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年上の後輩Ⅲ

実を言うと、出会った彼女に彼氏がいるのは前から小耳に挟んでいた。

そりゃそうだ。こんなに言葉遣いも丁寧でしっかりしていて、しかもちょっと不思議ちゃんで、時には他人の名札をじーっと見続けてみたり、ちょっと天然な部分も持ち合わせている。そのギャップが男性の心をくすぐるのもわからなくもない。

更に話していてわかったのだが、彼女は自分より数個年上だった。
「年上の後輩」だったのだ。自分からしたらどう接していいのか戸惑ってしまうパターンだ。
ここは職場で話せる人が増えた、と考えることにする。よかった。少しは職場に来やすくなった。
「改めまして、4月に異動になりましたすぱいすと言います。これからよろしくお願いします。」
と会話をしたのが9月末。随分と会話をしなかったものだ…
職場の人数も多く、全員と会話する機会が少ないという事もあったが、女性には昨今話題になる「セクハラ」にも気を遣い、業務に必要な最低限の会話だけに留めておく様にしていた。

あっ、そう言えば…
「今度●●さんの指導係だった僕の同期と会う約束をしてたんですけど…良かったら一緒に来ませんか…?」

その同期から連絡が来たの二週間前くらいだった。
「紅葉が見たい。良かったら付き合ってほしい。行くところは任せるから!」と連絡が来ていた。
その同期は車を持っていなかった。紅葉を見るにはどうしても山奥に行かないといけない。そこで偶然車を持っていた僕に声がかかっていたのを思い出した。


「えっ、本当ですか!お世話になった先輩にもお会いしたいので、是非ご一緒させてください!私の連絡先、渡しておきますね。」

メモ用紙の裏に綺麗に整った字で連絡先が書いてある。
貰う時、少しだけ、ドキッとした気がする。

#あの恋

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