7月19日(火)ブレストミーティング~下村健さん・伊是名隼人さん~【前編】
2022年7月19日(火)
スポーツフィールドの本社(市ヶ谷)にて
13回目のブレストミーティングを行いました。
ゲストには
BIG BLUES代表 下村健さん
ZERO FIGHTERS代表 伊是名隼人さん
のお二方をお招きし、
代表としての想い・チームの目指す目標について
お話いただきました。
BIG BLUES
「ラグビーを通して社会に恩返しする」という理念をもとに、千葉県八千代市を中心に活動するラグビーチーム。1976年に日本IBMのクラブチームとして日本IBMビッグブルーを設立。2014年よりクラブ化し、日本IBM以外の選手も加入するように。2年前の2021年より下村氏が代表を行っている。
ZERO FIGHTERS https://zero-fighters.jp/
「礼節を重んじ、和親を尊ぶとともに結束した信頼の輪を太くする集団」という理念をもとに、千葉県千葉市を中心に活動するアメリカンフットボールチーム。2015年に任意団体として立ち上がり、当時から伊是名氏が代表を行っている。収益事業を目指すべく2019年より法人化。
トークテーマ① 競技の現状や未来
1)チームについて簡単に
下村さん:BIG BLUESはIBMという会社により、46年前(1976年)に立ち上がったチームです。2014年に「企業の部活としての活動を縮小」を決意し、IBM以外の様々な選手が加入するようになりました。上野くん(弊社広報/BIG BLUES現・キャプテン)が加入したのもこの頃。2018年から運営が変化し、昨年、「専属で会社を作ろう」と、一般社団法人BIG BLUESが誕生しました。その代表を私が行っています。
チームのコンセプトに「ラグビーを通して社会に恩返しする」を置き、チーム目標としては日本最高峰の「リーグワン」に「2030年に昇格」を目指して活動しているチームです。地域・企業・人・スポーツをうまく絡めて成長していこうと努力しています。
ー2014年以前の雰囲気は今と全然違った?
下村さん:そうですね。当時は今目指している日本最高峰の「トップリーグ(現リーグワン)」にも所属しており、プロ選手・外国人選手なども在籍していました。当時は日本の中でも有数のクラブでした。
伊是名さん:ZERO FIGHTERSは2015年、今から7年前に立ち上がりました。最初は任意団体として始まり、「収益事業を目指そう」と2019年に法人化、2019年に会社を立ち上げ、社会人クラブチームとして活動しています。
私たちは「モラルを大切に」を掲げていて、何となくアメフトに携わるのではなく、ルールを守って安全にアメフトをやることを前提として、活動しています。
選手同士・スタッフ、選手間で「本音の対話を通じてZERO FIGHTERSの一員でいよう」、目標として「アメフトを通じて日本を元気にしよう」という思いで活動しています。チームが始まって7年たち、ようやくその思いが浸透し始めているのかな、という気はしています。
ー代表になられてどのくらいですか?
下村さん:2年目です。
伊是名さん:8年目です。
チーム代表として苦労したこと・つらかったことは?
下村さん:僕はまだ2年目なので、去年はチームを存続させることで精一杯でした。45年たって、「ここでチームが終わるのか」くらいまで行ってしまったんです。そこからのチーム立て直しだったので、一番キツかったのはそうだな…時間が相当取られましたね。もう一つ会社をやっているのですが、そっちに時間を取れなくなり、BIG BLUESに注ぎ込む時間が7割くらいでした。それが一番キツかったです。
ーちなみに別会社ではどんなことを?
下村さん:パーソナルジムを経営しています。
ーそれで7割チームの再建に時間をかけたということは、極端な話、収入にも影響があったということですよね。
下村さん:そうですね。夜の時間にパーソナルジムにはお客さんがたくさんいらっしゃいますけど、その時間を削って、チームの練習に行くとか。
「どこまで優先すればいいのか」というのが自問自答でかなり苦しみましたね。
ー時間の割合がかなり増えたというのが大変だったのですね。
下村さん:はい、僕は自分でやっちゃうところがあるので、もっと任せたいなと思って。任せるって難しいですよね。
今は2年目になって、ある程度運営の仕方がわかったので、それほどの苦しみはなく、楽しいは楽しいです。
ーチームの中のマネジメントも含めて、再建で大変だったところがあれば教えてください。
下村さん:やっぱりお金でしょうね。…こんなに全部言っちゃっていいのかな?全然お金のないチームだったので。今までついていたスポンサーさんも離れていったタイミングだったので。
あとは練習場所ですね。ホームグラウンドがないので。確保が大変でした。
ー伊是名さんは8年目になられて、「チーム代表として苦労した・つらかった」と思うことはどんなことですか。
伊是名さん:下村さんと同じで、やっぱり資金面を工面するのが大変ですね。チームを始めるときに本当に何もなくて。ボールもないですし、グラウンドもないですし、何もないところからスタートしたので。用具の準備や選手の要望とか、そういったところを揃えないといけないところで、資金面では自分の資金も使って…2年くらいかけてものが揃ってきたかなと。ようやく走り出したと思ったのは3年目くらいで。
同時にチームのマネジメントもスポンサーの問題とか課題とか、いろんな問題が出てきたので、そこのところを潰しながら、四苦八苦やっているといった状況です。
ー資金と時間の部分は共通の悩みなのかなと感じました。ありがとうございます。
2)チームの代表として大切にしていることは?
下村さん:…広い話になるんですけど。「関わっている人たちの人生が豊かになるのか」を常に考えています。例えばチームのだれかが「(何かを)やりたいです」といったときに、「本当にその人の人生が豊かになるのか・苦しくないのか」というのを考えていますね。
ー「ラグビーを通して社会に恩返しする」という理念を掲げてらっしゃるからこその考えな気がするのですが。
下村さん:そうですね。そこに繋がっています。「社会に対して何ができるか」を達成したとき、もしくはしている最中の自分たち、自分は「豊かになっているのか」を常に見ています。
…ちょっと堅い話になっちゃったので違う話にしましょう(笑)
ーチームメイトの上野さん(当社広報/BIG BLUES現・キャプテン)、「そう言われてみれば、自分たちの行動ってそういうところに通じているな」と思いますか?
上野さん:やっぱり、ありますね。みんなの意見を大切にしてくれますし。チームで一番熱い男なので。(笑) 逆にチームメンバーは「下村さんを男にするために頑張ろう」と話しています。そこは…尊敬しています!(笑)
ー聞いてるこっちが恥ずかしくなりますね。(笑) ありがとうございます。
ーそしたら伊是名さん、お伺いしたいのですが。
伊是名さん:めちゃくちゃ話しづらいんですけど。(笑) 下村さんがいいこと言いすぎて、これ以上はないですね。(笑)
ー「豊かになるかどうか」の話をしていらっしゃいましたけど。
伊是名さん:そこは下村さんのお話聞きながら、意識的にはありませんでしたが、無意識的に豊かになるかどうか、という判断はあったかなと。
似た意見になってしまうかもしれないんですが、私はいろんな選手やスタッフが声をあげることによって、どんなバリュー(価値)になって影響するかは常々考えています。正解だったかどうかは後にならないとわからないので、どういった価値をどの部分に及ぼすかは冷静に見ています。
とはいえ、慎重になりすぎると「何もできないじゃん」となってしまうので「前に進もう、やってみよう」と、そこから引くなりなんなりを二足のわらじで考えるようにしています。
ー伊是名さんの現役時代・アサヒビールのチームが掲げていた、大切にしていたことは何なのでしょうか?
伊是名さん:2000年に入るまではアサヒビールがアメフト界をけん引していたトップチームでした。その切り替えの時に私は入団したんですけれども、チーム理念として「アメフト界の輝く星になろう」、常にアメフト界の先頭を切って輝く星になるんだというものがあり、チームのシンボルが星だったので、ロイヤリティにもなっていました。トップチームであるという責任感と、維持しなければいけないという怖さ、挑戦的なものを持ち合わせていましたね。
ーいちばんキツかった時に自分を奮い立たせたものは何でしょう。
下村さん:一番キツいときは…自分の子供が奮い立たせてくれましたね。子供もラグビーをやっていて、現在中学1年生。2030年にトップリーグ入りを掲げていて、10年後、自分の子供が23歳~24歳。その頃に子供が地元であるBIG BLUESに帰ってきたら…なんて素敵なドラマが生まれるんだろう、と考えています。今いる選手には申し訳ないですけど。(笑) 子供の顔が浮かびますね。
伊是名さん:チームを立ち上げる1年前の2014年、新聞記者の方に相談したときに言われた言葉が心に残っています。ことわざなんですが、「井戸を掘るなら、水の湧くまで掘れ」(石川理紀之助)という言葉をもらいました。「チームを立ち上げるなら、水の湧くまで諦めるな」ということですね。
実はZERO FIGHTERSが立ち上がるときに、アメフトの社会人チームが設立されるのは協会の記録にないくらい珍しいことで、とても周りの目が冷ややかで、「やめとけ」と止められました。どんな時もその言葉が支えになっています。もちろん、関わってくれている皆さんにも支えられていますが…。
3)仕事と競技の両立について
下村さん:仕事100%競技100%でやってほしいのはもちろんなんですけど、どちらも相乗効果を生み出せるように、足して300%400%になるぐらい、人として成長してほしいと思いますね。
それぞれの役割を達成して(チームの)一つの目標を達成するように、皆さんの会社も様々な部署やお客様がいて、そういった関係や部署とのコミュニケーションなどは、アスリートの方は特に長けていると思うので、専門分野にのめりこんでいって、先々「スポーツやっていてよかった」と思ってくれたらいいなと思います。
ー選手の中で仕事と競技の両立ができているか心配な人もいますか?
下村さん:そうですね。「転職します」「社畜です」と言っていたりしたら少しは心配かなと思いますが、競技を笑顔でやっているのを見ると、大丈夫なのかな、と思ったりします。そんなに仕事について深く聞くことはないので、そこまで深刻には捉えていないです。
ー下村さんの現役時代・キヤノンの時にはデュアルキャリアでお仕事されていたんですよね?
下村さん:そうですね、私は若いころキャノンで働きながら競技をしていました。当時キヤノンは弱かったので、昼仕事をして、夜ウェイトトレーニングや自主練をして、土日に試合・練習をして上のリーグを目指す、という形をとっていました。
ーデュアルキャリアを行う中で、工夫していたことはありますか?デュアルキャリアアスリートにぜひ伝えたいと思い、お伺いしました。
下村さん:スポーツの話をするのが好きだったので、営業先でアイスブレイクでそういう話をして、潜在的なニーズを深堀していくというのは意識していました。
ーご自身の競技中(監督中)のご自身と、運営・経営をしているご自身の違いや、選手の仕事と競技の両立についてどのようにお考えですか。
伊是名さん:まず自分がそれを実行できていないと人にそもそも言う権利はないと思うので、評価は他者なのですが、自分なりに新卒からそこは意識してやってきました。
とはいっても、お給料をもらっているのはどっちかというと本業だと思うので、一歩は本業のほうに身を置いて、内部スタッフや役員、本業の方々から信頼を得られることに全力を注いでいました。仕事を一生懸命にやると周りから支えられるというか、「今日は早めに上がっていいよ」というおいしい声をいただいたり、(練習や試合への)融通が利いたりするので、まず周囲に理解してもらえる環境を作り出すことがデュアルキャリアの難しさなのかなと思います。
でも、スポーツをやる以上は(アマチュアスポーツは特に)周囲の理解を実現しないといけないし、自分がお手本にならないと競技との100%の向き合い方はできないと思うので、自分自身からやらなければいけないと思っています。
対選手については、現在2部の立ち位置です。自分は最初から1部にいたので、会社は最初から理解はしてくれている環境でした。
今の選手たちは逆なんですよね。仕事を先に選んで、空いた時間にアメフトやろうかな、というスタンスが違うので、「もっとアメフトがしたい」と転職する選手もいますし、週1回の練習にも来れないという選手もいて、最初のスタートラインが違うので、言いづらさといいますか…。でも、好きだからやるのであれば、そういう根回しというか、交渉をしながらしっかりやってほしいと思います。
ー疑問に思ったのですが、練習の参加頻度と試合出場率のバランスってどうなっていますか?部活動では基本参加という形がありますが、デュアルキャリアの特殊なポイントとして練習参加率=試合参加率ではない気がするのですが、お考えをお聞かせ願いたいです。
伊是名さん:下村さんはどうお考えですか?(笑) 先に答えさせていただくと、私の中では軸は「競争環境があるかないか」で分かれてくると思います。残念ながら今のZERO FIGHTERSは2部で、ぶっちゃけた話、「誰でも出られてしまいます」というのが今のチーム状況です。
ただ、自分自身はトップリーグの「練習に参加していないと、試合に出る権利はない」という環境でやってきたので、そのレベルに持っていきたいのだけれど、なかなかそのレベルに持っていけないというジレンマがあります、というところで下村さんにバトンタッチします(笑)
下村さん:でも一緒ですね。競争環境をもっと作りたいなと思います。各ポジションで3~4人ライバルがいて…その環境を作るのが我々の仕事なのかなと思います。自分のことを「環境づくりおじさん」と言っています(笑)
環境づくりが一番大事かと。そうなると(試合に出れなくても)「しょうがないか、練習行こうか」となると思います。あと何年でしょうね…1年か2年でその環境は整えたいなと思いますけどね。
やっぱりどのチームもどのスポーツもいろんな会社で働いていたりするので、「スポーツが一番じゃない日」ってあるんですよ絶対。そのバランスが難しいですね。ジレンマというか、もどかしいです。それも含めてやっていくのが楽しいのかなと。
ー選手の評価基準って持っていたりしますか?選手の評価の見える化につながってモチベーションになると思ってます。もし考えがあればご教授いただきたいのです
下村さん:そんなたいそうなものは持ち合わせていないですよ…(笑)
ただ一つは練習参加率のところは数値化しやすいですし、試合の中でのスタッツでの評価かと思いますね。タックル成功率とか。
ー会社でも人事評価があるくらいですから(笑) 仕事と競技の両立の中での評価って特に難しいですね。
ーちなみに、(そのようなシステムが)あったら、使ってみたい?
伊是名さん:そこに闘争心を芽生えさせるきっかけになるのであれば、チームにプラスになるとは思っています。その評価が正しいかどうかは置いておいてですけど、何かの数値化(見える化)はできると思います。
ーこれまた別テーマでやんないとですね(笑) 素晴らしいご意見やご質問が生まれたなと思っています。
4)チームとして目指している目標とのギャップは?
伊是名さん:まずZERO FIGHTERSは、「地域密着型チーム」を目指していて、そこを目標として設定しました。なぜそのような目標が生まれたかと申しますと、アメフト界がそもそも実業団リーグ(全チーム)、部活だったというところからスタートしていて、ラグビーのリーグ1やJリーグ、Bリーグなどのように「地域密着型にしなさい」という協会規定がないんですね。
ただ、現在では逆転して、今では9割がクラブチームになっています。なので、私たちは「地域密着」を謳っていますが、トップチームは実業団チームの名残がまだあって、根深く残っているので、アメフトをやっていない方々からするとイメージが薄く、見たことすらないという人が多いギャップがあります。
そもそも地域への理解や密着の手段をどうすればいいのか、という問題があって、その先にファンベースといった収益事業に向かって、ラグビーなど他のスポーツを真似られるところからスタートしなくちゃなと思っています。
下村さん:競技面でいうと2030年リーグ1昇格が一つの目標となります。もう一つが、伊是名さんもおっしゃった「地域貢献」というところですね。我々の「地域」というところも広くてですね、千葉県の東京寄りのエリア・東京都の中でも東側のエリアが活動している地域になるんですけど、なかなかホームグラウンドがないこともあって、「ホームタウンはここです」といいにくい状況です。
「どの地域に」というよりかは「ファンの皆さんとどうチーム作りをしていこうかな」というのでいろいろと取り組みをしています。BIG BLUESといったチームを介したコミュニティを作っていきたいのと、ファンの方々の意見が吸い上げられて、一緒にチームを作っていくというところを目指して、そういうチームになろうとしています。それも2年目ですね。
次回
7月19日(火)ブレストミーティング
~下村健さん・伊是名隼人さん~
【後編】
地域密着を謳う両チームに、より深い質問を投げかけていきます…
この2チームはどのように成長していくのか??
後編もお楽しみに!!
司会/進行=小池真輝(株式会社イノセス 代表取締役)
質問者=小池真輝
岸充(株式会社スポーツフィールド デュアルキャリアSec.営業)
渡邊直也(株式会社スポーツフィールド デュアルキャリアSec.営業)
上野良太(株式会社スポーツフィールド 経営管理本部 経営企画Div.)
文章:構成=酒井優花(株式会社スポーツフィールド 営業サポート室)