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しわを伸ばす

雨は上がった。まだ雲間から太陽は見えないが、ぐんぐんと気温が上がりつつある。部屋干しの洗濯物が恋しそうに外に向かって揺れている。

実家にいる時から洗濯物はお手伝いがてらよくしていた。
母を真似して力強く洗濯物のしわを伸ばし、得意気に干していたことを思い出す。お手伝いをして「ありがとう、助かった」と言われるのが嬉しかった。

社会人になり一人暮らしになってから、余裕が無くなり、洗濯物のしわを伸ばすことを忘れた。今思えばよくあんな服で仕事に行っていたなと思う。

恋人は洗濯物はシャツから靴下まで全てしわを伸ばす。畳むときもピシッと全てが綺麗に整っている。最初に見たときは感動したけど、その手間をかける理由がよく分からなかった。

私は家事の効率を少しでも減らしたかったので、ハンガーを大量に買って、干した洗濯物をそのままクローゼットに放り込む方式をとっていた。これが究極の時短であると自負していたので。

でも、彼が畳んだ服を着た時に気がついた。とても気持ちがいい。晴れやかな気分になる。仕事に出る時はなんだか頑張ろうと思える。
こういうことか。少しの生活の手間は家事を増やすかもしれないが、心を豊かにしてくれる。

世間はどこかいつも忙しなくて、みんなが何かに追われている気がする。私もそうだ。少しずつ心に余裕がもてたらいいな。明日は晴れ予報なので、思い切りにしわを伸ばして洗濯物を干したい。

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