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シャドバプロ6年間を振り返って

 皆さんこんにちは、Spiciesです。Detonation FocusMe Shadowverse部門に所属しています。(プロシーンは「Shadowverse: Worlds Beyond」のリリース時期延期により休止状態です)
 現在のShadowverse実施中のタイムスリップローテーションで昔の環境をプレイしていると、1~2年前のことでもあまり覚えていないと気付いたこともあり、今書いておかないと本当にすべて忘れてしまいそうだと思い、この記事を書いています。
 プロシーンのルールが変わったタイミングなどを区切りとし、当時の自分がShadowverseやプロシーンについて思っていたことや、現在の自分の視点から改めて思ったことを書き連ねていこうと思います。


プロリーグ参戦編 (2018-19 2nd / 2019-20 1st Season) (OOT~ROG)

 2018年に開始した RAGE Shadowverse Pro League ですが、Spiciesは直前の RAGE 2018 Summer で3位に入賞したこともあり(Ratingsで勝ってたこともあり) 10月の 2nd Season から参戦しました。
 当時のルールは、構築Bo3 2人(デッキ被りなし)と 2Pick 1人で3回対戦するシンプルなものです。 

戦績( Bo3 個人 11-8 )
2018-19 2nd  シーズン優勝 / リーグチャンピオンシップ(LCS)敗退
個人 : 5-4 / シーズンファイナル 0-1 / LCS 0-1
2019-20 1st  シーズン3位 / シーズンファイナル決勝敗退
個人 : 5-1 / シーズンファイナル 1-1

 なんか思ったより負けてるな……
 
当時は、自分自身のことをプロリーグ内でトップレベルの強さだと思っていたはずで、インタビューで「シャドバが運ゲーじゃない奥深いところを見せてやる(意訳)」のようなことを言っていた気がするので、もっと勝っている印象でした。

 現在視点の話をすると、試合内容や調整のことは全く覚えておらず明確には言えませんが、細かいところはいくらでも落とせてそう、というイメージになります。
 当時のSpicies君の取り組み方は、気の赴くままにシャドバで遊んだら結構勝てる、みたいな感じだったと思います。そのため、読みの要素や、デッキ選択や練習の段階でどう勝率を最大化するか、のようなことには気が回っていなかった可能性が高いです。
 とはいえ、この時期に関してはプロ選手全体のレベルが上がる前なので、当時トップレベルであったことは間違いではないだろう、多少は下振れてるかな、と思ってはいます。

 他のエピソードとして、当時の自己評価では重要な試合でもあまり緊張しないと思っていましたが、今考えるとそれは無自覚だっただけで、普通に緊張していたと思われます。
 また、たまに起こっていた問題として、プレイミスしたことを自覚するとティルトしてしまって連続でやらかす、のようなことがあった気がします。完璧なプレイを目指しすぎていたのが原因だったと思われ、後に自分がいくらでもミスする人間だと認めることで次第に緩和されていきます。


Bo1プロリーグ編 (2019-20 2nd / 2020-21 / 2021-22 1st, 2nd Season) (VEC~OOS)

 2021-22 1st Season から、チームにユーリが加入しました。また、他チームも選手の入れ替えにより、Ratingsにおいて長期間のBo3で結果を残している選手が多くプロシーンに登場するようになりました。
 この期間は、プロリーグの形式が

ルール概要
5デッキ持ち込み、最大5戦、1戦ごとにデッキ選択を行いBo1で対戦、
使用済デッキは再使用不可、1デッキは使用しない
(1戦は 2Pickで勝敗決定)

というもので、投げ順による相性ゲーの要素が大きく、デッキ自体の強弱にも差があるため、個人戦績には実力が反映されづらいルールでした。(チーム戦してる感がちゃんとあって視聴者視点だと良かった、みたいな話はよく聞いた)
 そのため、一旦Ratingsの戦績について話をします。
 今だから普通に言えますが、実はこのあたりの期間から戦績が低迷していました。

Bo3戦績
2018-19  982-556 (63.84%)
2019-20  661-396 (62.53%)
2020-21  1294-865 (59.93%)
2021-22  1196-768 (60.89%)

4/1-翌年3/31で集計

 原因は割とシンプルで、シャドウバースの複雑化に取り残されていた、ということに尽きると思います。
 ターン当たりのプレイ回数、ドロー枚数が少なく、戦況を判断してゲームプランを組み立てさえすればいい地上戦主体のゲームから、手札を埋め尽くす低コストカードと大量のドローから無数の選択肢が生まれ、コンボの形を整えることやミッション達成のための情報整理が求められる空中戦主体のゲームへの変化が着実に進んでいました。
 特に、ナテラ崩壊(WUP) (2020 4-6月) 以降、上位に地上戦完結のビートダウンデッキが存在しない環境も発生するようになり、感覚のままに回していれば勝てる地上戦デッキを取り上げられたSpicies君は困ってしまいました。

 現在では、個人的な思考の癖として一つ一つ丁寧に情報を処理するのが苦手(逆に、小集合的な情報の特徴を捉えるのが得意)、という風に言語化した認識を持っていますが、当時のSpicies君は単に「なんかこのTier1デッキ弱くない?」と思ってることが多かった気がします。

さて、ここでプロリーグの戦績を見てみましょう。

戦績( Bo1 個人 34-25 )
2019-20 2nd  シーズン8位
個人 : 7-9
2020-21  シーズン2位 / セミファイナル勝利 / LCS敗退
個人 : 15-10 / セミファイナル 1-0 / LCS 0-1
2021-22 1st  シーズン6位
個人 : 5-3
2021-22 2nd  シーズン2位
個人 : 6-2

 なんか思ったより勝ってるな……(特に後半)
 
もちろん戦績の意味自体が薄いので、戦績が良いから上手くやれてた!と結論付けるのは尚早です。
 しかし、当時のSpicies君はこの長く続く空中戦環境に苦しめられつつも、抗う術をどうにか編み出していました。その方法が割とこの期間のプロシーンのルールに嚙み合っていた、という要素はある気がします。

 それは、自分のプレイするシャドバを無理矢理にでも地上戦にすること。
 Tier1デッキに地上戦の要素があったらその部分を拾い集めて押し付け、都合のいいデッキがなければ、多少デッキパワーが落ちようと得意なプレイで戦えるデッキを組み上げる。
 もちろん、この方法はBo3等の競技シーンでの理論的な勝率最大化(環境の最適デッキで最適プレイを)とはかけ離れているので、RAGEやRatingsではあまり勝てませんでした。
 しかし、プロシーンのルールではそもそも下位デッキを使えることに価値があり、苦手なTier1はチームメイトに任せてしまえるので強みを活かしやすかった、というのはあると思います。

 また、この期間内でRatings杯で結果が出ている時はこれらの方針が運よく嚙み合っていた、という話もあります。
 第17回 (RSC) では、清浄ビショップを1コスト回復を多投するチューニングとし、とにかく清浄の領域の効果3回起動による盤面押し付けを続けて優勝しました。
 第13回(FOH)では、主流となっていた進化ロイヤルの基盤パーツを流用したアグロデッキの連携ロイヤルで3位になり、後にタイムスリップローテーションでデッキ自体が競技環境に食い込む強さだったことも判明しています。

 この期間のプロリーグの要素として、投げ順の話にも触れておきます。
 基本的に、カードゲームの競技シーンにおいて投げ順の価値は理論的にはかなり低い、という認識なのですが、

ルール概要(再掲)
5デッキ持ち込み、最大5戦、1戦ごとにデッキ選択を行いBo1で対戦、
使用済デッキは再使用不可、1デッキは使用しない
(1戦は 2Pickで勝敗決定)

 このルールは「使わないデッキ」の存在から投げ順自体の評価値に明確な差ができる関係で、投げ順が読み合いとして十分以上に成立していました。

 これもまた記憶が怪しいですが、チーム内では自分が主体となってやっていたはずで、印象としては「ある程度当て勝ちしてるはずなのに勝ち切れなかった」というものになっています。
 よくあったのが、自チーム視点で有利になる当て方ができたと思っていても、相手チームは異なる相性表を元に判断しており、相手チーム視点でも有利になっていた、というケース。
 これは、完璧な相性把握が難しすぎるのが理由だと思います。完全な相性表のためには全デッキを使いこなせることが必要ですが、短い期間の中で各選手がデッキを分担して調整しているため情報の統一が難しい、というのが一つの要素。
 そして、下位デッキは、各チームの独自性が出やすいにもかかわらず、特定の役割を持たせることが多いため、全体的な相性関係への影響が大きく、相性認識が特に大きくずれる要素になるのではないか、と考えていました。

 2年半の間このルールで戦ったことで、競技カードゲームで勝とうとした時にはメタゲームを考えることが多くなったように思います。
 この時期の経験から、得意の押し付け+メタゲームがSpiciesの基本的な競技戦略になりました。


プロツアー1年目編(RSPT 2022-23) (EOP~EAA)

 プロリーグからプロツアーへと変わり、ルールが一新されて競技の色がかなり濃くなりました。
 具体的には、予選は構築Bo3 2人は各グループに分かれて8チーム総当たり戦を行い、グループ上位3人を集めた6人で Bo5 の変則トーナメントを行い、戦績に応じてチームにポイントを配分するというものです。(1年目はポイント配分等少し違いました

 Ratings育ち、試行回数教徒のSpiciesさんは無邪気に喜んでいましたが、一旦落ち着いて考えてみましょう。
 シャドウバースの複雑化はどんどん進み、周りの対戦相手を見渡せば現代シャドバが上手いやつらばかり。
 最上位デッキをぶつけあうことになるBo3では、この2年半で編み出した勝ち方が使いづらいのは先述の通り、Ratingsの調子は

Bo3戦績
2022-23  865-565 (60.48%)

4/1-翌年3/31で集計

 こんな状態で、本当に実力足りてるんですか?

戦績
1st Season  予選 4-3  本戦 0-1
3rd Season 予選 3-4
5th Season 予選 3-4

 今見ると納得感がすごい。
 
予選抜けに成功した1st Seasonは、連携ロイヤルが使える環境だったのが運が良かったと思います。本戦ではフラグラネクロが回せません!となってしまい、メタ構成を使って事故負けしました。
 3rd Seasonは運が悪かった記憶がありますが、それでも上手ければ一試合くらいは拾えていそうだったと思います。

 流石にここまで来ると、自分がそこまで上手くないことを認めざるを得ませんでした。以前はなんとなく大学院に進みつつプロを継続する予定で、この年は卒論を書いていましたが、このまま並行でやっても絶対勝てないことだけは理解できたため、一旦プロだけやることを決意して卒業しました。


プロツアー2年目編(RSPT 2023-24) (AOA~RSL)

 専業になることで、ある程度配信などをこなした上でもなお有り余る時間の余裕は、まず練習の質に還元されたと思います。
 睡眠時間を十分とれたり、少し疲れを感じた時に気軽に休憩を挟めたり、精神的に課題や研究に追われることがなかったり、といった要素の影響は、

Bo3戦績
2023-24  1131-662 (63.07%)

4/1-翌年3/31で集計

結構大きいんだな、というのは感じました。
 もちろん、それだけが理由というわけではなく、複雑化したシャドウバースとの付き合いも長くなって少しは慣れてきたとか、あとシャドウバース側も極端な空中戦環境から少し戻ってきてくれたとか、複合的な要因があるとは思っています。

 ただ実際には、最上位の年間レート勝率は65%↑であって、まだ上は居るという状況でした。当時のSpiciesはすぐに追いついてやると意気込んでましたが。

  そんなSpiciesのプロツアー2年目

戦績
1st Season  予選 3-4

 これは正直反省してる。
 当時は専業になってすぐRatingsで勝てるようになったところで、完全に調子に乗っていた時期だったと思います。ドローの受け方とかリソースとのバランスの取り方みたいな元々の苦手分野を突然克服できているわけはなく、そのことを認識せずに理解が雑な状態で臨んで雑であることを怒られて敗北、というのが現在の感想です。

戦績
3rd Season 予選 3-4

 これは反省の仕方が難しくて、どうにか財宝ロイヤルの評価が間に合ったけど、構築もプレイも詰められず敗北、という感想です。自分の得意な系統でありながらパワーも高いデッキに気付けたのは偉い反面、もっと早く気付いて練度を高めないといけなかったし、間に合わないなら普通に結晶ビショップとかに逃げた方がマシなので普通にダメでもあります。

戦績
4th Season 予選 2-5
チーム  シーズン3位
PLAYOFF 0-1(チーム敗退)

 反省はしてないけど後悔はしてる。
 正直この部分は今振り返っても普通に運なんですけど、それまでの5回には勝ち分岐があったかもしれないのにどうして勝っておけなかったんだろう、という思いが強いです。

 このシーズンの終了後、プロシーンのチーム数が4チームに削減されました。今後全く同じ競技シーンに再挑戦できる可能性がかなり低いのが一番の心残りです。


プロツアー以降編(HOS~タイムスリップローテ)

 プロツアー終了直後、最後のRAGEで2度目のファイナリストになりました。

 持ち込みは、得意の押し付け+メタゲームの集大成ともいえる内容でした。
 機械ウィッチは、RAGEにおける最強戦略の「初見殺し」が使えるデッキでありつつ、環境上位に対して十分以上に戦える出力を持っていました。
 狂乱ヴァンパイアは、新弾リリース直後から目に付くほどパワーの高いデッキであったものの、ゆえに対策を受けやすかったり、運要素を嫌われたりすることで、ある程度環境で沈んだ経緯がありました。
 そのことで逆にマークが外れて動きやすくなっていた状況と、序盤の盤面押し付けという得意分野が勝率を大きく上げられる要素だったことが大きいと思います。
 GRAND FINALSでは、相手も強いし運はとても悪いしで、分岐はあったかもだけどミスはないよね、くらいで即負けしました。

 実は、自分のRAGEの戦績は当時のBo3勝率と相関しすぎるぐらい相関しています。

RAGE戦績(プレーオフ以上)
2018  3位 1回 / プレーオフ敗退 1回
2019-21  なし
2022  プレーオフ敗退 1回
2023  プレーオフ敗退 1回
2024  5位タイ 1回 / プレーオフ敗退 1回

DAY2進出は 21回 / 24回出場
うち8回はDAY2シード持ち

 ここまで綺麗にBo3弱い期間でちゃんと負けなくても……
 

 その後、Shadowverseに新カードが追加されなくなって以降のタイムスリップローテーションでは、競技シーンとして3人チーム戦形式(Bo3 × 3、デッキ被りなし)の最強チーム決定戦が開催されています。
 毎月変わる環境で、主にロイヤルの構築を未来視点からアップデートすることを楽しんでいました。語ると長くなるので語ってる配信のリンクだけ置いておきます。( UCL / EAA / STR / EOPFOH / HOR
 
 そして12月を迎え、そろそろチャンスも少なくなってきている中、参加チーム数が少なくなる北海道オフライン開催、かつプレイ難度が高く練習量で差をつけやすいHOR環境、という条件が重なり、もうここで勝つしかない、という覚悟で臨みました。

 担当したデッキは、財宝ロイヤル / 結晶ビショップ。現代環境なだけはあってデッキは超高難度のものばかりで、比較的向いていそうなものを選んだ結果、Tier1二つ持ちの責任重大な立場になりました。
 過去環境かつ3人チーム戦の性質上、デッキ開拓やメタゲームといった逃げ場を完全に潰されているのに、今回の環境でチームとして勝っておきたい、チームが勝つには自分が勝つしかない、という状況。

 ついに一周回って、とにかく愚直に練習する時間が始まりました。
 もちろん昔のSpiciesとは変わっているので、ただプレイ時間を増やしたわけではなく、得意分野と苦手分野を把握し、行うべき情報処理を理解して遂行することを目指していました。自分の弱さを認めた結果、プレイ指摘を貰った際に比較的柔軟に受け入れるようにもなっていました。
 睡眠や休憩等のコンディション管理も重視していましたが、その上でなお学校や仕事があると不可能なくらいの練習量を積めたおかげで、当日の会場では俺が一番上手い、という自信を持つに至れました。

 そんな努力は運良く実を結んだようです。
 それでもなおミス負けが発生してしまったことは少し心残りなのですが、チーム戦の都合上、調整環境内で自分自身の持ちデッキを対面に回す練習は行いづらく、結果としてミラー対面でのレアケースにおいて求められたアドリブに対処できなかった、という内容であり、仕方ない、次は上手くやろう、と納得できる範囲でした。

 得意分野を尖らせることでシャドウバースに抗ってきた人間だったので、単純に努力を積むことによる成功体験をようやく得られたのは割と大きいんじゃないか、と思ったところで現在のSpiciesへと追いついたので、振り返りは以上となります。

今後について

 先程、Shadowverse公式から告知がありました。

 「今春リリースする」の部分に一旦人生オールインすることになります。
 年単位での再延期が発生した際、プロチームが存続するかも不明であり、仮に存続したところで、再開時に兼業して中途半端に競技するような選択をする気は皆無なので、引退or実質無職の2択を選ぶことになると思います。
 流石に数年間の実質無職はアド損が過ぎないか?と思いつつも、3月に延期発表されて急にその先の方針が立つかも相当怪しいです。(最強チーム決定戦の GRAND FINALS もある予定だからそっちに集中してると思うし)

 オールインするからには期待値を高めるための努力はします。
 言ってしまうと、「Shadowverse: Worlds Beyond」が大ブレイクした時に恩恵を得られる立場を目指そう、という話です。
 (主にYoutubeで)発信を頑張ります!ということにはなるんですけど、クリエイターとして最大効率で数字を取りに行く適性は皆無だとは思ってる(価値観が大衆とズレすぎてる)ので、個人的な信念に基づいてある程度自由にやっていきたいとは思っています。
 端的に言うと、発信者である前に競技に誠実であることを第一にします。
 現状のYoutube活動もこの方針からは離れないようにやってるつもりで、競技に関して少なくとも嘘はつかない、という信頼を得られればいいかな、という感じです。
 当然見てもらえないと意味がないので、見やすい動画を作るための努力はこの年明けから早速始めていきます。

 さっと振り返ろうと思ったら思ったより長くなってしまい、書いてる間に年を越してました。

 明けましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします。


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