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3つのチェーンストアで学んだこと:小売編

独立前に店舗開発として、美容・外食・小売(輸入食材)の3つのチェーンストアで働き学んだことを纏めてみる。今回は小売編。

独立の2文字が過ぎったけど踏ん切りがつかず、最後の転職をした。未経験の業種を選び輸入食材の小売の本部に店舗開発として就職。頭の隅に「独立」の2文字が貼り付いていたので、最初から小売業のPL構造(儲けの仕組)や事業ドメインを学ぶ気満々で就職した。しかし、この小売の事業会社での最大の学び(経験)は海外出店の担当者として、国内出店との違いを学んだことだった。

数年前からバンコクへの店舗展開を目指して物件を探していたこの会社は、私が入社して間もなく物件を確保できた、しかも2物件続けて。2006年当時、バンコクの商工会議所に1200社の日本企業が登録しており、東南アジアの各国が力強く成長中で、すでに出遅れた感がすらある時期だった。

海外出店のプロセスは、物件探しも必要だが、外資100%で法人設立できなければ、パートナー企業の選定から始まる。一方店づくりでは、日本とは違う内装基準(建築基準)のため、現地の法基準合わせることになるが、日本と同様の店舗造作を前提として国内の設計者を選定する場合は、現地のライセンスを持った施工会社に依頼し、法関連をサポートして貰うことになる。

また、日本国内では問題ない資材が調達が現地で調達できなかったり、日本から輸入しようとすると関税がやたら高くでビックリしたりで、予め現地で安く調達できる資材を確認しておくことも重要だ。一方、東南アジアでは「必ず引渡しに間に合わない」と言われる工期管理問題が発生し、そこをカバーするために日系企業を選定すると日本より工事費が高くついてしまうなど、リスク管理の学びは大きかった。予期しないトラブルが出てくる度に、日本の職人さん達の精緻に準備し納期を守ってくれる優秀さを当たり前に受け取っていたことが世界では当たり前でないことを学び、日本の職人さん連合を作れば、輸出産業として使えると思ったくらいだった。

バンコク案件の物件契約は法務(国際弁護士)が対応したので関わって無かった。数年前、バンコクに出張の際に開業当時から駐在しているMD (Managing Director)に久しぶりにお会いしたら『既に閉店したけど、1号店の契約は7番目だったんだよね。』と言われビックリした。サブリースどころの話じゃなかった、数年前から物件を探していてリスクを取っても7番目の契約をしたらしい。

会社が飛躍するタイミングにはある種の波に乗る必要があるのと同じように、事業を一定規模から拡大するには、リスクを取ってでもチャンスを掴むがあるのだと思う。出遅れた感のあったバンコク進出だったが、2つの事業は順調に成長し、グループ全体は1000億円を突破する企業になった。

この事業会社で学んだことがもう一つあった。それは、どれだけの物流網を持っているかが事業展開に大きく影響する、ということ。時代が生む事業がある、例えばヤマト運輸の2代目社長として小倉昌男氏が業務用運送業から個人向け宅配業に転換しリーディングカンパニーに育てように、その時代だから生み出せた事業がある。

この小売の事業会社の創業者は団塊の世代の方だったが、20代半ばで個人事業主から事業を始めており、私が在職していた当時すでに会社は40年近い沿革を持っていた。40年前にいち早く輸入食材の小売というジャンルを立上げ、事業拡大と共に物流網を整備してきたから、1番くじを引いたからこその事業展開(拡大)ではないか。
この頃、私自身が楽天を良く利用し、Amazonも大きく勢力を伸ばしているなか、ゼロから小売の多店舗化はこれから可能だろうか?私が独立して後、セレクトショップではない小売の多店舗化に寄与できるだろうか?自問した結果、私の答えはNoであり、小売業は物流網込みでM&Aで買う時代だと結論した。

食品小売業界の市場と概要

総合小売・食品小売ランキング:日経新聞(表1)

総合小売食品小売ランキング

スーパーの平均客単価:スーパーマーケット白書(表2)

スーパー平均客単価

外食でアップした農水省の資料から、食品小売業者等の市場規模は51.2兆円。表1の総合小売・食品小売ランキングではイオン、セブン&アイに次いで、JR各社が名前を連ね3位~7位が電鉄系の企業が続き、10社すべての企業が巨大な自社物流網を持つ。多角化はグローバルに及び、イオンはビオセボンジャパン設立に50%出資しただけでなく、フランス本社のBio c’ Bon SASの株式を19.9%取得するなど、食品小売のあらゆるセグメントを網羅するためにグローバル規模で動き、同様にランキング各社の多角化も増す一方である。
ランキング入りしていないが、JR九州の売上が本業の鉄道事業よりも鉄道以外の事業売上が多いことからも、加速する少子高齢化の中で他の鉄道各社も食品小売や飲食業への進出が進みセグメント売上の構成が変わる可能性が高い。そして、中小のスーパーマーケット事業者は、これら大手企業に対抗するように各地でM&Aを行っている。

表2はスーパーの平均客単価だが、2018年の平均世帯人数が2.44人であるため、800㎡未満の平均客単価1,574.8を世帯平均人数2.44人で割ると、645.4円/人となる。生鮮3品を含めてこの金額なのは、大企業の努力の賜物なのか。

小売の会社で考えたキャリアデザイン

店舗開発としての業務を積み、現時点の小売り業態の知見はある程度得られた、と思った時、更なる転職は考えられなかった。さて、どうするか?

働き続けた先にある、ありたい自分を探していた。
次に行く自分の場所を自分で決めなきゃ、と考えた時、子供頃の記憶が過ぎった。私が10歳の時、母が長期入院したことがあった。(この時の入院が子宮癌だったことを、母が亡くなり成人後に知った)退院して暫くした頃、親子で行くイベントがあったが、父は子供イベントに行くようなタイプではなく、母の同行も無理だと思い言わずに諦めた。
何かの拍子に本当は行きたかった、と母に言ったところ、母に「あなたは何もしないで、起こった結果を選んだ。」と言われたのだ。祖母や叔母に相談すれば誰か同行してイベントに参加できたかも知れないのに、あなたは何の行動も起こさなかった、その結果を選んだのだ、と。母の予想外の答えに10歳の私は泣きながら、何故かその答えに納得したのだ、そんな記憶。
だから、自分のしたいことは何であれ、行動すること。

独立すると決めて会社を退職した。

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スパイカ株式会社は店舗事業構築支援を行う会社です。

代表田上の会社員時代の経験と現在スパイカ株式会社の業務について、
『店舗開発のお仕事』としてマガジンに纏めています。




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