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まだ間に合う海外移住!ワーホリ卒業世代にも効く“ノマドビザ”の魅力

海外生活を目指す人にとっては、まずワーキングホリデーが最初に思い浮かぶかもしれません。しかし、年齢制限や申請条件によって利用できなかったり、すでにワーキングホリデービザを使ってしまって次がない…というケースもあります。そんな方々に新たなチャンスとなるのが、各国で続々と導入されているリモートワーカー向けの“ノマドビザ”です。
ワーキングホリデーを使えない場合でも、ノマドビザを活用することで海外生活を実現する道が開けるかもしれません。

世界中でリモートワークが広がったことで、「自国以外に住みながら働く」いわゆる“デジタルノマド”が世界的に増えています。これを受けて、各国ではリモートワーカー向けの特別な在留資格(通称:ノマドビザ)を次々と導入中。2024年の時点で、世界50以上の国・地域がノマドビザを用意しているといわれています。

ここでは、ヨーロッパ・東南アジア・中南米地域を中心とした国々のノマドビザの条件や手続き、滞在中のポイントなどをまとめました。


ヨーロッパ地域

スペイン


2023年にスタートアップ支援法にもとづいて「国際遠隔就労ビザ」(デジタルノマドビザ)が新設されました。初回は最大1年のビザが取得でき、その後3年単位で居住許可への切り替えが可能。さらに、その3年更新後は2年ごとに延長を申請できます。

  • 主な条件

    • スペイン国外の企業と雇用契約を結んでいる、または自営であること

    • スペイン国内企業からの収入は全体の20%以内

    • 月収がスペイン最低月給(SMI)の200%以上(約2,334ユーロ以上)

    • 大学卒業などの高等教育資格、もしくは3年以上の実務経験

エストニア


「世界初のデジタルノマドビザ導入国」といわれるエストニアは、最大12か月の長期滞在が可能です。シェンゲン域内を行き来できるのも魅力のひとつ。

  • 主な条件

    • リモートワークが可能なオンラインでの業務

    • 月額4,500ユーロ以上(税引後)の収入証明

    • 在外エストニア大使館での申請が必要

    • 審査期間は約30日

その他の欧州諸国

ヨーロッパでは、20か国以上がノマドビザを提供しているため、デジタルノマドの受け入れがとても活発です。たとえば…

  • クロアチア:1年間の滞在が可能。月収2,250ユーロ以上が目安

  • ポルトガル(D8ビザ):ポルトガルの最低賃金の4倍(約3,040ユーロ)ほどの月収が必要

  • ドイツ:フリーランサー向けのビザ制度あり

  • マルタ:1年のノマドビザで、年収3万ユーロ以上などが条件

多くの国で、1年前後の滞在が許可され、家族帯同もOKというのが特徴です。


東南アジア地域

タイ

タイでは2022年から「長期居住ビザ(LTR)」の一種として、リモートワーカーを受け入れています。なかでも「海外勤務専門家(Work-from-Thailand Professionals)」カテゴリーは、最長10年(5年+5年更新)の長期滞在が可能です。
ただし、申請要件はかなり厳しく、直近2年の年収平均が8万米ドル以上(約1,100万円)であることが基本となります。もし4万米ドル以上8万米ドル未満の場合は、修士以上の学位など追加の資格証明が必要。さらに、勤務先が上場企業、または過去3年の売上合計が1.5億米ドル以上の企業であること、過去10年で5年以上の専門職としての勤務経験があることなど、細かい条件が設定されています。健康保険(補償額5万ドル以上)も必須です。
LTRビザ保持者は、海外所得が非課税になったり、滞在報告が90日ごとから年1回に簡略化されるなど、いくつかの優遇措置を受けられます。

マレーシア

2022年に「DE Rantauノマドパス」を導入したマレーシアは、東南アジアでも比較的取得しやすいノマドビザとして注目を集めています。これは「専門訪問パス」の一種で、3か月から最大12か月の滞在が可能。更新すると、最長で合計24か月まで滞在できます。
IT・デジタル系の職種であれば、年収2万4千米ドル以上の証明が必要です。IT以外の職種でも、2024年以降は申請可能になりましたが、その場合は年収6万米ドル以上(月5千ドル)の条件が加わります。
申請時には、直近3か月の銀行残高や収入を証明する書類、3か月以上の勤務契約書、無犯罪証明書、マレーシアで有効な医療保険への加入証明など、たくさんの書類を用意しなければなりません。手続きはオンラインで行い、申請者がマレーシア国内外のどちらにいても手続き可能です。

その他の国・地域

インドネシアでは、バリ島に長期滞在したいリモートワーカーのニーズを受けて、「デジタルノマドビザ」を検討していると報じられています。5年の有効期間で外国所得に課税しない仕組みが構想されていますが、2024年時点ではまだ具体化に至っていません(現状は観光ビザやソシアルビザなどで滞在)。
また、中東のアラブ首長国連邦(UAE)は比較的早い段階でリモートワークビザを導入。韓国でもノマド受け入れ策を検討・開始し、2023年に「K-デジタルノマドビザ」を新設すると発表し、今後の動きが注目されています。


中南米地域

コスタリカ

2021年に「トラバホ・レモト(リモート就労者)ビザ」を導入。最長1年間の滞在が認められ、更新も1回可能です。申請時に、月額3,000米ドル以上(家族帯同なら4,000米ドル以上)の安定収入を証明しなければなりません。滞在中は現地所得税が免除されるほか、車や機材などの免税での持ち込みや、現地銀行口座の開設も可能になります。

メキシコ

メキシコには専用のノマドビザはありませんが、多くのリモートワーカーが「一時居住ビザ(No Lucrativo)」を代用しており、最長4年まで延長可能です。申請には、月額4,400米ドル以上の収入(直近6か月)か、または7万3千米ドル以上の預金残高(直近12か月)を証明する必要があります。具体的な金額はメキシコシティの最低賃金300日分などを基準として算出されることもあるので、申請先の領事館・大使館ごとに確認が大切です。

バルバドス

カリブ海で先駆的に「バルバドス・ウェルカムスタンプ」を2020年に導入した国です。最長12か月の滞在が認められ、希望すれば再申請も可能。年間5万米ドル以上の収入が見込めることが条件で、手続きはオンライン完結でき、審査は約1週間ほど。その後、個人申請の場合は2,000米ドル、家族帯同なら3,000米ドルの手数料を支払います。

なお、アンギラやバハマ、パナマ、アンティグア・バーブーダなど、ほかにも北米・中南米地域にはリモートワーク向けビザを発行している国・地域が多数あります。

ノマドビザの主な取得条件(収入・滞在期間・必要書類)

ノマドビザの要件は国によって微妙に違うものの、おおよそ以下のポイントをチェックしておけば、どの国でも共通して準備がしやすいはずです。

1. 十分な収入・資産証明

多くの国が、リモートワーカーとして生活できるだけの経済力を証明するよう求めています。

  • 月収の目安: 2,000〜3,000米ドル(年収にすると3万〜6万ドル)を下限とする国が多め。

  • 具体例

    • コスタリカ:月3,000ドル以上

    • スペイン:月2,300ユーロ以上

    • バルバドス:年間5万ドル以上

  • 収入形態: 給与だけでなく、事業収入やフリーランス報酬でもOK。ただし安定性が重視されるので、ある程度の継続性を示す必要があります。

  • 銀行残高での代替: メキシコでは過去12か月の平均残高が7万ドルを超えていれば、収入要件をカバーできる例もあります。


2. リモートで働いていることの証明

基本的に「海外の企業などに雇用されている、または自分のビジネスを海外相手に行っている」という事実を示す必要があります。

  • 現地就労ではないことが前提:申請国の企業から給料をもらう形は認められないことが多いです。

  • 契約書などの提出: 雇用契約書やフリーランス契約書を添付して、収入源とクライアントが海外にあることを示します。

  • 国ごとの例

    • スペイン:申請前に少なくとも3か月間勤務実績が必要

    • タイ(LTR):勤務先の規模や上場要件などを厳しくチェック


3. 学歴・職歴などの資格要件

国によっては、申請者が「一定以上のスキルや職歴を持つ人かどうか」を審査します。

  • スペイン:大学卒業または専門職で3年以上の経験を要求

  • タイ(LTR):直近10年で5年以上の専門職経験や、大学院卒以上の学歴を求めるケースも

  • コスタリカ・エストニアなど:学歴要件は特になく、収入や雇用実態がクリアになっていれば申請可能


4. 必要書類

どの国でも、だいたい以下のような書類を用意します。

  • パスポート(有効期限の十分な残りが必要)

  • 申請書フォーム

  • 証明写真

  • 収入証明(給与明細、銀行残高証明など)

  • 雇用契約書または事業証明書

  • 無犯罪証明書(警察当局などで取得)

  • 医療保険加入証明(滞在期間中有効なもの)


5. 滞在期間・家族帯同

  • 滞在期間の目安: 6か月〜1年程度が一般的。国によっては更新で1〜2年に延長できるケースも。

    • コスタリカ:1年+1年更新可能

    • マレーシア:合計最長2年

    • クロアチア:更新不可(再申請は一度出国後に)

    • タイLTR:5〜10年という長期枠もあり

  • 家族帯同: 配偶者や子どもを連れて申請できる国が多いですが、国によって追加の収入要件や年齢制限が設けられる場合があります。

    • スペイン:1人目の家族には+SMI(最低月給)の75%、2人目以降はさらに+25%ずつ

    • タイLTR:子どもは20歳まで、同性愛パートナーは対象外など厳しめの規定がある例も


ビザ取得プロセス・手続き

1. 情報収集と準備

まずは各国の公式サイトや移民局で、最新の申請要件や手順を確認します。必要な書類を揃え、指定の申請フォームに記入しましょう。ノマドビザの場合、現地スポンサーが不要なところが多いのも特徴です。

2. 申請方法

オンライン申請が増えてきています。

  • コスタリカ:政府ポータル「Trámite Ya」

  • バルバドス:公式サイトでオンライン申請、約7営業日で結果が出る

  • マレーシア(DE Rantau):オンライン登録制
    一方で、エストニアやメキシコのように、大使館・領事館へ直接出向く必要がある国もあるので注意してください。

3. 手数料の支払い

ビザの発給手数料は国によって異なります。

  • エストニア:80〜100ユーロ

  • スペイン:約80ユーロ(地域差あり)

  • タイLTR:約50,000バーツ(1,500ドル前後)

  • バルバドス:2,000ドル(個人の場合)
    支払いタイミングも、審査後や申請時など国によってバラつきがあります。

4. 審査と結果通知

審査期間は1〜8週間程度。

  • 早い国だと1週間ほど(バルバドスなど)

  • エストニアやスペインは1か月前後
    審査では書類の真偽や基準に合っているかをチェックし、不備があれば追加提出や却下の可能性も。承認された場合は、ビザの発給許可通知が届きます。

滞在中の制限や義務

ノマドビザで現地に滞在する間は、その国の法律やルールに従うことが大前提です。主な注意点や義務についてまとめました。


1. 現地での就労制限

ノマドビザは、あくまでも海外からの収入で生活する人向けの在留許可。

  • 現地雇用やアルバイトは禁止が基本です。

  • スペインのビザでは例外的に、全収入の20%までなら国内企業からの収入を認めています。

  • もし規定外の現地就労が発覚すると、ビザの取り消しや罰則のリスクがあります。


2. 収入・滞在要件の維持

ビザ取得時にクリアした条件は、滞在中も守る必要があります。

  • タイLTRのように、年収・雇用先の条件などが厳しく設定されている場合、基準を下回るとビザが取り消される場合も。

  • マレーシアでは、滞在中ずっと医療保険に入っていることや、一定以上の預金残高を保つことが求められています。


3. 滞在者登録・報告義務

ほとんどの国では、長期滞在者としての登録や定期的な報告が必要になります。

  • タイLTRは通常90日ごとの居住地報告を、年1回に短縮していますが、報告そのものは必要。

  • エストニアでは183日以上住むと、市民登録の義務が生じるケースも。


4. 課税関係

各国で課税ルールは異なるものの、海外収入が非課税になるケースが多いです。

  • コスタリカやタイLTRでは、ノマドビザ利用者の海外所得を免税に設定している例があります。

  • ただし、滞在が183日を超えるとその国の税務居住者として扱われることもあり、全世界所得に対して課税が及ぶ可能性があります(スペインなど)。

  • 実際には、リモートワーカー誘致を目的としたビザの場合、現地雇用がない限り追加課税を受けにくいよう工夫されている国が多いようです。


5. 社会保障・医療

就労ビザではないので、現地の社会保障には加入しなくていい国がほとんど。ただし、

  • 民間の医療保険に必ず加入することが求められることがほとんど。

  • タイでは最低5万ドル以上の補償額が必要など、国によって保険要件は違います。

  • 家族帯同の場合は、子どもの学校教育や予防接種など、現地の制度に合わせる必要があります。


6. その他の義務

  • ビザ更新や期限管理: 期限が切れる前に更新手続きをして、更新不可の場合は出国の手続きを忘れずに。

  • アンケートや報告: まれに、滞在後に経済効果の報告を求められる場合もありますが、一般的にはそういった義務は少なめ。

  • 現地の法律や文化を尊重: ノマドビザを持っていても、当然、滞在国の法律や慣習を守る必要があります。

これからの働き方をどうデザインする?

日本ではまだ、「ノマドビザ」そのものは整備されていませんが、世界ではすでに50ヶ国以上が独自の制度を導入し、リモートワーカーを積極的に歓迎しています。自分に合った国を見つけてビザを取得し、現地の文化や生活を楽しみながら仕事を続けるスタイルは、一昔前なら想像もできなかった新しいライフプランかもしれません。
もちろん、語学や税金の問題、家族を連れていく場合の教育の問題など、現実的なハードルもいろいろあります。しかし、いまはオンラインで情報収集がしやすく、海外在住者のコミュニティにもアクセスしやすい時代でもあります。
「本当にやってみたい」という気持ちがあるなら、まずは情報収集から始めてみましょう。 時間や場所に縛られない働き方を試すことで、日本の外に眠る多様なチャンスをつかむ可能性も広がります。あなたのキャリアやライフスタイルに合った選択を、ぜひ前向きに検討してみてください。

(※本記事の情報は、各国のビザ制度や法改正により変更される可能性があります。最新情報は必ず公式サイトや専門家に確認し、慎重に準備を進めましょう。)

参考資料

1. 政府・公式サイト

2. 旅行・ノマド関連

3. ビジネス・投資・専門情報


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