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デザインが「良くない」と何が起こるのか

どんなものでも「良い」に越したことはありません。それはわかるんだけど、じゃあ「良くない」と何が起こるの?
デザインが「良く」なるとどんな効果が得られるかはよく語られますが、デザインが「良くない」ときになにが起こるのかについて考えてみたいと思います。

今回のデザインが「良くない」は、
・文字が読みにくい
・構成がわかりづらい
・色の使い方が無計画
といったことを指す、という前提で進めます。

人の脳には2つのシステムがある

ダニエル・カーネマンは「ファスト&スロー」の中で、人間が思考し何かを決めるとき、脳ではふたつのシステムが働くとし、それぞれシステム1、システム2と呼んでいます。
特徴としては次の通りです。

システム1は最初に動く。努力は少なく、感情的なことや簡単な問題を処理する。システム2はシステム1が処理できなくなったら動き始める。複雑な計算や注意が必要な処理をする。簡単な問題の場合、システム1が処理し、システム2は少ない労力で決定できる。

興味深い実験

本の中で、ABふたつのグループに対し、直感的に答えると間違えやすい引っ掛け問題を、Aグループには明瞭な印刷、Bグループには小さな文字の掠れた印刷で実施したテスト結果が紹介されています。

結果はBグループの方が良い成績を納めました。読みにくい印刷によって認知負荷が上がり、疑り深く慎重なシステム2が稼働したため、システム1だけが処理したAグループよりも良い結果になったことがわかります。

良くないデザインの場合は?

ここからは、ファスト&スローの話を受けて、デザインに置き換えてみます。何かを決定するとき、よく考えるのはもちろん良いことですが、疑り深くなってしまうのは、無用な心配事を増やすことにもなりかねません。

読みにくい文字、わかりにくい構成、視認性の悪い色などの「良くない」デザインは、認知負荷を上げシステム2を呼び出してしまいます。その結果、

良いデザインは、認知負荷が低く、内容だけをしっかり良し悪しを考えることができる。一方、良くないデザインは、わかりにくく認知負荷が増すことで、商品の良し悪しにまで影響してしまうことも考えられる。

ということにもなりかねません。

楽観的なうちに騙して購入させる、ということではありません。パンフレットやパッケージのデザインは商品自体の良し悪しとは別のところなので、そこで認知負荷をかけてしまうことは避けるべき、ということです。

良いデザインとは「最高の体験」だけではなく「違和感がない」ことでもある

良いデザインというと例えば、誰もが目を引くような斬新な見た目のガジェット、心ときめくような繊細な素材とトレンドを反映した洋服、今をときめくアーティストを起用したポスター、など「プラス」の部分が目立ちますが、「マイナスを除去する」ことも良いデザインには不可欠です。

ちょっと非日常な高級レストランでの食事、驚きとおいしさが詰まった料理の数々に「さすが」と大満足。帰り道には「おいしかったね」という笑顔の会話になることでしょう、しかし良かったのは料理だけではないはずです。
入店するときに触れるドアノブ、腰掛けた座面のやわらかさ、スタッフの心遣い、口当たりの良いカトラリー、水垢ひとつない洗面、スマートな支払い、そういったところに「マイナス」がなかったからこそ、プラスとして「料理がおいしかった」で終われたはずです。

デザイン作業の中では「マイナス」の部分を「違和感」と呼んで、それをなくす地味な作業もたくさんあります。ことばの整合性をとる、色のトーンを合わせる、写真を補正する、レイアウトを揃える…などなど。そういったことの積み重ねが「良いデザイン」になります。

まとめ

・良くないデザインは「見た目が悪い、印象を損なう」だけではない可能性もある
・良いデザインとは「プラス」することだけではない
・良いデザインを作ることは見た目の印象以上の価値がある

今回の記事の結論は「デザインはプロに任せるべき」ではありません。非デザイナーの方でも、デザインを学んだり、時間をかけてデザインすることは良い結果につなげることができる、費用対効果を高めることもできる、ということです。
「時間もないしプロでもないんだからチャチャっとやって」と言われたときには、ぜひ思い出して欲しいです。
それでは、みなさま良いデザインを。


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spicagraph
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