不安からの解放に必要なのは、これだけだった

「大好きなキックボクシングが、怖くてできなくなってしまっているんです」そう言って、彼女は私のところに訪ねてきました。

４か月前から始めたキックボクシング、少しずつ上達することや、体を動かすこと自体が楽しくて、コロナの自粛期間がありながらもずっと続けていた彼女。SNSでも写真をあげたりして、楽しんでいる様子を私もずっと見ていました。

なのに、たった４か月の間に左足首の捻挫を３回もしてしまったと言うのです。治っては捻挫し、また治っては捻挫。本人としては何か体のバランスが崩れているのか？とか、いろいろ考えてしまっていたようでしたが、病院へ行ってもシップを出されるのみ。

シップでは根本原因に対処した訳ではないことは分かるものの、どうしたらよいんだろう？と、ボディワーカーをしている私のところに来てくれたということでした。

何度も治っては捻挫を繰り返したとあっては、また運動することが怖くなるのは良く分かります。大好きなのに思い切りできないことにも、ジレンマを感じているようでした。

私のボディワークは、体は本来あるべき姿に戻ろうとする力を持っているという前提で、体全体を見ていきます。特にここが歪んでいるから、あるべき姿に“施術者が”戻していくということはしません。歪みが感じられても、それが必要な場合もあるのです。これが良い、悪いと判断するのはこちらの仕事ではありません。体はあるべき姿に戻ろうとする力をちゃんと持っているのです。

では、問題が感じられた場合、どうするか？

「あなたは今この状態なのね」とそれに気づいた状態で、観察する意識で眺めています。

気づく。関心を持って眺める。ということは、それ自体にパワーを与えることです。その体を持っている本人も、気づいていなかった体の状態に、施術者が注目してあげること。それ自体が体に変化を起こすのです。しかも体が元々持つ力を使って。

さて、この彼女の場合はどうだったでしょうか？

捻挫を繰り返してきた左足には、全く意識が向けられていない状態でした。

私が、体がどういう状態か判断する基準としているものに、波が、きちんと伝わっているかどうか、というものがあります。

波って？人間の体には、受精の瞬間から発生している微細な波があると言われています。心臓の鼓動や呼吸よりもずっとゆっくりで、本当に微妙な波。これが全身に伝わって、骨や筋肉などの組織が微妙に開閉したり、細胞自体が膨らんだり縮んだりという動きをしています。特別な能力ではなく、チューニングの問題なので、慣れれば誰でも見られるものです。

この波が、例えばケガをして癒着の起きている場所や、うまく働いていない部分、病変の起きている部分には、きれいに流れていかないように見えます。

彼女の意識が向けられていない左足は、足の起点となるお腹の奥側の筋肉が背骨についてる部分から、左足先まで全体にかけて、波の伝わりにくい状態になっていました。ここに注目して、じっと観察する。波が起きる。観察する、波が起きる。を繰り返していきました。筋肉ひとつひとつを丁寧に見ては本来の波が復活するのを見届ける作業。

一通り足に波が出てくると、足先から頭頂に向け、さーーーっと一連なりの大きな波が現れました。それはもう、全身が命に震えるような波。こんな瞬間があるから、私はこの仕事を辞められないというくらいの美しい瞬間です。

こうなる頃には、受けてる人は全身脱力して、リラックスの極致。こんなにリラックスしたことなかったわーー。とはよく聞く感想で、いかに普段から無意識に緊張していたのかを受けた人は知ることになります。

もう大丈夫だね。とセッションを終了し、立ち上がって足の感触を感じてもらいました。

「足がある！！」

今まで意識が向いてなかったことにも気づかなかったけれど、はっきりとそこに存在すること、腿や脛やふくらはぎ、足首に足裏、指先までがきちんと輪郭を持って現れてきた様子でした。

「わぁ～なにこれ～？触ってただけですよね！」

私がしたのは、丁寧に見る。ただそれだけ。細胞の一つ一つに、私の意識を届けたら、肉体を持つ本人にもそれが認識できるようになった。それだけです。

後日、連絡をいただきました。このセッション以来、2か月弱経ってますが、キックボクシングをしていても捻挫してないとのこと。

左足で蹴っても、軸足にしても、そこに「ある」ことが感じられる。足の存在感が増したことによる安心感がある。またケガするんじゃないかという不安は、ぼんやりとしか認識できてなかったことから来ていたと語ってくれました。

はっきりと意識にのぼらせ、あると気づいたことが、不安から解放してくれたのです。そして気づくことの可能性は、この先の未来を見たとき、とても大きいのではないかと感じています。

必要なのは気づき、それだけでした。

体のみならず、マインド面でも、同じことが起きることを、私は何度も目にしています。今問題に見えていることも、紐解いてみると意外とからくりはシンプルかも知れません。

余計な手出しをせず、ただ気づいて見守ることの力強さ。ぜひ体験して欲しいなと私は強く思っています。

興味が湧いたら、ぜひ私に会いに来てくださいね。オンラインでも対面でも、場をご用意してお待ちしています。