3年後...2018MLBドラフトレビューSTL
凡例
ラウンド(全体指名順位) 名前(Name):ポジション:投打:身長/体重:出身校:契約金額(ボーナススロット)
簡易レポ
成績
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1(19). ノーラン・ゴーマン(Nolan Gorman):3B:右投左打:6-1/210: Sandra Day O'Connor HS:$3.231.7M($3.231.7M)
17年の全米の高校生が集まるHRダービーで優勝したパワーが最大の武器。大学生のトップクラスの選手にもパワーだけなら負けず劣らず。問題は、コンタクトスキルの拙さ。ブレーキングボールにバットが止まらなかったり、バットに当てることさえ困難だったりと不安を抱える。スピードと肩の強さは平凡で、3Bに残れるかは微妙なところ。ミスを連発するようなことはないため3Bに置くこともできるが、平均以上に守れるということはないだろう。1Bに転向する可能性は大いにある。
ドラフトイヤーから3シーズン連続で2桁HRをクリアしており、前評判通りのパワーはプロでも通用しているようです。課題も前評判通りで、空振りの多さはキャリアを通じて指摘されつづけることになりそうです。三振の多さはある程度仕方ないのですが、それほど四球を選べていない点は気になるところです。フリースインガーの気もあるので、SEAのジャレド・ケレニックのようにメジャーの適応に時間がかかるかもしれません。守備では長期契約の残るノーラン・アレナドを抱えたことで、ポジションが3Bメインから2Bメインへとコンバート。守備での唯一の長所であるアームの陰が薄くなりますが、このまま3Bに残っても頭打ちだったのでチーム事情に応じて複数ポジションを守れるようになるのは悪いことではないでしょう。
CBA(75). グリフィン・ロバーツ(Griffin Roberts):RHP:右投右打:6-3/205:Wake Forest:$1.664.2M($1.664.2M)
大学最終年にリリーフから先発へと転向。90マイル前半の沈む速球とスライダーのコンビネーション。先発としても最速で95マイルをマークすることもあり球威は十分だが、リリーフではコンスタントに90マイル中盤をマークしていた。ベストピッチはスライダー。キレがよく変化量も多いため、容易に空振りを奪える。チェンジアップも投げるが、滅多に使わない。平凡なコマンドとスライダー頼りのピッチングスタイルから、リリーフ再転向を勧める声もある。そのためか、プロ1年目はリリーフとしての登板が多かった。オフシーズンに禁止薬物の使用が発覚した。
大学トップレベルのスライダーを引っさげてプロ入りをしましたが、デビューイヤー直後に薬物使用が発覚し、復帰した19年はスランプ。21年は故障に悩まされ、数少ない登板機会も打ち込まれており前途多難。故障の多さを考えるとスターターよりもとりあえずリリーフとして投げさせた方がよさそうです。
2C(75). ルーケン・ベイカー(Luken Baker):1B:右投右打:6-4/265:TCU:$800K($799.6K)
サイズだけなら今ドラフトではトップクラス。強靭な体から生み出されるパワーが魅力。シーズン30HRを何度もマークできるだろう。打撃は雑ではなくしっかりとボールを見極め、アベレージを残すこともできる。打撃では欠点が少ないが、それ以外は穴だらけ。体格のおかげでスピードは皆無であり、そのため1B以外に守備位置はない。投手としてもマウンドに上がることもあったが、故障以降は投げていない。大学では、2年連続で故障による長期離脱があるが、いずれも守備の際のトラブルによるもの。
プロ入り後2シーズンは自慢のパワーが影を潜めていましたが、21年はようやく頭角を現しキャリアハイとなる26HRを100試合以下の出場数でマーク。途中新型コロナウイルスでの離脱がなければ30HRクリアは確実だったでしょう。年々GB%が低下しており、打球をあげるコツを掴んできているようです。ブレークを果たし、既にAAで結果を残しメジャーデビューまで目前ですが、まさかのルール5プロテクト漏れ。メジャーに同じポジションのポール・ゴールドシュミットがいるということもありますが、タダで出すには惜しい選手です。ただ、ユニバーサルDHが新労使協定によって導入される可能性が高いので、風向きが変わるかもしれません。
3(95). マテオ・ジル(Mateo Gil):SS:6-1/180:右投右打: Timber Creek HS:$900K($587.6K)
身体能力の高さを守備で発揮するアスリート。守備に対する評価は高く、肩も強いことから長くSSに留まることができるだろう。打撃では徐々に改善されてきてはいるが、スイングの弱さが気になる。それでも、今後の成長を考えると、平均レベルには打てるようになるという見方もある。父親は元メジャーリーガーで、母親とは球場に国歌斉唱のために訪れたときに知り合った。
21年の2月にノーラン・アレナドとのトレードでCOLへ移籍しました。プロ入り後は毎シーズン最低限の成績は残していますが、やはり打撃が弱いようで、大きなプラスにはならなさそうです。パワーポテンシャルを高く買う声もありますが、現時点では試合で発揮するには至っていません。早打ちで出塁率を稼げないところも痛いです。積極的にウィンターリーグに参加しており、向上心の高さはうかがえます。守備は前評判通りのクオリティを維持していますが、同じレベルに上位のプロスペクトがいるため2B/3Bをメインに守っているようです。
4(123). スティーブン・ギンガリー(Steven Gingery):LHP:左投右打:6-1/210:Texas Tech:$825K($446.9K)
18年のシーズン最初の登板で靭帯が断裂し、トミー・ジョン手術を受けることになった。健康であれば90マイル前半の速球とカーブ、チェンジアップのコンビネーションを見せる。速球は球威に欠けるが、自在に投げ分けることができるコマンドでカバー。カーブは平均レベルのクオリティだが、ストライクに投げ込むことができる。チェンジアップの評価が高く、右打者相手にも苦労しない。スリークォーター気味のデリバリーは、デセプションに優れる。
上記の通り大学時代にトミー・ジョン手術を受けた後、プロでももう一度トミー・ジョン手術を受けることになりましたが、それに限界を感じてか21年4月に引退となりました。故障さえなければより上位で指名され、ソリッドなピッチングをプロでも披露するであろうと思われていただけに残念です。
5(153). ニック・ダン(Nick Dunn):2B:右投左打:5-10/175: Maryland:$310K($333.7K)
広角にラインドライブの打球を飛ばせるヒッティングスキルに高い評価を得る。ギャップを抜くパワーは有しており、二塁打を量産できる。HRも全く打てないわけではなく、シーズン2桁HR程度ならクリアできるだろう。ボールの見極めに長けており、四球を多く選びつつ三振数を抑えることができる。身体能力は高くなく、スピード、肩の強さともに平凡。そのため、守備の評価も低く、2Bに留まれるかさえ怪しい。
プロでも優秀なコンタクトスキルを見せており、K%が20%を越えたシーズンはありませんが、逆に言えばそれだけ。どのレベルでもOPS.700前後で推移しており、貢献度がプラスになるかどうかは微妙なところ。守備でも大きなプラスを出せる選手ではないので、使いどころが見つけにくい選手になってしまっています。
6(183). エドガー・ゴンザレス(Edger Gonzalez):RHP:右投右打:6-1/200: Fresno State:$255.9K($255.9K)
90マイル前半の速球と大きく曲がるブレーキングボールのコンビネーション。大きく腰をひねり、打者に背中を見せるデリバリーが特徴。大学最終年に先発へと転向し、課題だったコントロールも改善されたが、プロではリリーフに再転向。
先発に再転向した19年は24先発で100イニング以上を投げましたが、内容は散々。21年はバウンスバックを目指す年でしたが、残念ながら故障で1試合のみの登板に終わりました。
7(213). ブレンダン・ドノバン(Brendan Donovan):3B:右投左打:6-1/195: University of South Alabama:$200.3K($200.3K)
コンタクトスキルが高く、ハイアベレージを残すことができる。アプローチもよく、高出塁率にも期待できる。パワーポテンシャルは高いが、本人の意識が薄いのかそれほど長打数は多くない。スピードは平均以下。守備ではソリッドさが光るが、肩の強さは平凡で最適なポジションは2Bか。
プロでは大学でのアプローチを維持することができない選手が多い中、優秀なピッチセレクションを維持している稀有な選手です。四球を多く選びつつ三振を抑えるアプローチもさることながら、広角に打球を飛ばしハイアベレージを残している点も注目に値します。守備では2Bの他にOFも守るなどユーティリティとしての活路を見出そうとしていますが、どこを守ろうとマイナスになりそうです。既に40人ロースターには入っており、STLの選手らしいソリッドな活躍を見せてくれそうです。
8(243). ラーズ・ヌートバー(Lars Nootbaar):OF:右投左打:6-3/210:USC:$150K($163.1K)
ドラフトイヤーにスランプに陥り、評価を大きく下げてしまった。コンタクトスキルに長けており、三振は少ないがパワーツールに欠ける。HRを打つパワーはあるが、コンスタントに長打を打つことができない。アプローチはよく、四球を多く選ぶことはできる。スピードは平凡で、ポジションはRF/LFに限られている。
ドノバン同様に大学時代のアプローチをプロレベルでも維持することに成功。デビューイヤーこそ大学最終年のスランプを引きずっていましたが、19年からはコンタクトスキルの高さと優秀なピッチセレクションでまずまずの成績を残すと、21年はAAAでブレークを果たし、そのままメジャーデビューとなりました。GB%が高くやはり長打は期待できないようですが、参加したAFLでは18試合で5HRをマークとパワーツールに覚醒の兆しがあるかもしれません。
9(273). マット・デュース(Matt Duce):C:右投左打:5-11/190: Dallas Baptist:$5K($138.6K)
17年にNYMから指名を受けるも契約には至らず。ドラフトイヤーの打撃成績は低調なものとなったが、17年よりも指名順位が上がった。打撃では、コンタクトスキルの高さと卓越したアプローチが魅力。パワーも平均レベルにはあり、Cとしては打てるタイプ。守備では、肩の強さを活かした盗塁阻止で見せ場を作る。その他のスキルも平均レベル。
19年は少ない出場機会数ながらも好成績を残しましたが、20年シーズン前にリリースとなりました。
総括(2018)
1巡目こそ高校生だったが、ノーラン・ゴーマンを除く高校生はマテオ・ジルのみという大学生偏重ドラフトとなった。野手は打力優先の方針なのか、守備に不安が残る選手が多い。その分打撃は魅力たっぷり。アプローチに優れたタレントが勢ぞろいとなり、メジャー昇格までたどり着ける選手は多めと予想。若干スリップ気味だったゴーマンは、空振りが多い点を改善できなければメジャー昇格も怪しいかもしれない。上位10人投手は3人のみ。グリフィン・ロバーツはオフシーズン中に薬物使用が発覚し、ギンガリーは、トミー・ジョン手術と傷物が並ぶことになってしまった。
総括(2021)
1巡目のゴーマンは若干の不安を残しながらも順調にステップアップしてきており、メジャー昇格も目前です。ポジションはチーム事情により流動的になると予想しますが、別れを惜しむほど3Bの守備が上手いわけではなかったので、ポジティブに受け入れるべきでしょう。ゴーマンを筆頭に野手については展望は明るく、ベイカー、ドノバンに加え既にメジャーデビュー済のヌートバーらはレギュラークラスのポテンシャルを有しています。
一方で投手陣は散々。薬物で出遅れたロバーツは21年は故障で足踏み。ギンガリーに至っては2度のトミー・ジョン手術に耐えられなかったのか若くして引退となりました。特にギンガリーは、ドラフト当時傷さえ癒えればソリッドなイニングイーターになれると見込んでいただけに残念です。
散々な投手指名でしたが、それを補って余りある優秀な野手を獲得できたドラフトになりそうです。
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