3年後...2018MLBドラフトレビューHOU
凡例
ラウンド(全体指名順位) 名前(Name):ポジション:投打:身長/体重:出身校:契約金額(ボーナススロット)
簡易レポ
成績
コメント
1(28). セス・ビアー(Seth Beer):OF:右投左打:6-3/195:Clemson:$2.25M($2.399.4M)
今ドラフトでも屈指のパワーが最大の武器。どの球場でも、どの方向にでもフェンスオーバーの打球を飛ばすことができる。パワーを恐れて相手投手が慎重になり、自身のボールの見極めのよさとも相まって四球が多い。一方でクオリティの高い変化球にもろく、いとも簡単に空振りを喫する場面が多々見られる。2年連続で出場している日米大学野球でも、日本の投手の変化球に合わず終始低調だった。大学でも打率を.300をキープするのがやっとだったため、アベレージは期待できないかもしれない。スピードは皆無で、走塁・守備共に平均を大きく下回る。将来はDHが定位置になる可能性が高い。
当時はアベレージが残せないのではないかと危惧していましたが、杞憂だったようで、マイナー3シーズンで最も打率が低かった年でも.287とむしろハイアベレージを残しています。依然として空振りの多さを指摘されていますが、ビアーの長打力を考えると三振は少ない方と言えるでしょう。19年途中にザック・グレインキーのトレードでARIへと移籍しましたが、メジャー屈指の好投手とのトレードのメインピースとしてふさわしい選手へと成長していました。大学時代は力みが強かったスイングでしたが、現在はいい意味で脱力し柔軟に対応できるようなスイングになっているようです。打撃とは正反対に進歩していないのが守備で、所属するARIでもDHが使えるようになったことは朗報でしょう。
2(66). ジェイソン・シュローダー(Jayson Schroeder):RHP:右投右打:6-2/195: Juanita HS:$1.25M($965.3K)
コンスタントに90マイル中盤をマークする速球と、カーブ、スライダー、チェンジアップのコンビネーション。アウトピッチは緩いカーブで自由自在にコマンドでき、相手打者のタイミングを外す。スライダーもソリッドな球種。投球割合の少ないチェンジアップも向上の一途をたどっている。全ての球種で空振りを奪える点が強みで、高校時代に1試合17奪三振をマークしたこともある。高校生にしてはコントロールもよく、シーリングの高さよりもフロアーの高さの方が目立つ。投げ下ろすようなデリバリーは、若干力感が強い。
この年のHOUのドラフトで契約に至った唯一の高校生。完成度の高さとシーリングの高さから期待度は高く、オーバースロットな点にもそれは現れていますが、今のところ期待外れとなっています。故障の多さとコントロールの悪さのダブルパンチで、防御率が5点台を下回ったのが7試合のみの登板に終わったデビューイヤーのみという惨状。上がり目がありそうになく、このままフェードアウトしていきそうです。
3(102). ジェレミー・ペーニャ(Jeremy Pena):SS:右投右打:6/179: University of Maine – Orono:$535K($549.7K)
身体能力の高いアスリート。スピードがあり塁上では、投手にプレッシャーをかけ、守備では広いレンジをカバーする。肩が強く、SSとしては申し分ない能力の持ち主。打撃ではSSにしてはまずますのパワーポテンシャルを有するが、積極的すぎるアプローチが気になるところ。それでコンタクトスキルが高いのなら問題ないのだが、それほどコンタクトスキルに優れているわけではなく三振が多い。このままだとマイナーのレベルが上がるにつれ、打撃成績が低調になる可能性もある。
デビューイヤーこそつまずきましたが、その後の2シーズンで見事に挽回。三振が多すぎる点はそのままですが、それでもバットに当てればハードヒットを飛ばしヒットを打ち続けることに成功しています。その1つの要因として挙げられるのが肉体改造。現在はドラフト時の体重から20ポンド以上増えており、より強烈な打球を飛ばすことができる土台作りに成功しています。元々もパワーポテンシャルの高いスイングをしていたため、今後もその点については伸びるのではないかと予測できます。体を大きくすることで懸念されるのが守備ですが、現時点で目に付くほど鈍くなったということもないようで、順調にレベルアップしているようです。
4(132). アレックス・マッケナ(Alex McKenna):OF:右投右打:6-2/200: Cal Poly - San Luis Obispo:$430K($410.4K)
ラインドライブの打球を量産するヒットメーカー。鋭いスイングでコンスタントにハードコンタクトをすることができるが、打球を上げる意識に乏しいのか長打はそれほど多くない。体格から考えるとシーズン20HRも不可能なわけではなく、本人の心がけ次第か。アプローチが雑なところがあり、三振の多さが気になるところ。スピードは平均以上だが、盗塁成功率は低いためもう少し慎重になるべきだろう。広いレンジをカバーでき、肩の強さもまずまずなため長くCFに留まることができるだろう。
派手さはありませんが、マイナーではソリッドな成績を残し続けています。気になるのはデビューイヤー以外は毎シーズン試合数以上の三振数になっているところ。21年こそ15HRをマークしましたが、どちらかというとミドルヒッターなタイプなだけにやけに多い三振数は黄信号かもしれません。21年も故障があったとはいえ、AAに昇格した途端アベレージが極端に落ちており、ハイレベルな投手に対応できるのか一抹の不安が残ります。深いカウントまでもっていくことが多いためか、安定して四球を選ぶことができていますがこのアプローチを続けるのであればさらに長打を増やす必要があるように思えます。
5(162). コディ・ディーソン(Cody Deason):RHP:右投右打:6-4/205:Arizona:$285K($306.1K)
90マイル前半の沈む速球と、縦に割れるカーブのコンビネーション。速球は4シームとしても投げることができ、最速95マイルをマークすることもある。アウトピッチのスピン量の多いカーブに高評価を得ている。チェンジアップも投げるが、クオリティは平凡。ストライクゾーンに集めるコントロールは有しているが、ピンポイントに狙うコマンドはない。デリバリーはデセプションに優れているが全体的に動きがぎこちなく、力感も強いためリリーフに適正を見出す声も多い。一方で、大学最終年に転向した先発にも対応しており、ひとまず先発として様子見するのがベターだろう。
19年には主に先発としてA/A+の合計で100イニング以上投げ、好成績を残しましたが、20年にトミー・ジョン手術を受けたため21年はリハビリとして6試合のみの登板に終わりました。手術前はやはりまだコマンドの甘さが目立っており、メジャーでもスターターとして登板というのは厳しそうです。また、復帰後はコントロールの不安定さが目立っており、本格的にリリーフに転向した方がよいでしょう。
6(192). R.J.フルア(R.J.Freure):RHP:右投右打:6-1/210: Pittsburgh:$346.3K($237.6K)
最速96マイルの速球と縦に割れるカーブのコンビネーション。緩急をつけて空振りを奪うスタイルで、奪三振能力は高い。元Cということもあって、テークバックの小さなデセプションに優れたデリバリーが特徴。大学時代は先発をすることもあったが、主にリリーフとして登板。コントロールの悪さ、デリバリーの力感、カーブ以外のブレーキングボールのクオリティの低さがあるためプロでもリリーフで投げるのが無難だろう。
コントロールの悪さが改善されたわけでもないのに、なぜか19年からは主にスターターとして投げており、案の定四球を出しまくって打ち込まれるという2シーズンを過ごしました。再起をかけて挑戦したAFLでも打ち込まれ、ついに今年の3月にリリースされましたが、その後ATLとマイナー契約を結んでいます。
7(222). シーザー・サラザー(Cesar Salazar):C:右投左打:5-9/185:Arizona:$160K($187K)
身体能力の高さが守備に現れる守備型C。肩が強くリリースも速いため、簡単に盗塁を許すことはない。ブロッキング、レシービングもそつなくこなし、守備だけなら今ドラフトでも上位に入る可能性も。対応能力も高くスピードもCにしてはあるため、2B/3Bを守ることもできる。打撃では、コンタクトスキルの高さが目立つが、裏返せば当てているだけと言える。重度のパワーレスで、長打は滅多に出ない。パワーポテンシャルの高さを見出す声もあるが、本人の意識が薄い。将来はバックアップCか。メキシコ出身のため、ラテン系の投手とのコミュニケーションで、差別化を図りたい。
存在かの薄かった打撃で21年はプチブレーク。課題だったパワーツールで一定の進歩を見せました。C以外にも1B/2Bを守り汎用性の高さを見せつつあります。ただ、メジャーで枠を開けて使うほどのレベルにあるかというと微妙なところで、オフに参加してるウィンターリーグの開催地であり、古郷でもあるメキシコが今後主戦場になるかもしれません。
8(252). オースティン・ハンセン(Austin Hansen):RHP:右投右打:6/195: Oklahoma:$156.5K($156.5K)
奪三振能力の高いリリーフプロスペクト。90マイル中盤の速球に、緩いカーブとチェンジアップ、スライダーのコンビネーション。アウトピッチはカーブで、相手の目線を変えてタイミングを外す。四球を大量に出すわけではないが、コンスタントに歩かせてしまうため先発向きではない。また、デリバリーの力感も強く、プロでもリリーフとして投げていくべきだろう。
19年はスイングマンとしてスターター/リリーフの両方でフル回転し、内容も伴っており21年はメジャーのSTに招待されAAAスタートとメジャー昇格間近でしたが、シーズン途中でトミー・ジョン手術を受けることになりました。手術前はアマチュア時代よりさらに進化したブレーキの利いたカーブをアウトピッチに大量に三振を奪っており、復帰後はリリーフとしてメジャーで投げられるのではないでしょうか。
9(282). スコット・シュライバー(Scott Schreiber):OF:右投右打:6-3/230:Nebraska:$10K($144.1K)
17年の本来のドラフトイヤーはセールスポイントのパワーが鳴りを潜め、指名順位が落ちてしまい、大学に残留。今年は思う存分HRを放ち名誉挽回を成した。いかにも長打しか狙っていないというスイングが特徴的で、見た目通り、長打三振共に多い。これで四球も多ければ許容範囲なのだが、早打ちで四球は少ない。大学最終年は大幅に四球を増やしていたが、それでも少なく、今後レベルの高い投手に対応できない可能性もあるだろう。肩は強いがスピードは平凡なため、RF/1Bが主戦場。3Bの経験もあるが、滅多に守らない。
デビューからの2シーズンは自慢の打撃で思うような結果が残せず、リリースも危ぶまれましたが21年は好成績を残し名誉挽回。故障で出場試合数は限られたものの、キャリアハイの17HRをマークしつつ三振数を減らすことに成功しました。ただ、既に26歳と若くなくポジションも限られているため、チームがコンテンダーで居続ける限りは打撃でよほどの大爆発を見せなければメジャーへの昇格は厳しそうです。
10(312). チャンドラー・テイラー(Chandler Taylor):OF:左投左打:6-1/210:Alabama:$70K($136.8K)
強烈なスイングで長打を量産するが、空振りが多く三振も量産する大型扇風機。いくら四球を選ぶことができても大学で打率.300をクリアしたことがなく、.250もクリアできないシーズンが2回もありプロでもアベレージには期待できないだろう。体格は大柄だが見た目以上に動くことができ、OF3ポジションを守ることもできる。常にCFとして出場するのは厳しいが、RFを守らせてもマイナスにはならないだろう。
プロ入り後も低打率が改善されるわけではなく、大量の三振を残していましが21年はAAAにまで到達。ただ、限界を感じたのかそのオフに引退しました。
総括(2018)
指名の方針がはっきりと見て取れるドラフトとなった。野手ではアプローチが多少雑でもパワーポテンシャルを優先。セス・ビアーを筆頭に、一発長打が魅力の選手が目白押しとなっている。本人がそれほど長打を意識していないアレックス・マッケナ、シーザー・サラザーをどう育成するのかも注目である。投手ではかねてから言及されているように、カーブをアウトピッチとする投手を大量指名。どの投手もブレーキングボールではカーブの評価が最も高く、独自の方針を貫き通す形となった。
総括(2021)
1巡目のビアーを始めとして野手は上位指名の選手が躍動しており、指名順位の低さを感じさせない陣容になっています。ペーニャは今年からカルロス・コレアの後釜として起用されており、期待値も高いようです。
一方で、投手に目を向けると目立った成績を残した選手は皆無。故障が多く、大枚をはたいたシュローダーも故障がたたって本来の力を発揮できずにいます。下位指名の大学生から1人くらいリリーフとしてメジャー昇格を果たせればよい方でしょう。