【MLBドラフトレビュー】3年後...2021ドラフトレビューDET編

目ぼしい選手をピックアップして、ドラフトから3年経った選手達の活躍を見ていきます。

凡例
ラウンド(全体指名順位) 名前(Name):ポジション:投打:身長/体重:出身校:契約金額(ボーナススロット)
簡易レポ
成績
コメント



1(3) ジャクソン・ジョーブ(Jackson Jobe):RHP:右投右打:6-2/190:Heritage Hall School:$6.9M($7.22M)

90マイル中盤の速球とスライダー、チェンジアップのコンビネーション。元々SSとしてプレーしていたが、投手転向で才能が開花。速球は最速で96マイルだが、コンスタントにそれをマークできる馬力が魅力。キレのいいスライダーは今ドラフトの高校生投手ではトップクラスのクオリティを誇る。チェンジアップと投手としての経験値の浅さが今後の改善点。

成績

 2022年にAでプロデビュー。いきなりフルシーズンデビューとなりましたが、登板間隔を長めに設定しイニング数も抑えめにする慣らし運転なので過度な負担は避けられていました。内容は上々で一回り年上の選手が多い中でイニング以上の三振を奪いつつ、四球数は高校を卒業して1年目として少なく済ませました。
 2023年はいよいよプロ仕様の登板間隔とイニング数になるかと思われましたが、スプリングトレーニング中に故障してしまい実戦は6月からとなってしまいました。それでも復帰したらAではもはや敵なしでA+に昇格しても好投。最終盤には早くもAAでも登板を果たしました。
 今年はAAからスタートし変わらず好投を続けていましたが、5月に故障の影響で1ヵ月半戦線離脱。復帰を果たすとその後は離脱することなくローテーションを回し続け、9月にはAAA、そしてついにメジャーデビューも果たしました。
 速球のスピード自体は高校時代から大きく変わったわけではありませんが、高校時代よりもスピードもムービングも安定するようになりコンスタントに空振りが奪えるようになっています。
 変化球もマネーピッチのスライダーに加えチェンジアップをアウトピッチに使えるようになっておりピッチングの幅が広がりました。
 荒れ球というほどではないのですが、コントロールはいい日と悪い日の差が激しく先発時はどれだけ投げられるのか計算が立たなくなっています。投げているボールのクオリティ自体は素晴らしいので大量失点することは考え難いですが、安定して長いイニングを投げられるタイプではないのかもしれません。
 故障の影響もあってシーズン100イニング以上を投げたことがないのも来年以降のローテーション入りへの不安材料でもあります。
 優秀な性能はすでに証明済なのであとは安定性と耐久性。この2つのテストをクリアできるかが、今後のキャリアの方向性を決めることになるでしょう。


CBPA(32) タイ・マッデン(Ty Madden):RHP:右投右打:6-3/215:Texas:$2.5M($2.26M)

90マイル中盤の速球とスライダー、カーブのコンビネーション。速球は最速で99マイルをマーク。瞬間的な出力ではなく、一定の球速を維持できる点が強み。ムービングに乏しいが、真上から投げ下ろし角度をつけて打ちづらくしている。アウトピッチはスライダー。鋭く曲がり空振りを奪える球種。コントロールも安定しており、フロアーの高さは今ドラフトでもトップクラス。

成績

 ドラフト当時はジャック・ライター、クマー・ロッカーの2人のバンダービルト大学の投手に次ぐ大学生投手とみなされていましたが、スリップにスリップを重ね最後の1巡目指名を受けることとなりました。
 ドラフトの指名順位にケチはつきましたが、プロでは実力をいかんなく発揮。2022年にA+でプロデビューを果たすとシーズン途中にはAAに昇格。2つのクラスで合計26試合に先発し122.2イニングを消化するワークホースっぷりを披露。内容も伴っており指名順位が遅すぎたと感じさせる1年になりました。
 2023年はAAでローテーションを回し続け再び25先発100イニング以上をクリア。順調にステップアップしていきます。
 今年はAAを4試合で卒業しAAAに昇格しましたが、ここで壁にぶつかってしまいました。それまでに苦にしていなかったコントロールで苦しみ始め、防御率は7点台後半とキャリアワーストの数字になりました。それでもシーズン後半にかけて好投が増え始めたこともあって、8月に故障者との入れ替わりでメジャーデビューを果たしました。
 マッデンのベストツールは何といってもプロ入りして以降一度も故障者リストに入ることなく100イニング以上を消化する耐久性でしょう。大学時代も含めるとすでに4シーズン連続で110イニングを投げており、昨今の投手の故障が多さを考えると驚異的です。今でも最速で98マイルを出す出力を維持しつつこの耐空性は賞賛に値します。
 内容面では今年こそキャリアワーストの成績に終わり、メジャーではリリーフで登板することになりましたが安定感はDETのピッチングプロスペクトの中でも随一。
 来年は1巡目のジョーブともどもローテーションで投げるべき存在でしょう。

7(195) ブラント・ハーター(Brant Hurter):LHP:左投左打:6-6/250:Georgia Tech:$241K($241K)

90マイル前半の速球とスライダー、チェンジアップのコンビネーション。速球は最速で94マイルと平凡だが、優秀なコマンドでハードヒットを避けることができる。ベストピッチはスライダー。大きく横方向に滑るように曲がり、空振りを奪う。全体としてのコントロールもまとまっており、スターターとしての素質はある。19年にトミー・ジョン手術を受けている。

成績

 2022年にAでプロデビュー。当初はプロの水に慣れるためかリリーフでの登板が多くなっていましたが、次第にスターターへとシフト。その期待に応えるかのように好投を続けA+に昇格するころには完全にスターターとして投げていました。最終的にはAAに昇格し上々のプロキャリアスタートとなりました。
 2023年は1年間AAでローテーションを回し続け26試合に先発。イニングもしっかり消化しながらも、イニング以上の三振を奪い四球数は三振の1/4程度に抑え内容面も充実させました。
 ここまで順調にキャリアを進めてきましたが、今年はAAAで壁にぶつかりました。すべての項目で数字が悪化してしまいメジャーデビューはお預かと思われましたが、8月にメジャーに昇格するとロングリリーフとして好投を続けました。
 スペック自体はアマチュア時代と変わっていませんが、やはり持前のコマンドが身を助けているようです。ゾーン内外の出し入れが非常に素晴らしく、打者を翻弄しています。
 AAAに昇格後は露骨に空振りを奪えなくなってしまい、奪三振も大幅に減少。ただ、メジャー昇格後は吹っ切れたのかひたすらゾーン内にボールを集めゴロを打たせることに専念し功を奏しています。
 カレッジからマイナーまでスターターとしての経験は豊富ですが今のロングリリーフのポジションがベストフィットしているため、故障者が続出しない限りは動かす必要もないでしょう。スポットで先発もこなしつつ、ある時はバルクとしてある時はシンプルにリリーフとして試合を壊さないように投げる頼りになるスイングマンとして活躍しそうです。


 


総括

 1巡目のジャクソン・ジョーブは高校生投手としてはかなり早い出世を果たし今年メジャーデビュー。まだ荒々しさが残っておりAAAはほぼスキップする形でメジャーに引っ張り上げられたため来年は再度マイナからのスタートになるかもしれません。ポテンシャルの高さは誰もが認めるところですが、それを常時発揮できる安定性が求められることになるでしょう。
 ジョーブ以降も紹介したタイ・マッデン、ブラント・ハーターに加えギャレット・バーヘン等投手の活躍が目立ちます。いずれもローテーションに割って入る可能性のある優秀なタレントで10年代前半に築き上げた投手王国を復活させることができるかもしれません。
 一方で野手は壊滅的。2巡目にオーバースロットで指名したアイザック・パチェコは2年連続でA+の壁に阻まれ高卒3年目ながらもすでにトーンダウン気味。上位指名の野手はパチェコのみだっただけに彼がブレークできないのであれば、野手は全滅となってもしかたないでしょう。
 投手偏重のドラフトを敷いて見事に上位と下位から戦力化できそうなタレントを発掘できているためおおむね成功といっていいでしょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?