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『天国、それともラスベガスの隣で』- フルフラットな高演色LEDの世界

みなさーん!   配光、楽しんでますか? 

あなたのデスクに、あなたの部屋に、あなたはどんな角度からどんな光を当てていますか?

今回のデスク話は番外編で、デスクからほど近い、食卓の照明について話をしたいと思います。こちらも、春からのウイルスの影響による外出自粛要請の中、自宅で夕食を食べる機会が増え、利用機会が増えた場所です。

いままで以上に重要度をあげたテーブルの時間をより良くするため、デスクの夜景にこだわるのと同じ気持ちで、テーブル照明についてもこだわっていく、気持ちと考えの記録をお楽しみください。

1. テーブルに一灯のLED

現在、僕は食卓のテーブル照明にLED電球を使っています。天井のライトレールから、食卓に向けて1灯のライトを配光しています。

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食卓用のライトとして以前はハロゲン球を使っていたのですが、夏場は電球の発熱がすごかったので、適宜LED電球に交換してきました。それもずっと昔…10年くらい前のLED電球はやたら値段が高い割になんだか色味がヘンで、結局暑さを我慢しながらハロゲン球に戻したりもしていたのですが、ここ数年はかなり良くなってきました。

昔といまのLED電球で何が違うんだろう? 調べをすすめた取材班は、ここで「演色性(Ra)」という値の存在に気がつきます。演色性とは何か? それを知るためには、まず光の性質についておさらいする必要があります。


2. 光の演色性とは

時は1664年、ちょうど今の世界と同じように欧州ではペストが大流行していました。閉鎖されたケンブリッジ大学を出て自宅に戻ったアイザック・ニュートンは、大学から持ち帰ったプリズムに太陽光を通すことで、太陽の白い光が紫~赤までの七色の光の合成で出来ていることを発見しました。

こうした光の性質は太陽光だけに限りません。よくある白熱電球(まんがで誰かが何か思いついたときに光るあの電球です)と、古いトンネルでおなじみオレンジ色の低圧ナトリウム電球では、同じようなオレンジ色の光にみえてその光に含まれる光の分布が異なります。ざっくり、表にしてみます。

▼白熱電球(何か思いついたときに光る電球)

白熱電球スペクトル

▼低圧ナトリウム電球(古いトンネルの電球)

低圧ナトリウムスペクトル

なだらかな分布で紫から赤までさまざまな光の合成でできている白熱電球に比べて、低圧ナトリウム電球ではピンポイントにオレンジの光だけを含んでいることがわかります。

こうした光の下では、物の見え方も変わります。

オリジナルサンプル

昼下がりの自然光ではこんな風に見えているピザ。このピザをそれぞれの電球の下に持っていったらどう見えるでしょうか?

▼白熱電球(誰かが何か思いついた時にピザを食べている)

白熱電球スペクトル+サンプル

▼低圧ナトリウム電球(古いトンネルの中でピザを食べている)

低圧ナトリウムスペクトル+サンプル

違いがわかりますでしょうか。自然なオレンジ色に染まる白熱電球のピザに比べて、低圧ナトリウムの光にはそもそも青や緑の光が含まれないので、青いグラスや緑の葉も青や緑の光成分を反射できず、暗く(黒く)沈みます。

同じオレンジ色の光でも、その中に含まれる光の成分で物の見え方が自然にも不自然にも見えます。この「自然さ」を、基準となる自然光を100として評価したのが「演色性(Ra)」なのだそうです。100で完璧、80でだいぶ自然、80未満だとちょっと辛い…という感じの数字だとか。

ちなみに、低圧ナトリウム電球のRaはだいたい25くらいだそうです。相当不自然だ、ということがわかりますね。

近年では白色LED光も使われるようになってきたトンネルですが、オレンジ色の古いトンネルの中は確かに異空間の雰囲気ありました。こちらの記事に詳しいですが、低圧ナトリウムの光がトンネルに使われたのは、昭和40年頃から平成初頭にかけてなんだそうです。


3. LEDの演色性

じゃあ、LED電球の光はどんな感じなんだろう? 調べると、以下のようなグラフが出てきました。

LED電球スペクトル

なんだか複雑な感じですが、こうしてみるとわかりやすいかも。

LED電球スペクトル分解

LED電球にはさまざまな発光方式がありますが、初期からある構造として「青・緑・赤の3つのLEDを混ぜて光らせる」という方式があります。一見複雑な曲線は、青・緑・赤それぞれのLEDがもつ光の周波数特性を足し算した結果だったのでした。

とはいえこうした方式だと、青が妙に強く出たりして不自然な感じになりそうです。僕が10年前に使いかけてやめた、食事がまずそうに見える「なんだかおかしい光」のLED電球も、こうした方式だったのかもしれません。この頃のLED電球は、演色性(Ra)の値が60くらいだったそうです。

それから幾星霜。2020年のいま僕がつかっているLED電球は、東京・豊島区南池袋に本社があるオーム電機のライトです。改良が進み、Ra値は80とだいぶ高い数値を出しています。なるほど、それで自然に感じてたんですね。


4. 高演色ライトの世界へ…

いやー良かった良かった。これからもRa80の自然なLEDで毎日楽しくごはんを食べましょう。

…そう結論して話を終わらせたかったのですが、僕のガジェット好きのアンテナは、ここで「高演色ライト」の存在を知ってしまいます。

食品をおいしく見せたいスーパーや、肌を美しく見せたいコスメ売り場、または空調の管理された室内で大切に絵画を見せたい美術館。そうした「よりよい色」「より自然な色」が必要な現場で、もっと自然で、もっと良く見える光が求められ、そうした求めに答える形で生まれたのが高演色のLEDライトだそうです。例えば、こんなモデル。

このSORAA社のLED電球のRa値は、実に95。紫色LEDで蛍光体を光らせることにより、紫から赤までの光を「フルフラットに」含んでいるLED電球として爆誕したんだそうです。

なにそれ、試してみたいじゃん…。1個4,000円(!)とお高い商品ですが、1回飲み会にいかなかったつもり貯金で(幸い、コロナの影響で実際に飲み会にはいかなくなっています)、エイヤで1つ買ってみました。

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4000円なんて超奮発でしたが、1回の食事が10円分おいしく見えたら400日と、1年ちょっとでペイします。そんな計算の上で「購入」ボタンをクリックし、注文から程なくして到着。さて、早速試していこうじゃないですか。


5. 勝負。オーム電機(Ra80)vs SORAA(Ra95)

比較の方法は、色温度を5500Kに固定したカメラで2つのライトを交換しながら同じ写真をとり、その色の出方を比べることにしました。

左が現在使用中のオーム電機(Ra80)、右が挑戦者・SORAA(Ra95)です。それでは行ってみましょう。

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まずは赤コーナー、現在使用中、オーム電機!(Ra80)

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続いて青コーナー、挑戦者、SORAA!(Ra95)

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…お、おう。ちょっと変わった…かな…?

SORAAのほうが照度としては少し暗くなって、そのかわり赤が濃く出ている気がします。ミニトマトがより美味しそうに見えますね。それですよ、その「美味しそうに見える」をやりたかったわけですよ。

ええと、1回の食事で最低でも1円分美味しく見えたとして、4000日あればペイします。だいたい11年くらいでペイできる計算だ。やったね!


6. 配光道へのいざない

いやーいいですね、この、凄くほのかな効果のある/なしを、全身全霊で感じ取ろうとするの、まさにガジェット遊びの本懐です。

高演色LEDライトで自然光のようなフルフラットの光を追い求めるなんて、言ってることが完全にオーディオマニアの音響特性の話と一緒なのも面白いです。同じ思考回路の同じニューロンがそのまま発火する感じでいい。

先日の自宅デスクチューン話(下にリンクしました)で試みた「室内夜景」や、写真撮影時のライティング遊びなどを通じて、最近特に意識するようになった配光道。どの角度からどれだけ光を当ててどんな部屋の風景を作るかというジオメトリックな要素だけじゃなく、演色性みたいな「光の質」の要素もあるなんて、これはまだまだ面白くなる遊びだなと再確認しました。

ちなみに、コンビニでも売ってる白熱電球(まんがで誰かが何か思いついたときに光る電球)のRa値は100なんだそうです。Raだけ追い求めるなら、白熱電球のコスパ最強ですよ。ご参考まで。


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寺本秀雄(spinnage / spinn)
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