3年後...2018MLBドラフトレビューKC
凡例
ラウンド(全体指名順位) 名前(Name):ポジション:投打:身長/体重:出身校:契約金額(ボーナススロット)
簡易レポ
成績
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1(18). ブレイディ・シンガー(Brady Singer):RHP:右投右打:6-5/210:Florida:$4.25M($3.349.3M)
名門フロリダ大学でエースを務めた実力者。90マイル中盤の速球はシンカー気味に沈み、球威抜群。それを上下内外に投げ分けるコマンドも持ち合わせている。アウトピッチは縦に変化するスライダー。どのカウントからでも投げ、ストライクゾーン内にもストライクからボールへのコマンドも完璧にこなす。チェンジアップのクオリティの低さが囁かれていたが改善傾向にあり、試合では滅多に投げないが左打者対策としては十分なレベル。低いアングルからスリークォーター気味に投げる独特のデリバリー。マウンドで見せる闘志も高評価。エースポテンシャルの逸材。
当初の予想通り、19年フルシーズンをマイナーで投げた後20年にメジャーデビューを果たし、その後はほとんどメジャーで投げ続けています。ただ、メジャーでは少し壁にぶつかっているようです。当時のレポにもある通り、現在もチェンジアップをほとんど投げておらずシンカーとスライダーの2ピッチでしのいでいる状態です。そうなると左打者対策が不十分となるのか、昨年打たれた14HRの内11HRが左打者からと恰好の餌食となっています。また、頼みの綱であるシンカーも真ん中付近に集まることが多く、これでは左右関係なくヒットゾーンに打球を飛ばされても仕方がないでしょう。チェンジアップのクオリティ改善が追い付かないということで2ピッチでいくのなら、シンカーのコマンドをよりブラッシュアップする必要があるでしょう。
How 'bout that?!? Brady Singer strikes out the side in the third inning, freezing José Altuve on a fastball.
— Bally Sports Kansas City (@BallySportsKC) August 19, 2021
TV: Bally Sports Kansas City
App: Bally Sports app#Royals pic.twitter.com/aUG5yy4ai8
1C(33). ジャクソン・カワー(Jackson Kowar):RHP:右投右打:Florida:6-5/180:$2.147.5M($2.118.7M)
高校時代最速92マイルだった速球が、大学で最速98マイルをマークし注目を集めた。高身長を活かした投げ下ろすようなデリバリーで、速球に角度をつけさらに打ちづらくしている。アウトピッチは、チェンジアップ。速球と緩急をつけ、空振りを奪う。カーブの評価はそれほど高くないが、向上の一途をたどっており打者の目線を変える程度には使える球種。デリバリー自体はシンプルなのだが下半身が細く、試合中バランスを崩すことが多いためコントロールにバラつきがある。安定した下半身を身に着ければ、大学時代にローテーションを組んでいた1巡目のブレイディ・シンガーとメジャーでもローテーションを組めるようになるだろう。
19年にマイナーでフルシーズンを投げ抜いたうえで好投を見せ一気に評価を上げると、21年もAAAで好成績を収め満を持してメジャーデビューを果たしました。ここまでは非常に順調だったのですが、メジャーではこれでもかというくらいに打ち込まれ、9試合に登板して防御率は2桁。登板した全ての試合で失点し、メジャーではいいところが見られませんでした。スピードは相変わらずで、最速98マイルは伊達ではありませんがスピンレートがよろしくなく高めに投げても痛打を食らうということが多いようです。また、コマンドにも難を抱えており、打ちやすいゾーン内にボールが集まりやはり痛打をくらうことになっています。また、大学の同期のシンガーとは逆に速球とチェンジアップの2ピッチになっておりスライダー、カーブといった球種を使えていないことにも原因があるようです。
That’s 1️⃣0️⃣0️⃣ strikeouts for Jackson Kowar this season 🔥#ChasersFamily pic.twitter.com/bvgBYC7uEy
— Omaha Storm Chasers (@OMAStormChasers) August 22, 2021
1C(34). ダニエル・リンチ(Daniel Lynch):LHP:左投左打:6-6/190: Virginia:$1.697.5M($2.066.7M)
17年まではうだつの上がらないイニングイーターという成績だったが、大学最終年でブレーク。奪三振の量を倍に増やし注目を集めた。90マイル前半の動く速球を、コマンドよく投げ分け相手打者を翻弄。4シームやカッターも交え的を絞らせない。アウトピッチはチェンジアップ。この球種で速球との緩急をつけ空振りを奪う。カウント球としてカーブも使う。力感の強いダイナミックなデリバリーだが、コントロールはよく滅多に四球は出さない。球威不足が懸念されていたが、90マイル中盤をマークすることもあり評価がさらに上がっている。
プロデビューイヤーから好成績を残すと19年にはシンガーやカワーをもしのぐような好成績を残します。21年は念願のメジャーデビューを果たしますが、やはりシンガーやカワー同様壁にぶつかってしまいました。カワーと同じく4シーマーなのですが、スピンレートが足りずしっかりとコンタクトされてしまうという場面が多いようです。そのため空振りを奪うことができず、マイナーでは常にイニングと同数かそれ以上奪っていた三振数が減少。打たれないようにとゾーンから外れるボールが多くなってか四球も増えてしまいました。大学時代は有用だったチェンジアップも被打率.350超えと今のところ足を引っ張っているようです。まだまだメジャー1年目ですが、投球の組み立てを一度見直す必要がありそうです。
Daniel Lynch's first career K was nasty. 🤮
— MLB (@MLB) May 4, 2021
(MLB x @HankookTireUSA) pic.twitter.com/QMq1l4Cejv
CBA(40). クリス・ブビック(Kris Bubic):LHP:左投左打:6-3/220:Stanford:$1.597.5M($1.786.3M)
90マイル前半の速球とチェンジアップのコンビネーション。速球は最速で94マイルをマークすることもあるが、球威不足な点は否めない。その分コースのどこでも投げ分けることができるコマンドを有している。チェンジアップは今ドラフトクラスでも、1、2を争うほどのクオリティで打者の左右を問わず投げている。昨年まではそれほど投げていなかったカーブの改善にも取り組んでいる。試合が進むにつれ速球のスピードが落ちてしまい、スタミナに疑問が残る。
19年にブレークを果たすと、20年にメジャーデビュー。その後、マイナーに落ちることなくメジャーでスターターとして定着しつつあります。ただ、上記3人と同じようにまだメジャーでマイナーのような活躍は見せられていません。球速が出ないことは今に始まったことではないので仕方がないのですが、スピンレートも低く上手くすくわれて長打をくらうことが多いようです。また、チェンジアップがゾーン内に集まってしまいそれをHRにされています。カーブのクオリティは悪くないので、チェンジアップをより活かすためにさらに割合を増やしてもいいのかもしれません。
Kris Bubic's 17.2 consecutive scoreless innings is tied for the second-longest active streak in MLB. In three appearances at Kauffman Stadium in 2021, he has pitched 12.2 scoreless innings and is limiting opposing hitters to a .077 average (3-for-39).#TogetherRoyal // @STIHLUSA pic.twitter.com/7Ia7pZfT11
— Kansas City Royals (@Royals) May 19, 2021
2(58). ジョナサン・ボウラン(Jonathan Bowlan):RHP:右投右打:6-6/262:Memphis:$697.5K($1.168.3K)
90マイル前半の速球とスライダー、チェンジアップのコンビネーション。速球は最速で97マイルをマークすることもあるが、コンスタントに90マイル中盤を維持することができていない。アウトピッチはスライダーで、キレがよく空振りを奪える球種。チェンジアップも投げるが要改善。巨体に支えられたデリバリーは安定しており、コントロールを乱すことは滅多にない。試合ごとに調子の波が激しく、長いプロのシーズンを乗り切れるかには不安が残る。
19年にA-/A+で23先発で140イニング以上消化し防御率3点台前半とブレーク。内容もよく高いK/BBをたたき出しています。懸念されていた球速の維持をプロでは改善され、コンスタントに94-97マイルをマークすることができているようです。現在主流となりつつある4シームではなく、ムービングの激しい2シームを多投するスタイルですが、最低でもイニングと同じ数の三振を奪えているようです。スライダーに加えてカーブも投げ始めており、ピッチングの幅を広げています。体を絞って迎えた21年も素晴らしいスタートを切りましたが、5月にトミー・ジョン手術を受けることになり一度休み。復帰登板が終了すればすぐにでもメジャーに呼ばれる実力は持っているでしょう。
Jonathan Bowlan is putting on a freaking clinic. pic.twitter.com/isYAd4jqiv
— Royals Farm Report (@RoyalsFarm) May 19, 2021
3(94). カイル・イズベル(Kyle Isbel):OF:右投左打:5-11/183:UNLV:$592.3($594.8K)
アグレッシブなプレースタイルが魅力。打撃ではパワーレスな点がネックだったが、ドラフトイヤーにコンスタントに長打を打てるようになり評価を覆した。まだ線は細いが、シーズン2桁HR程度ならクリアできるかもしれない。コンタクトスキルは悪くないが、慎重なアプローチのため三振が多め。盗塁に積極的だがスピードは少し速い程度。相手の隙を見て走るといったケースが多い。CF守備ではルート取りが上手く、そつなくこなせている。
21年開幕前まではマイナーで通算120試合程度の出場しかありませんでしたが、開幕25人ロースター入りを果たし、早々とメジャーデビューを果たしました。1ヵ月間ルーキーとしてはまずまずの成績を残していましたが、オプションを行使されAAAに。AAAでは好成績を残し、9月に再昇格となりました。アマチュア時代とプレースタイルも成績もほぼ変わっておらず、プロレベルに対応できていると言えるでしょう。レギュラーとしての地位を確保するにはどれだけ長打を打てるかにかかっているでしょう。
Career home run No. 1 for @kyleisbel_5!#TogetherRoyal pic.twitter.com/HBZYY2CBef
— Kansas City Royals (@Royals) September 15, 2021
4(122). エリック・コール(Eric Cole):OF:右投両打:5-11/170:Arkansas:$497.5K($451.2K)
打撃では広角に打ち分けるヒッティングスキルと辛抱強いアプローチが魅力。一方で、パワーに関してはからっきしで、フェンス越えの打球を飛ばす場面は、そうそう見られないだろう。スピードは平均以上だがルート取りが悪く、OF守備では遠回りしてしまうことが多い。この点を改善すれば、優秀なCFとなれるだろう。肩は平凡なため、CF以外ならLFしかポジションはない。
19年、21年と2シーズン続けて100試合以上に出場。パワーレスな部分が懸念されていましたが、2年連続で2桁HRをクリアしています。その分打率は伸び悩んでいるようです。四球を稼いで出塁率はそれなりの数字をマークしていますが、A/A+レベルでこのスタッツは少し物足りないでしょう。守備でもLFが主戦場となりつつあり、メジャー到達は厳しいかもしれないです。
5(152). オースティン・コックス(Austin Cox):LHP:左投左打:6-4/185:Mercer:$447.5K($337K)
90マイル前半の速球と縦に割れるカーブのコンビネーションで、大量に三振を奪うピッチングスタイル。速球は4シームと2シームを投げ分け、最速で95マイルをマークすることもある。アウトピッチのカーブはスピンがきいており、容易に空振りを奪うことができる。スライダー、チェンジアップといったその他のブレーキングボールは発展途上。コントロールが悪く、先発投手としては四球が多い。リーダーシップが高く、練習熱心とメンタル面での評価が高い。
19年にA/A+で23先発で130イニング以上を投げて好成績を残しブレーク。球速帯は変わらないようですが、最速で96マイルをマークするようになっており、アマチュア時代からパワーアップに成功しているようです。やはり、アウトピッチはカーブで、鋭い曲がりは変わらないまま。空振りを奪える低めのいいゾーンに投げ込むことができています。チェンジアップも改善されており、右打者に対して有効な球種となっています。心配だったコントロールも改善されており、今のところはスターターとして問題はみつかりません。
K #1 from Austin Cox last night. His curveball is a thing of beauty. pic.twitter.com/71zaTF8snL
— Royals Farm Report (@RoyalsFarm) June 6, 2021
6(182). ザック・ハーク(Zach Haake):RHP:右投右打:6-4/186: Kentucky:$297.5K($258K)
最速98マイルの速球が最大の武器。速いだけでなくよく動き、空振りが奪える。これにキレのいいスライダーを組み合わせ三振を奪う。チェンジアップも悪くなく、タイミングを外すには有効な球種。問題はコントロールの悪さで、先発としてもリリーフとしても使えないほど四球を出す。不安定なデリバリーが原因とされており、これを改善しない限りメジャー昇格は厳しいだろう。逆にこの点さえ克服すれば、セットアッパー/クローザーレベルの投手に、ひいては先発として投げることもできるだろう。
アマチュア時代の故障も癒えて、プロではコントロールが持ち直しスターターとして投げることができています。故障がありつつも球速は高い水準で維持できているようです。25歳でまだA+とかなりスローペースなのは気になりますが、ポテンシャルは高いためきっかけさえあれば一気にメジャーまで到達する可能性もあるでしょう。
7(212). タイラー・グレイ(Tyler Gray):RHP:右投右打:6-2/180: Central Arkansas:$2.5K($201.8K)
90マイル前半の速球と、縦に割れるカーブ、スライダーのコンビネーション。特筆すべきボールはないが、全ての球種をストライクゾーンに投げ込むコントロールは有している。大学では、先発として投げていたが、プロでは、リリーフに転向。
2年間マイナーでまずまずの成績を残していましたが、20年オフにあえなくリリースとなりました。
総括(2018)
1巡目のブレイディ・シンガーを筆頭に、高身長大学生投手をかき集めるドラフトとなった。投手は何人いても困らず、大学生だと高いレベルにまで到達しやすいのでトレードチップにもなるため、戦略としては間違っていないだろう。将来のローテーション候補が多く、今ドラフトだけでもローテーションを組めるほどである。特にシンガーはすでに実力はAAクラスといっても過言ではい。数年の内に、ケイシー・マイズ、イーサン・ハンキンスといった同地区の投手と鎬を削ることになるだろう。野手でも方針がはっきり表れており、一貫してスピードのあるOFを指名。足の速いパワーに不安の残るタレントをかねてから指名する傾向にあり、今回もそれの延長線上にあるということだろう。
総括(2021)
当時の総括通り、指名した大学生投手だけでローテーションを組める陣容となりました。既にシンガー、リンチ、ブビックはローテーション入りを果たしています、カワーやボウランらも時間の問題でしょう。ただ、メジャー昇格を果たした投手は軒並み壁にぶつかっており、対応に時間がかかっているところが気になります。とはいえ、全員このままで終わるとも思えませんので、今年の巻き返しに期待したいです。
一方で上位指名を避けた野手は小粒。メジャー昇格を果たしたイズベルもレギュラークラスとしては当落線上。有力選手を指名できなかったのでしかたないでしょう。
1年のドラフトでメジャークラスの投手を、それこそローテーションが組めるほど輩出しており大成功となりました。