『ゆびさきと恋々』連載記念 森下suu先生 インタビュー 前編
『日々蝶々』や『ショートケーキケーキ』で知られる森下suu先生。待望の新連載は『デザート 9月号』(2019/7/24発売)より始まった『ゆびさきと恋々』!この連載を記念して、森下先生にインタビューを受けていただきました。
さっそくインタビューをご案内する前に、まずは『ゆびさきと恋々』のあらすじをご紹介!
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ある冬の日の電車内。聴覚障がいのある女の子・雪を助けてくれたのは、世界を広く旅する年上の男の子・逸臣(いつおみ)だった。友達を通して、同じ大学へ通う逸臣と再会できた雪は、彼のことをもっと知りたいと思いはじめ──。
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前後編の全2回でお送りするこのインタビューでは、森下suu先生の出会いからデビューまでのお話をはじめ、新連載『ゆびさきと恋々』のテーマが決まるまでの経緯や、その取材の様子、代表・鈴木との作品作りについてまで、たっぷりとうかがっています。
ちなみに、森下suu先生が「お二人で」マンガを描かれているユニットだということ、ご存じでしたか?2009年にコンビを結成して以来、マキロ先生が原作を、なちやん先生が作画をそれぞれ担当され、マンガを制作されています。
前編では、お二人が知り合ったころの思い出から、あらためてお話いただきました。どうぞじっくりお読みください!
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出会いは高校一年生の同じクラスで
──お二人の最初の出会いは、高校生の時だとうかがいました。
なちやん先生(以下 な):そうです。同じ県、同じ市内の出身で。小中学校は別々で高校から同級生です。私の親戚がたまたまマキロと共通の知り合いで、その子から「マンガを描く子が友達にいる」と聞き、入学前からマキロのことを知っていました。「そういう子がいるなら仲良くなりたいなぁ」と思ってて。
マキロ先生(以下 マ):私、昔は絵を描くのがすごく好きだったんです。ある雑誌に絵を出すコーナーがあって、そこに投稿していたらその子と知り合い、仲良くなりました。
な:私たちの通っていた高校はもともと男子校で。そのなごりか、3年間女子だけのクラスが一つあって。マキロとはそこで初めて会いました。15歳の時ですね。
──では、高校1年生の時からのお付き合い……!その後、みなさんで一緒に描かれるようになった?
マ:いえ、その子は描けないんです。みんなの絵を「うまーい!」っていう立場で。自分では描かないけれど、絵を見るのがすごく好きな子。私は、『ショートケーキケーキ』(※1)の単行本が発売になると送っていました。
な:いい読者でもあり、今でも私の「一番のファン」と言ってくれています。私が中学校のころに描いた絵を「ずっとファイリングしてて、まだ持っている」そうです。「捨てて!」って言うんですけれど(笑)。
──当時はマキロ先生もマンガを描かれていたそうですが、描き始められた時期と、初投稿はいつごろでしたか?
マ:らくがきレベルだと、小1くらいで描いていました。初投稿が中3か高1くらい。『なかよし』に投稿しました。
な:私も最初は小学生から描いていました。初投稿は中3で、投稿先は『ジャンプ』でした。
鈴木(以下、鈴):え!お二人とも早い……。
──早いですよね……!
な:私の初投稿は、尾田栄一郎先生が審査員の回でした。『ONE PIECE』が好きだったので。私、『ROMANCE DAWN』の頃からファンレターを毎週、尾田先生に送ってたんですよ。
──当時、女の子で『ジャンプ』を読んでいた人は、まだ多くなかった印象が……。
な:父がすごくマンガ好きで。『サンデー』『マガジン』『ジャンプ』『月マガ(=月刊少年マガジン)』『月ジャン(=月刊少年ジャンプ)』、全部買ってたんです。
マ:なちやんの家に行くと、雑誌が積みあがってました(笑)。
な:だから少年マンガしか読んでこなかったんですよね。
──少女マンガで読まれていた雑誌や作品はありましたか?
な:小さい頃は『なかよし』を読んでいて、それくらい。あとは友達が読んでいたので『少コミ(=現:Sho-Comi)』系とか。マンガ好きだったので、有名な作品は友達から借りて読んでました。
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それぞれの投稿時代
──ではマキロ先生が少女マンガへ、なちやん先生が少年マンガへ投稿……お互いの作品は見せ合ったりされてたんですか?
マ:してたっけ……?
な:それぞれで描いてたような……。うろ覚えですけれど、「今こういうの描いてるんだ」「いいじゃん」みたいな会話をした記憶はあります。それぞれ個が強かったのかな(笑)。「完成したー」とか、言いあっていただけで。
──高校の3年間、投稿はずっと続けていたのでしょうか。
な:数えるほどしか……。投稿時代は、高校生で一度終わったんですよ。私、マキロと会ってから「少女マンガも描いてみようかな」と思って『別冊フレンド』に2回投稿していて。その前にも『ジャンプ』へ2回投稿していたんですけれど、「無理だ!」と思って。諦めるのがめちゃくちゃ早かった。
──『ジャンプ』で「入賞」など、そういったことには……?
な:全然ならなかったです。でも電話は一度、高1のときにかかってきました。それで「やったー!」と思ったんですけれど、なぜかそれから投稿をする気にならなくて。というのも私、この現状でわかると思うんですけれど、ネームの才能がないんです(笑)。
──ええ~?!
な:それで「ダメだ!」と。マンガを描きたいけれど、どうしてもネームが思いつかない。絵が描きたいのに、ストーリーを思いつかないから描けない。だから描かない期間が長く続いて。
──「マンガを描きたい」というよりは「絵を描きたい」欲の方が強かった?
な:「絵だけ」を描きたいというよりは、「マンガ」が好きなんです。だから「マンガの絵」が描きたかったんですけど、そのためには自分で話を描かないと描けないので……。
──では、なちやん先生は18歳で一度諦めて、マキロ先生は……?
マ:たぶん同じぐらいでした。
な:マキロは私と真逆のタイプで、話はいろいろ思いつくし、いろんなネタを書いた「ネタ帳」みたいなものを持っていて。でも全然絵を描かないんですよ!
マ:バーッて描いて辻褄が合わなくなると「あーダメだ」ってなって、次の作品をまた描いて……みたいな。
な:マキロの「ネタ帳」を見たのは覚えてるんです。当時、いっぱい話を思いついてて「すごいなー」と思ってました。
──このころ、二人で合作をしてみたことは……?
マ&な:ないですね。
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合作のきっかけは『バクマン。』から
──お二人とも一度マンガから離れた後、次に「マンガを描けるかも」と思われたのが『バクマン。』(原作・大場つぐみ、作画・小畑健)を読んでからだと伺いました。『バクマン。』を読まれたきっかけは?
な:雑誌の連載でふつうに読んで、単行本を買っていました。小さいころからずっと『ジャンプ』を読んでいた私は、ジャンプっ子だったので。
──「二人でマンガを描いてみよう」と提案されたのは、どちらから?
な:その時のことは全然覚えてないんですけれども、私らしいです(笑)。「何か描いてみよー」みたいな。電話はちょこちょこしてたんで、その時に。
マ:それで「いいね、いいね」みたいに返事して。でも、その時はまだユニットで漫画家を目指すみたいな気はまったくなくて。「一作一緒に仕上げる」みたいな気持ちで。
な:マンガはずっと好きだったので。そこに『バクマン。』というきっかけが来て、読んで影響されちゃって。「自分たちも二人組でやってみたら面白いんじゃないかな」「やってみよう、友情の記念に!」って、記念受験くらいの感じでした。
マ:「こういうのはどう?」みたいな感じで相談しはじめて。そのあとネームをなちやんに郵送して、それをちょっと変えながらマンガにして、『マーガレット』に投稿しました。それで、担当さんがついたんです。
な:でも最初は、一人の名前で投稿しました。だから担当さんからの電話は私にかかってきて。「すみません、二人で描いてます」と伝えたら「えっ!そうなんですか?どういうことですか?!」って驚かれた。
──(笑)。手ごたえはどんな感じでしたか?
マ:やっぱり担当さんがつくのは嬉しかったよね~。
な:嬉しかったね。良い結果が出たの、初めてだったから特に。でも嬉しいは嬉しいけれど、意外とびっくりはしなかった。
マ:なちやんはそういうとき、冷静にものごとを見るとこあるよね。
な:自分のことも俯瞰する(笑)。「記念受験」的な気持ちも本当だったんですけれど、「担当さんがついたら、デビューまで行けるかな?」とも思ってたんですよ。
マ:担当さんがついたので、「一緒にやりましょう」みたいな感じになり。「じゃあ頑張ろうか」「やろっか」みたいな流れになって。
──その後、デビューが決まったのはどれくらいで?
マ:半年後くらいでした。
な:最初の投稿から考えるとデビューは遅い方なんです。投稿からそのまま、一発デビューの方もたくさんいらっしゃいましたし。
マ:そのころは10代のデビュー者が本当に多くて。特に『別冊マーガレット』あたりは10代が多かったと思います。
──とはいえ、その後のご活躍はすごかったわけです。
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さて、前編はここまで。お二人の出会いから、二人で描くようになるまでのきっかけとスピード感!そこからのご活躍は皆さんご存知の通りです。
後編では、新連載の『ゆびさきと恋々』が誕生するまでのお話と、取材の詳細をたっぷりお伝えしていきます。
☆★☆後編はこちらからどうぞ!☆★☆
suu
<森下suu先生の代表作・ご紹介>
※1『ショートケーキケーキ』
森下先生の連載二作目。高校入学後、バス通学2時間の生活から友達のいる下宿で暮らすことになった女の子と、その下宿先で出会った男の子たちとの新しい日々。『マーガレット』2015年23号~『マーガレット』2019年7号まで掲載された。
『日々蝶々』
森下先生の連載一作目。学校一の無口な美少女と、硬派な空手男子の同級生。異性が苦手な二人、でも自分たちなりにその距離を縮めていき──。『マーガレット』2011年24号に読み切り作品として掲載、その後連載となり『マーガレット』2012年6号~2015年13号まで掲載された。
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