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天国経由地獄行き、自由席にて
仲介屋から送られてきた封筒の中には標的の写真と天国行きの切符が二枚セットで入っていた。
紙製だ。
一枚は乗車券、そして二枚目は新幹線特急券。グリーン車どころか自由席だった。
一角の堕屋になっていたと思っていたのは俺だけで、少なくとも仲介屋からは俺はご機嫌を伺うほど価値のある人間ではないらしい。
「舐めやがってボケが!!誰がお前を稼がせてやってると思う!」
思いっきり叫んでやりたかったが、アパートの壁は薄いし、何より俺は大声を出すことに慣れていなかった。頭の中でだけでそう思うと、切符を床に叩きつけるような勢いで財布の中に仕舞い込んだ。
結局、こういうところで俺は舐められているのだろう。
そんな自分にも腹が立つ。いつまで自分を殺しながら生きていくつもりだ。
そのタイミングで俺のスマートフォンが不愉快な音楽を鳴らす。
着信音が鳴る度に、俺は逃げ出したくなるような気分になる。
『四番、切符は受け取ったか』
四番――俺の堕屋としての名前だ。仲介屋にとって四番目という意味だと前に聞いた。
理由を説明しなければ俺は良いように解釈していたのに。
「……はい」
『標的確認』
「株式会社匹目の元会長、匹目三郎、享年六十五歳」
『工程確認』
初心者じゃないんだ、今更作業工程を確認する必要があるとは思えない。
「明日、封筒に同封された切符で東京へ向かい、切符を所持したまま新幹線に轢かれて自殺する。俺の魂は肉体ごと昇天する。その後、天国の匹目三郎を拉致し、地獄へ落とす」
地獄の沙汰も金次第、金の力で悪人だって天国に行ける。
『忠告が二つ、まず匹目の部下十六人が自殺した、おそらくは天国の匹目の護衛に回ったのだろう』
死後も慕われる素晴らしい会長だ。
『そして……』
最後まで聞く必要はない、俺は外から複数の接近音を聞いた。
確かに問題は生きている内に解決するのが一番だ。
俺は銃を構えて敵を待ち受けた。
【続く】