【MLBドラフトレビュー】3年後...2020ドラフトレビューARI編
目ぼしい選手を5人ピックアップして、ドラフトから3年経った選手達の活躍を見ていきます。
凡例
ラウンド(全体指名順位) 名前(Name):ポジション:投打:身長/体重:出身校:契約金額(ボーナススロット)
簡易レポ
成績
コメント
1(18).ブライス・ジャービス(Bryce Jarvis):RHP:右投左打:6-2/195:Duke:$2.65:$3.48M
90マイル前半の速球とスライダー、チェンジアップのコンビネーション。今シーズン、球速が3~4マイルほど上昇。Max96マイルをマークすることも。同時進行で取り組んでいたスライダーの改善もキレが増した。元より評価の高かったチェンジアップも優秀なボール。これほどの改造を敢行してもコントロールが崩れることはなく、コマンドも優秀。ブレークを果たし1巡目候補に。
プロデビューを果たした21年はいきなりAAにまで昇格したものの、防御率も4点台に収めまずまずの成績を残します。
AAスタートとなった22年はおそらくブライス・ジャービスのキャリアワーストの年となったでしょう。25試合に先発して防御率は8点台。10失点となった試合が2度もあり、いいところなしでシーズンを終えることとなりました。
このままフェードアウトするかとも思われましたが、23年は昨年苦戦したAAを3試合で卒業。打高のAAAでも破綻することなく持ちこたえ、8月にはメジャー昇格を果たしました。メジャーではおもにリリーフとして登板し、失点を少なく切り抜けましたがポストシーズンでの登板の機会はありませんでした。
アマチュア時代から取り組んできた球速上昇はピークに達した感があり、現在は平均で95マイルをマークしています。ただ、ムービングに欠けており、捉えられやすいボールになっています。その他の変化球でもなかなか空振りが奪えず、コントロールがいいのにボール球を振ってもらえなくなり四球が増える結果となっています。
メジャーチームのローテーションはまだ不確定な要素もあるので、スポットでスターターを務めることもありそうですが、定着するにはまだ時間がかかるでしょう。
CBPA(33).スレイド・セッコーニ(Slade Cecconi):RHP:右投右打:6-4/212:Miami:$2.38M:$2.2M
90マイル中盤の速球とスライダー、カーブ、チェンジアップのコンビネーション。速球は最速で97マイルをマーク。試合の序盤は95マイル程度の球速を維持できるが、中盤から明らかに球速が下がるスタミナ不足が欠点。カッターとも形容される鋭いスライダーがアウトピッチ。ブレーキングボールは発展途上。コントロールはよく、コンスタントにストライクを投げるため四球は少ない。
プロデビュー以降一貫してスターターとして起用されて期待に応えています。
デビューイヤーとなった21年は故障もあって12試合の登板に終わりましたが、以降の2年間はいずれも20試合以上に先発し120イニング以上を消化するワークホースっぷりを披露。失点が多くなり防御率こそ高くなってしまいましたが、持ち前のコントロールの良さが失われることはなく余計なランナーを出さずに投げることができていました。
今年はメジャーにも昇格し、4試合に先発。ワールドシリーズこそロースターから漏れましたが、ポストシーズンでの登板機会もありました。
良くも悪くもアマチュア時代からカタログスペックが変わっておらず、速球とスライダーの2ピッチの合間にカーブとチェンジアップを挟むピッチングスタイルのままです。
上述のジャービス同様メジャーチームの流動的なローテーションに食い込める可能性はありますが、スライダーと速球以外に信頼できるボールを見つける必要がるでしょう。
4(119).AJブコビック(AJ Vukovich):OF:右投/右打:6-4/202:East Troy HS:$1.25M:$483.K
HRダービーで準優勝したパワーポテンシャルの高さが魅力。コンパクトに振り抜くスイングでハードヒットを飛ばす。スピードは平凡。アームの強さがあるため、OFを守らせる分には問題はない。元々3BだったためIF経験もあり、1Bに入ることもできる。バスケットボールの選手としても活躍しており、本人もバスケットボールが大好きとのこと。
アマチュア時代同様プロに入っても一番目を引くのはやはりパワーツールでしょう。3シーズン連続で2桁HRをクリア。クラスが上がるごとに本数を増やしており、フルシーズンをAAで過ごした23年はキャリアハイとなる24HRをマークしました。
長打を狙いすぎて打率が落ちるということもなく、一定の水準をキープしています。過去2年はあまりにもアグレッシブにスイングをしかけるため四球の少なさが目立っていましたが、23年は過去2年分の四球数の合計よりも多く四球を選んでおりキャリアワーストとなった打率とは対照的に出塁率はキャリアハイとなりました。
若干の三振数の多さは気になりますが、23年のK/BBと打率を維持することができればメジャーでも中軸を打つことができそうです。
23年からは完全にOFへと転向。オーバーサイズ気味にみえて以外とアジリティは高く、足を引っ張ることなく守備をこなしてくれそうです。
5(149).ブランドン・ファート(Branodn Pfaadt):RHP:右投右打:6-4/220:Bellarmine University:$100K:$360.8K
90マイル前半の速球とスライダー、チェンジアップのコンビネーション。速球は最速で95マイルをマーク。ヘビーシンカー系でゴロを打たせやすい。アウトピッチはスライダー。典型的なシンカー&スライダー系のピッチングスタイルだが、ただのグラウンドボーラーではなく奪三振能力も高い。コントロールは悪くないが、フルエフォートなデリバリーはリリーフ向き。
プロ1年目からいきなり22試合に先発し130イニング以上を消化。内容も伴っており、イニング以上の三振を奪いつつ、四球数を抑え防御率も3点台に収めました。
続く22年も21年以上のフル稼働となりながらも内容は前年を上回る活躍を見せます。奪三振数は200の大台を突破。打高のAAAでも防御率を2点台に抑えました。
23年は5月にメジャーへと昇格すると、オプションでマイナーへの出戻りもありつつも18試合に先発。レギュラーシーズンの内容は防御率5点台と冴えませんでしたが、ポストシーズンでも起用され初戦こそ奮いませんでしたが以降は最低限試合を作りチームのワールドシリーズ進出に貢献しました。
アマチュア時代のシンカー主体の速球から4シームをメインにシフトチェンジ。シンカーも封印したわけではなく、要所で使い打者の目線を変えています。
スライダーのクオリティはアマチュア時代からさらに進化しており、マイナーで大量の奪三振をマークする要因となっています。
レギュラーシーズンではなかなか結果を残せませんでしたが、ポストシーズンでの投球が続けば24年もローテーションを回すことができるでしょう。
また、プロ3シーズンで460イニング以上投げているにもかかわらずIL入りは0と耐久性は最高クラス。故障せず安定して150イニング以上を消化するARIの大黒柱となりそうです。
総括
1巡目の2人はメジャーに到達しましたが、ローテーションの一は確約されておらずリリーフでの起用がメインとなっています。いずれもマイナーでの実績は十分なため、スターターとしての起用も考えられますが場合によってはトレードの弾となるかもしれません。
1巡目の2人の投手とは対照的にブランドン・ファートはメジャーで結果が出せなくともスターターとして起用されつづけ、ポストシーズンで結実しました。ベストツールが耐久性と言ってもいいほど頑丈で、フロントからしても計算が立ちやすいのかもしれません。
唯一の野手指名となったAJブコビックも順調にステップアップしており、24年中のメジャー昇格も視野に入っています。
全体としてみるとローリスクの大学生投手が3人既にメジャーに到達しており、ボーナススロットの3倍近い金額を出した高校生野手も確実にメジャーに近づきつつあり現時点で既に大きな成功を収めたと言えるでしょう。