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『天国、それともラスベガス』の調べ-チラ見せしたケーブルの流れを整える

「調」という漢字には様々な意味があります。ほどよくする、ととのえる、つりあう、調子を合わせる、バランスをとる、音楽を奏する、音律を整える、決定する…(「新漢語林」第二版より)。

今回は、そんなデスクまわりのケーブルに関する「調べ」の話です。

1. 『天国、それともラスベガス』の2ヶ月後

この春、例のウイルスによる自粛生活の中で構築にいそしんだ、僕の自宅のデスク環境。

おかげさまでこちらの記事もGoAndoさんの『デスクすっきりマガジン』に紹介していただいて、たくさんの方に読んでいただきました(感謝)。

ガジェット多めのデスクをすっきりさせるためにケーブルは徹底して隠すという定石は踏まえつつ、僕はあえて一部のケーブルをデスク上でチラ見せしました。ケーブルには、ガジェットのもつ生命感を表現する効果があると考えたんですね。で、Fostexのボリュームコントローラーから4本のケーブルを出したのが、そのチラ見せ部分です。

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でもですね、それが今や、こんな感じに。

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…ええ、くちゃっとしていますよね。

2ヶ月という時の流れは残酷で、ケーブルクリップで流れを整えたつもりが、PC-2LIVEにつないだ4本のケーブルはご覧のありさまになりました。

これじゃダメだ。『ケーブルを見せる』と『すっきり』を、僕はなんとか両立したいんだ。そうじゃないと「やっぱ隠したほうがいいよね」ってなってしまう。僕はそうではない第二第三の道、オルタナティブな解決を見つけたいんだけど…。

さて、どうしようか?

2. 古典に訪ねる

デスクの上にチラ見せしたケーブルを、等間隔に整然と並んだ状態にしたい。そう願った僕の脳内に浮かんだイメージは、奈良時代に唐より伝わった和楽器「箏(そう・こと)」のこの絵でした。

僕自身は残念ながら演奏した経験はないけれど、楽器としての箏って見た目が最高に格好いいなと子供の頃から憧れていました。等間隔に凜として張られた弦の姿。ああ、これをやりたい。あの白い洗濯ばさみみたいな白い柱、送電線の鉄塔のような、整然と並ぶ三角のとこ、あれなんていうんだろう? 早速取材班はwikipediaに向かった。

なるほど、この動画で演奏されている女性は、琴に対して斜めに構えて・角爪を使っているので、おそらく生田流に属する方ですね。正面にまっすぐ座って丸爪を使うと山田流だそうです。これでもう僕もあなたも、今日から箏の演奏を目にするたびに、生田流と山田流が見分けられるようになりました。

ってそうじゃなくて、弦を支えている洗濯ばさみのような形をした白い柱、この柱のことが知りたかった。あの柱には、ケーブルを整然と調えるヒントがあるんじゃないかと思ったのです。あらためて調べたところ、この白い柱は「琴柱(ことじ)」というそうです。

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ということで、Amazonで1つ買ってみました。まさかのバラで買えた。

そしてまさか僕の人生で「琴柱」を買う日が来るとは思ってなかったけれど、子供の頃からかっこいいなと思っていたあの形が、いま目の前にある。えもいわれぬ感動があります。これが、あれかー。

3. 琴柱を元にモデリング

すっかり刺激を受けたので、この琴柱の形状をモチーフに、3Dプリンターを使ってケーブルを整理するパーツを自作したいと思います。

つきましては、サンフランシスコの北、カリフォルニア州サンラファエルに本社を置くAutodeskの定番3Dモデリングソフト『Fusion360』を使って、オーディオインターフェース横の狭い空間で4本のケーブルを調えるパーツを作ります。非商用なら無料で使えるのがありがたい。

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お、いい感じにできてきたぞ。

…なんてもっともらしく書いてますが、琴柱を買ったのも生まれて初めてなら3Dモデリングソフトを触るのも生まれて初めてで、ここに至るまでに結構苦労しました。でも、入門に最適ときいて買ったこちらの本がめちゃくちゃ役に立ったので、3Dモデリングを始めたい方に超おすすめです。僕でもわかったから絶対大丈夫。

できあがったモデルデータを、3Dプリンター用のSTL形式に変換してエクスポート。とはいえ僕自身は3Dプリンターを持っていないので、DMM.makeのサービスを利用しました。

DMM.makeで選択できる造形素材はとても種類が多いのですが、納期の短さと1立方センチあたりの単価が28円~と安かった「ナイロン」を選択。

自宅のPCからデータを送れば、数日の後に僕の手元に出力したパーツが送られてくるそうです。あれですね、まさにネット印刷ショップみたいに気軽に利用できますね。出力の到着が楽しみ…。

4. What You See Is What You Get

そして約1週間。日曜の夜にデータを送って金曜日の朝、宅急便で届きました。すごいすごい、めちゃくちゃ思い通りのものが出力されてきた!

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同じすぎる。

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生まれて初めての3Dモデリング+3Dプリンターだったけど、あっさり思い通りのものが出てきて感動です。これは面白い…。

感動してばかりもいられない、本来の目的、早速ケーブルを調えましょう。この頂上の丸いところにケーブルを嵌めて、等間隔に整列させようという魂胆なのです。高さを4.5cmにしたのは、横に置いたオーディオインターフェース(MOTU M2)とあわせるため。では、設置します!

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…え? 完璧なのでは????
弧を描くケーブルのいちばん高いところで、3Dプリンターで出力した白いパーツが支えています。

5. 調いました。

最初のこのくちゃくちゃが。

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こうなりました。

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「調」という漢字には様々な意味があります。ほどよくする、ととのえる、つりあう、調子を合わせる、バランスをとる、音楽を奏する、音律を整える、決定する…(「新漢語林」第二版より)。

調べに乗せてほどよくつりあい、よくととのったこのケーブルの眺め。

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遠目に見ても、最高気持ちいいです。『ケーブルのチラ見せ』と『すっきり』、ここに両立を守れたようです。

以上、ラスベガスの現場からお伝えしました。

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寺本秀雄(spinnage / spinn)
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