【MLBドラフト】3年後...2021ドラフトレビューATL編
目ぼしい選手をピックアップして、ドラフトから3年経った選手達の活躍を見ていきます。
凡例
ラウンド(全体指名順位) 名前(Name):ポジション:投打:身長/体重:出身校:契約金額(ボーナススロット)
簡易レポ
成績
コメント
1(24) ライアン・キューシック(Ryan Cusick):RHP:右投右打:6-6/235:Wake Forest:$2.7M($2.83M)
90マイル中盤の速球とスライダー、チェンジアップのコンビネーション。速球は最速で102マイルをマーク。好調時はノビがあり、垂れずにまっすぐとキレイな軌道を描き空振りを奪う。たまにフラットな軌道になる点が懸念材料。縦に曲がり落ちるスライダーはアウトピッチとして優秀。チェンジアップは要改善。コントロールが悪く、ストライクゾーンと勝負することもしばしば。
ドラフトイヤーにAでプロデビュー。大学時代のコントロール難を感じさせず、16.1イニングで34奪三振の快投を見せ来年以降の活躍に期待を持たせます。
2022年シーズン開幕前にマット・オルソンとのトレードチップの一員としてATHへと移籍。前年の好投もあってか大きな期待を寄せられ、開幕からA+を飛ばしてAAに配属されます。しかし、移籍先では大乱調でストライクは入らないわ、入ったと思ったら打たれるわで失点に失点を重ねます。5月途中にIL入りし、8月に復帰しますが内容はさしてかわらず散々なままシーズンを終えました。
2023年もAAからスタート。前年ほど滅多打ちに合うことはありませんでしたが、コントロールの悪さは変わらず。なんとか、フルシーズンを投げ切りましたが、内容は伴っておらずじりじりと評価を落とすシーズンとなりました。
今年は3度目となるAAスタート。開幕から2試合に先発してわずか3四球と過去2年のコントロール難が嘘だったかのようなピッチングを見せ、淡い期待を抱かせたところで故障しIL入り。リハビリ登板を経た後、AAAに昇格しましたが全く通用せず2試合でAAに戻されます。その後も開幕直後の好投を再現することができず、とんでもない失点を重ねついにリリーフへと回されることになりました。
リリーフ転向後は一転毎試合好投を見せ、21試合で自責点はわずか5と好投を見せます。課題だったコントロールもちょっと四球が多い程度に改善されます。この好投が認められてかオフには40人ロースター入りも果たしました。
これほどまでにプロの世界で苦しんでいる最大の原因はコントロールの悪さでしょう。改善されたかと思えばすぐさま四球を連発するサイクルを繰り返しており、そのたびにデリバリーをいじられベストピッチである速球のスピードが乱高下する副作用だけが残るようになっています。
しかし、今年の後半戦にようやく本来の姿を取り戻しつつあり、球速も大学時代のように100マイルをマークするレベルに戻ってきました。
メジャーチームのブルペン陣はメイソン・ミラー以外目立ったリリーフはいないためAAAで大量失点さえしなければ十分割って入れるでしょう。
2(59) スペンサー・シュウェレンバック(Spencer Schwellenbach):RHP:右投右打:6-1/200:Nebraska:$1M($1.19M)
90マイル中盤の速球とスライダー、チェンジアップのコンビネーション。速球は最速で99マイルをマーク。球速だけでなく、ノビもよく容易に空振りが奪える。アウトピッチのスライダーのクオリティも高い。コントロールも悪くなく先発としても投げることはできるが、大学ではSSとしてもプレーしているためクローザーとしての起用にとどまっている。野手としても優秀な選手だが、投手としての方がバリューは高いだろう。
ドラフト直後にトミー・ジョン手術を受けたため、2023年にAでプロデビュー。ブランクやそもそもの投手としての実戦不足を感じさせないピッチングを見せます。故障で1ヶ月近く離脱はあったものの、復帰後に昇格したA+でも好投し、完全復活の年となりました。
今年は再度A+からのスタート。前年以上のピッチングを続け、6試合でAAに昇格。AAで2試合に先発し好投するとAAAを飛ばしてそのままメジャーデビューとなりました。メジャーではさすがに失点は増えましたが、投球内容は大きく変わらず、優秀なK/BBをマーク。プロでは故障の多さが目立っていましたが、今年は1度も欠けることなくローテーションを回し切ることに成功しました。
トミー・ジョン手術を受けたものの、速球のスピードは大学時代とそれほど変わっておらず今でも90アイル中盤の球速帯を保っています。速球のムービングは平凡ですが、この球速でコマンドできる点が最大の強みで容易に有利なカウントを作ることができています。
スライダー、チェンジアップを筆頭とする変化球もゾーンのエッジ付近にコマンドすることに成功しており、ゾーン外へのボールへと巧みに誘導し、メジャー昇格後も一定のK%を保つことができています。
スターターの経験がほとんどなく、トミー・ジョン手術で実戦経験が不足している中、わずか1年半でメジャーでローテーション投手として定着したそのポテンシャルの高さに驚かされるばかりです。
3(96) ディラン・ドッド(Dylan Dodd):LHP:左投左打:6-3/210:Southeast Missouri State:$122.5K($604.8K)
90マイル前半の速球とスライダー、カーブ、チェンジアップのコンビネーション。速球は最速で95マイルをマーク。2シーム系と4シーム系を投げるが、ノビのある4シーム系により高い評価を得ている。ベストピッチはチェンジアップ、ブレーキがきいておりアームスピードを変えずに投じることができる。課題だったスライダーとカーブのクオリティも改善傾向。コントロールがよく、滅多に四球を出さない。
ドラフトイヤーにAでプロデビュー。失点はかさんでしまいましたが、30%超えのK%をマークするなどポテンシャルの高さを見せました。
2022年はA+からスタート。開幕から安定したピッチングを続け7月にAAに昇格。AAでもA+と変わらない内容のピッチングを披露し、最終盤にはAAAにまで昇格を果たします。A+-AAAにかけて26試合に先発し、142イニングを消化。イニング以上の三振数を奪い防御率も3点台にまとめて、ブレークを果たしました。
2023年は開幕からメジャーのローテーションの座を勝ち取ることに成功しましたが、2試合目で大炎上しAAAへと戻されてしまいます。その後、メジャーとマイナーを何度も往復することになりますが、故障もあってマイナーでも精彩を欠き失点が大幅に増加。前年のブレークが嘘だったかのようなシーズンとなりました。
再起を図る今年はAAAからのスタートとなりましたが、やはり2022年のような成績を再現することは叶わず失点が増えるばかり。メジャーでもリリーフとして1試合のみの登板機会しか与えられませんでした。何とか光明はないものかとマイナーに戻った後もリリーフとして登板しましたが、先発時よりも失点が増えてしまい失敗に終わりました。
プロ入り後は完全に4シームを主体として投げるようになり、速球をアウトピッチとして使うことも増えました。ただ、やはり球速自体はそれほど速くないため上のクラスの野手には捉えられると長打にされることが多く、AAA以上のクラスで失点が増える原因にもなっています。
また、なまじコントロールがよくストライク先行にしようとするあまり安定して空振りを奪えない変化球をゾーン内に集めてしまい、そこを狙われて痛打されることも多いようです。
コントロールのいい大学生投手がAAくらいまではとんとん拍子で昇格するものの、スペック不足が原因でなかなかメジャーに定着できない典型例にハマってしまっています。リリーフでも失点だらけなため、先行きは暗い状態です。
6(187) ジャスティン・ヘンリー・マロイ(Justyn-Henry Malloy):1B:右投右打:Georgia Tech:6-2/212:$297.5K($257.4K)
軽々としたスイングで長打を量産するスラッガー候補。元々はバンダービルトでプレーしていたが、水が合わず不調を極め所属大学を変えてブレーク。ただただスイングするだけでなく、しっかりとボールを見極める習熟したアプローチも見せる。1B指名されたものの、大学時代は3Bでプレー。守備ではハッスルプレーが持ち味だがエラーの多さは危険信号。
ドラフトイヤーにAでデビュー。大学での好調をそのままにAでも好成績をマーク。16.3%と高水準のBB%をマークし、高出塁率を残してシーズンを終えます。
2022年はA+からスタート。高打率&高出塁率をマークしつつ、持ち前のパワーを発揮し71試合で10HRをマーク。好調ぶりが認められAAに昇格。打率は落ちましたが、出塁率は昇格前とほぼ変わらない数字をキープすることに成功。シーズン最終盤にはAAAにも昇格を果たしました。オフにはジョー・ヒメネスとのトレードでDETへと移籍します。
2023年はAAAからスタート。5月に不調に陥った以外は安定した打撃成績を残し、いずれもキャリアハイとなる110四球&23HRをマーク。2年連続でシーズン出塁率.400超えも達成します。しかし、ポジションの問題でメジャー昇格の機会は得られずマイナーで1年を過ごすことになりました。
今年は再度AAAからスタート。前年と遜色ない数字を残していると6月にメジャーデビューを果たします。打撃成績は最低限の数字を残していましたが、DHメインの選手としては物足りなず8月にAAAへと降格します。セプテンバーコールアップのタイミングでメジャーに戻りますが、大きく成績は上がらず。それでもポストシーズンでは出場機会を与えられ、7試合で5安打をマークし存在感を示しました。
プロ入り後は冷静なピッチセレクションが光り、マイナーでの通算出塁率は.400オーバーと出塁能力の高さはマイナー全体で見てもずば抜けています。一方で、受け身なアプローチでギリギリまでボールを見極めようとするあまり、差し込まれがちになりローパワーの割に長打数はそれほど伸びていません。
メジャーでも2桁のBB%をマークしゾーン外へのボールに対しては滅多にスイングを仕掛けていませんが、そこを逆手に取られゾーン内にボールを集められて手が出なかったりシンプルに力負けしたりといった場面が目立ちます。
マイナーではクラスが上がってもその都度対応してきただけに、メジャー2年目となる来年は適応してくる可能性は高いでしょう。
打撃ではまだ期待が持てますが、守備ではすでにメジャーワーストレベルの選手になっています。もともと守っていた3Bは送球ミスの多さが目立ち追いやられてしまいOFに入りましたが、OFでも大きなマイナスを吐き出し続ける始末。DETは動きの悪さでは負けず劣らずのスペンサー・トーケルソンも抱えているだけに起用方法に頭を抱えることになりそうです。
7(217) AJスミス・ショウバー(AJ Smith-Shawver):RHP:右投右打:6-3/205:Colleyville Heritage HS:$997.5K($201.6K)
90マイル中盤の速球とカーブ、チェンジアップのコンビネーション。速球は最速で96マイルをマーク。コンスタントに最速に近い球速を出せる馬力が魅力。カーブは落差が大きく、打者のタイミングを外す一助となっている。元々アメリカンフットボールを主にプレーしており、投手として頭角を現したのが昨夏ということもあって、他の高校生よりも経験不足。
ドラフトイヤーにプロデビュー。Rkリーグで文字通り肩慣らしをした程度シーズンを終えます。
2022年にAでフルシーズンデビュー。四球が非常に多く失点もかさんでしまいましたが、30%超えの高いK%をマークし被長打数は少なかったためFIPは3.53と好成績をマーク。直に失点も減ってくるだろうという時に故障しそのままシーズンエンドとなりました。
2023年はA+からスタートしましたが、絶好調でわずか3試合でAAへと昇格。AAも2試合で卒業しすぐさまAAAへと昇格。AAAでも好投し、A+-AAAまで33イニングを投げこの間わずか4失点のみと驚異的な数字を残し6月にはメジャーへと昇格しました。スペンサー・ストライダーに続く新たなエースの誕生かと思われましたが、さすがにメジャーの舞台ではトーンダウン。4試合でオプションされます。その後、故障を抱えつつメジャーとマイナーを往復しますがいずれでも精彩を欠き尻すぼみなシーズンとなりました。
今年はAAAからスタート。マイナーでも前年のようなピッチングができず苦労していましたが、それでもメジャーで登板機会を与えられますがその試合で負傷してしまいIL入り。復帰後もマイナーでの登板が続きましたが、シーズン最終盤に再度メジャーに昇格しポストシーズンでも登板機会を与えられました。
アマチュア時代から速球のスピードは格段に上がり、現在では最速で100マイル近い数字をマークしています。
高校時代に本格的に投手としてプレーし始めたということもあって、変化球は特筆すべきレベルにありませんでしたがプロ入り後に習得したスプリッターはアウトピッチとして有効な球種となっています。スピードを保ったまま大きく落ちるため容易に空振りを奪うことができているようです。
課題はやはりコントロール。年々四球は減少傾向にありますが、カウントを取りに行く際のコマンドが雑で追い込む前に痛打を浴びることが多くなっているようです。
エースポテンシャルを有していることは間違いないだけに、焦らず辛抱強く待つ必要があるでしょう。
総括
1巡目のライアン・キューシックは当初の懸念通りリリーフに収まりつつありますが、ボロが出る前にトレードチップにしてATHへと売りさばくことに成功。1巡目指名としては失敗でしたが、チームとしての立ち回りは大成功に終わりました。
その一方で、隠し球的存在であったスペンサー・シュウェレンバックとAJスミス・ショウバーのポテンシャルを開花させることに成功。いずれも投手経験が浅いにもかかわらず短期間でメジャーに到達できるレベルにまで成長させたATLの育成能力の高さが光ります。
野手ではジャスティン・ヘンリー・マロイがトレード先のDETでメジャーに昇格。打撃能力の高さは本物ですが、ポジションがなくレギュラーとして起用され続けるかは微妙なところ。起用方法が難しそうな野手をバリューがあるうちに売りぬいているところでも抜け目のなさを感じます。