『僕と君の大切な話』完結記念 ろびこ先生 インタビュー 後編
本日ついに、『僕と君の大切な話』最終巻となる7巻が発売となりました!今回は通常版と、ミニ画集付の特装版が同時刊行です。
* 未読の方のために、あらすじを改めてご紹介 *
『僕と君の大切な話』あらすじ
相沢のぞみ、高校2年生。同じ学年で違うクラスの東くんに片思い中。意を決したある日、学校の最寄り駅でベンチに座る東くんに告白するが──!?
☆★☆ 作品紹介&1話試し読みはこちらから ☆★☆
この発売を記念してスピカワークスでは、連載を終えられたばかりのろびこ先生に、スペシャルインタビューを受けていただきました。
一足早く公開した前編では、連載完結を迎えた今のお気持ちから、連載開始時の思い出や制作ツール、描き方の変化などについてうかがいました。
今回の後編では、制作上の工夫やお気に入りのキャラクター、シーンなどについてお話しいただきました。最後には、思いがけないエピソードも!?
ぜひ最後まで、ごゆっくりお楽しみください。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
◆キャラクターたちと作品内での時間経過について
──ちなみに、先生のお気に入りのキャラは誰でしょう?
ろびこ先生(以下 ろ):私のお気に入りは、やっぱりはまりんと鈴ですね。はまりんは「描きたいな」という気持ちがあって、鈴はビジュアル的に描くのが楽しくて。この人だけ、無意味にアップが多くなりました(笑)。他にはそばかすちゃんも好きですね。でも、描いてる人みんな好きになっちゃうので全員好きですね(笑)。
──全員お好き、というのはどのキャラのファンの方にとっても朗報ですね! なお今作では、お話の進行速度がゆっくりでしたから、季節の変化も少なめでした。そのあたりはいかがでしたか?
ろ:最初は「時間が止まっている系」にしたかったんですよ。たとえば『水戸黄門』や『ドラえもん』のような感じ。秋ぐらいの季節のままの2人を、ずっと続けたかったんです。でもお話が続いていく中で、どうしても時間が進んで真冬になってしまい、そうなると「外で喋ってるのはいかがなものか」ということになり場所も屋内になって……。あと、物語にあまり長い時間をかけたくなかった面もあります。できるだけ秋から冬に収まるように、ということだけを考えていました。
鈴木@しーげる(以下 鈴):恋愛を描くとなると、どうしても進展するのに時間の経過が必要になるんですよね。よく冬で収まったなと思います(笑)。
──途中で「他の季節を描きたい!」と思われたことはなかったんですか?
ろ:めっちゃありました! 夏に描いていた時は、「こんなに暑いのに、なんでこの人たちは寒い格好をしているんだろう?」と思ったりして(笑)。描いている時の気温が、漫画にもうっかり出ちゃうんですよ。寒い時に冬の絵を描くと「吐息が白い」といった細かい部分もきちんと描けるんですけれど、暑い時に描くと、早々に「寒さを感じない絵」になっちゃうんです。そういう時はネームの段階で忘れていた設定を、後から足す羽目になります。
──季節感、大事ですね……!
ろ:あと洋服を描くのも大変でした。「10代ぐらいの子が今どういう格好をしているのか」という資料を見たくても、真夏の街に真冬の格好の人はいませんから。ものすごく困りました。
──物語の時間をきちんと描くご苦労は、そういったところに表れるんですね。ところで、『となりの怪物くん』執筆時の高校生と今の高校生では、どこかに変化を感じられましたか? もしくは、「ここは変化があったから作品にも反映しておこう」といった部分などはあったのでしょうか?
ろ:うーん……あるとすればスマホやSNSなど、ネットとの距離感と、制服の着方はまったく変わっていると思います。女子のスカート丈や靴下の、長さや履き方が数年で全然違っていて。男子の学ランは、着方や形に変化はありませんが、ウエスト位置は全然違っていました。描く時、「これはやばいな」「ちゃんと見ておこう」と思いました。
──そういうところに「今っぽさ」が!
ろ:『となりの怪物くん』の時は、連載を5~6年やっている中で、流行の影響を受けて制服の形も変わっていきました。『僕と君の大切な話』ではそういった変化を避けるために、制服やファッション性を気にしない感じにしたかったんです。だから主人公の2人を、「流行は関係ない」というキャラクターにしました。でも、さすがに全員をそうするわけにはいかず……。メイン2人の服装だけ、大きく変化がない形に落ち着きました。
── なるほどー。ところでお気に入りのキャラはうかがいましたが、一番気に入っているエピソードは、どのお話ですか?
ろ:2巻で、相沢さんが空を見上げて「嫌な気持ちに飲み込まれそうになることもあるけど」とつぶやくシーンですね。8話目のはまりんが初めて出てきた後、回想明けの部分。そのエピソードがなぜか好きです。
鈴:心を閉ざしかけていた相沢さんが、東くんとの出会いで、再び世界との接点を取り戻すというシーンで。僕もとてもいいエピソードだなと思ってます。
*****************
◆コメディーとラブのバランス
──コミカルな場面が多い今作ですが、そのエピソードのように少女漫画らしい胸キュンシーンも沢山楽しめます。コメディー要素とラブ要素、どうやって両立させていたのでしょうか?
ろ:このお話は「付き合ったら終わりだな」と思っていて、付き合う前の2人が仲良くなっていって、お互いをわかりあうまでの過程を描きたかった、という思いがあります。前作で描いたように「ラブ感」を全面に持ってくると、ラブだけ先に進んでしまうので、その点は気を付けました。恋愛部分を進めることよりも、普通のやり取りを重ねたかったんです。
──そういう意識の違いがあったんですね。
ろ:とはいえ、相沢さんの恋愛心が足りていなかったり、忘れちゃったりすると、途端に「なにしてんだろうこの人たち?」ということになってしまうので。相沢さんが恋愛心を持っているからこそ、この2人が喋っている状況が成り立つわけじゃないですか。2人の普通のやり取りを描きながらも恋心を忘れないように、というのが工夫した点だったかもしれません。
──確かに、恋心があってこそですよね。
ろ:でも、相沢さんは分かりやすく恋をしてる人なので、「相沢さんが東くん君を大好き!」という設定は描いていて楽しかったです!
*****************
◆書くことについて
──もう一つ、この作品では「創作」も大きな役割を担っていました。「書くこと」について語るはまりんと東くんのセリフや、執筆中の東くんのモノローグは、創作をする人にとって響くシーンでもありました。ああいった部分は、先生ご自身から生まれた言葉なのか、実際に他の方からかけられた言葉なのでしょうか。
ろ:相沢さんが作中で言っている創作についてのことは、ほぼほぼ友達の言葉ですね。私がいつもネームを見せたり相談する友達がいるんですけれども、その子が過去に言ってくれたことです。相沢さんのモデルはほぼほぼその人なんじゃないかという。
──なんと……! 相沢さんにモデルがいらしたとは。たとえば、喫茶店でアドバイスをするシーンなどでしょうか?
ろ:そうですね、まさに。相沢さんが実在していると思うと私の中で萎えてしまうので(笑) 考えないようにしていますが、言われた言葉はだいたいあの通りです。その子から言われて刺さった言葉を、少し美化して描いたところもありますけれど。
──とても自然なアドバイスで、読んでいて「上手な言葉選びだな」と感じました。あんなにうまく、感想を言えたことがありません。
ろ:あの回の相沢さんは、描いている自分にもセリフが刺さっていたせいか、わりといろんな作家さんに感想をもらいました。「やっぱりこれ言われたらみんな嬉しいんだな」「少女漫画家さんはそう思うんだな、 自分だけじゃないんだな」と思いましたね。書いてる人はみんなそうなんだな、と。東くんやはまりんのセリフには、自分の思ったことを書いたこともあるし、他の漫画家さんや鈴木さんと喋っていたことを入れたこともありました。
鈴:創作がらみのシーンでは、感想もそうですけど、ツッコミとか自虐とかもリアルだなあと思っていつもニヤニヤしながらネーム読んでましたね(笑)。
──創作に関わる皆さんの実感が集約されているんですね。さて、長くなってきましたので、ここで読者のみなさんが気になるところを。今後の新作のご予定は……?
ろ:今のところ、決まっている予定は特にありません。でも、これからもっといろんなことに挑戦していきたいと思っています!
──楽しみが募ります! 最後に、読者の方へメッセージをお願いできれば。
ろ:『僕と君の大切な話』を読んでくださってありがとうございました。次も頑張りますので、本屋さんでお見かけの際はどうぞよろしくお願いいたします 。
──そういえば、今作では読書中の東くんが、いろいろな本を手にしていたことも、本好きの方には楽しかったかもしれません。
ろ:連載当初は、東くんの読んでいる本が少し偏っている気もしつつ、「絵的に東くんが読んでて面白そうな本を描けばいいや」と思っていたんですけれども、一方ではまりんは「『本読みの人』という設定だから、本読みの人が(その設定を)わかってくれる本を読んでなきゃいけない」とも思って考えました。
──東くんらしさ、はまりんらしさは、そうして生まれていたんですね。
ろ:作中では結局描かなかったんですが、当初はまりんは「読書感想のファンページを作ってる人」というイメージでした。でも「最近の人はホームページを作るという感覚がないかな?」と思って止めました。設定としては、ブログのタイトルまで考えていたんですけれど(笑)。
──そんな設定があったとは……! はまりんのブログ、読んでみたかったです。
ろ:読書感想とか漫画読みさんのサイトって、愛に溢れてるじゃないですか。たまに「この人、作家さんだったことがあるのかな?」というくらい、作り手の気持ちを理解して書いている方もいらっしゃいます。それにちょっと感動したことがあって、今回はそういう人を書きたかった、というのがはまりんのモデルなんです。
──思いがけない秘話までお聞かせくださり、ありがとうございます!
鈴:では締めに。『僕と君の大切な話』7巻、これで完結ということで。初めは「僕と君ら女性は同じ星の人間とは思えない」と言っていた東くんの成長ぶりと、改めてそのことについて彼が語る言葉にとてもグッと来ます。どうぞ最後まで読んでください。
ろ:よろしくお願いします!
──ありがとうございました。次回作も楽しみにお待ちしています!
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
前後編にわたってお送りしました、ろびこ先生のスペシャルインタビュー! お楽しみいただけたでしょうか。
初耳のお話がたくさん飛び出したことで、作品の世界へまた浸りたくなった方もいらっしゃるかと思います。インタビューを読み返しつつ、この機会に改めて1巻目から再読くだされば嬉しいです!
そしてこれからもろびこ先生の描く作品を、楽しみにお待ちください。みなさまの応援、引き続きよろしくお願いいたします!
*****************
<ろびこ先生の代表作・ご紹介>
★『となりの怪物くん』
となりの席の吉田春は、入学初日に流血事件を起こして以来、一度も学校に来ていない。「幻の新入生」として有名になった男子の自宅へ、たまたまプリントを持参することになった水谷雫。自分の成績と未来のことにしか関心のなかった彼女だったが、なぜか彼に懐かれてしまい──!?
ろびこ先生の初長期連載。2008年10月号から2013年8月号まで本編が、2013年10月号から2014年1月号まで番外編が連載された。2012年テレビアニメ化、2018年実写映画化。
★『となりの怪物くん ろびこイラストレーション SPECIAL EDITION』
★『ひみこい』
★『ボーイ×ミーツ×ガール』
★『彼女がいなくなった』
★☆ twitterは、弊社・契約作家さんの情報を中心に発信中 ☆★
→ スピカワークス (@spica_works) | Twitter
★☆ instagramも随時更新中!→ スピカワークス instagram ☆★
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?