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空いた場所に、光が差す(物語)

動画で聞き流すことも出来ます^_^
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この美咲の物語は——。
「過去に囚われ、足を止めてしまったひとりの女性が、
 少しずつ自分を取り戻していく、そんなお話です。

第一章 散らかった部屋、散らかった心

 時計の針が、静かに時を刻んでいた。秒針の音だけが、部屋の中に響いている。

 美咲はベッドの上で体育座りをし、ぼんやりと散らかった部屋を見つめていた。

床には脱ぎっぱなしの服、本棚には読みかけの本が山積みになっている。

テーブルの上には、何か月も前のコンビニのレシートや、使いかけの化粧品が乱雑に置かれていた。

「……どこから手をつければいいのか分からない。」

 ふとつぶやく・・・・。


何かを変えなければいけないとは分かっている。

でも、どうすればいいのか分からない。何かを捨てることに、なぜか強い不安を感じる。

 スマホを手に取り、何気なくSNSをスクロールする。

そこに流れてきたのは、スピリチュアル系の片付けの記事だった。

 「部屋の状態は、心の状態を映す鏡」

 

その言葉が、美咲の胸に小さく突き刺さった。

 そのとき、ふと目に入ったのは、棚の奥にしまい込んでいた祖母の写真だった。


美咲が幼いころ、大好きだった祖母。写真の中の祖母は優しく微笑んでいる。

 「美咲、物が溜まると心も重くなるんだよ。不要なものを手放すと、新しい幸せが入ってくるんだから。」

 かつて祖母が言っていた言葉が、突然思い出された。

 「……おばあちゃん。」

 写真をそっと手に取りながら、美咲はつぶやいた。

第二章 物との対話

 次の日、美咲は意を決してクローゼットの扉を開けた。

中には何年も着ていない服が詰め込まれている。

その中の一着を手に取った。

 大学時代、元恋人との初デートで着たワンピース。


久しぶりに袖を通してみると、かすかにその日の記憶がよみがえった。

楽しかった思い出。

でも、その恋はとうに終わっている。

 美咲は静かに服を抱きしめ、目を閉じた。そして、そっと微笑む。

 「ありがとう。たくさんの思い出をくれて。」

 そう言って、服を手放した。

 それから、美咲は一つずつ、思い出と向き合いながら、不要なものを手放していった。


写真、昔の手紙、使わなくなった雑貨。それぞれに感謝の言葉をかけながら、袋の中に入れていく。

 不思議と、心が軽くなっていくのを感じた。

第三章 謎の女性との出会い

 

片付けを終えた後、美咲はベランダに出て深呼吸をした。

夜風が心地よい。

 ふと隣のベランダに目を向けると、そこに白いワンピースを着た女性が立っていた。

 「すっきりした顔してるね。」

 優しく微笑むその女性は、どこか懐かしい雰囲気をまとっていた。

 「え……? どなた……?」

 

美咲が尋ねると、女性は微笑んだまま答える。

 「空いた場所には、新しいエネルギーが流れ込むのよ。あなたの心も、軽くなったでしょ?」

 その言葉を聞いた瞬間、美咲の心の奥で何かが震えた。

 もう一度その女性を見ようとしたが、気づけば彼女の姿は消えていた。

 美咲は驚きながらも、ふっと小さく微笑んだ。

 「……ありがとう。」

第四章 光が差す部屋

 朝。カーテンの隙間から、柔らかな光が部屋に差し込んでいた。

 片付いた部屋は、驚くほど広く、そして明るく見えた。


 美咲はコーヒーを入れ、窓の外を見つめながら静かに呟く。

 「部屋が変わると、心も変わるんだな……。」

 心が軽くなった分、新しい未来を迎え入れられる気がした。

 そのとき、どこかで祖母の優しい声が聞こえた気がした。

 「空いた場所には、新しい幸せが入ってくるんだから。」

 美咲は微笑みながら、深く息を吸い込んだ。

 今日から、また新しい一歩を踏み出せる気がする。


第五章 変化の兆し

 朝日が差し込む部屋で、美咲はコーヒーを飲みながら静かに息をついた。

 昨日までの部屋とは別世界のように思える。

散らかっていた床が見え、テーブルの上には最小限のものしかない。
どこか空間そのものが澄んでいるような気さえする。

 スマホを手に取り、いつものようにSNSを開こうとしたが、ふと指が止まった。

 「……今は、いいかな。」

 今まで、ぼんやりとSNSを眺めることで何かを埋めようとしていたのかもしれない。

でも今は、その必要がない気がする。

 かわりに、美咲はクローゼットの奥から一冊のノートを取り出した。

 「やりたいことリスト」

 数年前、転職を考えていたときに書いたものだ。


ページをめくると、そこにはすっかり忘れていた自分の願いが並んでいた。

 - 旅に出る
 - ヨガを始める
 - 自分に似合う服を見つける
 - 誰かの役に立つ仕事をする


 「……そうだ、私、こんなことをしたかったんだ。」

 片付けることで、ただ部屋がすっきりするだけではなく、心の奥にしまい込んでいた本当の願いまで見つけた気がする。

 そのとき、スマホが震えた。

 「お久しぶり! 美咲ちゃん、今度会えない?」

 メッセージの送り主は、かつての同僚・奈々だった。美咲が仕事に忙殺され、人付き合いを避けるようになってから、自然と疎遠になっていた友人のひとりだ。

 「奈々……久しぶりだな。」

 メッセージを見つめながら、美咲は少し考えた。そして、ゆっくりと返信を打つ。

 「うん、会おう!」

 送信ボタンを押した瞬間、不思議と胸が高鳴った。

第六章 再会と気づき

 

約束の日、久しぶりに会う奈々は相変わらず明るく、輝くような笑顔だった。

 「美咲、なんか雰囲気変わったね! すごくいい感じ!」

 「そうかな……?」

 カフェの窓際に座り、二人は近況を話し合った。奈々は仕事を辞めてフリーで活動を始めたらしい。

忙しくても、自分の好きなことをやれて充実しているという。

 「……実はね、私、最近部屋を片付けたの。」

 美咲はそう言って、少し照れくさそうに笑った。

 「へえ、それでそんなにスッキリした顔してるんだ?」

 「そうなのかな……でも、部屋を片付けたら、なんだか自分の気持ちも整理できた気がする。色んなものを手放して、やっと前を向けるようになった、っていうか……。」

 
「それってすごいことじゃない?」

 奈々は目を輝かせた。

 「私、最近ライフコーチングの仕事を始めたんだけどね。『物と心は繋がってる』って、本当にそうなんだよ。過去を手放すと、新しい未来がちゃんと入ってくるの。まさに美咲が体験したこと、そのまんま!」

 奈々の言葉に、美咲はハッとした。

 「……そうか、そういうことだったんだ。」

 改めて思い返すと、片付けを始めてから、不思議なことが次々と起こった。

祖母の言葉、白いワンピースの女性との出会い、そして奈々との再会——まるで、何かに導かれているようだった。

 「ねえ、美咲。今度うちでワークショップやるんだけど、一緒にやってみない? テーマは『物を手放して心を整える』。美咲の話、きっとみんなの役に立つと思うんだ。」


 「私が……?」

 思ってもみなかった提案に、美咲は驚いた。

 でも——不思議と、心のどこかで「やってみたい」と思っている自分がいた。

第七章 新しい扉

 それから数週間後、美咲は奈々のワークショップに参加した。 

最初は緊張していたが、自分の体験を話すうちに、気づけば自然と心がほどけていた。

 「私、ずっと部屋を片付けられなくて……でも、物を手放したら、自分が本当に大切にしたいものが見えてきたんです。」

 参加者の中には、美咲と同じように片付けられず悩んでいる人が何人もいた。彼らの表情が変わっていくのを見て、美咲は確信した。

 「私は、誰かの役に立ちたい。」

 片付けを通じて、自分自身が変われたように、誰かの人生にもそっと光を灯すことができるのかもしれない。

 そして、美咲は決意する。


 「ねえ、奈々。私、もっとこのことを学びたい。片付けだけじゃなくて、心のこと、人生のこと……。私にもできるかな?」

 「もちろん! 美咲なら、絶対できるよ!」

 
奈々は満面の笑みで答えた。

 その瞬間、美咲の心に新しい光が差し込んだ。

 あの散らかった部屋から始まった小さな変化が、気づけば大きな一歩へと繋がっていた。

 「空いた場所には、新しい幸せが入ってくる。」

 祖母の言葉が、今ははっきりと胸の中に響いていた。

エピローグ

 数年後、美咲は「ライフオーガナイザー」として活動を始めていた。

 

「部屋を片付けることは、人生を整えること。」

 かつての自分と同じように悩む人たちと向き合いながら、彼女は静かに微笑む。

 「今日、少しだけ片付けてみませんか?」

 その言葉の先には、新しい未来が待っている——。



💡 お最後までお読みいただき、ありがとうございます!

こちらで詳しい解説をしております⇒部屋が汚い人は要注意!片付けできないと知らぬ間に運気が吸い取られる理由


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