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世界“危険地帯”街歩き 中国編  ~ウイグル大弾圧~ Part.3

中国経済発展による光と影

 ウイグル自治区、最西の街・カシュガルでは、執拗なまでの監視と徹底的なウイグル文化の抑圧、そして外国メディアの排除が行われている。この3つが同時に行われることで、民族浄化=ウイグル族の滅亡がスムーズに進もうとしている。
 実はこうした状況にも関わらず、この街に住むウイグル族たちの表情は明るい。それは、徹底的な監視のもとで、極めて安全な生活が保証されているという皮肉な現実があるからだ。警官が24時間、人々を徹底的に疑い続けることで治安はすこぶる良い。街には、夜10時を過ぎても、幼い子供達だけでボール遊びに興じる元気な声が響いている。中には3歳くらいの子が一人で歩いているのを見て、こちらがギョッとなるほどだ。女性も一人で歩く姿をよく見かける。

【夜9時頃、外で遊ぶウイグル族の子どもたち。後方に検問が見える】

 さらにウイグル族と漢族が、日常レベルでは折り合いをつけてうまく生活している現場も目にする。小さな飲食店に入ると、ウイグル族の小学校1〜2年生ほどの男の子が、数字を書く練習をしていた。よく見ると全て中国語だ。しばらくすると突然、漢族の女性が店に入ってきて、その男の子に発音の仕方を教え始めた。その女性は何度もこの店に来たことがあるようで男の子とも顔見知りだった。母親も嬉しそうに、女性が中国語を教えてくれるのを見守っている。漢族の女性は公安だという。
 実際に中国政府は、ウイグル族に中国語を教えて同化政策をはかるために、国内中からウイグル自治区に人員を派遣している。さらに、ウイグル族の間でも中国語を習いたいという意識が高まっているようだ。中国の経済発展によって、ウイグル語だけでは将来、良い就職口がないという理由があり、中国語を習わせたいという親が多くいるという。こうした生活環境の変化によっても、ウイグル文化が静かに失われようとしている。

【必死に中国語の勉強をするウイグル族の男の子】

 強制収容所に収監された人たちの多くは、いまだ戻ってきていない。しかしそれを除けば、街の中では表立った暴力はない。イスラム教徒であることを捨て、ウイグル族の文化を断ち切れば、安全は保証されている。そうした“制限付きの自由”の中に、ウイグル族は置かれている。中国政府は、ウイグル族が自ら望んでアイデンティティを変えていくように仕向けていく。このまま誰も声を上げなければ、ウイグル文化は急速なスピードで失われるだろう。中のウイグル族は声を上げることは出来ない。外にいる人間が働きかけていくしかない。


今後も、こうした世界情勢に関するリポートを執筆致します。ご賛同頂ける方、ご興味ある方、サポート頂ければ幸いです。

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