街の顔
自転車に乗って職場まで雲に乗ってひとかきの距離
用事を済ませ、また自転車にまたがる。少年少女達が曲がり角で右折してきたので、ブレーキをかけ集団が過ぎ去るのを待つことにした。でも何やら自転車に乗りながら相談しているので進みは遅い。するとひとりの子が後ろを振り向いて言った。
「後から来てるから止まって」とリーダーっぽい体格の子が皆に伝えていた。
「分かったー」と全員の子が私の方を見たのだが
もうひとりの子が私に話しかける。
「あ、○○のお母さんだ!」
「僕の保育園の先生だったよね」と周りの子に伝えていた。周りの子は息子の同級生らしい。
「なんだ〜○○のおかあさんか!」
「うんうん、そうだったね。○○くん元気にしてた?」「今から遊びに行くの?気を付けてね!」
と見送った。
自宅から職場まで徒歩圏内にあるので、休みの日には卒園生やら在園児の子に会う確率が高い。
スーパーでは買い物かごの中まで見られてしまう。まあ、見られても気にしないタイプだから良いのだけど。
話しかけてくれた子は卒園児でもあり、子どもの同級生であった。職場内で子どもを預けながら働いていたので我が子も同級生の子も皆同じように、愛おしい存在だ。
大きな通りに出れば街中華の店があったり、お蕎麦屋さんの旗が舞っている。どちらも卒園児の子の家だ。あの子は元気かな、と幼いときの顔が頭に浮かんでくる。そういえばあの子はテレビの世界で活躍してるな~と思って昔を懐古していたが、よくよく考えるともういい青年である。
翌朝、パン屋に行って、美味しいパンを購入した。
住宅街の道路沿いにあるパン屋はそこそこ大きい店構えでテラス席や店内(今は封鎖されている)でイートインスペースがある店で、小さなカップのコーヒーのサービスもある。
朝7時に開くので朝食に焼き立てパンが食べる事ができる具合である。駅の近くのパン屋よりも甘い系から食事系、ハードパンにサンドイッチ類、食パンと品揃えが豊富である。そしてこのパン屋で働いているのが在園児のおとうさん。
明日仕事に行ったら、「○○パン、美味しかったよ」と伝えよう。そしてこのお父さんも卒園児なのだ。私が入職する前に、卒園していったので直接の関わりはないのだが。
その辺をブラブラ歩けばなんとまあ、卒園児、在園児に遭遇する可能性は半分をこしている。
パン屋の帰り、コンビニに寄った。駐車場で若いヤンキーっぽい子が数人。改造した単車をいじっていた。爆音でエンジンを吹かす。同時に聴こえてきたのがこれまた大大爆音で音楽を流してた。数分だったので店の人も大目にみたのだろう。
その音楽はglobeのfaceとTRFのBOY MEETS GIRLだった。ああ、もう何十年も前の曲じゃないか…
その頃の私の年齢は……
その子の親たちが聴いていた音楽なのかもしれないと思い浮かべていた。
エンジンをかけてそのまま停車、道路に出て走り去っていった。振り向き際にこちらをチラッと振り返った。
あれ、なんか見た事がある。あの童顔が抜けきらない顔立ちの、もしかしたらあの子かしら…
50メートル以上離れてもその爆音は鳴き喚めき、
思い出の糸を引き伸ばしたかのよう走り去っていった。
帰り道はペダルを漕がなくても進む道
風をきって走り家路へと向かう。