
「打たれたシュート」と 「打たせたシュート」 。『ますトレ』スポーツイベント出張版Vol.3
『スポーツイベント・ハンドボール』2018年11月号から19年4月号まで連載した、升澤圭一朗さんによる「ますトレ」のスポーツイベント出張版全6回を無料公開します。今回は第3回です。
筆者プロフィール
升澤圭一朗(ますざわ・けいいちろう)
GK専門のトレーニングをSNSなどにアップして話題を呼ぶ慶大4年生(連載当時、今年3月に卒業)。各地での講習会も好評を博している。
●Twitter:@masukei1118
●Instagram:@masutore
●公式YouTubeチャンネル
「ますトレ/masutore」
第1回、第2回の内容はしっかり覚えていますか。
①「どこに」打たれるかではなく、「どこで」打たれるかを予測する
②打たれるのではなく、打たせる
③セーブする時、ボールが身体にミートする瞬間を見る
第1回で紹介したとおり、これが「ますトレ3メソッド」です。今回はこのメソッドの2つ目、「打たれるのではなく、打たせる」を詳しく解説していきます。
私のSNSには、毎日のように日本中の悩めるGKからメッセージが届きます。
「股下に打たれたシュートが止められません」
「ループシュートを打たれてしまうのですが、どうすればいいですか」
そのうち、このような質問についての答えは簡単です。「打たれる」からセービングできないのです。
基本的にシュートは2つに分類できます。「打たれたシュート」と「打たせたシュート」です。そして、打たせたシュートの中でしか、セービングはできません。打たれたシュートをセービングにつなげるのは無茶なことで、だから、いかに練習中、試合中にシュートを「打たせる」か、を考える必要があるのです。
中心が正解ではない
シュートを打たせるにはまず、ポジショニングについての理解を深めなければなりません。
【図1】が一般的に言う、正しいポジショニングです。ボールとゴールラインの中心を結んだライン上になります。
ですが、「打たせる」ためにはこのポジショニングではいけません。なぜなら、中心に立っているからこそ、左右両方に「打たれる」リスクがあるからです。一見、左右どちらに打たれてもセーブできる完璧なポジショニングに見えますが、裏を返せば、どこにでもシュートを打たれてしまうポジショニングなのです。
では、相手にシュートを打たせるためにはどうすればいいのでしょうか。ここまでの説明でもう想像がつくかもしれませんが、ポジショニングをあえてずらすのです。
例えば、ゴールの右側(GKから見て)に打たせたいのであれば、【図2】のように左にずれてポジショニングするようにします。あえて片側を広くして、シュートを誘うのです。
ただ、これだけでは完全に「打たせる」ことはできません。
ここからが打たせるために重要なポイントになります。それは、セービングの初動、動き出しです。
ポジショニングを少しずらして、打たせようとすると、早く動き出してしまうことが多々あります。コースを限定しているからこそ、ギリギリまで待てなくなってしますのです。
私もコーチングをしてきた中で、そうしたGKをたくさん見てきました。早く動いてしまうと、誘った方向と逆のコースを「打たれて」しまう、早く脚を上げてしまい、股下に「打たれて」しまう、というリスクが増え、結局、「打たせる」ことができなくなってしまうのです。
シューターから見ても、早く動くGKは心理的に楽にシュートを打つことができます。対して、シュートが手から離れるギリギリまで動かずに我慢することで、シューターを心理的に追い込むことができれば、セービングにつなげることができます。
以上のことを踏まえ、大事なことはこの2点です。
1:ポジショニングをあえてずらす
2:ギリギリまで我慢して、爆発的にセービングする
この2点を守れば、「打たせる」シュートを増やすことができるはずです。
予測することがいいポジショニングにつながる
前回の内容と今回の内容は非常に強くリンクしています。相互に活用させることが打たせることにつながります。
「どこで」打たれるのかを、予測することができれば、シューターよりも先回りして、ポジショニングをすることが可能になります。
そして、ただポジショニングをするのではなく、あえてポジショニングをずらして、コースを空けておく、という流れです。
「打たせる」ためには、「どこで」打たれるかを予測することが必要不可欠です。
だからこそ、今回の内容に強くこだわるのではなく、前回の内容ともリンクさせて考えれば、スムーズにシュートを「打たせる」という感覚を身につけることができるはずです。
そして改めて述べますが、シュートは「打たれたシュート」か、「打たせたシュート」かに分類されます。「打たせたシュート」しかセービングすることはできません。ではどう打たせるのか、ということについて今回はまとめました。
次回はその「打たせたシュート」をどのように確実にセービングするのかをお伝えしていきます。
いいなと思ったら応援しよう!
