Dancemania SPEEDの歴史19~TV・classical 2・刑事~
SPEED TV
SAIFAM万能説
2004年4月28日発売
サブシリーズ第4段は「TV」をテーマに、ドラマやCM等でよく聴く曲がSPEEDアレンジされています。テレビを見る頻度で知ってる度合いは上下しますが、映画やクリスマスと比べるとより生活に根ざした曲が多く、いわゆる「タイトルは知らないけどメロディーは知ってる」ものに出会った時の新鮮な驚きが大きいアルバムになると思われます。
内容的には収録曲全て洋楽のカバーのため、SAIFAM・Runaway・LEDが普段からやっていることの延長線上のような、良くも悪くも「本編シリーズから3本柱だけ抜き出した」ような楽曲たちに。
SAIFAM
01.I Was Born To Love You / DJ SPEEDO feat.RAFFA
06.Killer Queen / TOMMY B. WATERS
08.GETAWAY / KOKO
09.What A Fool Believes / SPEEDMASTER
14.HOT STUFF / DJ SPEEDO feat.DJ MIKO
15.Smile(Speedy Mix) / Orlando(※再録)
16.Sir Duke / Capitan Go!!(※再録)
17.Joy To The World / Orlando(※再録)
18.Layla(Speedo Remix) / TOMMY B.(※再録)
19.We Will Rock You / MAZERATI
20.ABC / SPEEDOGANG
Runaway
07.Born To Be Wild / Chi K Monkey
10.I Fought The Law / Nancy and the Boys
11.Like A Rolling Stone / CJ CREW feat.PLAYSTONE
12.Mr.Tambourine Man / CJ CREW feat.Dallas Man
13.PARANOID / Demanche Noir
LED
02.Let's Dance / JOHN DESIRE
03.What A Wonderful World / THE FALCO
04.CENTERFOLD / Violent String Ensamble
05.The Tide Is High / ROSE
見てもらえば一目瞭然、アルバムの半分以上がSAIFAMで、アルバム構成としてもSAIFAMがオープニングナンバーを担当し、さらに後半~ラストナンバーという非常にオイシイ位置にいます。
再録のSmile、Joy To The World、Sir Duke、Laylaも全てSAIFAMのため、東芝EMIがSAIFAMに絶対的信頼を置いているのが見て取れます。14曲目からラストまでの7曲連続SAIFAMは流石にどうかと思いますが、アレンジの幅が広く飽きさせず、しかもどれも高クオリティなので文句は言えません。
リスナーからの支持が厚く、短期間にこのクオリティでポンポンと人気曲を量産してくれるのですから、EMIがSAIFAM贔屓になるのもしょうがないことでしょうか。3本柱各々の役割は全うしていますが、今作のこのSAIFAM強めのバランスが、SPEED後期における大体の力関係になります。
先にSAIFAM以外の2つを見てみると、Runawayは元ネタがほぼバンドのためか、多くの曲にギターの入るロックテイスト感強めのスピードアレンジに。
Born To Be WildやI Fought The Law等はスピードダンスとして非常に綺麗に仕上がったアレンジのため、原曲ファンや「耳にしたことがある」レベルのリスナーにも受け入れられやすいのではないでしょうか。
ただ、元からテンポの速い曲が多いためか、SurvivorやComplicatedのような予想外の大胆なアレンジはほぼありません。良くも悪くも「無難」で、期待外れにはならない分驚きも少ないかもしれません。
LEDはThe Tide Is Highのように原曲イメージに沿ったアレンジがある一方、原曲からかけ離れたLet's Danceが良くも悪くもかなり目立ちます。
デヴィッドボウイの元ネタを全く気にしなければクールな良ユーロビートですが、いざLet’s Danceのアレンジとして聴くと……SPEED G4収録の大問題児9 To 5 Morning Train程ではなくとも、原曲の明るくポップな雰囲気が全く活かされない独特過ぎるアレンジで、「原曲迷子」と言われても仕方のない一曲に。
これがSPEED TVでなければ「個」として評価出来る完成された一曲なものの、「TVでよく聴く曲のアレンジ」として見るとどうにも疑問符が浮かんでしまう感じに。
そしてそういう意味でSAIFAMは、GETAWAYはサビ終わりのデレレレンをきちんと再現し、HOT STUFFは「このリフをSPEEDで表現するならこうなってくれるのでは」という期待通りのサウンドで、「ズンズンチャッ」を使わずオリジナルのラップを入れたとしてもWe Will Rock Youのように高水準なアレンジを作り……。
Runawayの安定感とLEDの予想外とを両方兼ね備え、その上でどれも高品質。期せずして、これではリスナーもオファー側もSAIFAMファーストになるだろうな、と思わされる楽曲ばかりとなってしまいました。
無論Runawayにしか出来ないアレンジ、LEDにしか出せないサウンドもありますが、それでも今作においてはSAIFAMのアレンジ適正が目に見えてずば抜けていました。
シリーズ後期の後半、特にSPEEDRIVEとHAPPY SPEEDのSAIFAM重用っぷりは、もはや贔屓というよりそこしか頼れる所がないくらいのおんぶに抱っこ状態。そしてその前兆は既に今作から見え始めていたようです。
SAIFAMが特に大活躍したアルバムとは言え、RunawayやLED含め元ネタは知っている曲だらけですし、アレンジの方向性も無難・迷子なものがあるだけで、どれも「一曲」としての品質は確かであることを保証します。
今作を聴いて「メロディー知ってたけどコレそんなタイトルだったんだ」という感覚を是非とも味わいましょう。
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classical SPEED 2
43分間の激烈鑑賞会
2004年8月18日発売
サブシリーズ第5段かつ「クラシック」を元ネタにしたclassical SPEEDの正当続編。前作は他の海外レーベルや過去曲も入っていましたが、今作はSAIFAM・Runaway・LEDの3本柱のみで構成されています。
前作の30分という短さは流石に解消され、今作は43分とある程度長く楽しめる一枚に。ただ今回はリラックス出来る・聴かせるタイプのクラシック原曲が多く、前回のような最初から最後までフルスロットルの運動会気分を期待すると、やや肩透かしを食らうかもしれません。その分じっくりと聴けて楽しめる作品になったので、ここは一長一短でしょうか。
SAIFAM
01.木星 / SPEEDORCHESTRA
02.タイム・トゥ・セイ・グッバイ / KK feat.MANU
16.だったん人の踊り / DJ SPEEDO feat.Arenas Orchestra
17.ワルキューレの騎行 / MC F 40
18.ボレロ / DJ SPEEDO feat.Arenas Orchestra
19.ピアノ協奏曲第1番 / SPEEDMASTER
20.威風堂々 / MAZERATI
LED
03.アメージング・グレース / Speed All Stars(※再録)
04.アイネ・クライネ・ナハトムジーク / Violent String Ensamble
05.四季「春」 / Speed All Stars
09.ピアノソナタ第8番「悲愴」 / Speed All Stars
10.別れの曲 / Extra Terror Sound
11.星条旗よ永遠なれ / Hardcore Synth Orchestra
15.ジムノペディ / Violent String Ensamble
Runaway
06.交響曲第40番 / Nancy and the Boys
07.マカベウスのユダ / THE ORFF KI ENSEMBLE
08.ツィゴイネルワイゼン / CJ CREW feat.Shazza
12.ピアノソナタ第14番「月光」 / PYAN ISSIM
13.カルミナ・ブラーナ / THE ORFF KI ENSEMBLE
14.ジャズ組曲第2番「ワルツ」 / PYNCK HOBO
SPEED TVは流石に偏りすぎたと判断されたのか、7曲・7曲・6曲と非常にバランスの良い楽曲分布に。オープニングと後半~ラストを飾るSAIFAMがやはり優遇されてはいますが、楽曲数の上では均衡になりました。
木星はclassical 1でBlack Forestが既にアレンジ済みでしたが、今作発売前に平原綾香のJupiterがヒットしたこともあって、SAIFAMの新規アレンジがオープニングナンバーとして収録されました。
今作は特にLEDの活躍が光っています(LEDだけに)。落ち着いた雰囲気にピッタリなクラシック原曲ばかりですが、自慢のLEDサウンドを武器にしっかりとユーロアレンジがハマっています。
とりわけヒーリングミュージックの代表格たる悲愴、別れの曲、ジムノペディの3曲が素晴らしい。原曲の温かみを壊すことなく、それでいてLEDによる高速ユーロビートが成立し、その不思議な一体感はまるで「SPEEDヒーリング」とでも言うべき新しい感覚のようです。
究極の泣きメロと名高い別れの曲は、あのLEDのキンキンシンセですら聴けば思わず(身体が動くと同時に)涙腺が緩んでしまうのでは。
Runawayはclassical 1と同じく、原曲の雰囲気を損なわない安定したアレンジが多めです。ジャズ組曲は日本人にはあまりメジャーではないものの、ミステリアスな三連符ダンスアレンジがかなり優秀で、すぐ好きになれること間違いなし。
またボーカル曲カルミナ・ブラーナは、熱唱による迫力も相まってRunawayらしからぬ「圧」を感じる一曲に仕上がり、原曲の壮大さを再現した鮮やかなアレンジが魅力的です。
SAIFAMは木星、だったん人の踊り、ワルキューレの騎行、ボレロとシリアスなクラシックが多く、カッコいいダンスアレンジをいくつも楽しめることでしょう。ラストナンバー威風堂々は、原曲のスケールの大きさをSAIFAM得意の高クオリティなサウンドで巧みに表現しています。
3拍子のワルキューレの騎行が無理なく4つ打ちアレンジされ、同じメロディーを繰り返すボレロもSAIFAM刻み等でパターンを変え聴き飽きさせない工夫をしており、作曲をしている人でなくとも、そういった面での様々なアレンジテクニックも実感出来るのでは。
前作に負けず劣らず「全人類にとっての有名曲」たるクラシックの強みを活かし、今作もまたSPEED初心者に勧めやすいアルバムになっています。
癒し系有り、三連符のトリッキーなテンポ有りと、様々な方向性からのアレンジアプローチが聴く人を飽きさせず、初心者であろうとも優しくSPEEDの世界に引きずり込んでくれることでしょう。
ちなみに今作からサブシリーズのライナーノーツがYasuという方になりました(今までは執筆者が記載されていませんでしたが、文体からしてUPHORIA=EVIL氏だったと思われます)。Yasu氏のライナーノーツは小ネタを織り交ぜた砕けた文章が特徴的で、原曲に思いを馳せながらアレンジを聴く楽しみを増幅させてくれています。今作を手に取った方は、是非ともブックレットも覗いてみましょう。
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SPEED 刑事
「昭和」のSPEED
2004年11月25日発売
サブシリーズ第6段のテーマは「刑事」。日本・海外の刑事ドラマ、警察が主役の映画等の曲を集めたアルバムです。
……皆さんが感じた「ニッチすぎない?」という第一印象は決して間違っていません。
「もしかすると」の域を出ませんが、今回のサブシリーズはRhythm And PoliceとNINZABUROの人気にあやかって企画したものと思われます。しかし「刑事」をテーマに曲を集めるのは知名度の点で大分苦労したようで、結局は私立探偵ドラマにも範囲を広げて、なんとか20曲揃えたといった感じの曲目になりました。
SAIFAM
01.太陽にほえろ!メインテーマ / SPEEDMASTER
02.ジーパン刑事のテーマ / SPEEDOGANG(太陽にほえろ!)
05.Bad Boys Reply(95) / TOMMY B.(※再録)
17.傷だらけの天使 / MAZERATI
18.Bad City / KOKO(探偵物語)
19.Love Somebody For Life / Lawrence(踊る大捜査線)
Runaway
03.Rhythm And Police / CJ CREW feat.Christian D(踊る大捜査線/※再録)
04.NINZABURO / CJ CREW feat.SEDGE(古畑任三郎/※再録)
06.特別狙撃隊S.W.A.T.のテーマ / CJ CREW feat.Bryan Potter
07.アイアンサイド / CJ CREW
08.ミステリームービーのテーマ / CJ CREW(刑事コロンボ)
11.ピーター・ガンのテーマ / CJ CREW feat.Duane Bucknall
16.ピンクパンサーのテーマ / CJ CREW feat.Ginger
LED
09.ダーティ・ハリーのテーマ / Hardcore Synth Orchestra
10.Heat Is On / Frog 'A Billy(ビバリーヒルズ・コップ)
12.Rock Shop / Hardcore Synth Orchestra(ロボコップ)
14.西部警察メインテーマ / Extra Terror Sound
15.Gメン'75のテーマ / Violent String Ensamble
上記以外
13.ルパン三世のテーマ / Ventura(※再録)
20.男の勲章(Speed Remix) / 嶋大輔(天まであがれ!)
最終的にこの20曲になりましたが、こちらのCDストアの仮トラックリストによれば、上記以外にもスケバン刑事、俺たちは天使だ!、マイアミ・バイス、X-FILE、あぶない刑事、大都会、ポリス・アカデミーの収録が予定されていたようです。(マイアミ・バイスは後にG4に収録)
あぶない刑事オープニングや、俺たちは天使だ!の「男達のメロディー」は面白いアレンジになったような気がしないでもありませんが、ともかくもこれらのボツ曲が入っていようがいまいが、全体的に「昭和」の香りがプンプン漂うラインナップに。
平成の刑事ドラマ・探偵ドラマとなると、今作の踊る大捜査線、古畑任三郎以外では相棒、TRICK、ガリレオ、金田一少年、名探偵コナン辺りは、今や作品もテーマ曲も広く知れ渡っています。しかし2004年当時まだ一般的ではなかったものも多く、サブシリーズとして企画を通すには、あの時点で知名度で勝る「昭和」作品の力を借りるしかなかったのかもしれません。
もしくはEMIも開き直って、昭和作品を全面に推し出し「おっさんホイホイ」を期待して企画した可能性もあります。CM等に使われメロディーだけなら広く知られているような曲もありますが、知名度や普遍性という意味では、今までのサブシリーズの中でもぶっちぎりで低いでしょう。
……が、個人的には結構好きなアルバムだったりします。銭形のとっつぁんリスペクトという形で大好きなルパン三世のテーマ(Ventura)が入っていることもそうですし、なによりもSAIFAMやLEDが「日本の曲」をアレンジしてくれたことが当時とても嬉しかったのを覚えています。
オープニングナンバー太陽にほえろ!メインテーマはあのサイレンのようなイントロの再現度が凄すぎて感動的ですらあり、元から英語詞のBad Cityはもちろん、傷だらけの天使やGメン'75などの、敢えて悪い言い方をするならば古臭い日本の曲が、海外のサウンドによってきちんとSPEEDの空気感でアレンジされているのです。
知名度は高くなくとも個々の楽曲はもちろん安心の良アレンジで、知名度の高い曲で言えばピーター・ガンやピンクパンサーなども聴けます。そういった洋楽曲も含め、今風のサウンドのまま「昭和レトロ」な雰囲気に浸れる、予想外に楽しいアルバムになっています。
ただ、馴染みのない日本の曲がオファーされて向こうのコンポーザーも戸惑ったのか、SAIFAMのSpeed Recordsにおいて、ジーパン刑事のテーマと傷だらけの天使が完全にタイトルと中身逆で登録されています。Juno Download等で曲を購入する際は「"傷だらけの天使"が欲しい場合はタイトルが"ジーパン刑事のテーマ"の曲を買う」ことになるので要注意。
ちなみにルパン三世のテーマは先述通り「銭形のとっつぁんリスペクト」という形で収録されていますが、その理由付けは正直大分苦しく、何よりライナーノーツがこの曲だけほぼ使いまわしのため、多分知名度のある収録曲が足りないとなって、ギリギリで入れたのではないかと思います。
…………はい。最後の最後までスルーしていました、男の勲章です。
Domo Domo Domoというサビだけ日本語の曲が過去収録されましたが、SPEEDシリーズに純日本語歌詞、純日本人歌唱、純J-POPのアレンジが入るのは史上初。
ライナーノーツで言及される通り警察官が主役なのは「天まであがれ!2」の方ですし、カバーでなくちゃんと嶋大輔の原曲を使用したリミックスなのも謎すぎますし、それでいて誰がリミックスしたのかは不明ですし……なにからなにまで色んな「何故?」に塗れています。
しかしリミックスとしては結構上手く仕上がっています。スペーシーなサウンドで寂寥感も漂わせ、まさに「天まであがれ」るような一曲に変身しました。ノンストップ担当のKCPが、もしくは後期後半お世話になるVenturaメンバーがリミックスした可能性もありますが、真相は未だ謎に包まれたままです。
それにしても男の勲章がラストナンバーなわけですが、最後はパトカーのサイレンで曲がフェードアウトしアルバムが終了します。「今日から俺は!!」のドラマに原曲が使われたのもあって、「SPEED刑事」なのに最終的にパトカーから逃げる不良のイメージ映像で終わるような、そんな変な雰囲気で〆に。
選曲も雰囲気も、全てにおいてちぐはぐな当曲。しかしある意味ではそれもまた面白く、もとよりあまり一般受けに振り切っていない「SPEED刑事」というアルバムだからこその良さなのかもしれません。
往年の海外ドラマの懐かしい曲にプラスして、昭和ドラマのレトロなメロディー、男の勲章というJ-POPのリミックスまで楽しめる今作。古き良き「昭和」を感じられるアルバムとして、一度聴いてみるのも面白いのでは。
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