3年後...2018MLBドラフトレビューTB

凡例
ラウンド(全体指名順位) 名前(Name):ポジション:投打:身長/体重:出身校:契約金額(ボーナススロット)
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1(16). マシュー・リベラトリ(Matthew Liberatore):LHP:左投左打:6-5/200: Mountain Ridge HS:$3.497.5M($3.603.5M)
90マイル前半の速球とカーブ、スライダー、チェンジアップのコンビネーション。速球のスピードは徐々に上昇してきており、最速で97マイルをマークする。アウトピッチは、縦に割れるカーブ。キレがよく、落差も十分。最近投げ始めたスライダーのクオリティはまずまず。チェンジアップは不安定な時もあるが、ポテンシャルは高い。投げるボールのクオリティも高いが、それを自在にコマンドできる点でも高評価を得る。さらに不意にクイックで投げたりと狡猾な部分も見せる。

成績

プロデビューから2年間派手ではないものの、ソリッドな成績を残しそれを置き土産に20年開幕前にランディ・アロザレナらとのトレードでSTLへ移籍しました。21年は早くもAAAに到達しフルシーズンを投げ切る活躍を見せました。高校時代から球速はそれほど変わっておらず、要所以外は力まず92-93マイル程度で維持するというスタイルを続けているようです。リベラトリと言えばカーブですが、対になる4シームはそれほどノビがないためボールゾーンで空振りを奪いにくく、100%活かしきれていないとも指摘されています。ただ、それを分かってかスライダーに磨きがかかっており、カーブに負けず劣らずハイクオリティな球種になりつつあると感じています。球速は伸び悩んでいますが、ソリッドなスターターへと成長しそうです。


1C(31). シェーン・マクラナハン(Shane McClanahan):LHP:左投左打:6-1/188: South Florida:$2.230.1M($2.224.4M)
最速100マイルの速球とチェンジアップ、スライダーのコンビネーション。速球は安定してスピードが出ており、試合が進んでも90マイル中盤を維持することができる。チェンジアップのクオリティが高く、速球と緩急をつけて空振りを奪う。スライダーはチェンジアップの評価よりも落ちるが、徐々に改善されてきている。投げるボールはトップクラスだが、コントロールに難を抱えている。コンスタントに四球を出すため、リリーフ転向も考えられる。2016年にトミー・ジョン手術を受けている。

成績

プロデビュー後はアマチュア時代のコントロール難はどこへやら。21年の4月にメジャーデビューすると、その後はローテーションを守り切り、チームの地区優勝にも貢献しました。奪三振能力の高さはメジャーでも際立っており、100マイル近い速球と3種類の変化球とのコンビネーションは既にトップレベルにあると言えるでしょう。一方で、これらのボールがバットに当たった時は要注意。Hard Hit%と平均打球速度はメジャー平均と比べても高く、当たれば飛んでいくといった状態です。Barrel%もいい数字ではありません。とどの投手も打者2巡目に打たれ始めるのは仕方ないのですが、マクラナハンの場合はそれが顕著で、1巡目を完璧に抑えたかと思えば2巡目に入ると途端にハードヒットを食らうようになるといったところが目立ったように思えます。長いイニングを投げる機会が21年は少なかったですが、今年以降長いイニングを投げても耐えきれるかが見どころになるでしょう。


1C(32). ニック・シュネル(Nick Schnell):OF:右投左打:6-3/180: Roncalli HS:$2.297.5M($2.171.7M)
ドラフトイヤーに打撃の評価がうなぎ上りとなり注目を集めた。逆方向にも鋭い打球を飛ばせるヒッティングスキルの高さが最大の魅力。流し打ちだけを意識しているわけではなく、内角のボールの対応も上手い。現時点でのパワーツールは平均レベルだが、今後、体重をつけることができればコンスタントにフェンス越えの打球を飛ばせるようになるだろう。投手としてマウンドに上がることもあったため、肩は強いがスピードは平凡。CFよりは、RF向きだろう。

成績

プロ入り後は故障に泣かされているようです。それも小さな故障を何度もというわけではなく大きな故障を1年に1回して長期離脱というサイクルを繰り返しています。純粋なパワーポテンシャルやスピードといった部分では高い評価を受けていますが、試合に出続けられないためピッチングに対する理解は深まらず雑なアプローチで数少ない打席数を浪費するといったことが続いています。今年の目標はとりあえずフルシーズン試合に出て続けることでしょう。


2(56). タイラー・フランク(Tyler Frank):SS:右投右打:6/185: Florida Atlantic:$997.5K($1.228M)
打撃では、卓越したアプローチが最大の武器。しっかりとボールを見極め、四球を多く選ぶことができる。コンタクトスキルも高く、三振は少ない。大学ではコンスタントに長打をマークしていたが、体格を考えるとプロでも同じように打てるかは微妙なところ。それでも、ギャップを抜く二塁打を多く打つとはできるだろう。打撃以外のツールは軒並み平凡だが、どこでも守ることができる汎用性の高さを見せる。適任は2Bか。

成績

プロデビューイヤーは好成績を残し期待を持たせましたが、19年の4月以降1試合も出場していません。故障が長引いているようで、厳しい状況です。


CBB(71). タナー・ドッドソン(Tanner Dodson):OF:右投両打:6-1/160: California:$772.5K($850.7K)
ブレンダン・マッケイに続く二刀流選手。投手としては90マイル中盤の速球とカッターのコンビネーションを見せる。シンカー系の速球はムーブメントが激しく、ゴロを打たせるには最適。アウトピッチのカッターのクオリティも高い。コマンドはアバウトだが、ストライクスロワーなため四球は少ない。デリバリーは力感が強く体格も小柄なため、大学時代と同じくリリーフが適任だろう。打撃ではコンタクトスキルの高さが魅力。一方でパワーツールに欠け、長打は非常に少ない。守備では広いレンジをカバーし、肩も強いため、CFに長くとどまることができるだろう。プロ入り後も大学と同様に、野手として出場しながら、リリーフとしても登板している。

成績

二刀流としてプロ入りし、プロデビューイヤーこそ投手/野手共にそれなりの出場機会が確保されていましたが、その後は野手としての出場は減少傾向に。21年はほぼリリーフとしての出場でした。選手を投手/野手の両方で起用する場合、どちらも最低限のレベルにあるという前提が必要なのですが、野手ではその最低限のレベルに届いているということを証明できなかったようです。リリーフとしては、ヘビーシンカーとカッターのコンビネーションでゴロか三振かというリスクの低いピッチングをしているようです。リリーフとしてなら優秀なセットアッパーレベルになれるのではないでしょうか。


3(92). フォード・プロクター(ForProctord):SS:右投左打:6-1/195:Rice:$572.5K($613.4K)
攻守ともにソリッドさが光るハイフロアーなタレント。打撃では広角に打球を飛ばすヒッティングスキルの高さとアプローチのよさが魅力。大量とまではいかないが、安定して四球を選び高出塁率をマークできる。パワーポテンシャルを買う声もあるが、スイング自体がコンタクト重視なため、これを変えない限り長打が著しく増えることはないだろう。守備ではミスの少ない点は評価に値するが、そもそもSSを守るスペックに欠けており2B転向が無難な選択だろう。

成績

大学時代からの優秀なアプローチをプロ入り後も崩すことなく、常に高出塁率をマークし続けています。20年は独立リーグやオーストラリアのプロリーグに参加し、高いレベルでの出場機会を確保していました。オーストラリアではまさかのC転向という予想だにしないコンバートを決行。21年のAAでも50試合以上Cとして先発出場しており、活躍の幅を広げています。このコンバートと同じころにスイングも若干改造されたようで、構えの時に膝を曲げず神主打法のようなスタンスになりました。これが功を奏したのか21年には、キャリア初となる2桁HRをクリア。打率は落ちましたが、四球を多く選ぶアプローチのおかげで出塁率は依然高水準。スーパーユーティリティとしてメジャーでも活躍しそうです。


4(120). グラント・ウィザースプーン(Grant Witherspoon):OF:左投左打:6-3/200:Tulane:$457.7K($460.2K)
打撃に高い評価を得るヒッティングプロスペクト。打席ではバットスピードの速さを見せ、ハードコンタクトを量産する。パワーポテンシャルは最低でも平均レベルにあり、シーズン2桁HRはクリアできるだろう。スピードは若干平均を上回る程度。また、肩の強さも平凡。カバーできるレンジは平凡だが、打球反応やルート取りに高評価を得ており、CFに留まれる可能性はある。1Bを守ることもできる。

成績

プロ3年目にしてブレーク。20年にはオーストラリアのプロリーグに参加し、好成績を収めると勢いそのままに21年シーズンはキャリア初となる20HR以上をマークしました。大きく足を上げる動作をなくし、よりシンプルなスイングになったことが功を奏したのか、GB%が下がり逆方向にも打球が飛ぶようになりました。守備では依然CFをメインに守り続けており、選手としてのバリューは落ちていません。


5(150). タジュ・ブラッドリー(Taj Bradley):RHP:右投右打:6-2/190: Redan HS:$747.5K($343.6K)
アップサイドの大きいハイシーリングなタレント。速球は最速でも93マイル程度だが、今後、さらに速くなる可能性は高い。アウトピッチは縦に割れるカーブ。不安定になることも多いが、クオリティは高い。チェンジアップも投げるが要改善。コントロールは壊滅的というわけではないが、日によってバラつきがある。

成績

21年に大ブレークを果たし、マイナー全体の最優秀スターターにも選ばれました。球速はやはり予想通り速くなったようで現在では90マイル後半をたたき出し、アベレージでも94~96マイルをマークするようになっています。ただ、速くなっただけではなく非常にノビがあり空振りを奪えています。さらにはコマンドでも成長しており空振りを奪えるスポットや、ゾーンのギリギリに難なく投げ込んでいます。現在はカーブではなく、横滑りするようなカッター/スライダーをアウトピッチとしているようですが、このボールもかなりハイクオリティです。一方で、チェンジアップは相変わらず苦手としているようです。ただ、チェンジアップの改善が追い付いていない状態でここまで支配的なピッチングができると考えると、今後の成長がさらに楽しみになります。


6(180). ミラー・ホーガン(Miller Hogan):RHP:右投右打:6-2/220: St. Louis University:$222.5K($262.2K)
90マイル前半の速球とカーブ、チェンジアップのコンビネーション。速球は、4シームと2シームの2種類を投げ分ける。2シームはスピードが落ちるがよく動き、4シームよりも評価は高い。コントロールがよく、滅多に四球を出すことはない。

成績

大学では全てスターターとしての起用でしたが、プロ入り後はリリーフもスターターもクローザーもこなすスイングマンとして獅子奮迅の活躍を見せています。A+ではリリーフをこなしていましたが、シーズン中盤に昇格したAAAとAAではスターターとしての起用が増えているようです。球種のレパートリーやコントロールのよさを考えるとこのままスターターでという考えも浮かびますが、このままTB内部で昇格するとなると柔軟な起用法はメジャーでも採用されるかもしれません。


7(210). ジョー・ライアン(Joe Ryan):RHP:右投右打:6-1/185: California State University Stanislaus:$147.5K($205.2K)

成績

ドラフト当時はマイナーカンファレンス出身でなかなか情報が見つからず空白としましたが、プロ入り後はマイナーで圧倒的な成績を残し、21年シーズン途中にネルソン・クルーズらとのトレードでMINへと移籍しメジャーデビューも果たしました。球速自体はメジャーでも遅い方に分類されますが、持ち前のコマンドでノビのある4シームをいい高さに投げ込み、空振りを奪っているようです。ただ、なまじコントロールがよくストライクゾーンにそれほど球速のないボールが集まるだけにハードヒットを食らう確率は高いようでK/BBの高さの割には防御率が高いスターターになりそうです。


総括(2018)
全体上位100位以内に6個の指名権を持って臨んだ今ドラフトは、上位でハイシーリングなタレントをかっさらうと後は固い指名に終わった。投手はやはり上位2人のLHPに注目が集まる。マシュー・リベラトリは、今ドラフトの高校生LHPではトップレベル。ブレイク・スネルのようなセンセーショナルなシーズンを送ることができるだろう。一方で、ショーン・マクラナハンはハイリスクハイリターン。マット・ムーアのようなキャリを送る可能性もあるが果たして。野手はパワーツールよりも、アベレージと出塁率を重視した方針。ニック・シュネルがどれほどのインパクトを残せる選手になるのか見ものである。ブレンダン・マッケイに続く二刀流選手、タナー・ドッドソンにも注目したい。

総括(2021)
リベラトリは2度のリーグ優勝に大きく貢献したアロザレナの交換要員として十分TBとしては元が取れたでしょう。STLも確実にスターターとして計算できる投手を好んでいるのでWin-Winなトレードになりそうです。スネルほどインパクトのあるスタッツを残すシーズンはなさそうですが、逆に言えばスネルほど不安定なキャリアになることもなさそうです。また、マクラナハンのコントロール難の改善であったり、下位指名のブラッドリー、ライアンのブレークなどさすがTBと唸るような成長を遂げている選手が多く、ここまで実りの多いドラフトも珍しいでしょう。
野手に目を向けてみると、シュネルとフランクが故障で出遅れている中、プロクター、ウィザースプーンがオーストラリア修行を終えて一皮むけて戻ってきており、満点とは行かずともトップレベルの野手指名がなかった中で十分な収穫。マッケイ同様にドッドソンの二刀流挑戦が厳しい状況になっているところくらいしかケチをつけるところがありません。

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