【MLBドラフト】3年後...2021ドラフトレビューMIL編

目ぼしい選手をピックアップして、ドラフトから3年経った選手達の活躍を見ていきます。

凡例
ラウンド(全体指名順位) 名前(Name):ポジション:投打:身長/体重:出身校:契約金額(ボーナススロット)
簡易レポ
成績
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1(15) サル・フレリック(Sal Frelick):OF:右投左打:5-9/175:Boston College:$4M($3.89M)

高校時代はアメフト、アイスホッケーでも活躍したアスリート。身体能力の高さが最もよく現れているのがスピードで、内野安打をもぎ取り、塁を盗み、広い外野を縦横無尽に駆け巡る原動力となっている。打撃ではコンタクト重視ではあるが、長打を狙っていないわけではなくギャップを抜くパワーは有している。IFにも挑戦しているが、本人も将来的にはOFに収まると予測。OF守備は壁際の打球に強く、長打を防ぐキャッチを度々披露する。

成績

 ドラフトイヤーにRkでデビュー。すぐにAに昇格すると試合数の倍近くのヒットを放ちすぐさまA+へと昇格。A+で当たりは止まってしまいましたが、BB/K=10/13とヒットが出ない中でも健全なアプローチを披露しデビューイヤーを終えました。
 2022年はA+からスタート。前年苦戦したクラスで二の舞を演じることはなく、1ヶ月で早々に卒業。AA昇格後も当たりは止まるどころか勢いを増し、ほどなくしてAAAに昇格。AAAでも打ち続け打率.331でシーズンエンド。キャリア初となる2桁HRもマークし、最高の形で幕を閉じました。
 2023年はAAAからスタートしましたが、前年までの勢いはなく低空飛行を続けているうちに故障でIL入り。復帰後もなかなかヒットが出ませんでしたが、7月中旬に固め打ちを続け調子が上向きになったところでメジャー昇格を果たしました。いきなり3安打を放つセンセーショナルなデビュー戦となりましたが、ヒットのペースはゆっくりと下降線をたどることとなりました。それでも、BB%は前年までと遜色なく出塁能力の高さを示しました。
 今年は開幕からメジャーでレギュラーとして起用され続け145試合に出場。一度もマイナーにオプションされることなくシーズンを全うしましたが、打撃は前年よりさらにスケールダウン。唯一の長所であった出塁率も数字を落としてしまいオフェンスでは大きなマイナスを吐き出すことになってしまいました。
 打撃ではアマチュア時代からウィークポイントだったパワーツールが如実に欠点として表れています。打球速度はメジャーでもワーストレベルでまさしく当てるだけになってしまっています。相手もそのことを分かってゾーン内で勝負するようになるため、四球が減ってしまうのも無理はないでしょう。
 アマチュア時代は今よりも大きくテークバックを取ってスイングをしていたのですが、プロのボールになんとか食らいつこうとした結果なのか今ではバットスピードを犠牲にしてでもとにかく最短距離でバットを出すことに意識が向かっているように見えます。おかげで毎年三振数を抑えることには成功していますが、出塁率が伴わなければ元の木阿弥でしょう。
 打撃ではじり貧になりつつありますが、一方で打席以外では華々しい活躍を見せています。アマチュア時代に守備の評価が高かった選手がプロ入り後数字で見ていると大したことがないケースは往々にしてありますが、フレリックはアマチュア時代の評判を上回るレベルの動きを見せています。壁際の打球へのルートランとジャンプのタイミングの正確性は群を抜いており、GG賞に選ばれるのも当然の結果。
 守備でこの動きを続けられるうちは多少打撃で足を引っ張っても使い続けてもらえるでしょう。


CBA(33) タイラー・ブラック(Tyler Black):2B:右投左打:6-2/190:Wright State University:$2.2M($2.2M)

今ドラフトでもトップレベルのピッチセレクションを誇るハイフロアーなタレント。じっくりとボールを見極め、スイングを仕掛ければきっちりと仕留める理想的な打撃をフレッシュマン時から披露している。カナダ出身でアイスホッケーもプレーしていたことから筋肉質な体型でパワーも平均かそれ以上。高校時代から故障が多くプロの長いシーズンに耐えうる体なのかが懸念材料。

成績

 ドラフトイヤーにRkでデビュー。すぐさまAに昇格しましたが、Aではなかなかヒットが出ませんでしたが、アマチュア時代と変わらぬピッチセレクションで四球を多く選び高出塁率を残してシーズンを終えました。
 2022年はA+でスタート。好調を維持していましたが、守備中のプレーで肩甲骨を痛めシーズンエンド。オフに参加したAFLでも左親指を骨折するなど懸念されていた故障の多さが顔を出し十分な出場機会を得られない年となりました。
 2023年はAAからスタート。前年出場機会を得られなかった鬱憤を晴らすかのようにキャリアハイペースの好成績を残すと、8月にAAAに昇格。昇格後も好調を維持し、123試合に出場して18HR&OPS.930をマーク。マイナー全体のプロスペクトランキングにも顔を出すようになりました。
 今年はAAAからスタート。前年の勢いそのままに開幕から打ち続けると4月中に故障者との入れ替わりでメジャーに昇格。7試合に出場したもののデビュー戦に2安打した以外は目立った活躍はできず、再度故障者との入れ替わりでオプションされることになりました。その後2度メジャーに昇格しましたが、やはり満足のいく成績は上げられず最終的にAAAでシーズンエンドを迎えることとなりました。
 アマチュア時代と変わらない慎重にボールを選ぶスタイルで毎年高い出塁率をマークしています。プロ入り後どのクラスでもBB%が10%を下回ったことはなく、苦戦しているメジャーでもサンプル数は少ないですが10%以上のBB%をマークしています。
 シーズン20HRをマークしたことはありませんが、ここ2年は15HR以上をマークしており小力があることは証明済。特にインサイドに入ってきたボールに滅法強くバットを身体に巻き付けるようにスイングし、ハードヒットを飛ばしています。
 ポジションはかなり流動的でアマチュア時代の本職2B以外にも3B/CF/LF/1Bと転々としています。よくいえばどのポジションでも守ることができるのですが、悪く言えばどのポジションでもプラスの働きはできません。最も可能性が高いのは1Bですが、メジャーでもかなりの高出塁率を残せなければこのポジションに留まるのは難しいでしょう。
 どこかのポジションにどっしりと構えるレギュラーではなく、故障者等チーム事情に応じて先発したりベンチに入ったりするユーティリティープレイヤーとなりそうです。


4(116) ローガン・ヘンダーソン(Logan Henderson):RHP:右投右打:5-11/194:McLennan CC:$497.5K($497.5K)

90マイル前半の速球とチェンジアップ、カーブのコンビネーション。速球は最速で96マイルをマーク。たとえ球速が出なくともスピンのきいた4シームで空振りを奪える。アウトピッチはチェンジアップ。速球と同じアームスピードで投げることができ、左右関係なく投じる。全ての球種でストライクを稼ぐことができ、サイズ以外はスターター向き。

成績

 2022年の開幕からデビュー予定でしたが、春先のトレーニング中に肘を痛め手術することとなりデビューが大幅に遅れることとなります。結局8月にようやくプロ初登板となり、7試合に投げただけでシーズンエンドとなりました。
 2023年は調整期間を長くとり5月にAからスタート。最初は短いイニングから始め、徐々にイニング数を増やしていくこととなりました。そのおかげもあってか大きな故障はなくシーズンを終えることができました。内容も伴っており、35%と高いK%をマークしながらBB%は1桁と好成績をマーク。失点も少なく防御率を2点台に抑えました。
 今年は故障のため再度Rkからスタート。A+に昇格後2試合でAAへと昇格します。AAでも前年同様好成績を残すと8月にはAAAへと昇格。実働2年でAAAにまで上り詰めました。
 故障の影響もあってかもともとそれほど速くなかった速球はさらに遅くなってしまい、現在では最速でも94マイルほどしか出ません。それでもスピンをきかせて伸び上がってくるムービングは衰えておらず、今でもアウトピッチとして使われています。
 速球のスピードが落ちたということもあってかベストピッチであるチェンジアップの使用頻度は高くなっており、投球割合はチェンジアップと速球がそれぞれ半分ずつ占めています。これだけ多投しても相手が対応できないのは速球とほとんど変わらないアームスピードから10マイル近く遅いチェンジアップを投げることができるからでしょう。
 コントロールも悪くなく2ピッチでもスターターとして投げられることを証明していますが、故障の多さだけが気になるところ。プロ入り後100イニング以上投げたことはなく、フルシーズンを戦う耐久性には不安が残ります。


6(177) カルロス・ロドリゲス(Carlos Rodriguez):RHP:右投右打:6/180:Florida SouthWestern State College:$250K($279.5K)

90マイル前半の速球とスライダー、カーブ、チェンジアップのコンビネーション。速球は最速で95マイルをマークするが、コンスタントにたたき出すことができない。スライダーの評価はまずまずだが、突出しているわけではない。

成績

 2022年にAでデビュー。プロ1年目にして先発をしながらリリーフとしても登板する大車輪の活躍を見せます。最終盤にはA+に昇格すると、7試合に先発して自責点はわずか8と好投し最高の形でシーズンを終えました。
 2023年はAAからスタート。開幕から安定したピッチングを披露し、1度も欠けることなく25試合に先発します。最終盤にはAAAにも昇格。前年を上回るイニング数を消化し、フルシーズンをスターターとして投げ切るタフネスさを証明しました。
 今年はAAAからスタート。実働数はキャリアハイでしたが内容はキャリアワースト。四球が増えて三振が減ることとなり、失点数も跳ね上がりました。シーズン途中メジャーにも昇格しましたが、試合を作ることができず3試合に先発して全てで敗戦投手となってしまいました。
 アマチュア時代は特筆すべき球種のないジャンクボーラーとしてのイメージが強かったのですが、プロ入り後はチェンジアップに磨きをかけマイナーで好成績を残すことに成功しています。
 もともと球種は多い方なのですが、プロ入り後2シームとカッターと速球系のレパートリーを増やしておりより相手に的を絞らせないように工夫を凝らしています。


総括

 1巡目のサル・フレリックはすでにメジャーでレギュラーとして定着。懸念されていた非力さが打撃で大きく足を引っ張っていますが、守備と走塁でカバーし貢献度はプラス。若干スケールダウンしていますが、ドラフト当時予想されていた活躍を見せています。
 野手中心の指名でしたが、目立った数字を残せているのはフレリックとタイラー・ブラックの1巡目指名コンビのみとなりました。ブラックは出塁能力の高いミドルヒッターでアマチュア時代のポジションのままであればバリューの高い選手となっていたのですが、フレリックとは逆に守備での動きがぎこちなくポジションを固めることができていません。
 ただ、準レギュラーとしてキープしても使える場面が多く、トレードチップにしてもバリューはそれなりにあるためチームにとって役に立つ選手であることには変わりありません。
 投手陣はチームのお家芸であるチェンジアップの習得とブラッシュアップが功を奏し、2人がメジャーに近い位置につけています。いずれもフロントスターターとしてチームの顔になるタイプではありませんが、ローテーションの後方、もしくは、ロングリリーフとしてメジャーで見ることが増えるでしょう。
 身体能力の高いOF、出塁能力にたけるユーティリティ、チェンジアップをベストピッチとする短大上がりの投手といかにもMILらしいドラフトと言えるでしょう。


総括
 1巡目で今ドラフトで最も身体能力の高い大学生野手のサル・フレリックを指名。パワーツールには欠けますが、その他のツールはずば抜けたどの選手よりもずば抜けており、ロレンゾ・ケインやアンドリュー・ベニンテンディのような選手になるのではないかと思われます。
 上位10人ではフレリック以外にも5人を指名。タイラー・ブラックやトリスタン・ピーターズ、ザック・ラーブのような出塁能力の高さがウリの選手を多く指名。ヒッティング―ルが優秀な野手を好むMILらしい指名と言えます。今年スランプに陥ったものの前評判は高かったアレックス・ビネラスの復活にも期待したいです。
 Pは大学生と短大生のみを指名。ラッセル・スミスやローガン・ヘンダーソンといった球速は平凡でもコントロールに優れるPがほとんどとなりました。ブラノン・ジョーダンは例外ですが、奪三振能力の高さは本物なので、リリーフで本領を発揮するかもしれません。




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