海を舞台に世界を旅する 9 NZ編
仕事を辞め、英語も話せず、大男が、情熱と好奇心で海を舞台に世界中を巡るノンフィクション青春ストーリー。 笑
思いっきり笑い、たくさん泣いて、仲間と共に世界の絶景に出会います。僕の大切な3年間にわたる冒険のお話
当時の書きためたノートや日記、メモをもとに書いていきます。
はじまりはじまり。
出港の日にちが決まって、船は慌ただしく準備を進める。メンテナンスのために下ろしていた大きな部品、装備、船の一部、セイルなどを急ピッチで船に再び戻していく。
朝は早いけど、日が沈んだらそれぞれ好きな時間を過ごせるゆっくりとしたペースで整備作業が進んでいたソーレンラーセンの船内も、このころは毎日残業が続き夕食を食べ終わっても作業に戻る仲間が増えてきた。
その作業はその人にしかできないことらしく、複雑なメンテナンスや、経験のいる作業は夜遅くまで続いた。僕は夜まで彼らについて行って工場で作業を見学させてもらっていた。時々「そっち持ってくれないか」と頼まれて抑えたりした程度だけど、仕事終わりに、ビールをご馳走してらったり(船にもバーがある)、片言の英語で質問したり、「船が好きなんだな」って言ってもらったりしてクルーとの距離も近くなりとても幸せな時間だったのを覚えている。
このソーレンラーセンは毎年8ヶ月の南太平洋をめぐる航海をしていて、その航海にクルーとして乗りたい若者が集まる、世界的にも結構な有名な船なんだそうだ。
2〜3ヶ月の沿岸航海とデイセイルでのクルーの訓練とメンテナンス資金の調達→2ヶ月のメンテナンス→8ヶ月の南太平洋(南太平洋の島々を巡ってイースター島まで!)航海。
というサイクルを繰り返しているそう。
船は当時建造80年を超えていたからもうすぐ建造100年の完全な木造帆船。
古いけど長年しっかりと磨かれ、むしろ風格というか、威厳を感じるような佇まいを持っていた。
「オークランドに着いたらどうすんだい?」と船長に聞かれたので、
「僕も南太平洋に乗せてくれ!」
と聞いてみたけど、やはりダメだった。
けれど船長に「僕がシドニーに帆船を持っているからそこに手伝いに来てくれないか。いつでもいいし、給料も出す。」
とい船のパンフレットを手渡された。
大きく『AHOY!!』って書いてあり、10%0FF!ってギザギザの吹き出しで書いてある。
アホイ?←船での挨拶。AHOY!パイレーツオブカリビアンでも使ってるよ!ハローより古い挨拶。
僕はこの船長を「いい人だけど、信用してはいけない人」と認定していたので、本当かな〜?うさんくせーなー?って正直思ってた。
日本の船って海外と違って働くのって結構きちんと契約しないと給料なんてんでないし(ふつうそうか)なんかこんな簡単に次が決まるんかという疑いもあった。
船長の他にも僕のことをよく気にかけてくれたテリーという、おばーちゃんクルーがいて、船の階級で言ったら、二等航海士というとっても重要なポジションの人だったんだけど、絵を描いて、船の英語の単語帳を描いてくれたり、英語を教えてくれたり、細かな仕事を教えてくれたりしていた。
テリーはとても経験があり、船ことは本当になんでも知っていた。船の外板のチェックから、デッキの張り替えまでなんでもできる人だった。
テリーにニュージーランドの他に乗れる帆船はないかと、相談していたので、船長のシドニーの帆船は相談してからにしようと思った。
テリーは船長の船はシドニーに本当に存在していて、彼は船長であり、帆船を運行する会社のオーナーであることがわかった。船長すげーな。疑ってごめん船長。
まずはニュージーランドの帆船にチャレンジしてみたい。ビザもワーキングホリデーなんで勿体無いし。
ここファンガレイからさらに北に1時間ほど車で行ったベイ・オブ・アイランズという所に帆船がいるらしい。
名前はR.タッカートンプソン。写真を見せてもらったら。素敵なトップスルスクーナーで一発でその船に決めた。乗れるかはまだ決まっていないけれど。
テリーが知り合いがいるというので、紹介してもらえることになった。
連絡を取ってくれると、来月にクルーの入れ替えがあるのでそこからなら乗れるという。ラッキーだ!しかし来月まであと3週間ほどある。どう過ごすか。。。
今からベイ・オブ・アイランドに向かうととても効率が良いのだけれども、3週間も旅費が持たない。困った。
渋い顔をしていたらテリーが「うちに来ればいいわよ。ジムもいるし。」
ジム誰やねん。
他のクルーがみんなして「それはいい!!ジムは元気かい!?」みたいな感じになった。
だからジム誰やねん。
主役であるはずの僕は置き去りにされつつ、話は進む。
ふむふむ要約すると、
テリーは、このメンテナンス時期だけ手伝いに来ている二等航海士で、8ヶ月の航海には乗らない。
今の船長もメンテナンス時期だけ手伝いに来ている船長。
正規の船長はキャプテン、ジム・コッティアという怖い人らしい。
ジムは多くの帆船乗りに尊敬されている怖い人らしい。
ジムは休暇中で、ベイ・オブ・アイランドに住んでいる怖い人らしい。
テリーの名前はテリー・コッティア。
怖いキャプテンジムの奥さま・・・
ははーーーーん。
理解した。
あったこともないけど、その怖い船長の家で三週間過ごして、次の帆船に乗船するって算段ですね!テリーさん!
えええええ!いいの!!!???
なんて優しいんだ。僕はひとまず船と一緒にファンガレイからオークランドまでの航海に乗り、オークランドでテリーと下船してニュージランドの北、ベイ・オブ・アイランドに向かうことになった。
しかしジムの噂が畏れ多いものばかりでなんか緊張する。
ちなみにこちらがジム。
こえーよ。
ジムこえーよーーーー。
続きまーす。
あなたのサポートのおかげで僕たちが修理している船のペンキ一缶、刷毛一つ、ロープ一巻きが買えます。ありがとう!!