イベント設計はファン目線かスポンサー目線か【実践!スポーツビジネス道場#14】
ポッドキャスト番組「実践!スポーツビジネス道場」の文字起こし記事です。
「実践!スポーツビジネス道場」は一般社団法人スポーツビジネスアカデミ(SBA)の公式オンラインサロン「THE BASE」が毎週木曜日に配信しているポッドキャスト番組です。
スポーツビジネス界で奮闘する若手ビジネスパーソン、酒井翼さん(東京都社会人リーグ2部所属のサッカークラブ「TOKYO.CITY.FC」でスポンサー営業を担当)が日ごろの業務での葛藤や悩み、アイディアをスポーツビジネス界の第一線で活躍し、SBA代表理事を務める荒木重雄さんに壁打ちし、成長していく様子をお届けしています。
荒木)絶対これからはコミュニティだと思っているんだよね、すべてが。コミュニティをやるためにスポンサーを取る方法論としては、よくある話だけどちょっと話がずれるけど関連している話なので言うと、
マイナーチームが、「試合の価値を上げるためにイベントをやりたい⇒イベントやりたいけどお金が無い⇒スポンサーを募る⇒スポンサーを募ってイベントをやる⇒イベントができた⇒次の試合もイベントをやりたい⇒やりたかったけどスポンサーがつかなかったからイベントができなかった」という繰り返し。これはこれで必至に頑張っているからあれですが、ただありがちなのが、スポンサーが付いたからやったイベントって誰のためにやりましたか?って言うと必死にスポンサーの為にやっているわけですよ。スポンサーのロゴ入りのノベルティ配ったり、スポンサー登場したり、CM流れたり、看板置いたり。必死にスポンサー満足度を高めるという。そこで一つイベントをやったという実績は残るんだけど、ファンがイベントにおいてどれだけ楽しんだかということに目が向かないんですよ。
酒井)スポンサーの満足度だけっていう
荒木)それを追い求めてお金をいただきたいから何かアクション起こすみたいな、やればやるほどスポンサー満足度に目がいってファンに目が向かないという悪い方向に行くことが結構あって。
本当はそうじゃなくてコミュニティの力をつける・深めるという事を考えた時に、イベントはファンを幸せにするイベントであるべき。鶏と卵じゃないけど、本来はスポンサーに接点の無いコミュニティに対する理想的なイベントを組んで、コミュニティに楽しんでもらって、楽しいから人を連れてきてもらって、そのコミュニティがさらに盛り上がるというのを目指すべき。その時にしっかりお金が稼げる仕組みをビジネスプロデューサーが仕掛けておくという関係値が理想なのよね。そのうえで仮に1つのイベントがファンベースの満足度が非常に高かったとそういうイベントが出来上がって初めてスポンサーを付けたくなるわけよ。スポンサーというのはすでに成功していてコミュニティとしっかりコミュニケーションが取れているイベントであれば喜んでお金を出せる。
酒井)そうですね!
荒木)もう出来上がったいわゆるイベントに対してスポンサーは良いアピールができるし、良いイベントを支えているスポンサーということでファンからのリアクションも良いしお金も入る。
スポンサー、ファン、クラブの三方良しのみんながハッピーなイベントができる。それがいかに継続できるかというところ。最初の仕掛けの原資をどうするかというところ。
熱量が高いコミュニティに仕掛けるときに資金をためるのか、1回で終わりではなく、こういうコミュニティを幸せにしたいというクラブの思いに共感いただけるスポンサーと最初から本気で握るか。
スポンサーメリットの観点ではなく、あくまでコミュニティメリットで、一緒に作ったコミュニティを育てていきましょうという視点って、通常のスポンサーシップの営業とはちょっと違うような気がするよね。
単にCSRみたいな単純なきれいな話ではなくて、やりたい事っていうのはコミュニティを作って広めてその濃度を高めていくという事に対して、深まった暁にはスポンサーにもメリットがあるという。
Tがやりたい事をスポンサーも同じ思いで乗れるかというと、もしいれば真のパートナーになり得る。
そういうところをちゃんと考えられるかというところはでかいと思うけどね。目先の金を獲るためにスポンサーメリットを考えてイベントをやってもなかなかソーシャルインパクトはつかないよって思う。脱線したけど。
酒井)ありがとうございます。すごい今の話はぐさぐさ刺さったというか、実際僕もスポンサー営業で、営業できる物を作るためにイベントをやるとかの発想は正直僕も結構あるなとすごく思った。実際売ったりとかもあるし…。僕の一番のミッションはtoBですが、一方で翻って考えてみると熱量の高いコミュニティを作るという事に、クラブとしてちゃんと向き合えているかというと、正直まだまだだなとちょっと僕自身思ったところがすごくありました。
荒木)まあね。自分の経験で言うと昔ロッテマリーンズにいたんだけど、最初の一年目の改革の時、「ファンサービス元年」という名の下に毎日イベントをやっていた。オーナーに直談判して予算をしっかりもらっていろんなイベントを毎日、とにかく毎日イベントをやっていた。そしてこれ、一年間スポンサー付いてないんですよ。全部コスト。全部コストで一年間やり切った。何億円かけて。だけどその目的っていうのはファンサービスのロッテというブランドを作って熱狂的なファンを一人でも多く獲得してという一年目なので完全に投資フェーズ。見えてきたのはファンがめちゃくちゃ喜んでくれるベントと、あれ?いまいちだったなというベント含め、いろんな経験値を獲得できたということ。すべてが実績として残った一年に対して、二年目はうまくいったイベントを抽出してそのイベントにスポンサーを付けていった。なので一年目は投資、2年目はファンの喜ぶイベントに対してスポンサーを付けたらスポンサーも大喜びで、スポンサーのお金を使ってさらにバージョンアップする事によってファンも喜ぶし、スポンサーも喜ぶというサイクルができいった。
まあ、ロッテだからできたというか一年目にそういうお金がいただけたからできたんだけども。本質は一緒だと思うのでその規模感は違えどさっき言ったように、何とかパートナーを見つけて1発目2発目を乗り切ることができるようなお金を調達してやり切るか、あるいはそういうトータルの絵を中期的に描いてその思いに、ビジョンに乗るとか理念に乗るとかほんわかした話じゃなくて、もうすこし具体的なプランとして作った中で、連合軍で渋谷をよくするためにとか社会をよくするためにという事を一緒にやっていきましょうという事を。スポンサーさんありがとうじゃなくて、スポンサーはこっち側に一緒に座って一緒に社会・ファンに対して向き合って、成功させられるようなそういうCSRじゃないけど、そういう視点で考えるともしかしたら違った切り口の絵が描けるかもしれない。
酒井)ありがとうございます。
≪第14話 終わり≫
■登場人物
➤荒木 重雄 Shigeo ARAKI
一般社団法人スポーツビジネスアカデミー(SBA)代表理事。
株式会社SPOLABo、株式会社スポカレ代表取締役。2005年に千葉ロッテ球団の執行役員・事業本部長、パシフィックリーグマーケティングの取締役執行役員を歴任。日本サッカー協会(JFA)の広報委員をはじめ、官公庁のスポーツ関連プロジェクトなどにも多数参画。
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➤酒井 翼 Tsubasa SAKAI
J1から数えて8部に相当する、東京都社会人リーグ2部に所属するサッカークラブ「TOKYO CITY F.C.」にてスポンサー営業などを担当。
スポーツクラブで働きながら、1000万円プレイヤーになることを目指し、日々奮闘中。
TOKYO CITY F.C. 公式サイトはコチラ
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