【MLBドラフトレビュー】3年後...2020ドラフトレビューSF編

目ぼしい選手を5人ピックアップして、ドラフトから3年経った選手達の活躍を見ていきます。

凡例
ラウンド(全体指名順位) 名前(Name):ポジション:投打:身長/体重:出身校:契約金額(ボーナススロット)
簡易レポ
成績
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1(13).パトリック・ベイリー(Patrick Bailey):C:右投両打:6-2/204:NC State:-:$4.2M

打撃に高評価を得る打撃型C。アベレージとパワーを兼ね備えた両打の捕手ということもあって、Adely Rutschmanとも比較されている。守備でも投手の信頼を得ており、自信たっぷりの様子はすでにメジャーリーガーとも評されるほど。

成績

 21年のプロデビュー以降アマチュア時代の評判と変わらず、健全なBB/Kを残し続けています。打率や長打数などの成績には浮き沈みはありますが、BB%とK%は常に安定した数字を残しており、マイナーでは対戦相手の投手に対応することができていました。
 今年はAAスタートでしたが、開幕から半月でAAAに昇格し、さらにその半月後にはメジャーでレギュラーCを務めていたジョーイ・バートのIL入りに対応してメジャーに昇格しました。
 昇格してから1ヵ月ほどは、打率は.300を超え試合数以上のヒットを放ち5HRをマークするなど絶好調。ジョーイ・バート不在の穴を十分すぎるくらいに埋めていましたが7月頃から当たりが止まり始め、その後は盛り返すことなく尻すぼみのままシーズンエンドしてしまいました。
 メジャーでは速球に差し込まれてしまう場面が目立ちました。積極的にゾーン内に速球を投げ込まれるため、四球も減らすこととなり出塁率も伸び悩みました。
 また、左打席での成績が著しく悪く、右打席と比較するとOPSでは.250以上、wRC+では70以上低い数字になり、いっそ右打席に集中したほうがよいのではないかというほどの差が開く結果となりました。
 とはいえ、ベイリーにとってはシーズン100試合以上に連続して出場するのは今年が初めてであり、そのことを考慮すると終盤にかけて息切れしてしまったのも仕方がない側面があります。また、昇格したクラスで低迷しても次の年にはアジャストする対応力をこれまで見せているため、来年はメジャーの投手にも対応できるかもしれません。
 守備ではメジャー屈指のフレーミングと盗塁阻止のスキルを見せ、GG賞のファイナリストに名前を連ねました。ポップタイムの早さやアームの強さはもちろんのことですが、非常に視野が広いうえに冷静に状況に対応することができています。
 たとえ打撃で大きな進歩がなくとも守備だけでも大きなプラスをもたらす選手になるでしょう。


2(49).ケイシー・シュミット(Casey Schmitt):3B/RHP:右投右打:6-2/200:San Diego State:-:$1.51M

野手としてはパワーポテンシャルの高さが魅力。ガニマタのようなスタンスから、力強いスイングを披露する。積極的なアプローチなため、四球も三振も少ない。アームの強さを活かした3B守備に高い評価を得ている。投手としては90マイル前半の速球とスプリットチェンジのコンビネーションを披露。リリーバーとして投げている。アマチュアのキャリアはマット・チャップマンを彷彿とさせる。

成績

  21年は故障もあってAで慣らし運転程度の出場機会に終わりましたが、健康体で戻ってきた22年にブレーク。A+-AAAにかけて126試合に出場すると、21HR&OPS.854をマークしました。
  今年はAAAスタートとなりましたが、5月には早々にメジャーへと昇格。昇格後1ヶ月は打ちに打ったりで、1巡目指名のベイリーと共にこれからのSFを支えていく選手になるかと思われました。しかし、6月以降は打率がやっと1割に届くようなスランプに陥ります。2度オプションと昇格を繰り返しましたが成績が向上することなくシーズンを終えました。
  足を引っ張っているのはアマチュア時代と変わらない積極的すぎるアプローチにありそうです。ゾーンの内外を問わずに手を出すのですが、メジャーレベルのボールに対応できるほどのコンタクトスキルがなく空振りしてしまう場面が多くなっています。
  期待されていた守備では本業ではないSSも守らされていたこともあっていずれの指標でも大きくプラスになることはありませんでした。
  メジャーデビューしてまだ1年も経っていませんが、バリューがある内に捌いてしまいたいと思われたのか既に放出も噂されています。チームがアマチュア時代に比較されていたマット・チャップマンにも興味を示しており、比較対象とされていた選手にチームを追われる可能性もあるでしょう。



2C(68).ジミー・グロウェンキー(Jimmy Glowenke):SS:右投右打:5-10/185:Dallas Baptist:-:$953.1K

小柄ながらもパワフルなスイングが魅力。見た目以上にパワーがあり、二塁打を量産するミドルヒッターとしての活躍が見込まれる。ピッチセレクションも悪くなく、コンスタントに四球を選ぶことができる。スピードが平凡なため、SSから2Bに移ることになりそうだが、IFには留まり続けられるだろう。

成績

 プロ入り後の出世は遅いですが、求められている成績を残し続けています。コンタクトスキルとピッチセレクションの強みはプロでも活かされており、高水準のBB/Kを残すことができています。
 心配されていたパワーツールも通用しているようで、3シーズン連続で2桁HRをマーク。20二塁打以上のシーズンも2回とマイナーではミドルヒッターらしい数字となっています。
 打撃ではポジティブな要素が多いのに、なかなか昇格のスピードが上がらないのはポジションに理由があるかもしれません。元々SSがメインでしたが、現在は2Bをメインとしています。2Bをメインとするとなると現在の打撃成績では少し物足りないと考えられているのかもしれません。
 ルール5ドラフトの対象でしたが、40人ロースター入りは果たせず。ただ、ソリッドなアプローチとパンチ力のある打撃を買って指名する球団が現れてもおかしくはありません。


3(85).カイル・ハリソン(Kyle Harrison):LHP:左投右打:6-1/191:De La Salle HS:-:$710.7K

89~92マイルの速球とスライダー、チェンジアップのコンビネーション。動く速球はスピードを上げて投げるよりも、抑えて投げる方がしっかりコマンドできる。スライダーは大きく曲がるタイプで、スラーブと形容したほうが正しいだろう。速球のコマンドはばらつくこともあるが、スライダーのコマンドは優秀。チェンジアップは滅多に投げない。

成績

 プロ入り後球速アップに成功し、トッププロスペクトの仲間入りを果たしました。高校時代から球速は5マイル以上速くなり現在では最速98マイルをマーク。低いアングルから投げる4シームで大量の空振りを奪っています。
 マイナーでは3シーズン連続でK/9が14以上をマーク。K%も毎年30%超えと驚異的な数字を残しています。
 一方で、アマチュア時代同様速球をより早く投げようとするとコマンドがばらついてしまう傾向にあり、球威に任せてピッチングしている状態であるとも指摘されています。今年は特にコントロールに苦しみAAAではBB/9が6を超える数字となりました。
 また、速球の投球割合が60%を超えており、かつ高めに投じて投げることが多いため長打を打たれやすいという欠点も抱えています。
 既にメジャーデビューを果たし、7試合に投げて防御率4.15とある程度通用することは証明しました。ただ、変化球でなかなか空振りを奪えなかったり、上記のように被長打が多くなったりと分かりやすい欠点があることも事実。
 コマンドと変化球の改善に取り組んで功を奏すればSFだけでなくメジャーを代表するような投手になれると思いますが、この2点が修正できれなければリリーフ転向も視野に入るでしょう。


4(114).RJダボビッチ(Rj Dabovich):RHP:右投右打:6-3/215:Arizona State:-:$507.4K

90マイル中盤の速球とスライダー、チェンジアップのコンビネーション。速球は最速で99マイルをマーク。ムービングに乏しいところが欠点。アウトピッチはスライダー。低めに投げ込み空振りを誘う。チェンジアップもまずまずのクオリティ。コントロールはアバウト。シンプルに投げ下ろすデリバリー。コントロールを改善させれば先発として評価が上がるか。

成績

 プロでの先発転向も予想していましたが、大学時代同様リリーフ一本での起用が続いています。
 プロ入り後もピッチングの内容は変わらず、90マイル中盤の速球でゾーンを攻めてカウントを稼ぎ、縦に割れるスライダーを低めに落として三振を奪うというシンプルな内容。マイナーではいずれのクラスでもイニング以上の三振を奪っており、クローザーとしての起用も納得の成績でした。
 コントロールに難があることも変わっていませんが、22年のAAA以外では四球の数はそれほど多くなっておらず、奪三振能力の高さを考えると許容範囲の数に収まっています。
 実働2年でAAAにまで昇格し今年はついにメジャーデビューかと思われましたが、開幕直後に股関節の故障でシーズンエンド。そのまま復帰することはありませんでした。
 ルール5対象の年となるためプロテクトされるのではないかとの予想もありましたが、実際はプロテクト漏れとなりました。故障の程度や回復度合いは計りかねますが、既にAAAにまで到達する実力があることは間違いなく、いくらいても困らないリリーフともなれば引く手数多かもしれません。


総括

 1巡目のパトリック・ベイリーも含めて既に3人がメジャーデビュー済みと明るい材料の多いドラフトとなりました。ベイリーはルーキーイヤーにしてGG賞ファイナリストとなるほどの守備を見せており、ジョーイ・バートが殻を破れずにやきもきしていたSFファンの心をいくらか晴らしてくれたでしょう。
 ただ、ベイリー、ケイシー・シュミットともども打撃では尻すぼみでシーズンエンド。守備では欠かせない存在となっているベイリーはともかく、シュミットは既に放出候補となっており、強豪球団の競争についていけずにチームを去る可能性もあるでしょう。
 投手ではカイル・ハリソンが出世頭。まだまだ粗削りな部分は多いですが、既にメジャーで1試合2桁奪三振をやってのけるなど大物感を漂わせています。ティム・リンスカムやマディソン・バンガーナー、マット・ケインといった往年の生え抜きのエースのように大成することができるか注目したいです。

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