#16 スポンサーについて考える2
以前、スポンサーについて考えたことがありました。
前回の記事はこちら
今回もう一度、スポンサーについて考えようと思ったきっかが、Numberのある記事を目にしたからです。
「公立校の市立船橋に胸スポンサー。部活の概念を高校サッカーが変革!」
なんと。高校サッカーにスポンサー。これは興味深いです。記事を読み、新たにスポンサーとは何か、という事を考えてみたくなりました。というわけで、今回はスポンサーについて考える第2弾です。
部活や選手が感じるメリット
記事によると、ユニフォームスポンサーは高体連主催の大会では禁止されているようで、主にJFA主催の大会に限りのようです。これはこれで色々な理由があっての事でしょうが、ちょっと残念です。高体連主催試合といえば、一番有名な全国高校サッカー選手権大会があるわけで、そこでの着用もオッケーとなると、いよいよ新たな波が来たぞ、となるんですが。
とはいえ、限られた大会のみの使用とはいえ、これは画期的な現象です。未だかつて高校スポーツにスポンサーがつくという事自体、なかったわけですから。では、それはどんなメリットがあるのか。記事の中で私立・京都橘高校サッカー部の監督はこう言っています。
学校からの資金や選手の家庭から捻出される部費などでまかなうのではなく、スポンサー企業の皆さんのサポートも受けることで、選手達の負担も減る。そして『周りに支えてもらっている』という感謝の念と、スポンサー企業を通じての社会とのつながりを持ちながらサッカーに打ち込める。
さらに企業側としては、
地域貢献や地域と成長する理念を持っており、アマチュアスポーツの支援はその活動の一環として合致します。
ということでした。
まず、選手(学生)側としては、やはりお金という面でのサポートがある、というのは大きい。正確には学生というかその家庭ですね。私も部活を経験していましたが、親が「部費」を払っていて、その金額なんてしらなかったんですが、やれ備品だ、やれ遠征だ、とそれはそれで結構かかったんだろうな、と思います。記事でも触れていましたが、色々な家庭があるわけで、それが原因で夢をあきらめる、なんて選手もいるかもしれない。でも、企業がそこをある程度バックアップしてくれれば、少し心配はなくなります。
また、監督のいっている、「感謝」と「社会とのつながり」。
実はこれも大きなメリットで、スポーツに打ち込んでいるあいだは、知らず知らずに世界が「部活中心」になって社会とのつながりなんてものは、薄いと思うのです。それを身近に感じられるというのは選手たちがこの先、社会人になっていくうえでもとても重要なのではと思います。
では、どんなつながりを感じられるのか。
それこそ感謝する気持ちです。これを言うと親に怒られるかもしれませんが、「親に感謝しろ」なんて言われても素直に「ありがとう」とは言えない世代です。それは決して悪い事ではなくて、そうだよな、なんて思います。しょうがないですよね。でも、とある企業が自分たちをバックアップしてくれている、と思うと、少なからず自然と「いつもありがとうございます」という気持ちが湧くんではないかと想像します。高校という多感な時期にそういった気持ちを持てるというのは、それこそ教育という側面もある高校の部活動において、非常に有意義な事ではないでしょうか。
企業側のメリットとは
ここまで書くと高校スポーツのスポンサーをする、という事には良い事ばかりが待っているように見えますが、実は企業にとっては、そこにメリットをみつけるのが難しいんじゃないかと思うんです。前回の記事にも書きましたが、スポンサーはボランティアではありません。やはりメリットがあってのスポンサー。WIN WINの関係こそが理想なわけで、もっといえばメリットがなければ長期のスポンサーをするのが難しくなる。
もしもプロスポーツであれば、そのチームがもつ価値がもたらすスポンサーメリットというものが存在し、それを見込んで企業もお金を出せるわけです。しかし、高校の部活は売り上げを創出するような団体ではないですし、応援するファンという人たちもかなり限られてきます。
それなのになぜ、企業は高校の部活のスポンサーになるのか。
一番のメリットは「イメージ」だと考えます。
現在企業は「イメージ戦略」に躍起です。社会のため、世界の幸せのため、自分たちは存在する、という存在価値を高め、ひいては企業ブランドを高めていく。少しでも新卒採用を有利にすすめ、他社との差別化により市場価値をあげる。そのために色々な活動を活発に行う企業も増えています。そういったイメージ戦略の中で、地元高校を応援する、なんていう行動はもっとも地域にアピールできる最高の宣伝媒体。こうやって書くとなんだかドライな感じに見えてしまいますが、先にも書いたようにメリットなきスポンサーはありえない、と思っていますので、どんなメリットがバックされるのか、を考えるのは企業として当然です。
さまざまな側面に影響がある、部活スポンサー
部活のスポンサーになることは、実はスポーツ界だけに影響があるわけではなく、もっと広い分野にも良い影響があるのではないかと思います。
たとえば、就職活動。部のスポンサーにインターンに行くなど、部と企業の間での交流が盛んになると、お互いにとって良いものが生まれるような予感もあります。当然、推薦や優遇といった事はないでしょうが、少なくとも企業は自分たちが応援している部出身の選手という安心感があり、選手側も自分たちを支えてくれた企業で働く、という志望動機が生まれる。
それから人間教育という点です。
先で京都橘高校監督のコメントにもあった「社会とのつながり」。高校年代でこれを至近距離で感じることが出来るのは非常に大きいですよね。自分たちは、こういった人たちの支えの中でプレイできている、という純粋な気持ちが生まれるというのは、サッカー選手としてだけではなく、一人の社会人を育てるという点で非常に重要です。もしかしたら学校の授業では感じることのできない体験かもしれません。
もうひとつは、部活というものの概念を変える力。このスポンサーの流れはもっと他の競技部活にも浸透してほしいですし、どんどん増えていってほしい。いまや学校は部活に超消極的な時代です。先生の待遇問題など、部活動にたいしてはネガティブな印象がどんどん増殖しています。
この流れでいくと、今後は街のクラブチームなど、部活動以外が活動のメインになっていくんだろうな、と思っていました。
しかし、今回のような流れがどんどん広がっていけば、もう学校には頼らなくてもよくなります。もちろん、今おきている流れは一部の競技、一部の学校だけで全国的にみれば、部活動はキツい状況に追いやられているのが現実です。それでも、今回の行動が一石を投じている事も事実。あとは、高体連などがもっと柔軟な考えをもってくれると、露出という面でも企業メリットが増えてスポンサーになりやすくなるんでしょうが、まぁそこは簡単にはいかないでしょうね。甲子園で胸に高校名ではなく、企業名が入った高校がプレーする姿というのは、やっぱり違和感ありますからね。でも、ユニフォームだけではなく、企業とのつながりを持つ事が出来るような気もしますし、ぜひそうなってほしいな、と思います。
公立高校にだって可能
公立高校ではあの市立船橋高校のムネに「マイナビ」が入ったそうです。マイナビは同じ船橋の千葉ジェッツのスポンサーをしているようで、まさに船橋つながり。こういう事は一部の私立だけではなく、市船のような公立高校でも可能になってきています。もちろん市船ブランドは船橋では絶大でしょうからマイナビとしても地域ブランディングの一環としてはもってこいでしょう。
高校×企業が生み出すもの
あとはこの流れがしばらく続いたのちに、選手たちがどんな成長をしていくのか。それはもちろん選手としてだけではなく、社会人として、という成長です。そこで得たもの学んだこと、企業がスポンサーとして存在してくれた事による自分の中での変化。そんな事をアウトプットしてくれると、企業もあらたなメリットが発見しやすくなります。ぜひそんな企画、機会をスポンサーからの支援を受けた高校はつくってもらいたいですね。
前回、スポンサーになることとは、夢をつなぐ行為だ、と書きました。
「お金を出す」ではなく「夢をつなぐ」という行為だと。
もちろんお金を出すんですけどね。意識の問題として、です。
今回のこの記事を読んで、その想いはさらに増殖しています。学校スポーツという意味では大学に関しては既にスポンサー企業との提携は進んでいました。しかし、まさか高校でも可能になる時がくるとは。
そして、高校スポーツだからこその価値を企業も探し、発見しています。
今回のことで、単純にお金を出して露出をする。そこに価値を感じる。それがメリット。そんな時代は完璧に終わったような気がしました。
プロチームや団体も、そこだけをメリットとして営業していてもダメな時代。もっと高い意識をお互いにもったパートナーとしての価値。そこを訴求できないと、スポンサーがつきにくい時代。
でも、それはとてもスポーツ界にとっては健全な状態のように思います。
スポーツとスポンサー。そしてスポンサーメリット。
お互いがもっと良い関係を築いていくために、何が必要か。
今後も考えていきたいと思いました。