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「どこに」打たれるかではなく「どこで」打たれるかを予測する。『ますトレ』スポーツイベント出張版Vol.2
『スポーツイベント・ハンドボール』2018年11月号から19年4月号まで連載した、升澤圭一朗さんによる「ますトレ」のスポーツイベント出張版全6回を無料公開します。今回は第2回です。
ポジショニングを考える
前回紹介した「ますトレ3メソッド」を覚えていますか? 覚えていない方のために、もう一度、紹介します。
①「どこに」打たれるかではなく、「どこで」打たれるかを予測する
②打たれるのではなく、打たせる
③セーブする時、ボールが身体にミートする瞬間を見る
今月号からメソッドの1つひとつを詳しく紹介していきます。今回、紹介するのは「『どこに』打たれるかではなく、『どこで』打たれるかを予測する」です。
シュートコース以前にどこで打たれるかを考える
まず、言葉の意味を整理してみましょう。
「『どこに』打たれるか」は、相手にどのコースにシュートを打たれるかということです。例えば、流しの上(シューターが右利きの場合、GKから見て左上のコーナー付近)なのか、引っ張りの下(シューターが右利きの場合、GKから見て右下のコーナー付近)なのか、そのシュートコースを予測することです。
「『どこで』打たれるか」はシュートをどこから打たれるかということです。例えば、サイドから打たれるのか、それともポストから打たれるのか。相手がどのポジションからシュートを打ってくるかを予測することです。
次に、GKがセーブするまでを3つのプロセスに分けてみましょう。
①ポジショニング(位置取り)
②アジャスト(さらに細かな位置取り)
③セービング(捕球)
この3つが大きなプロセスになります。そしてこの3つはそれぞれ最初に説明した「ますトレ3メソッド」の番号に、そのまま当てはめてもらっても構いません。
多くのGKは「『どこに』打たれるか」を真剣に考えています。そして、指導者もセーブできないGKに対して、「『どこに』打たれるか」を真剣に考えさせています。もちろん、「『どこに』打たれるか」を考えるのはけっして悪いことではありません。
しかし、何事にも順序があります。セービングまでの3つのプロセスに分けた際に、「『どこに』打たれるか」を考えることは、3つのプロセスでは①を飛ばして②のタイミングになっています。
この3つのプロセスはすべてが必要不可欠な要素です。なぜならポジショニングが遅れると、アジャストが遅れ、セービングが遅れ、結果として簡単に失点してしまうからです。だからこそ、僕は「『どこに』打たれるか」を考える前に、「『どこで』打たれるか」を予測することが大切だと考えています。
おもしろい例を紹介します。ポジショニングの比較です。日本リーグや世界で活躍する一流GKと、県大会序盤戦で負けてしまうGKはセービングの技術はもちろん、ポジショニングが違うのです。
トップレベルのGKがセービングするポジションはゴールマウス付近の場合もあれば、大きく前に詰めて4mぐらい出ていることもあります。一方、トップではないGKがセービングするポジションはゴールマウス付近、もしくはせいぜい2mくらい詰めるだけです。前に大きく出られれば相手が狙えるコースが限定できます【図1、2】。
多くの指導者は言います。「位置取りが違う」「前に詰めろ」と。そこで多くのGKは考えます。「どうして位置取りが合わないのだろう」「どうして前に詰められないのだろう」と。
その答えが、「『どこで』打たれるかを予測する」ことに集約されているのです。相手の攻撃がロングシュートで終わるのか、サイドシュートで終わるのか、ポストシュートで終わるのか、どのシュートもポジショニングが違います。まったく違うのに、それを考えていないGKが多いと感じています。
予測ができないと失点に直結する
サイドシュートが止められず悩んでいるGKも多いでしょう。そのGKも今のサイドシュートを打ってくると予測できていたかどうかを振り返ってみてください。
もし、サイドシュートを打ってくると予測できていたのなら、ポジショニングはほぼ問題ないでしょう。ほかのプロセスに問題があります。
ですが、もしサイドがシュートを打ってくると予測できていなかったら、そこに問題があります。そのせいで適切なポジショニング、準備ができず、セービングで後手に回ってしまうからです。
このようにポジショニングを合わせる、前に詰めるためには必ず、「『どこで』打たれるかを予測する」ことが必要不可欠です。これができないとポジショニングが遅れ、シューターにとって有利なポジショニングになってしまい、結果として失点してしまうのです。
最後に、もう一度自分のポジショニングを見直してみましょう。ビデオがある方はビデオを観てみてもいいかもしれません。セービングをする時にゴールマウス付近にずっといませんか?
その時にまず、考えなければいけないのは、そのセービングをする時に「『どこで』シュートを打たれるか」を予測することです。これを考えるだけで、劇的にポジショニングは変わります。ぜひ普段の練習から「どこで」シュートを打たれるかを考えてください。
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