【MLBドラフトレビュー】3年後...2021ドラフトレビューBOS編

目ぼしい選手をピックアップして、ドラフトから3年経った選手達の活躍を見ていきます。

凡例
ラウンド(全体指名順位) 名前(Name):ポジション:投打:身長/体重:出身校:契約金額(ボーナススロット)
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成績
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1(4) マルセロ・マイヤー(Marcelo Mayer):SS:右投左打:6-3/188:Eastlake HS:$6.66M($6.66M)

スムーズなスイングでハードヒットを飛ばすヒッティングプロスペクト。スイングの柔らかさはロビンソン・カノーとも比較されており、ハイレベルな投手を相手にしてもしっかりと結果を残す。下半身の動きが固く、低めのゾーンに対応できるか疑問視する声も。アプローチは非常に積極的。平凡なスピードを補うフットワークと打球反応を持ち合わせているが、SSに残れるかは五分五分といったところか。

成績

 ドラフトイヤーにRkで慣らし運転を済ませると、2022年にAで本格的にプロデビュー。ヒッティングツールの評価が高かったため、4割近い打率を残すかと思いきや以外にもパワーツールが目立ち二塁打を量産。A-A+で100試合未満の出場数にもかかわらず30二塁打/13HRをマーク。打率も3割には届かなかったものの2割後半で推移。BB%も15%弱残し非凡な才能を見せます。
 A+スタートとなった2023年は前年以上のハイペースで打ちまくりそうそうにAAへと昇格。このままスピード出世コースを歩むかと思われましたが、ここで足踏み。AAクラスの変化球に対応できず大スランプにハマってしまいます。もともと痛めていた左肩の故障が悪化し、8月でシーズンエンドとなりました。
 故障も癒えて迎えた今年は再度AAからのスタート。前年の二の舞を演じないのはさすがに全体4位指名選手といったところで、2022年同様ハイペースで二塁打を打ち、ハイアベレージをキープ。今年のドラフトクラスが合流するタイミングでAAAに上がることになると思われましたが、その直前に腰を痛めIL入り。一応形だけAAAに昇格したことになりましたが、AAAで1試合も出場することなくシーズンを終えました。
 当時のドラフト直前まで全体1位指名候補だっただけあって、2023年にAAでスランプにハマった以外は打ち続けています。そのスランプも故障の影響もあったことを考えると、健康であればどのクラスでも好成績を残せる能力があると考えていいでしょう。
 HR数自体はそれほど目立つ数字ではありませんが二塁打の数はとびぬけており、今年の28二塁打もAAの所属するリーグでは4位の数字でフルシーズン出場していれば間違いなくトップに立っていたでしょう。
 問題はフルシーズン出場できていない耐久性。毎年IL入りし復帰までに時間をかけているため、フルシーズン3年目でいまだに100試合以上出場したことがありません。
 おそらく来年メジャーデビューを果たすことになると思いますが、メジャーの投手よりも自身の体のもろさと戦うことになりそうです。


4(105) エルマー・ロドリゲス・クルーズ(Elmer Rodriguez-Cruz):RHP:右投左打:6-3/160:Leadership Christian Academy:$497.5K($554.3K)

90マイル前半の速球とスライダー、カーブ、チェンジアップのコンビネーション。速球は最速で94マイルをマーク。体格を考えると今後速くなる可能性を大いに秘めている。アウトピッチはスライダー。キレがよく空振りを奪えるボール。カーブはいずれのカウントで投げ込める使い勝手のいい球種チェンジアップの改善が待たれる。高校生にしては簡単にストライクが取れる点も強み。

成績

 22年にRkでプロデビュー。RkとAで合わせて13試合のみの登板に終わりましたが、イニング以上の三振を奪う活躍を見せます。
 本格的なプロデビューとなった2023年はAからスタート。肘の故障もあって14試合の登板に終わりましたが防御率2.60と失点を少なくすることに成功。ただ、K/BBは2を下回っており内容面で課題が残るシーズンとなりました。
 再度Aスタートとなった今年は昨年とは打って変わって大量に三振を奪い、四球数も減少。好投が認められて終盤にはA+に昇格。A+昇格当初は対応しきれず苦しみましたが最終2登板はイニング数を大きく上回る奪三振数をマークし、好感触を得てシーズンエンドとなりました。
 今年プチブレークを果たしたきっかけは球速の上昇にほかならないでしょう。2023年まではアマチュア時代の球速とほぼ同じでしたが、今年は急激にスピードアップし最速で98マイルをマーク。常時95マイル程度の出力を維持しており前年とはまるで別人のようです。
 ムービングに欠けているためアウトピッチとして使うことはまれですが、カウントを取りに行っても容易に前に飛ばされなくなり成績が好転しました。
 変化球ではスライダーに磨きがかかっており、この球種が完全にアウトピッチとして確立されつつあります。
 コントロールに苦しみ四球を多く出す試合もありますが、4巡目で指名された高校生であることを考えると上出来でしょう。
 昇格はスローペースですが、着実に力をつけ始めています。あとは、急激なスピードアップに肘、肩が耐えられればメジャーでもスターターとして投げることができるかもしれません。


5(136) ネイサン・ヒッキー(Nathan Hickey):C:右投左打:6/210:Florida:$1M($410.1K)

豪快なアッパースイングでアーチ状のHRを量産するスラッガー候補。外野フライのように見える打球をそのままスタンドインさせるパワーが最大の持ち味だが、ヒッティングも雑ではなくピッチセレクションは優秀。打撃では隙なしだが、守備はてんでダメでCに残れる可能性は限りなく0に近い。

成績

 2022年に本格的にプロデビュー。A/A+で75試合に出場し、OPS.900以上、wRC+150以上と驚異的な成績をマーク。プロ入り後も打撃能力の高さを見せつけます。
 2023年もA+でひたすらに打ちまくり、18試合の出場でAAに昇格。この勢いのままメジャーまで駆け上がるかと思われましたがAAでトーンダウン。スランプに陥ったとまではいかなくとも、成績は軒並み悪化してしまいます。
 不安を抱えたまま迎えたままAAでスタートした今年もやはり打撃は上向かず、出場試合数以外は軒並みキャリアワーストの数字を残しシーズンエンドとなりました。
 AAに昇格するまでは向かうところ敵なしでしたが、AAでつまずいたまま立て直すことができていません。その原因の1つに挙げられるのはLHPへの対応でしょう。AAに昇格した2023年から極端に対LHPの成績が悪化しており、全体の打撃成績を大きく引き下げる要因となっています。
 明るいところに目を向けるとするならば、パワーは衰えしらずでバットが木製に代わり投手のレベルが上がってもツボにハマった時の飛距離と打球速度はマイナー全体トップ100に入るプロスペクトと遜色ありません。またAA昇格以降打率と長打を打つペースは下がりましたが、BB%はほぼ同じ水準を維持しており出塁率は最低限の数字を残しています。
 これで守備が上手ければ使いどころもあるのですが、やはり守備はままならないようで徐々にCとしての出場機会は削られてきています。1B/DHでの起用となると打撃成績は物足りなく、レギュラーとしての起用は考え難いでしょう。もっとRHPを打てるようになればプラトーン要員として使ってくれるところがあるかもしれません。


8(226) ハンター・ドビンズ(Hunter Dobbins):RHP:右投右打:6-2/185:Texas Tech:-($188.9K)

90マイル中盤の速球とスライダー、チェンジアップのコンビネーション。昨年、最速98マイルをマークし注目されたが、その代償なのかトミー・ジョン手術を受けることに。今年の復帰は果たせなかったが、リハビリは順調な様子。

成績

 ドラフトイヤーに受けた手術の影響もあってドラフトから1年近く経過した2022年の6月にようやくプロデビュー。約2年ぶりの実戦登板ということもあってか、昨年まで高校生だった選手が多いAで失点を重ねてしまい、防御率は5点台と奮いませんでしたが、手術明けに見出しがちなコントロールはまとまっており、希望も見える結果となりました。
 続く2023年はA+で圧倒的な数字を残し早々とAAへと昇格。AAで失点は増えてしまいましたが、内容はA+の時と大きく変わっておらず安定したピッチングを披露します。
 今年は主にAAでローテーションを回し好投を続けると、終盤にはAAAに昇格。最後はIL入りしてシーズンを終えてしまいますが、AAAでも安定したピッチングを続けていました。
 ドラフト当時は球速の話題ばかりが先行していましたが、蓋を開けてみるとスピードよりも卓越したコントロール/コマンドが目立っています。
 プロ入り後シーズンのBB%が2桁を超えたことはなく、四球で自滅し失点を重ねることはないようです。
 縦方向に曲がるスライダーに加えてスイーパーの習得にも励んでおり、奪三振数の数字を落とさないようにする工夫も見えます。
 チェンジアップの扱いもうまく左打者からも空振りを奪える武器を持っている点も頼もしいところです。
 来年はロングリリーフ兼スポットの先発としてメジャーで投げることになるのではないでしょうか。


総括

 1巡目のマルセロ・マイヤーはAAで一時期スランプがあったものの、すぐに壁を乗り越え数字だけを見ると順調にステップアップしているように見えます。しかし、やはり耐久性の話題は避けて通れないでしょう。マイナーにいるうちは無理はさせないとはいえ、いまだにシーズン100試合以上出場した経験がない事実は明るい未来に暗雲を立ちこもらせています。
 耐久性のないSSはすでにトレバー・ストーリーでこりごりで、ファンは無事これ名馬を地で行っていたザンダー・ボガーツの再来を期待しているはず。来年こそどこも痛めることなくシーズンを全うできるでしょうか。
 高校生は上述のマイヤーに加えて、エルマー・ロドリゲス・クルーズがブレークの兆しを見せており悪くない様相ですが、大学生陣の現状は厳しくなっています。
 ハンター・ドビンズが故障で出遅れたこともありましたが、ドラフトから3年経過して上位10名の中からメジャーデビューした選手が0人は寂しい結果。ソリッドさが魅力だったタイラー・マクダナフはAAAまで昇格しているものの、好成績を残したシーズンはなくロケット鉛筆方式で突き上げられている感は否めません。
 同じくAAAに昇格しているネイサン・ヒッキーもいますが、実質的にポジションがDHに限られているため今の打撃成績ではわざわざ枠を割くことにはならないでしょう。
 一方で11巡目のニコ・カバダス、17巡目のルイス・ゲレーロはメジャーデビューを果たしており、上位指名された大学生の体たらくが際立ってしまっています。


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