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「東京オリンピックは非常に楽しみだし、待ち切れない気持ち」おりひめジャパン・キルケリー監督記者会見
12月10日、今年度初となる強化合宿を終えた日本女子代表・おりひめジャパンのウルリク・キルケリー監督が、オンライン形式での会見に応じました。合宿直前まで兼任で指揮するデンマークのクラブ・オーデンセでヨーロッパ・チャンピオンズリーグを戦ってからの来日。特例が認められ、2週間の隔離なしで合宿に参加できたものの、味の素ナショナルトレーニングセンターでは選手と近距離で接することはなく、練習にはコート2階のスロープから見守る形での参加に。これまでとは違う形での合宿を終え、今合宿の手応えやこの1年の取り組み、東京オリンピックに向けての計画などについて答えました。
【キルケリー監督】
まず、みなさんの顔がまた見られてうれしい。戻ってくることができ、(それが)とても特別なことだと思っている。
この1年間、世界中が大変な状況になったが、2週間合宿ができて非常にありがたく思っている。今回の合宿での目的は大きく分けて2つ。
1つ目は選手のハンドボールをしているようすをライブで見ること。この3~4年間でやってきたハンドボールの基本に立ち返ることも同時にしてきた。
2つ目はフィジカル面。フィジカルテストやメディカルチェックも行なった。フィジカルの面では(これまで同様)ファンクショナルトレーニングも大事なこととしてやってきた。
この1年間、日本に限らずヨーロッパでも、ハンドボール界にとって非常に難しい状況だった。前回の代表活動はちょうど1年前。熊本での世界選手権で、いいパフォーマンスが出せて、いい結果を出せた。それが今回の合宿前の最後の思い出だ。
そうしたこともあって、合宿の冒頭では、選手の顔を見ながら熊本の振り返りから始めた。この合宿は、1年前と比べていろいろ意味で違っていたから。新型コロナウイルスの影響で、合宿中もいろいろな制限があったが、選手たちはいつもどおり、プロ意識を持ってやってくれた。
この1年間、国際試合ができなかったのは選手にとって大きな痛手だ。しかし、この合宿を終えてみると、選手たちはよくやってくれたと満足している。
去年の世界選手権に向けては、大会までに多くの国際試合を行なって準備をすることができた。しかし、この合宿の冒頭には選手たちに(これまでとは)同じレベルでは今はできない、一歩下がったところからもう一度始めようと話した。
そうしたことがあって、合宿のテーマとしては「ステップダウン」。基本に立ち返ってやること。同じレベルに戻るには時間がかかるということを繰り返し話した。
基本に戻るのは攻撃、速攻、DFでも同様だ。今までやってきたことをやり直すということ。選手たちが各所属チームで準備してやってきたことが確認できたので、貴重な合宿になった。
今後はこの合宿で見せてくれたことを、さらに選手たちが続けていくことになる。ここから3ヵ月ほどは各所属チームに戻って日本選手権、日本リーグ(JHL)を戦うことになる。所属チームでの試合が続くので、フィジカルの強さは保ってほしいと思っている。
あと半年ほどで東京オリンピックになるが、選手だけでなく、スタッフもチーム一堂で楽しみにしているイベント。
オリンピックに向けては、これからの6、7ヵ月だけに焦点を当ててなにかをするのではなく、(就任してからの)この4年間、そのために懸命に準備してきた。だから、チームとしても21年にオリンピックができることを楽しみにしている。
合宿の終盤には選手全員とZoomで個人面談をした。どの選手も代表活動に戻ってこられて(または参加できて)とてもうれしそうだった。
選手一堂、気持ちがオリンピックに向かっているのでいい大会になると確信している。アリガトウゴザイマス。
【以下、記者との質疑応答】
Q:日本を離れていた時に考えていたことは。
A:厳しい1年間だった。当初から、モチベーションを保つことを意識してきた。選手へメッセージを送り、何人かとはオンラインミーティングをしてきた。
もちろん、オリンピックが延期になったこと、しばらく国際大会ができなくなったことは非常に残念だが、その中でも選手とのコミュニケーション、とくにキャプテン原(希美、三重バイオレットアイリス)、副キャプテン永田(しおり、オムロン)とのコミュニケーションで、選手たちがモチベーションを保っていることがわかってよかった。この1年間、代表活動ができなかったが、チームとしてしっかりと成長できたと思っている。
Q:東京オリンピック延期をポジティブに考えるなら?
A:だれにとっても非常に残念なことだった。ここ4年ほどかけて準備してきたことが突然、延期になったので、当時はすぐにポジティブにはなれなかったと思う。
その一方で、世界選手権が終わって今年が始まったころには、オリンピックには間に合わなそうなケガ人(原、横嶋彩〈北國銀行〉、河田知美〈同じく北國〉ら)がいた。ケガというのはハンドボールにはつきもので、コントロールできないが、今回の合宿は全員問題なくプレーできていたので、その点はオリンピックが延期になってもポジティブに考えられる部分だと思う。
選手たちは今、世界選手権で見せたレベルに戻る、それ以上のことを見せるということで、以前よりもハングリー精神を見せている。
Q:オリンピックに向けてどのように強化するのか。具体的に教えてほしい。
A:ここからおもしろい数ヵ月になると思う。オリンピックのような大きな大会に向かうには、国際大会でリズムをどうやって取り戻すかが必要だが、幸運なことに、このチームではだいぶ(国際大会を)経験してきている。なにが必要かわかっている選手が多くなっている。
3、4年前に比べて大きく変わったところで、選手たちが国際大会に臨むにあたって、落ち着いて、なにをしたらいいかを理解して行動できるようになっている。
Q:オーデンセ(デンマークの強豪クラブチーム)との兼任で、両立するために工夫していることは。
A:それについては、ダイジョウブ(日本語で)。
もちろん、オーデンセの仕事も大事だけど、開催国の監督というのはさらに大きな仕事。日本代表の活動をするときは(そこに)フォーカスしている。どちらのチームにもベテランで、国際的な環境に慣れているスタッフが揃っている。
そのおかげもあって、日本代表の活動時は以前と変わらず集中している。みなさんに保証する。オリンピックに対する集中は今まで以上だ。
Q:オリンピックに向けて改めて意気込みを
A:東京オリンピックがどれだけ大きなものになるかは言葉で表すのは難しいが、スポーツにかかわるものとして、到達できる一番大きなところがオリンピックだと思っている。自分はもちろん、選手、スタッフもオリンピックでベストを尽くす準備をしている。コートの中では1分1分しっかりとファイトする気持ちになっている。
チームのモチベーションは高く、みなぎっている。就任当初から「ブレイブハート」という言葉を大事にしている。その中にはガンバロウという意味もある。それはチーム内だけでなく、日本全体に戦う姿を見せるんだという気持ち(意味)も込めている。
オリンピックは非常に楽しみだし、待ち切れない気持ち。何年もこれに向けて準備してきたし、メディアの前、ファンの前でプレーできる日を心待ちにしている。
Q:来日前にどうやって連絡していたのかを具体的に教えてほしい。
A:全選手としっかりコミュニケーションを取ってきた。最初の2~4ヵ月、今年の7月くらいまではみんなにとって非常に厳しい時期だったと思う。コロナ禍でショックを受けているような選手も多かったので、その時はモチベーションを保つようにコミュニケーションをとっていた。その中でもとくに重視して伝えていたのが、家にいてもできるフィジカルトレーニングを続けてほしいということ。代表活動やチームでのトレーニングを再開する時にケガを防ぐ必要があったからだ。
同時に高野内トレーナーからも、フィジカルや栄養のことについてコンタクトしてもらっていた。この合宿の前には高野内トレーナーが、JHLのチームを回って、面談、レクチャーなどをしてくれた。この合宿の準備として非常に有効だった。
ハンドボール面としては、まず自分の所属チームで練習を再開することに集中してもらった。もちろん、リーグが開幕してからは、映像で全試合をチェックし、コンディションを観察してきた。このように準備してきたので、合宿はポジティブにやることができたと思う。
Q:熊本(世界選手権)から東京まで1年半ほど空くが、メンバー、戦術が変わるのか。
A:メンバー選考については、選手の個別の名前を言うことは普段からないとみなさん承知だと思うので、この質問についてはシンプルになる。オリンピックについては、14人+1人しか出場できないのを選手も知っている。ここから数ヵ月でしっかりと考えていきたい。
プレースタイルは、ここ4年ほどでやってきたことと似たものになる。細かなところは相手によると思う。対戦相手が決まったら、細かなところは調整していく。
Q:実戦、大型選手とのマッチアップ経験などはどのように補っていきたいと考えているのか。
A:2020年がそうだったが、実際、難しい世界になっていると思う。ここから半年、どうやって強化していくのかは、コロナ禍の影響をまだ見ている状況なので、これくらいしか答えられない。もちろん、全員でできる準備を全員でやっていくことを約束する。
Q:ファンに向けてメッセージを。
A:サポーターのみなさんへ。日本にきてから5年くらいになりますが、ファンとともにここまでやれた時間は最高のものになっています。選手たちの素晴らしいハードワークでチームは成長してきました。
熊本世界選手権では10位という結果になりました。この結果は、選手のハードワークはもちろんのこと、同時に必要なのはファンの力です。18年アジア選手権、19年世界選手権の2大会(どちらも熊本開催)で多くのファンに熱狂的な雰囲気を作ってもらって、それがチームには非常に大きな力になりました。
もちろん、大会中だけでなく、準備期間もそうで、例えば代々木でのジャパンカップでもファンから大きな力をもらいました。またあのような環境で試合ができることを楽しみにしています。
日本中のハンドボールファンのみなさま、ありがとうございます。2021年、いっしょに東京オリンピックで戦えることを楽しみにしています。アリガトウゴザイマス。
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