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小論文解答例【看護福祉系】「情は人のためならず」という言葉について

問.
 「情は人のためならず」という言葉は、本来、「情は、かけられる相手のためだけでなく、かける当人のためになる」(①)という意味で用いられてきた。ところが昨今、「情をかけることは相手のためにならない」(②)という意味に誤用されるようになっているという。①②の両方の解釈をふまえたうえで、「情は人のためならず」という言葉について、あなたの思うところを400字以内で述べなさい。

【解説】看護福祉系大学で出題された問題の改変です(出典は不明)。「情は人のためならず」という慣用句の本来の意味(①)と新しい解釈(②)をふまえたうえで、自由に意見を述べる問題です。②の意味で解釈されるようになった背景や理由を考えてみましょう。切り口は自由ですが、①②の解釈のいずれかに特に共感する形で書くのが書きやすいでしょう。かつ、看護福祉系の出題であるので、その専門に即した形で書くことが望ましいです。

 以下、①寄りの解答例と②寄りの解答例、二種類の解答例を示します。

【A. ①寄りの解答例】

 ①から②への解釈の変遷は、古い共同体的な相互扶助が薄れつつある世相の変化を反映していると考える。たしかに自己責任論が興隆する現代において、②の解釈になるのも頷ける。だが、人は与えることもあれば、与えられる側に回ることもある。それを忘れてしまうと、与える側と受ける側が一方向的に固定されていると感じられてしまう。すると、受ける側への優越感や蔑視が生じうる。昨今の生活保護バッシングなどの背景には、①に見られた「お互い様」精神の希薄化があるのでないか。
 私は、人をケアする上で大切なものは、与える側と受ける側の対等性であると考える。看護や介護の現場でも、ケアする側が「してやっている」という「上から目線」でいては、ケアされる側に心理的負担が生じ、それこそ相手のためにならない。よって、自分がケアされる側に回ることもあるし、ケアの中で得るものもあるということを認識しながら、ケアすることが重要である。(398字)

【B. ②寄りの解答例】

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