3年後...2018MLBドラフトレビューOAK
凡例
ラウンド(全体指名順位) 名前(Name):ポジション:投打:身長/体重:出身校:契約金額(ボーナススロット)
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成績
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1(9). カイラー・マレー(Kyler Murray):OF:右投右打:5-11/195: Oklahoma:$4.66M($4.761.5M)
アメフトと野球の二刀流選手。当初大学でのアメフトのプレーを希望していたが芽が出ず、野球に復帰。そこで非凡な才能を見せ、野球に専念するかのように見えた。契約時に残りのシーズンのみという制限付きで、アメフトのプレーを希望。まさかの大活躍で、ハイズマン賞を受賞することとなった。選手としての能力は、全てにおいて身体能力先行。打席ではバットスピードの速さで、ハードヒットを量産するが投球に対する理解が浅い。そのため、三振が多く四球は少ない。守備では自慢のスピードが魅力だが、積極的になりすぎて大きなミスを犯すことも多い。肩も平凡なため、CFに残れるか微妙なところ。話題性という意味では今ドラフトNo.1だ。
全体1指名のスタープレーヤーとして1年目からレギュラーとして活躍。1年目こそ思うような成績を残せませんでしたが、エースレシーバーのディアンドレ・ホプキンスを得た2年目は成長の跡を見せます。今年は故障するまでチームを無傷の7連勝に導き、パス成功率でトップの数字を残すなど名実ともにトップQBへとなりつつあります。は?何が????だからどうした?????マイナーで1試合も出てへんやんけこいつ。ドラフト直後にコロシアムにコスプレしに来ただけやんけ。契約金返したくれただけでもマシやと思たるわ。
🥋 @K1 🥋 pic.twitter.com/PFeHmEMSjp
— Arizona Cardinals (@AZCardinals) November 24, 2021
2(50). ジェイムソン・ハンナ(Jameson Hannah):OF:左投左打:5-9/185: Dallas Baptist:$1.8M($1.414.2M)
打席では卓越したアプローチと広角に打ち分けることができるヒッティングが魅力。高出塁率を期待することができる。コンタクト重視のためパワーポテンシャルはあるが、長打数は少ない。この点は本人の心がけ次第か。スピードは、平均を大きく上回っている。守備ではこのスピードを活かし、優れたルート取りと打球反応で広いレンジをカバーする。肩は平凡だが、それでもCFに残れると予想する声は多い。盗塁には積極的ではないが、仕掛けた時のミスの少なさが光る。
アマチュア時代は卓越したアプローチが最大の武器でしたが、プロでは三振が多くなりそれほど四球は増えないという逆転現象が起きました。それでも19年のOAK傘下A+ではまずまずの成績を残し、タナー・ロアークのトレードチップとしてCINへ移籍。さらにその後、ジェフ・ホフマンらとのトレードの要員としてCOLへとトレードされており、一定の需要はあるようです。COL傘下1年目の今年は全てAAでプレー。アプローチは悪くなる一方で、打率は下がるという最悪の結果になってしまいました。元々パワーツールで勝負するタイプではないので、打率/出塁率で結果を残せなければ打撃ではいいところなしになってしまい、なかなか厳しい状況です。長年スピードはあるのに盗塁はそれほど上手くないという評価でしたが、今年は11盗塁で失敗は2個とこの点では改善があったようです。LF転向もささやかれる中でCFに留まっており、打撃以外では前評判通りの働きをしているようです。
Sign-ups are now open for the Jameson Hannah Fan Club. All are welcome. Thank you. pic.twitter.com/Ps1KGyoTt0
— Colorado Rockies (@Rockies) March 9, 2021
CBB(70). ジェレミー・アイアマン(Jeremy Eierman):SS:右投右打:6-1/205: Missouri State:$1.232M($872.4K)
ドラフトイヤーにスランプに陥り、評価を大きく下げた。打撃ではパワーポテンシャルの高さが魅力。レスリングで鍛えた下半身に支えられたスイングは強烈で、今ドラフトクラスの中でもトップクラス。一方で、常に引っ張ることしかできなかったり、何でも打ちに行ったりと分かりやすい欠点もある。体重はあるが、スピードは平均以上。肩も強く、ソリッドなグラブさばきも見せる。SSに残れる可能性もあるが、3Bとしてなら非常に優秀なディフェンダーになれるとの声も。
大学最終年のスランプから抜け出せずにはや3年が経ちました。課題のアプローチは一向に改善する気配を見せず、ひたすらにバットを振り回して長打を待つというスタイルを続けています。それでも今年は過去最高の打率と出塁率をマークし、少ない出場機会ながらも2桁HRを放つなどブレークの気配を見せましたがAFLでの大スランプでそれもトーンダウン。パワーツールは誰もが褒めるところなので、少しでもボール球を追いかけるのをやめれば打率は上がらずとも成績は上向くはずなのですが。守備では今年はSSを守る機会はなく、3Bの出場がメインでした。アームは相変わらず強いため3Bを本職にすることになるのでしょう。
3(85). ホーガン・ハリス(Hogan Harris):LHP:左投右打:6-3/230: University of Louisiana – Lafayette:$660K($683.8K)
最速98マイルの速球が最大の魅力。この速球にスピンのきいたカーブ、チェンジアップのコンビネーション。カーブは時折、スライダーのように動く時があるほどキレがよくアウトピッチとして有効。チェンジアップのクオリティも低くなく、右打者対策は万全。安定感に欠けコントロール、速球のスピードが試合によってバラつきがある。デリバリーも崩しやすく、投げるボールのクオリティ以外の面で問題を抱える。また、故障が多く耐久性にも疑問が残る。
プロ入り後稼働したのは19年のみ。その理由は一重に故障の多さ。ドラフトイヤーは肘の痛みに悩まされプロデビューはおあずけに。今年は、詳細は明かされませんでしたが、やはり故障でシーズン全休。AFLで数試合リハビリ登板をしたにとどまりました。故障が多くでも、実力が本物であれば文句はないのですが、19年の登板時には球速の低下が著しく、最速でも94マイルしか出ないという状態であったため不安はぬぐえません。コントロールがいい方ではないので、球速低下は命取りになります。球速さえ戻ればカーブと速球の2ピッチでリリーフという道も見えるので、なんとしてでも健康を維持してもらわないといけません。
4(113). アルフォンソ・リーバス(Alfonso Rivas):1B:左投左打:6/180:Arizona:$446.5K($493K)
高いヒッティングスキルと熟達したアプローチがウリ。出塁能力が非常に高く、四球を多く選ぶことができる。どのレベルでもハイアベレージを残すことができるが、パワーに欠け長打は少ない。1Bとしての経験は浅いが軽やかなフットワークを見せており、スムーズに順応している。OFとしての経験も長く、肩も強いためRFを守ることもできる。どちらのポジションでも、チームの足を引っ張ることはないだろう。
2位指名のハンナとは違い、アマチュア時代のアプローチを見失うことなく、ソリッドな成績を残し続けています。マイナーでは打率.280、出塁率.380を下回ったシーズンがなく安定感は抜群。この成績を認められてか、20年シーズン前にトニー・ケンプとの1対1のトレードでCHCへ移籍。今年もAAAで安定した成績を残していると、再建へと舵を切り主力を放出した枠が空いたところでメジャー昇格を果たしました。メジャー昇格後もヒッティングツールもアプローチも衰えることはなく、好成績を残していましたが指の故障でシーズンエンド。どのレベルでも安定した成績を残せるところは感嘆しますが、パワーツールに欠ける点は相変わらず。せめて2桁HRを打てるパワーがあれば劣化版ジョーイ・ボットーのような選手になれるかもしれません。
First career home run for Alfonso Rivas! pic.twitter.com/I8wAkHatRR
— Chicago Cubs (@Cubs) September 15, 2021
5(143). ブレイディ・ファイゴル(Brady Feigl):RHP:右投右打:6-5/230:Ole Miss:$300K($368.2K)
90マイル前半の速球とスライダー、カーブ、チェンジアップのコンビネーション。速球は常に球速が出るわけではないが、最速で96マイルをマークすることも。スライダーに磨きをかけ、自由自在にコントロールすることができるようになった。カーブ、チェンジアップといった他のブレーキングボールもクオリティが高く奪三振能力は高い。コマンドに優れ、どの球種でも狙ったコースに投げることができる。15年にトミー・ジョン手術を経験。同姓同名なうえに顔と赤ひげ、大きめのゴーグル眼鏡までそっくりな選手が、TEXのマイナーに在籍している。さらには、双方とも同じ医者からトミー・ジョン手術を受けており、違うのは投げる腕の左右くらいか。
19年と今年とフルシーズンであれば1年間ローテーションを守れることを証明。いずれも100イニング以上投げており、イニングイーターとしての片鱗を見せています。ただ、量に比べて質はそれほど高くなく、フルシーズンで投げたシーズンの防御率はいずれも4点台中盤から後半と高め。コントロールは悪くなく、奪三振能力も低くないのでシンプルに球速の低さや変化球のクオリティが問題のようです。既にAAAに到達しているため来年はどこかのタイミングでメジャー昇格もあり得るとは思いますが、現状では定着は難しそうです。リリーフでは圧倒的なピッチングを見せることもあるので、リリーフとしての起用に切り替えるのも1つの手かもしれません。
6(173). ロレンス・バトラー(Lawrence Butler):3B:右投左打:6-4/185: Westlake HS:$285K($278K)
パワーポテンシャルの高さが光るハイシーリングなタレント。スイングはバットスピードの速さが目立つが、振り回しすぎなところも。投球に対する理解も浅く、何にでも手を出してしまう悪癖がある。スピードはあるがフィールドではそれを活かせず。守備の動きもぎこちなく、高校時代に守ることもあった3Bよりも1B/OF向き。
プロデビューから2年間は全くバットにボールが当たらず、もはやこれまでとも思われましたが今年に入ってブレーク。持ち前のパワーツールをいかんなく発揮し、あと1本で大台に乗るという19HRをマーク。三振は相変わらず多いですが、この手の打者にはつきものなので仕方ないでしょう。また、盗塁もこれまた大台に1つ足りない29盗塁をマークしており、パワー&スピードタイプの選手として躍進し始めています。シーズン途中で昇格したA+でも少ない出場機会ながらも2HRをマークするなど非凡な才能を見せています。一方で、守備についてはプロ1年目に早くも3Bは剥奪され、OF/1Bを守っています。スピードを活かすのであればOFなのですが、1B守備も悪くなくこの辺りはポジティブな意味で流動的になると思われます。
A- Stockton finished the season with a record of 42-75.
— Athletics Minor League Report (@Athletics_MiLB) September 20, 2021
Team stats:(rank in A- west)
ERA: 5.79(7/8)
K/9: 9.36(8/8)
BB/9: 3.91(5/8)
AVG: .232(7/8)
OPS: .684(8/8)
HR: 98(4/8)
Team MVP: Lawrence Butler(1B)
88G, 17HR(3rd), 26SB(9th), AVG.263, OPS.862(7th)
pic.twitter.com/B4nwjPWRSQ
7(203). チャーリー・セルニー(Charlie Cerny):RHP:右投右打:6-5/230: University of Illinois at Chicago:$217.2K($217.2K)
最速95マイルのシンカー系の速球とスライダー、チェンジアップのコンビネーションで勝負するリリーフプロスペクト。速球をストライクゾーンに集めて、ゴロを打たせるグラウンドボーラー。アウトピッチはスライダーで、ソリッドなボール。チェンジアップはまだまだ改善の余地あり。コントロールがよく四球は少なめ。デリバリーは、クセのないスリークォーター。
アマチュア時代はそれほどコントロールに苦しむ投手ではなかったのに、プロでは四球を連発。いくらリリーフとはいえども許容範囲を超えており、19年に至ってはどうやってこの成績で防御率を3点台に収めたのか不思議なほどです。ただ、やはりそんなことが続くはずもなく今年は三振以上の四球を出し防御率も2桁と散々な結果となりました。
8(233). JJシュワーツ(JJ Schwarz):C:右投右打:6-2/215: Florida:$140K($173K)
16年の夏場までは17年ドラフト上位指名候補だったが、その後の評価は右肩下がり。最大の見どころである打撃は大学初年度がキャリアハイとなっており、その後は平凡なまま終わった。それでもパワーだけは健在で、大学最終年には1試合4HRをマークしたことも。アプローチが雑なところがあり、四球数の割に三振が多い。この点が打撃で振るわなかった原因か。守備も肩の強さ以外は平凡で、プロでCとしてプレーするには厳しいレベル。大学最終年も、主に守っていたのは1Bだった。
プロ入り後もかつての輝きを取り戻すことはできず、打撃は低迷したまま。せめてパワーツールで存在感を示せればというところでしたが、シーズン2桁HRをクリアした年は0。三振が減ったということは気休めにしかならないでしょう。
9(263). チェイス・コーエン(Chase Cohen):RHP:右投左打:6-1/183: Georgia Southern:$140K($173K)
最速98マイルの速球とカーブ、チェンジアップのコンビネーション。ブレーキングボールのクオリティは平凡だが球威のある速球を中心に組み立て、相手を圧倒するピッチングを披露することもある。コントロールが不安定で四球の数が多いため、大学最終年にリリーフに転向。プロでもリリーフとして投げるのが無難だろう。
プロではリリーフに専念するというよりもスイングマンとしての起用が主になりました。19年には防御率はイマイチでしたが、100イニング以上を投げるタフネスさも見せています。一方で、コントロールは改善される傾向がなく、そこが完全にスターターとして起用されない点なのかもしれません。今年も悪くないスタートを切りましたが、故障でシーズンアウトとなりました。
+1
14(413). ガス・バーランド(Gus Varland):RHP:右投左打:6-1/205: Concordia University:$125K
球速の上昇が著しく、春先から注目を集めた。速球はコンスタントに90マイル中盤をマーク。よく動く2シーム系とノビのある4シーム系の2種類を投げ分ける。アウトピッチは鋭く曲がるスライダー。キレがよく、空振りを奪えるボール。コントロールもよく、四球は滅多に出さない。小柄でデリバリーに力感がある点は気になるが、プロでは先発を中心に登板している。
プロデビュー直後は目覚ましい活躍を見せ、大きな期待を持たせましたが19年は故障でトーンダウン。それでも、数少ない登板機会で好成績を残していたところはさすがです。その活躍が認められてか、20年オフにコレラックらとのトレードでLADへ移籍。AAでまた快進撃を見せるかと思われましたが、防御率はもちろんのこと、K/9やBB/9といった内容も急激に悪化してしまいました。かつてのようなフルエフォートなデリバリーではなくなりましたが、球速が最速で95マイルと若干低下しノビも大学時代に比べて悪くなったような印象を受けます。一方で、チェンジアップの扱いがアマチュア時代からよくなっており、今年は故障明けの試運転だったと考えればまだ希望の目はあるかもしれません。
Great 2021 debut from Gus Varland (@GusBusVarland)
— Blake Harris (@BlakeHarrisTBLA) May 8, 2021
The #Dodgers acquired him from the A's as part of the Adam Kolarek trade this offseason
2 IP
0 ER
4 SO 🔥 pic.twitter.com/Woha9n5q9j
総括(2018)
今ドラフトを語る上で、カイラー・マレーの話題は避けて通れないだろう。契約当初はアメフトでハイズマン賞を予想されるほど期待されておらず、本人も球団もまさかと言ったところだろう。今後、マレーがどんな選択をするかは予測できないが、仮に野球を選んだとしても全体9位で指名しなければならなかったのか疑問が残る。18年ドラフトが豊作年だっただけになおさらだ。マレー以外に目を向けると、やはり大学生中心のドラフトとなった。上位10人に絞ると野手が多め。タイプもバラつきがあり、一貫した方針が多かった今ドラフトでは少数派だろう。ジェレミー・アイアマン、JJシュワーツとアプローチに問題ありな2人を指名したのはアプローチ重視のOAKにしては珍しいが、パワーポテンシャル重視なのはここ数年の方針なので、こちら重視したのだろうか。投手では、ブレイディ・ファイゴルとガス・バーランドが楽しみな存在。
総括(2021)
結局マレーはOAKとの契約金の大半を返してNFLでプレーする道を選びましたが正解でしょう。野球を続けていてもルール5でプロテクトされるかどうかの当落線上にいたであろうことは容易に想像できます。
この年のドラフトはマレー以降も冴えません。2巡目のハンナでさえもこれまでの成績を見てみると、結果的には早めにトレードで切っておいて正解でした。野手に関してはリーバスがメジャーデビューしたものの、アイアマン/シュワーツといったぶんぶん丸2人がアマチュア時代のスランプを未だに引きずり光明を見いだせていません。唯一の救いはバトラー。レギュラークラスに育ってくれればといったところでしょう。
投手もそれほど冴えていません。ハリスやバーランドなどは故障がちで登板機会が少なく、セルニーは内容がひどくて見ていられません。唯一まともに投げ続けているのがファイゴルですが、メジャーに定着できるとは思えず数年後にはアジア行きも考えられるでしょう。