Dancemania SPEEDの歴史9~SPEED 7~
Dancemania SPEED 7
圧倒的濃厚主義
2001年9月27日発売
あまり受けが良くなかったと思われるアニメ調ジャケットからいつもの……否、いつも以上に疾走感のあるジャケットになった7作目。
今作はそのジャケットの勢いを体現するかの如く、あっさり目だった前作とは打って変わって、力強く豪快な、色々な意味で「濃い」曲が多数収録されています。アルバム全体が醸し出すこの濃厚さがクセになる人も多く、中期の中でも特に熱狂的なファンが多いアルバムではないかと思われます。
そんな今作の新規リミックスは9曲と最多記録に。
02.MY FIRE(KCP Remix) / X-TREME
03.B4U(B4 ZA BEAT Mix) / NAOKI
05.FOOTLOOSE(Hyper Mix) / BUS STOP
06.I Believe In Miracles(Hyper Momo Mix) / HI-RISE
13.1,2,3,4,007(SPEED POP Mix) / NI-NI
15.Walkie Talkie(Momo Mix) / King Kong & D.Jungle Girls
16.Let The Beat Control Your Body(B4 ZA BEAT Mix) / 2 Unlimited
20.SEXUAL HEALING(Planet Lution Mix) / E-ROTIC
25.THE RACE(Power-Drill Mix) / CAPTAIN JACK
DDR収録曲が多く選ばれた一方で、E-ROTICは何故かDancemania未収録曲がアレンジされたりと微妙に謎な選曲も。(版権元からリミックス許可が出る出ない等の大人の事情もあるのかもしれません)
シリーズ初参加のX-TREMEは、今までのSPEEDシリーズであまりお目にかからなかったディスコ系統の楽曲のため、アレンジ自体はオーソドックスながらもかなり新鮮な曲調に感じられるのではないかと。
また1,2,3,4,007はBEMANIシリーズでも長いことお世話になっているY&Co.がリミックス。ワイコーらしさ全開の弾けたユーロアレンジが原曲と絶妙にマッチしています。
前述の「濃厚」が当てはまる曲の筆頭はLet The Beat Control Your Bodyでしょうか。テクノな原曲にB4 ZA BEAT持ち味のユーロビートな激しさがミックスされ、得も言われぬ濃いスピード感を生み出しています。
MOMO金沢氏がリミックスしたI Believe In Miracles、Walkie Talkieも、ソウルフルな原曲に太い音が絡むグルーヴィーなアレンジで、この濃いリミックスは正に今作の雰囲気にピッタリでしょう。
……で、満を持してのB4Uリミックスです。
原曲はNAOKI曲で人気投票すればまず1位に輝くであろう、DDRどころかBEMANI史に名前を残す歴史的名曲。そんな曲をB4 ZA BEATがユーロ成分・SPEED成分マシマシでリミックスするのですから、人気が出ないわけがありません。
間違いなく今作一番の目玉曲であり、今作の「濃厚」なイメージをリスナー(というか筆者)に強烈に植え付けているであろう最大要因です。SPEED Gでも貫禄のリクエスト2位を記録しました。
続いては海外レーベル曲の紹介ですが、今作ではJenny Rom人気にあやかって企画したと思われる「ガール・ポップ・ミニ特集」という、その名の通り可愛らしい女性ボーカル曲だけを集めたゾーンがあります。それが8~14曲目までで、LED提供曲は全てここに(しかも3曲連続で)収まっています。
08.I Love You Babe / PRISCILLA & JUDY
09.Baby Baby Baby / Maria Short
10.Boom Boom Boom / JUDY CRYSTAL
LED節全開な激太シンセユーロビートが3連続で流れるため、人によってはその濃さで胸焼けを起こすかもしれません。……が、流石にKCPもそれを想定していたのか、I Love You Babe以降は4曲続けて1分弱ですぐ次の曲へ移る構成に。
同じテイストの曲が並ぶので興味がなければどれも同じに聴こえ……そうなものですが、これが意外と上手いこと差別化出来ています。
I Love You Babeはド派手なシンセリフと哀愁感の潜むサビとの対比
Baby Baby Babyは前作SHA LA LAと同じくどこかノスタルジーな曲調
Boom Boom Boomはブックレット通り学園祭のような明るいノリ
Baby Baby BabyとBoom Boom Boomは1分弱でじっくり聴き込めるほど長さはありませんが、それぞれ単曲で十分に成り立つほど個性は出ています。
I Love You Babe
続いてはガールズポップ特集にも2曲入っているSAIFAM。
04.JADED(Remix) / TOMMY B.
07.Doesn't Really Matter / DJ SPEEDO feat.ANGELICA
11.All Around The World(E=MC2 Mix) / Zippers
14.Robin Robin Hood(Speed Version) / Jenny Rom
17.Queen Of Love / WILDSIDE
過去最多の5曲提供な上、5曲全部がBEST盤入りしてて何らおかしくないという驚異の高水準。……というかもはや、SPEED 7以降のSAIFAMは本編最終作G5に至るまで常に全盛期であり、提供する全曲が高クオリティという八面六臂の活躍をし続けていました。
ガールズポップ特集の2曲はAll Around The WorldとRobin Robin Hood。ZippersもJenny Romと同系統の可愛らしい女性ボーカルで、SPEEDシリーズ以外ではHAPPY PARADISEに曲が収録されています。
ただ、これらの曲がそうだと言うわけではないのですが……SAIFAM自体が色々なプロジェクトの掛け持ちに近い制作体系なのもあってか、SPEED 9参加のBarbie Young等も含め「Jenny RomとZippersとBarbie Youngと、名義違うけど全部同じ人じゃないのこれ」と言いたくなるくらい、それぞれの名義の差別化が曖昧な時があったりします。
ボーカルなりサウンド面なり、恐らくSAIFAM側で名義分けの基準等もあるのでしょうが、とりあえずは「SAIFAM楽曲はボーカル含め、マウロファリーナ他数人で多くの複数名義を使い分けてる」ものだと思っておけばいいのかもしれません。
(下手したらSpeed Records曲のほとんどがマウロファリーナ製という恐ろしすぎる可能性すらあります)
肝心の曲については、ガールズポップ2曲はどちらも当然キャッチーで覚えやすい良曲ですし、Robin Robin Hoodはサビ前の「はやーい!」の空耳も当時リスナーの間で話題となりました。
それに加え有名曲のカバーであるJADEDとDoesn't Really Matterのアレンジも素晴らしい。JADEDはSAIFAMサウンドが原曲の爽快感と合わさり気持ちの良いアレンジに。Doesn't Really Matterはボーカルテンポを原曲より敢えて遅くしたことで、ハイスピードなのに独特のヒーリング感が生まれました。
極めつけがQueen Of Love。DDR 3rd Plusにも収録されたBA KKWOというK-POPが原曲ですが、JADEDやDoesn't Really Matterと比べ知名度は全く高くありません。しかしそれでも尚、この曲はSPEEDリスナーから異常な人気を得ました。
ミステリアスな曲調と重厚なシンセリフが疾走感を演出し、「荘厳」な雰囲気すら漂う当曲。そのカッコよさの虜となったリスナーたちの熱意により、前述のように決して高くない原曲知名度を跳ね除け、SPEED Gでリクエスト8位という快挙を達成しました。
Robin Robin Hood(Speed Version)
JADED(Remix)
Queen Of Love
Runawayは今作では2曲のみの提供。
01.Survivor / Nancy and the Boys
21.Born Slippy / CJ CREW feat.MC Bygglz
Born SlippyはUnderworldボーカルのモッタリ感をそのまま再現しすぎて若干SPEED向きじゃない曲調になっちゃってますが、再現度が高い分原曲ファンにはかなり楽しめるアレンジではないかと。
Survivorは同じくかなりモッタリな原曲を使用しているものの、こちらはRunawayの適正が最大限発揮された、オープニングトラックに相応しい秀逸かつ濃厚なアレンジと相成りました。原曲では絶対に有り得ない超高速ラップと化したボーカルの変わりようは、かつてのRhythm And Policeを思い起こさせるSPEEDアレンジの醍醐味を味あわせてくれます。
Survivor(原曲)
続いて今作のハピコア楽曲を紹介……する前に言及しておくべきことがありまして、このCDが出た2001年前後から、ハードコア界隈でTRANCECORE(トランスコア)ブームが起きました。
トランスが世界的大ブームとなり、その波がハードコア界隈でも発展していったわけですが、現在トランスコアとして扱われている曲の中には1999年以前のものも含まれていたりして、ジャンルの定義や歴史を掘り下げようとすると中々ややこしいのが実情です。
なので一先ず「トランスコアは00~01年前後からブームになり、ジャンル形成が明確になってきた」んだと覚えておけば問題無いと思います。
ただ、そのトランスコアも後々、UK HARDCOREやFREEFORM等にジャンルごと吸収されていくのですが……。
で、そんな当時のトランスコアブームを牽引していたのがこちら。
23.Vortex / DJ FADE
当時流行っていたサイバー系トランスに近いサウンドのシャープなトラック。この濃厚なトランス感とBPM170の縦ノリ感とが合わさり「トランスコアとは何ぞや」という疑問に直球で応える一曲になっています。
ベテランプロデューサーFADE氏の作り上げた当曲は、SPEED Gでリクエスト14位、TRANCE RAVERSとBEST OF HARDCOREに収録と、その後も様々なアルバムで顔を見せるSPEED中期の代表的アンセムとなりました。
Vortexが代表曲となるトランスコアは、今作では他にも
18.Sweet Dreams X-Clusive / BPM(※原盤ではSound Assassins名義)
27.Mindblowin' / Brisk & FADE(HAPPY RAVERSからの移植曲)
このような曲が収録されています。
次作SPEED 8までの間に「TRANCE RAVERS」というスピンオフもリリースされ、トランスコア楽曲はこの後もまだまだ増えていきます。
また今作を「濃厚」たらしめているのが、
上記以外にも中々に個性の強いハピコア楽曲たち。
22.Born To Rave / DJ Stompy
24.Play The Vibes / Adiktion
29.Crash / Luna-C
30.Dream State(Spaceman) / Kambel vs MAGIKA
高揚感満載のボーカルと疾走感満載のサウンドの波状攻撃Born To Rave
NIRVANAの名曲を元ネタに、ハピコアとは思えない過激なギターリフで攻め立てるPlay The Vibes
同じくロックな原曲を、アグレッシブかつポップな楽しいハピコアに変身させたCrash
Kambel印の尖ったビートをBPM200付近という超スピードで叩きつけてくる異端児Dream State
どれもこれも相当に濃いメンツです。
特にDream Stateは、音の洪水に呑まれるかの如く力任せに駆け抜けていくラストナンバー。Survivorに始まりDream Stateで終わる今作をもって、一体誰が「濃厚」であることに疑問を持ちましょう。
曲から構成から、何から何まで濃い今作。
収録曲The RaceやGoing To Suzukaのようなハイスピードレースを意識して、B4UやSurvivorを聴きながらアグレッシブなドライブをするのにもピッタリな一枚かもしれません。くれぐれも熱気のVortexに巻き込まれてCrashしないように気をつけましょう。
(上手いこと言った風な感じでSPEED 8へ続く)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?