第一回スピカ賞受賞者座談会 後編
広報Tです。今回は、先に公開しました前編の続きをお送りいたします!
その前に、スピカ賞のおさらいを。この賞は、2019年に弊社が設立しました。賞には「素敵な物語を一つでも増やしていきたい」という願いが込められており、意欲ある漫画家志望のみなさんと出会い、応援することを目的としています。
スピカ賞概要(抜粋、詳細はスピカ賞のページを参照ください)
*応募資格:制限なし。少女漫画を描きたいすべての方(すでにデビューされていて、再デビューを目指している方もご応募可能)
*応募作品:ジャンルはストーリーもので、未発表、未投稿のオリジナル作品に限る(商業誌に未掲載の作品であれば、同人誌原稿でのご応募も可能)。ページ数は原則16ページから32ページまで(多少の前後は不問)。ネームでの投稿も可
その賞の特典の一つに、「パーソナルマンガセッション」がありました。これは、受賞後の新作3本までについて、弊社代表・鈴木@しーげるによる直接指導が受けられるという内容で、第一回受賞者の方々は賞の結果発表から1年と少しの間、代表とともに作品作りを続けてこられました。
今回、その特典の満了を迎えるにあたり、まとめとして座談会を開催しました! 第一回スピカ賞の受賞者である、卯月ココさん、音羽すずめさん、Comomoさん、しまのゆかさん、迚かな(受賞時ペンネーム:栞野久吹)さんをお迎えし、代表と弊社スタッフの小屋(こや)さんによる進行でお送りいたします。この後編もぜひ、ご笑覧ください。
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◆代表とほかの作家さんはどのように打ち合わせているのか
小屋(以下、小):みなさんそれぞれ鈴木さんと打ち合わせや作業をしてきた中で、他の作家さんに対してはどんな感じで、どんな話をしていたのかなど、聞いてみたいポイントはありますか?
しまのゆか(以下、し):私は、みなさんがしーげるさんにどんな質問をしていたのかなっていうことが気になります。私があまり質問できていなかったような気がするので。
鈴木@しーげる(以下、鈴):僕の印象では、割合で言うとしまのさんが多かったほうで、迚さんと音羽さんが少なめだったかなという印象です。
卯月ココ(以下、卯):私はどうだったでしょうか。
鈴:卯月さんとComomoさんは一般的な量だったと思います。しまのさんは「いろいろなことをよく聞いてくれるな」という印象でした。たくさん聞いてくれるのもありがたかったですし、逆に他の作家さんたちは「もっと質問してきてもらって大丈夫ですよ」という感じでした。新人さんの場合は作品数がまだ少ないので、つまずいているところや、何に興味があるのかといった情報をこちらもまだ持っていませんからね。ただ、打ち合わせがスムーズに進んでいて特に聞くことがない場合は、それでまったく問題ありません。ちなみに、質問したい時がありましたか? 僕がしづらい雰囲気を醸し出していたことは……?
卯:最初は緊張で聞けなかったことが結構ありました。でも慣れてきてからちゃんと聞くようにしていけたので、大丈夫でした。
鈴:それなら良かった! そういえば思い出したのが、音羽さんは少女まんが勉強会で僕が言っていた方法を実践していたのか、打ち合わせの時に質問を文章で書いてくれていましたよね。
音羽すずめ(以下、音):そうです! 私、頭に思い浮かんだことをすぐに言葉にすることが苦手なので、電話も苦手なんです。だから、「事前に聞きたいことを文章にして編集さんに送る」という少女まんが勉強会で伺った方法を実践してみようと思って、やってみました。どうでしたか?
鈴:やりやすかったです。話すことが苦手な方にはおすすめの方法ですね。実践してもらえてよかったです。他の方は、いかがでしたか。最初は緊張が解けなかったというのはありますか。
し:「編集さんと話す」ということが初めてだったので、どんな感じなのかわからなくて緊張していました。
迚かな(以下、迚):私も最初は本当に緊張していました。音羽さんと一緒で電話が苦手というか、人と話している時に思いついたことを言葉にするのが難しくて。打ち合わせの時もノートなどを用意して、事前に質問を書いておいて、その内容を聞くという感じでやっていました。あまり打ち合わせっぽい打ち合わせをしなかったので、合わせてもらっていた気がしています。私、自分の打ち合わせの時間が短めだったかなと思っているんですが、みなさんはどのくらい打ち合わせをされていたのですか?
Comomo(以下、Co):打ち合わせの長さですか。うーん、すごく長かった時もあれば、15分以内に終わった時もあったような気がします。
鈴:確かに、人によって全然違いましたね。ネームにすごく悩む人と、スルスル考える人で打ち合わせの時間も違ってきますし。ネームまでの悩みが多い人ほど、打ち合わせは自然と長くなります。Comomoさんとは、先日のネームの打ち合わせをした時間くらいが普通の長さでしょうか。時間にするとだいたい40分くらい。人の感覚にもよりますから。他の人はどうだったでしょう?
卯:すごく長い時は、2時間半というのがありました。
鈴:それは、卯月さんがデビューしてからですね。プロになると、やはり打ち合わせの時間も相応に違ってきます。話す内容自体が増えて、たとえば雑誌の詳細や掲載の仕方など、「何月号に向けて、どんな戦略で描いていく」といった話も入ってくるので。あとは、担当の性格にもよります。僕の知り合いの編集さんは、相手を問わず「打ち合わせは30分以内で」という方もいるいっぽうで、僕が『デザート』に来た時の編集長は、漫画家さんとお話しすることがすごく好きな方だったので、本当に長い時間話していました。
卯:打ち合わせの途中で話がそれて、違う話をしているなんてこともたまにありますよね。鈴木さんの恋バナを聞くのが好きなので、たくさん質問をして、それに答えてもらっていました(笑)。
鈴:確かにそれは一番、卯月さんから聞かれました。
し:取材型ですね! 私の場合、最初のころは長かったですけれど、どんどん短くなっていったような気がします。
す:それは、連載用の打ち合わせだったためです。全く違う3本だったら、たぶんもっと時間がかかっていたかと。今回しまのさんは3本が連続した作品だったので、キャラクターを毎回いちから考える必要がなかった。打ち合わせが長くなりがちな理由として、「キャラクターの性格をつかめるか、つかめないか」ということが大きいので、キャラクターが出来上がっていると打ち合わせは短めになりますね。
し:なるほど、そうだったんですか。あと、「きつかったところ」というお話で、私は「ネームを3回直した」ことです。いちから直すのがなかなか大変でした。盛りすぎたところを削るのが難しくて。
鈴:企画として、一番難しいことをやっていましたからね。今回、しまのさんと音羽さんの企画が結構難しかったように思います。ページが多かったので時間もかかりますし。直し的に一番大変だったのは……どうでしょう、みなさん大変でしたよね。そういう意味では迚さんの直しはすごく少なかったイメージがあります。
迚:でも、作画にすごく時間がかかりました。
鈴:そうですね、作画の面では一番だったかもしれません。
小:さきほど、しまのさんが「盛りすぎて大変だった」と仰っていましたが、直しはそこからの引き算が大変だったということでしょうか。
し:1回目に出した時はネームが歴史小説のような感じになってしまい、いらないところを削る必要がありました。それで2回目を出して、今度は「作品を分割しましょう」ということになって。その後は視点をそれぞれ変えて、話をいくつかに分けていきました。
小:お話を付け加えていくよりも、引き算をしていくという作業のほうが難しいですか?
し:私は説明癖があるので、「どこを切ったらいいのか」ということが、自分でもよくわかっていない部分もあって。
鈴:どちらかというと、直し方としては足すほうが楽です。漫画は引き算の作品なので、結構難しいですね。頭をすごく使いながら描いていかなければならないので。
◆個性が出るまでの年間目標
鈴:さて、ほかに何か「ここをこうしてほしかった」とか「こうだったほうが良かった」ということはありましたか? どうぞ、ご遠慮なく。
音:今やっているような、他の作家さんともオンラインでも交流できるような会がもう少しあると嬉しいなと思いました。
鈴:確かに、そういう機会をもう少し増やせたら良かったですね。この後も、みなさんの交流もぜひ続けていってもらえたら嬉しいです。
し:私だけかもしれませんが、目標をもう少し明確に作っておけばよかったなと。
鈴:なるほど。今は、多少目標が見えるようになりましたか。
し:はい。なんとなく「この雑誌が良いな」というように、決めることができてきました。
鈴:おお、それは良かった。やはり、作品もある程度の数まで増えてこないと、どの雑誌が良いかということも、なかなか言いづらかったりもするので。そういう意味でも、自分の持っている作品の数は増やしてくほうが良いですね。あと、たくさん描いていくにつれて、自身の個性が出てきます。ネームは大体、年に5本くらい描くことができると個性もはっきりしてきますね。
し:年に5本……!
鈴:「5本ちゃんと完成させる」ということは相当大変だと思うので、出来る範囲で描いていくことがおススメですが、個性が確立してくる目安としての数ではあると思います。
し:あと、おすすめのマンガをもっとたくさん聞きたかったです。
鈴:漫画のおすすめはですね、実はあまり言わないようにしています。少し圧になってしまうというか、そのおすすめした作品に寄せさせてしまうということもなくはないので。
◆お互いの作品を読みあって
鈴:そろそろ長くなってきたので、質問はこの辺で。最後にそれぞれの作品への感想を簡単にお願いします。
小:それでは卯月さんの『こいで、こがれて』から。
Co:初めて卯月さんの作品を読んだ時に、絵が可愛すぎて驚きました。トーンの使い方もすごく上手で、「そこでそうやって重ねるのか……」とすごく勉強になって、何度も読み返しています。
し:私は作品の序盤で、主人公の女の子が友達にバイト先の先輩のことを「とにかく!たまらんわけよ」と話すシーンを見て、「こういう感じの絵も描くのか!」とびっくりしました。全部がすごく可愛い上に、ギャグっぽい絵も描くんだなと。あとバイト先からいつも一緒に帰っていた先輩と別々に帰ることになった時、主人公の寂しそうな感じがすごく出ていて、好きでした。
鈴:面白いですね、「寂しそうな感じが印象に残った」というのは。
小:それでは、次は音羽さんの『君まで後40センチ』について伺っていきます。
迚:二人のキャラクターの立ち方や仕草、話し方などに、そのキャラクターらしさが出ていると感じました。「このキャラクターたちが好きだな」と率直に思いましたし、最後のキスシーンが綺麗なのもとてもよくて。
Co:音羽さんの作品には、スピカ賞の時から光を感じていました。太陽みたいな、「光属性」。すごく少女まんがっぽいのに、読んでいてまったくストレスがありません。ラストに向かうシーンで、「なんで私 ちっちゃいの」と、まめ先輩が泣きながら膝を抱えて言うセリフがかわいくてお気に入りです。ほかにも、「背景は画面いっぱいに、対して主人公は小さく描く」という方法を見て「魅せるまんがだな」と感じましたし、身長差がひとつのテーマになっている作品でしたから、アングルの調整もとても上手だと思いました。
鈴:確かに、スピカ賞の応募作品全部の中でも、一番キラキラしていましたね。今も、背景やトーンの使い方がすごいと思います。Comomoさんから出た「光属性」という言葉、良い表現だなと思いました。さて、次は迚さんの『夏の暑さに目が回る』について聞いていきましょうか。
音:作中の会話や行動など、描かれていることすべてがリアルで、日常に本当にありそうなお話でした。「作った感」がないんですよね。あと「男の子側の目線」は女の子にとって本当に欲しいし、知りたいものだと思うので、そこが描かれていることがすごいなと思いました。
し:絵の線に強弱がついていることに、魅力を感じました。主人公の女の子が元気でよいですね。作中に出てくるプレミアムアイスと普通のアイスが、先輩と幼馴染の男の子を表しているようで、印象に残りました。
鈴:迚さんは本当に間が上手。ネームも迚さんが圧倒的に一番早かったし、間やテンポがうまかったので、直しもそこまで多くありませんでした。それでは、次に行きましょうか。Comomoさんの『わたしの道しるべ』ですね。
卯:幼馴染の男の子・光のキャラクターが、私は好きでした。主人公の女の子・凪が落ち込んでいることに気づいてくれるところや、凪が部活のマネージャーとして役に立てていないことを感じながら、光に声をかけられても心配させまいと気持ちを隠した時に、光が「ん?」と覗き込んでいたシーンに、すごくキュンとして。あと、互いに告白するあたりの空気感がめちゃくちゃ好きでした。「何この空気」となっている時の雰囲気がとてもよかったです。
音:男の子に助けられていると思っている女の子と、女の子に助けられていると思っている男の子の気持ちが、話が進んでいくにつれて噛み合っていく感じがして、心がポカポカしました。お互いのことをちゃんと眺めているシーンが必ず描かれていて、その時の二人の表情がとても優しかったので「想い合っているんだな」ということが伝わってきて。卯月さんも仰っていたのですが、最後の照れている感じの空気感が私も本当に好きで、読み終わった後までキュンキュンが残っていました。
鈴:Comomoさんはポカポカ属性かもしれませんね。僕としても、「本当に女の子が可愛い」ということが一番の特徴であるなと最初から感じていました。あと、なんだか柔らかいですよね。そこも個性のひとつだと思います。それでは、次はしまのさんの『とある兄弟の話』ですね。
音:最後にピースがはまっていくような作品でした。描いてみたくても簡単には描けないような物語で、本当にすごいなと。今回の作品では、男の子が急に獣になってしまうような突然の変化が起こるシーンを描くのが上手だなと驚きました。あと、ギャグ的なポップな絵とシリアスな感じの絵とのバランスがとてもよかったです。
迚:兄弟二人がとても純粋で可愛くて、音羽さんも仰っていたように二人の思いがだんだんと重なっていくような感じで、読み終わりがすごく良かったなと思います。
鈴:描いた話数でいうと、一番多かったですね。そして、それともう一本あったわけなので、相当大変だったと思います。あとアイディアが本当に良くて、なかなか思いつかないことを考えつける人というか、それが長所でもあるなと思います。それは最初から際立っていましたね。
小:今回の座談会に参加していただいたみなさんが、これからたくさんの作品を創られる中で、どのような個性を持った作品を描いていかれるのか、どのような作家さんになられるのか、とてもワクワクします!
鈴:そうですね、とても楽しみです。みなさん、とても良いところがあってこのような機会があり、「面白い作品を描くな」と思って一年間、見させてもらってきたので、これからも楽しみにしています。今日はありがとうございました。
一同:ありがとうございました!
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これにて、第一回スピカ賞は満了となりました。座談会を通して、受賞者それぞれの一年と頑張りが、お伝えできていれば幸いです。
なお、卯月ココさんは第48回デザート新人まんが大賞にて佳作を受賞され、2020/12/23(水)発売の『デザート』2月号にて、漫画家デビュー作『こいで、こがれて』が掲載されました。記念の弊社特別インタビューもございますので、ぜひご覧ください!
→ 『デザート』デビュー作掲載記念・卯月ココさんインタビュー
また音羽すずめさんも、第49回 デザート新人まんが大賞にて優秀賞を受賞され、漫画家デビューが決定しました! 受賞作は、デビュー作は2021/6/24(木)発売の『デザート』8月号別冊付録に掲載予定です。どうぞお楽しみに。
Comomoさん、しまのゆかさん、迚かなさんも、引き続き創作活動を続けていかれます。この5人への変わらぬ応援を、今後ともよろしくお願いいたします!!
なお第2回スピカ賞の開催については、今のところまだ予定しておりません。たくさんのお問い合わせをいただき、ありがとうございます! 開催が決まりました際には、弊社公式Twitterとこちらのnoteにてお知らせいたします。恐縮ですが、何卒ご理解くださいませ。
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