No.94
看守から差し出された固形食料をかじりながら男はこの研究施設からの脱獄を考えていた。
「このままここにいてもモルモットにされて死ぬだけだ。計画を実行に移すそう」
男はそう意気込むと、昼の血液検査の際、看守のポケットから鍵を抜き取った。
「これで入り口から出ることはできるが、部屋にいないことがわかったらすぐにまた捕まってしまうな。」
男は夜、自分の部屋の鍵を開けると、研究所の一室に忍び込み、隅にある緑色のタンクの前にたった。
「これでクローンを作り出せるんだな…」
その機械は読み込んだ人間と瓜二つな人間を作り出す、つまり自身のクローンを作成するものだった。 研究所は開発に成功したのはいいものの、コピーした人間の記憶もコピーし、オリジナルと区別するのが困難であったため、運用禁止となっていた。 男は自分のクローンを作ってあたかも逃げ出していないように見せようとしていたのだった。
「よし…できた」
プシュウウウという煙と共に、眠った自分が装置から転がり落ちてきた。男は用意しておいた服を着せ、部屋まで引きずると、
「すまないな。お前も頑張ってくれ」
と言い残し、研究所を後にした。
「それにしてもこんなにうまくことが進んだのは一週間前のあの夢のおかげだな。 夢と同じことをしただけで難なく脱獄できたからな」
走り続けると小さな集落のようなものが見えてきた。
「やった…助かった」
すると男を見つけた住民ががこちらに近づき、こう言った。
「よく逃げてきたね。94番目の俺」
男はその発言を理解する前に辺りの状況に困惑した。それもそのはずである住民全員がその男の顔、いや、男自身であるからだ。