他者の人生と交わるフォトグラフィ
私の秘密の星景撮影ロケーションのひとつはあまり知られていない峠にあります。
紅葉の時期なので天気の良さもあってその峠に行ってみました。
展望台の狭い駐車場に車が3台。皆高齢の夫婦です。皆さんスマホで写真を撮っていて、一眼レフを持ち出す私の場違い感が強かったです。
一通り撮影を終えてレジャーチェアに座り、景色を眺めながらパンを貪っていると、先客の奥さんが景色をバックに外枠ブロックに腰掛け、旦那さんが何度もスマホで撮影していました。
仲のいいご夫婦だなと思っていたのですが、何度も旦那さんにありがとうと繰り返している奥さん、次いだ言葉が胸に刺さりました。
「もう来年は来れないだろうからね」
私の父は癌に冒され、なんとか克服したばかりでした。まだ油断は出来ませんが。
「この奥さんもそうなのか」と思うと辛い物を感じ、思わず声をかけました。
「よろしかったらそのスマホでお二人撮りましょうか?」
自分のカメラで撮ってもよかったのですが、データのやりとりなど手間がかかってしまうため、手元にすぐ残る旦那さんのカメラで撮らせて頂きました。
初めて他人のために撮った写真は最高だったのだろうか。少なくとも感謝の言葉をくださったあのご夫婦には素敵な思い出になったに違いない。
勝手な想像だがあのご夫婦の残された時間が少ない中で、自分が少しでも役に立てたならそれは嬉しい。
初めてフォトグラファーをやっていてよかったと思えました。