっくりと理解した結論は、レコードプレイヤーをbluetooth機能で聞くのと、スピーカーに有線接続でつなぐのとでは、音質は違ってくるということである。
bluetoothは、音楽信号を圧縮してスピーカーに伝送するらしい。圧縮するときに、音の高域の細かな情報が失われたり、低域の音階が不明瞭になったりするそうだ。とはいえ、bluetooth対応のスピーカーでも高音質のものも多数でているので、そうしたものを選ぶと、かなり気持ちよくレコードライフを楽しめそうだ、というのはネット記事を読んで得た段階の私の率直な感想だ。
一方、有線接続の場合、デジタル音源もアナログ音声の信号にしてスピーカーに伝送するらしい。音を圧縮しない分、音質の劣化は生じない。
bluetoothも有線接続も、どちらも一長一短あって悩ましいところである。
とはいえ、どちらかは選ばなければいけない。
と、そこで、2でも書いたけれど、ふと、ほしいと思っていたDENONには、どの価格帯にもbluetooth搭載の機種がないことに気づく。
改めて他のメーカーも見てみると、音にこだわり上位機種のレコードプレイヤーを出している多くのメーカーはbluetooth搭載の機種をつくっていない。オーディオテクニカは、上位機種は作っているけれど、最下位機種のもの1点だけにbluetoothを搭載しているだけで、それ以外はすべて搭載していない。
ということは、もしかしてレコード本来の音を十分に楽しむには、昔ながらの、bluetooth機能などない、有線接続しかできないアンプをつないで聞くスピーカーが一番いいのではないだろうか。
そんな考えに至り、結局、bluetooth機能のついていないものを選ぶことに決めた。
B&Wにつなぎたいことはやまやまなのだが、残念ながらスピーカー付近にそのスペースはなく、聞くたびにいちいちプレイヤーをCDレシーバー付近に移動させなければならない。といって、毎回それでは面倒だからと、通常はレコードプレイヤーにBOZEのSoundLinkMiniを有線でつなぎ、どうしても聞きたいときにレコードプレイヤーをB&Wの側に運ぶことにした。
となると、簡単に移動できて気軽に使えるものでなければいけない気がして、さんざん迷った挙句、これに決めた。
4.結局、これを買いました。
選んだものは、オーディオテクニカのAT-LP60X。
これはオーディオテクニカのホームページにもあるように、初心者でもわかりやすい自動再生モデルで、同社のエントリーモデルだ。価格も1万円ちょっとにもかかわらず、針の上げ下げもボタン1つで簡単にできるし、何より自動で再生もできるし、レコードが終われば自動で止まってくれる。
付属品としてケーブルがついているけれど、BOZEには使えず、ケーブルの両端が3.5mmのステレオミニプラグを別途に購入した。(これはどこの量販店でも手軽に買える。付属品のケーブルは、B&Wで聞くときにCDレシーバーとレコードプレイヤーを接続するのに必要なので、そちらの方に使っている)
さて、実際に聞いた感想としては、正直、聞いてすぐはCDの音質とレコードの音質に大きな差は感じなかった。けれど、聞いているうちにCDを聞くときとは違う「耳の疲れ」という感じの「聞き疲れ感」がないことに気づいた。
CDやインターネットラジオなどの音はすごく良くて、より澄んだ、クリアな音がとても魅力的だ。
一方、レコードはそういうクリア感はCDに比べれば劣るような気がするが、でも、なんというか、丸みのある音のような気がする。CD等は少し角のあるような、とがったとまではいかないにしても、鋭くてやや硬い、なんというか、鋭利な「音」のように感じる。けれどレコードは、そういう鋭さがなくて柔らかくて角のとれた「音」に感じられる。
だが今回、レコードプレイヤーを購入して実際に聞いてみて、一番感じたことは、音質にこだわりたいなら、まずはスピーカーにこだわった方がいいということだ。
我が家は、BOZEとB&Wの2つしか比べられないけれど、聴き比べると音の良さは全く違う。それはメーカーのちがいによる、発生する音の性質というか、特徴、色、が違うせいもあるし、スピーカー自体の大きさの違いもある。大きい分、また、左右からの音が聞こえてくる分、B&Wの方がよく聴こえて当然かもしれない。
けれど、マンション住まいで夜、小さな音でもクリアな上質な音が聴きたくてB&Wを買ったのだけれど、レコードを聴いていても音の広がりがこちらの方がある。
スピーカーに話がそれてしまったので、レコードプレイヤーに話を戻すと、今回、初心者ということで、安価のエントリー機種を購入したが、これはこれで満足のいく内容だった。
もしこの趣味が続くのであれば、次はデノンのDP-400くらいのものは欲しいと思うけれど、それはきちんと置き場所が確保できてからの話。
当面は、このオーディオテクニカのエントリー機種で十分だと思う。
それほど、オーディオテクニカのAT-LP60Xはスグレものであった。
レコードの聞き心地の感想は、こちらに書いています。