短編/発明
「ふむ、こんな時間に何のようだ?」
D博士はノックでガタガタいってるドアを開けた。
「おお、Sさんか。こんな夜分にどういったご用件で?」
「D博士。あなたは昔、時間についての研究をしていたとお聞きしたことがありましたので、この新しい発明品を見ていただきたいのです」
S博士が取り出したのは携帯電話ぐらいの黒い機械だった。
「ふむ。これは一体なんですか?携帯電話のように見えますけど」
「これは時間を戻す装置です。半径三メートルの空間を通常の時間の流れとは逆の方向に時間を進ませることにより、過去へと戻ることが可能で、スイッチを切れば元の時代に帰ることが可能なのです。」
「なんと!いつかこんなものができるとは思ってはいたが、まさか同僚が作り上げてしまうとは。 ところで、この機械のテストはもうしたのか?」
「いえ。実はまだできていなくて。研究所のスペースを使うのも危ないですし…」
「なるほど。ならばここの庭なら使っていいですよ。実験第1号になりたいですし」
2人は庭に機械をセットすると、半径3メートル内に入ったままスイッチを押した。
「さぁ時間が巻き戻っていきますよ。三十分ぐらい過去にいったらスイッチを切って、テスト成功としましょう」
その瞬間、機械の周りの時が止まり、彼らは石像のように動かなくなった。通常の時間の流れと、巻き戻そうとする流れが打ち消しあってしまったのだ。