【MLBドラフト】3年後...2019ドラフトレビューCLE編
目ぼしい選手を5人(場合によっては4人)ピックアップして、ドラフトから3年経った選手達の活躍を見ていきます。
凡例
ラウンド(全体指名順位) 名前(Name):ポジション:投打:身長/体重:出身校:契約金額(ボーナススロット)
簡易レポ
成績
1(24).ダニエル・エスピーノ(Daniel Espino):RHP:右投右打:6-3/200: Georgia Premier Academy:$2.5M($$2.83M)
大きく腕を引くデリバリーが特徴。最速99マイルをマークする速球が最大の武器。このストレートでコンスタントにストライクを稼ぐことができ、アウトピッチとしても使っている。キレのあるスライダーも高評価。タイミングを外すチェンジアップ、カーブも見せ球としては有効。ベースカバーを怠るなど投球以外の面で問題ありか?
21年にキャリア初となるフルシーズンを経験。A-A+で20試合に先発しました。防御率はA+昇格後に悪化しましたが、K/9、BB/9共に昇格後の方がよい数字となっています。昨年はAAで好スタートを切りましたが、肩の故障で4試合のみの登板に留まりました。
ドラフト時よりも球速はさらに速くなっており、故障前の段階では最速で101マイルをマークしています。ムービングにも高い評価を得ており、速さだけがウリになっているわけではないようです。ドラフト時と変わったのがデリバリー。大きく腕を引いていたテークバックがよりコンパクトになりました。無駄な動作が減ったからか、プロでは経験を積む度に四球数が減ってきており、アマチュア時代の荒っぽさは取れてきているようです。
不安点を挙げると昨年の肩の故障とマイナーのレベルが上がるにつれ増加傾向の被本塁打がありますが、大量に三振を奪う支配的な投球ができるエース候補であることには変わりないでしょう。
Daniel Espino was lights-out!
— MLB Pipeline (@MLBPipeline) April 16, 2022
The @CleGuardians' top pitching prospect fanned 7 over 4 2/3 hitless frames for @AkronRubberDuck. pic.twitter.com/WPnmu6RtqS
3(101).ジョー・ナランホ(Joe Naranjo):1B:左投左打:6/180:Rueben S.Ayala HS:$770K($577K)
シンプルなスイングでハードヒットを飛ばすスラッガー候補。パワーポテンシャルの高さが最大の魅力で、小柄な体型ながらもボールを遠くへ飛ばすことができる。アプローチも悪くなく、同じミスを繰り返さない集中力の高さを持つ。高校時代は投手としてマウンドに立つこともあったためアームは平均以上。1B守備は平凡で、スピードも平均かそれ以下。スポットでOFに入ることもあるかもしれないが、主戦場は1Bだろう。
21年はA+でフルシーズンを過ごしましたが、OPS.700以下と不発に終わりました。再度A+のスタートとなった昨年は18HR&OPS.778とまずまずの成績を残しています。
体格はドラフト時から18ポンド増えており、パワーアップに成功しています。ただ、身長はドラフト時は大きく申告していたのか、計測ミスだったのか実際は5-8しかないようです。この体格でA+とはいえ18HRをクリアできるパワフルさは恐れ入りますが、今後さらにパワーをつけるというのは難しいかもしれません。ピッチセレクションは悪くなく、BB%も2年連続で10%以上と高水準を維持しているため、多少長打数を落としてでもアベレージを意識したアプローチに変えた方が全体的な数字はよくなるかもしれません。
ただ、そうは言ってもポジションは1Bに限定されており長打を捨てるとバリューががくっと下がるのが痛いところ。今の成績でもセンターラインであれば十分なのですが如何せん1B以外に守るところがないので、わざわざ1Bとして起用するほどの選手かと言われると肯定しづらい現状となっています。
5(160).ハンター・ギャディス(Hunter Gaddis):RHP:右投右打:6-6/212:Georgia State:$415K($324.1K)
90マイル前半の速球とスライダー、カーブ、チェンジアップのコンビネーション。速球は最速でも93マイル程度だが、シンカー気味に動かしゴロを打たせることができる。アウトピッチはスライダーで、ホームベースの内と外を使ってピッチングを組み立てる。ドラフトイヤーにK/9を上昇させることに成功したが、被本塁打が多くなり防御率が悪化してしまった。スライダー以外のブレーキングボールのクオリティがイマイチなため、リリーフ転向も有り得る。一方で、大学3年間ローテーションを守り続けた耐久性も魅力。
プロデビューイヤーからいきなり10試合以上に先発すると、21年はA+で19試合に先発、昨年はメジャーも含めて25試合に先発と馬車馬のように投げまくっています。内容も伴っており、防御率こそ4点台になっているものの毎シーズンイニング以上の三振を奪うピッチングを見せています。
球速はプロ入り後最速で96マイルと速くなったようですが、安定はせず球速帯はアマチュア時代と変わらないようです。当時ベストピッチとして紹介したスライダーよりも落差が大きいチェンジアップに高い評価を得ています。ただ、ブレーキングボールの扱いが拙い点は変わっておらず、そのせいかおのずとそれほど速くない速球の投球割合が増えてしまいドラフト当時の指摘の通り被本塁打が多くなってしまっています。特にそれが顕著となったのがメジャーでの登板です。緩いコマンドと速球ではメジャーでは通用せず、2試合で7被本塁打を浴び洗礼を受けました。
まだ、2試合のみの登板ですがスターターとしてメジャーに定着するには根本的に実力不足にも見えるので速球とチェンジアップの2ピッチでリリーフに回るというのも手でしょう。
Hunter Gaddis with six K’s through five innings of work. pic.twitter.com/dclMvQUtPq
— Columbus Clippers (@CLBClippers) July 30, 2022
7(220).エグゼビオン・カリー(Xzavion Curry):RHP:右投右打:5-10/189:Georgia Tech:$125K($197.3K)
90マイル中盤の速球とカーブのコンビネーション。速球は最速で96マイルをマーク。スピードを伴ったままグネグネと動き、低めに投げて空振りを奪えるボール。鋭く曲がり落ちるパワーカーブもアウトピッチとしては優秀。コントロールも悪くない。一方で、簡単にストライクを取りに行くためか被本塁打が多い。サイズも考慮するとリリーフ転向が無難な選択か。
肩の故障で21年にようやくプロデビューを果たすと、その年にAAまで昇格。昨年はプロ初となる100イニング以上をクリアすると、メジャーデビューも果たしました。
プロ入り後より安定して球速が出るようになり、4シームにシフトしていったことで空振りを奪いやすくなりました。プロ入り後も安定してイニング以上の三振を奪うことに成功しています。ただ、上述のギャディス同様変化球に課題を抱えているようです。ドラフト時同様パワーカーブはアウトピッチとして有効なのですが、それに続く変化球がなくカウントを稼ぐ段階で痛打されてしまうことが多い様子。また、ギャディスほどではありませんが、被本塁打が若干多めな点も気になります。
この点が解決できないとギャディス同様リリーフに収まる可能性は高いでしょう。
X made 'em dizzy. 😵💫#ForTheLand pic.twitter.com/ILIfPDw5zw
— Cleveland Guardians (@CleGuardians) August 15, 2022
8(250).ウィル・ブレナン(Will Brennan):OF:左投左打:6/190:Kansas State:$163.9K($163.9K)
大学3年間で一度も三振数が四球数を上回ったことがないアプローチのよさが魅力。コンタクトスキルに優れ滅多に空振りをせず、それでいて深いカウントまで辛抱強く待つことができる。一方で、空振りを恐れるアプローチのためなのか長打は非常に少ない。スピードがあり守備・走塁の両方で十二分に活かされている。大学ではリリーフとしてマウンドに上がることもあったため、アームも悪くない。アプローチ同様成熟した性格の持ち主。
プロデビューイヤーから順調にステップアップしつづけ、昨年メジャーデビューも果たしました。プロ入り後は主要な打撃成績は全てよくなっており、昨年はついにシーズン打率.300超えを達成。また、パワフルさに欠けている点が指摘されていましたが2桁HRもクリアしており、欠点がなくなりつつあります。
アマチュア時代のアプローチをプロ入り後も崩さず維持することに成功している稀有な選手で、特に昨年はマイナーで50四球に対し69三振とハイレベルな数字を残すことに成功しています。
守備でもOF3ポジションをこなせる器用さもあり、使い勝手のよさも兼ね備えています。守備と走塁では劣るかもしれませんが、似たタイプのマイルズ・ストローが昨年不振を極めているため競争となれば守備/走塁で大差があるわけではないブレナンがレギュラーの座を射止める可能性もあるでしょう。
Will Brennan hit this through 21 mph wind blowing in. 😅
— Cleveland Guardians (@CleGuardians) October 2, 2022
First Big League bop for the kid.#ForTheLand pic.twitter.com/EaqZ4y271o
総括
1巡目のダニエル・エスピーノはCLE風に洗練され、見事に次世代のエース候補に成長しています。故障が順調に回復してれば今年のどこかのタイミングでメジャーデビューも果たせるでしょう。
投手ではハンター・ギャディスとエグゼビオン・カリーもメジャー昇格を果たしましたが、どちらもほろ苦いデビューとなりました。いずれもサードピッチに欠けるという点では共通しており、リリーフリスクを抱えていますが、この指名順位であればリリーフでも戦力になれば御の字でしょう。
野手ではウィル・ブレナンが出世株。突出したツールがないためあまり目立ちませんが、どの場面でも見ていてストレスを感じるようなプレーをする選手ではなく、どの分野でもプラスの貢献度を出せる点が魅力です。
大量に指名した高校生はエスピーノを除くとかなり厳しい状況ですが、エスピーノの成功に加えてボーナスプールの調整要員以外の大学生が全員メジャーデビューとこの上ない結果になったのではないでしょうか。