『ベガスのコネクション』-ガジェット多めのデスクから愛をこめて
おかげさまで1万ビューを超えるたくさんの方に読んでいただいている(ありがとうございます)僕の自宅デスクチューン話について、今回は、追加シナリオを用意しました。
世界に向かって世界を感じるデスクを目指し、一旦完成を迎えた自宅のデスクチューンですが、日々刻々と世界が変わっていくのと呼応して、チューンに終わりはありません。
実はこのたび、僕の自宅デスク環境の中核となっているThinkPadを買い替えました。7年間連れ添ったT430sですが、最近写真のRAW現像をゴリゴリするようになってからパワー不足が否めなくなり、清水寺の舞台からアイキャンフライで宙を舞って最新の「ThinkPad T490」を導入。いえーい。
この新しいT490についてのストーリーもいつかご紹介したいのですが、今日はそのまえの挿話として、新しいThinkPadから周辺機器への配線(ケーブルさばき)についてお話しします。Go Andoさんの「デスクすっきりマガジン」でも皆さんが工夫をこらしているケーブルさばきについて、僕からも何かヒントをお届けできたら幸いです。
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1. 新マシンT490、その唯一の残念ポイント
じゃーん。新マシン。
7年ぶりに買い替えたT490は、先代T430sと比べてプロセッサからメモリからモニター解像度からSSDから何もかもパワーアップした上にGPUまで積んだ盛り盛り仕立てなのですが、ただ1点残念なのが、先代ではフルサイズだった本体内蔵SDカードスロットが「microSD」になってしまったのです。
これの何が残念って、僕が常用しているカメラで使っているSDカードが、いわゆるフルサイズなんですよね。先代T430sには本体内蔵でSDカードスロットがついていたので、カメラから抜いたカードを直接本体に挿してデータを読み込ませていたのですが、microSDのスロットしかない新T490では、別途カードリーダーが必要になってしまいました。えー何それめんどい…。
想像してみてください。カメラからカードを抜いたあと、USBのケーブルがニョロンとついたカードリーダーを持ち出してきてThinkPadのUSB端子に差し(USB端子って、なんでかいつも3回くらい裏表を替えながら差すことになりますよね)、ニョロンとしたケーブルを辿ってリーダーのスロットにSDカードを挿す。…こうして文字にしただけでも鬱陶しいです。
かといって、カードリーダーを常日頃からThinkPad本体につなぎっぱなしというのも、デスクをすっきりさせたい気持ちと相反します。特に新しいT490では周辺機器を集中的につなぐドックを併用して、本体につながってるケーブルは給電も兼ねたUSB-Cがたった1本という超スッキリを実現したのに、追加でカードリーダーなんかつなぎたくないわけですよ。
カードリーダーは必要だけど、いちいちつなぐなんてダルいし、かといってThinkPad本体にリーダーつけっぱなしなんて絶対嫌だ。どうしよう??
…わかった。本体じゃないところにつければいいんだ。
デスクだ。デスクにSDカードリーダーを設置しよう。
2. デスクにSDカードスロットを設置する
なんて、わざわざ章を改めてまでドーンと書いてますけど、話は全然単純で、デスクの前面に3Mの両面テープで小型のSDカードリーダーを貼り付け、そこからUSBの延長ケーブルを伸ばしたのです。
そしてカードリーダーから伸びたUSBの延長ケーブルは、ヤザワのケーブルクリップでデスク裏面を這わせて、ラック下のドックにつなぎました。裏からみるとこんな感じになります。
なかなか良い案配。もちろん、デスクの上からこのケーブルは見えません。デスクの天板の裏側は、デスクすっきりを目指す者にとって最後のフロンティアかもしれません。
実際やってみると、この「デスク手前にカードスロットがある」のがとても便利なのです。イスに座った膝の上に置いたカメラからSDカードを抜いたその右手を、ほんの少しスイングするだけで、デスクのスロットにカードが挿せるのです。特に僕はPCをデスクの奥のほうに置いているので、この「すぐ手元」にスロットがあるのがめちゃくちゃ助かります。超おすすめです。
3. スロット位置に印をつけたい
ケーブルの配線が終わり、あらためてイスに座って、スロットを眺める。満足感が身体を満たす…かと思いきや、日頃はあまり見えないように少し奥まったところに貼り付けたので、横幅150cmのデスクのどのあたりにスロットがあるのか一見わかりにくい、という課題が見えてきました。
何かこう、「ここがスロット位置ですよ」というマーキングが欲しくなります。マーキングのシールといえば、「デスクすっきりマガジン」で読んだ宇野雄さんが「僕の理想のデスク環境ができたので自慢させてください。」に書かれていた自作ラベルシールがとても素敵だったことを思い出します。
よし、僕もこのアプローチで何かかんがえてみよう。
目印にシールを貼るとして、どんな図柄がいいだろうと考えていたとき、ふと僕の脳裏に、レーシングカーのボディに書かれている「E」マークおよび「雷」マークのことがよぎりました。「E」マークと「雷」マーク。これはちょっと説明が要りますよね。写真の赤丸の中にご注目ください。
3台のレーシングカーの赤丸それぞれに、丸に「E」と赤くかかれたステッカーと、青地に赤い稲妻模様の三角形のステッカーが見えますでしょうか?
3枚目の拡大図もいってみます。わかります?
F1みたいなフォーミュラカーから、市販車をベースにしたGTカーまで、レース専用に作られたレーシングカーには、必ずこうした「E」と「雷」のステッカーが貼ってあります。
これは、レース中に事故があったときでも車の外からコーススタッフが消火器を作動させたり、車の主電源を切ったりできるように、「ここが消火器(Fire "E"xtinguisher)ですよ」「ここが電源をカットオフできるスイッチですよ」ということを表すマークをつけるルールがあるからなんです。
「E」マークと「雷」マーク。そしてですね、僕のThinkPadでは、ちょうどこのSDカードリーダーが「Eドライブ」としてマウントされるんですよ。お、イメージがリエゾンした。しかもSDXCⅡのカードは稲妻みたいなスピードでデータを転送します。お、いいぞいいぞ。ダジャレが成立してきた。
そして考えてみれば、世界に向かう僕のデスクは、ある意味世界を駆け巡るためのレーシングカーのコクピットみたいなものかもしれない。いやー盛り上がって参りました。よし、このマークを目印にしよう。
4. 由緒ただしき、京商のステッカー
「E」マークと「雷」マークのシールを手に入れるのは、比較的簡単です。自分で作ってもよいですが、プラモデルやラジコン用のデカールを探せば手頃なものが見つかります。
…ということで手に入れたのが、1963年に創業したラジコン界の大手であり老舗、京商(神奈川県・厚木市)のラジコン用ステッカーです。
京商は、日本が高度経済成長へと向かいつつあった60年代の初め、ベトナム戦争に行くアメリカの兵士たちに慰問物資を納品する仕事をしていた鈴木久が、納品される物資からまだ当時の日本にはなかった「大人が楽しむホビー」の存在を知り、日本もいつかそうなる時代が来ると確信して作ったというストーリーを持ち、現在ではタミヤと並んで世界的に知られる企業です。
届いたデカールから「E」と「雷」を取り外し、デスクの天板の端、SDカードスロットの上に添付。うん、なかなかいい目印になりました。
レーシングカーのことをよく知らない人には「Eドライブにデータが稲妻みたいに入る場所」って意味にとれるし、レーシングカー好きにとっては「何それデスクはレーシングカーですって意味なの?」みたいな文脈を感じてもらえるように、できたんじゃないでしょうか。
5. 重層化した、ホログラフィックな視覚演出
デスクに貼られた、レーシングカーの「E」マークと「雷」マーク。この目印は、ミニマルなフラットデザインとも、具象的なスキューモーフィックデザインともいえない、別な演出になってるかも、なんて思います。
もともとの背景知識がある人にとっては、異なる文脈からの引用によって面白が肉厚になり、知らない人にとってもちゃんと意味があるものとして快適に見えるみたいな、こういう重層化した誂え(デザイン、または企画)が好きなんですよね。
「わかる人にはわかる工夫」「裏ネタ」って、経済効率の観点からは無駄みたいに見えますし、特に透徹したミニマルや体験の純度を目指す際には邪魔にされちゃいがちですが、僕はそういう回り道というか、横道に逸れるというか、ホログラフィックな演出が好きです。
いままで僕が触れてきたガジェットやエンターテイメントでも、記憶に残る面白ポイントには案外そういうところが多かった気がしますし、単純にそのガジェットやエンターテイメントが湛える豊かさが、深く厚くなる気がするのです。
ストーリーを楽しむためには、ストーリーを仕込まなきゃいけない。たった65cm×150cmという限られた広さのデスク空間の中に、どれだけストーリーを畳み込んで実装できるだろうか。その答えのひとつが、こうした手法にある気がします。僕の不勉強で、この手法を何と呼んでいいかわからないのですが。
そんな感じで、今夜も気持ちと考えがぐるぐる回る自宅のデスクチューン、めちゃくちゃ楽しいです。いつまでも続けていたい。